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  • RE渋谷凛の全裸健康診断

    
    
     前編
    
     枕営業を行っている渋谷凛だが、突如として別の相手を紹介された。
     最初は決まった相手のみと関係を結び、その人からだけ交換条件を引き出すつもりでいたのだが、凛はこれまで様々な目に遭いすぎた。恥ずかしい面接を受けさせられ、海外のライブへ行き来するには、裸体での身体測定と健康診断も受けさせられた。
     その末、別の相手というわけだ。
     実にリッチな中年オヤジで、様々な人間に対して顔が利くという。この男を味方にすれば、凛の芸能界での立場はより盤石になると薦められ、抱かれる流れとなって車に乗り、高級ホテルにまでやって来たわけだった。
     高層ホテルの上階で、窓の外には夜景が広がる。
     しかし、今の凛は景色など見ている余裕もなく、中年オヤジの相手に忙しい。
    「あっ、んぅぅぅ……! んっ、んあっ、あふっ、んんん!」
     既に情事は始まっていた。
     腹の膨らんだ中年オヤジの上に跨がり、騎乗位で腰を振り、凛は上下に弾み続ける。乳房をプルプルと揺らしながらの、自ら動いて、自分で自分を貫く性交に、しきりに仰け反りながら喘いでいた。
     脂肪でぶよぶよとした腹は、腹下で毛むくじゃらだ。ヘソが隠れるほどの毛量は、そのまま陰毛に繋がって、腹から股間にかけての茂みで真っ黒だ。
     こんなにも毛深い相手に、凛も負けず劣らず毛を生やしている。
     いつもの相手の趣味に合わせて、脇毛に陰毛、尻毛なども処理していない。未処理のまま中年オヤジに宛がわれ、初めは何か言われるだろうかと思いもしたが、どうやらこの中年オヤジは、彼の趣味は承知しているらしい。
     一緒にシャワーを浴びる際、気をつけをしていても脇からはみ出る幾本かの毛先に、やはりそうかといった具合の反応だった。
    「あぁあぁぁ……! あひっ、ひっ、ふあぁっ、ふっ、ふはっ、はぁっ、あぁん!」
     腰を沈めたその瞬間だけ、凛の陰毛と中年オヤジの陰毛は絡み合い、ピストンのために即座に離れる。
     凛はしだいに激しく動いていた。
    「あっ、あん! あぁん! あぁっ、いい! いい! 気持ちいい!」
     背中を反らし、ほとんど天井を向きながら、一心不乱に髪を振り乱して快楽を味わっている。ほどなくして絶頂して、全身を痙攣させ、凛は事切れたかのように倒れ込み、中年オヤジの胸に縋り付く。
    「良い子だね? 凛ちゃん」
    「はぁ……はふぁ……あぁぁ…………」
     未だ酔いから覚めないように、快楽の余韻に浸った凛は、されるがままに中年オヤジの手に撫でられている。
    「今度はバックで頼むよ」
    「あぁ……はい…………」
     快楽で朦朧とした頭で答え、凛は中年オヤジに尻を向ける。
     中年オヤジは四つん這いの背後に回り込み、魅惑の尻たぶに両手を置いて挿入する。
    「あぁぁ…………!」
     凛の背中が跳ね上がり、首にかけてまで仰け反っていた。
    「ああっ! やっ、あん! あぁん! あん! あぁっ、いやぁん!」
     ピストンで腰を打ちつけ、中年オヤジは凛の身体を前後に揺らす。リズミカルに与えられる衝撃で、髪をゆさゆさと揺らしながら、凛は快感に翻弄されて悩ましげな顔を浮かべる。大きな声で喘ぎ散らし、ほどなくして絶頂に震えていた。
    「んぅぅぅぅ………………!」
     絶頂時にはシーツを強く握り締め、頭をベッドに埋め込みながら、蹲るように全身をプルプルと痙攣させる。
     そんな凛から肉棒を引き抜いて、イカせてやったことで得意げになる中年オヤジは、おもむろにベッドを下りて自分の荷物を漁りに行く。
     中年オヤジが取り出したのは瓶だった。
     それはサイズの小さい、自動販売機の飲料にも使われる形状とよく似た瓶だが、その中身は飲み物ではない――媚薬だ。
     中年オヤジはそれを直腸から吸収させてやろうと思いつき、蓋を開けて迫っていく。イキ果てた凛は未だ尻を高らかにしたまま、顔だけをシーツに埋めて、傍から見ればみっともない形のままにぐったりとしている。
     そんな凛の尻に回り込み、毛むくじゃらの肛門を見下ろした。
    「まったく、こうもボーボーとはねぇ?」
     中年オヤジは瓶の飲み口にローションを塗り、滑りを良くした上で肛門に押し当てる。それを挿入していくと、中身が肛門へと流れ込む。成分が吸収されるまで、しばしのあいだ凛の尻を見守った。
     尻から瓶を生やした状態で、その根元には尻毛がかかっている。まるで肉棒の根元が陰毛でびっしりであるように、瓶の刺さった結合部の周りは毛が逆立ち生い茂る。
    「あぁ……あっ、なんか、やっ、やば……! なに入れたんですか!?」
    「媚薬だよ媚薬」
     中年オヤジは尻たぶを撫でる。
    「ひぃ!」
     それだけで悲鳴を上げ、腰をビクンと大きく跳ね上げていた。
    「これはまあ、随分と効き目があるようで」
     中年オヤジは面白がって尻を撫で、指先でくすぐり始める。
     たったそれだけで、凛は必要以上に感じていた。
    「あぁ……! あっ、あぁぁ……! あぁぁぁ………………!」
     一瞬で理性が飛んでいた。
     全身が性器になったように大きく喘ぎ、シーツに体が擦れることすら気持ちいい。尻を触られる快感で喘ぎつつ、体が動いてしまった際の摩擦でも、おぞましいほどの甘い痺れが発して全身を駆け巡る。
    「んんんん! んんんんんんんん! んんぁあぁあああああ!」
     凛の喘ぎはもはや絶叫の域だった。
     雄叫びのように喘ぎ、まるで絶頂しているかのようにビクビクと、全身が弾け続けているように蠢いて、ワレメからは愛液の糸が伸びてくる。みるみるうちに染み出る液体が表面で滴となり、それが重力に釣られて糸を伸ばして、尻が上下左右に激しく動く感じようにつられ、ぷらぷらと揺らされている。
     そんな愛液の糸は揺れているうちにぷちっと途切れて消えてしまうが、しばらくすれば新しく伸び直す。その伸び直した透明な糸は、今度は内股に付着することで消え去っていた。
    「これでアソコに触ったりなんてしちゃったら、凛ちゃんは一体どうなっちゃうのかな?」
    「おああああああああああ!」
     ツンと、クリトリスに指を置かれただけで、いとも簡単に絶頂していた。
    「これはいい」
     中年オヤジは完全に面白がっていた。
     皮膚をくすぐるだけで喘ぎ散らし、性器に触れれば簡単にイってしまう。媚薬の強さを実感すると同時に、そのイカせやすさに得意げになり、中年オヤジは肌中に愛撫を施す。腰を撫でても腹を撫でても、背中をやっても反応する。
     性器の近くを触ることでも、いつしかビクっと筋肉が弾むようになっていた。
    「これで挿入なんてしたら、一体どうなるのかな? ああ、楽しみだなぁ?」
     中年オヤジはニヤニヤしながら瓶を引き抜こうとするのだが、その時になって一変して怪訝な顔をし始めていた。
    「ん? これは……」
     小さな瓶がより深くまではまっていた。
     確かに、今まで夢中になっていた。凛の反応を面白がり、何もかも忘れて愛撫に耽っていたかもしれがいが、それにしたってこれは驚きである。
     肛門に入りきり、指で抜くことが不可能なほど、かなり深々とした状態になっていたのだ。
     たぶん、後ろから覆い被さるなりした時に、気づかずに腹で押し込んでしまったのだろうが、さすがにこれはよろしくない。
    「まずいなぁ……」
     これはもしや、病院で何とかしてもらうしかないのではないか。
    
         *
    
     最悪だった。
     色んな目にこそ遭ってきたが、こんな理由で病院を訪れることになるとは思いもしない。まさか肛門に挿入した異物が抜けなくなり、医師を頼る必要が出て来るとは、一体誰が想像するだろう。
     椅子に座ったり、立って歩いたりすることは可能だが、内部に異物の入った違和感で落ち着いていられない。トイレに行きたくなった時、それで自然と排泄されはしないものかと思ってみるが、もしも便が詰まって出せないといった状態に陥ったら、自然な解決に任せることも怖くなる。
     いつまでも放置すれば、どういった影響が出て来るか。
     そいった怖さもある。
    (最悪……)
     事態に気づいた中年オヤジは、すぐにその場で事情を説明してくれた。
     枕営業で未成年を抱くような大人とはいえ、自分の手で押し込んだ異物が取れなくなるのは、さすがに気が咎めているらしい。中年オヤジはホテル内から電話を入れ、すぐにセックスを中止した後、車を出して病院へ向かっていった。
     知り合いらしい医者に事情を話し、呆れ果てた溜め息をつく相手と、なんとか拝み倒そうとする中年オヤジとのやり取りが続いた後、凛は診察室へと招かれる。
     そして、裸を要求された。
     もう慣れたものなので、もはや抵抗なく脱いでしまうが、初めて会う男の視線を浴びてみて、やはり恥ずかしくなってくる。
    (そういえば、裸の必要って……)
     感覚の麻痺を自覚しながら、凛は診察台へ上がっていった。
     四つん這いとなり、尻だけを高らかに、頭や肩は下に付けていた。傍からみればみっともないであろう、しかし確実に肛門が見えやすいポーズになることで、異物を摘出すすための診察は始まった。
    「それにしても、毛がびっしりだねぇ」
    「え……」
    「なんで剃らないの?」
    「え、いえ、それはその…………」
     体つきを指摘して、理由まで尋ねてくる医者の言葉に困惑しながら、凛はその答えにも詰まっていた。枕営業をしているので、その相手の趣味に合わせて剃っていないなど、とても言える話ではない。
     もっと最悪なのは、後ろにカメラが回っていることだ。
     あの中年オヤジとしては、自分のせいで異物が取れなくなったのは放っておけない。かといって、枕営業で未成年を抱いていることが発覚するのも怖い。知り合いの医者に金を握らせようと考えたらしいが、直腸からの異物摘出例として医者側は撮影の許可を求めてきた。
     凛としても、スキャンダルはまずい。
     中年オヤジのやり方には乗るしかないが、医者側からも要求があるとは思わなかった。
    「ま、とりあえず触診するから。大人しくしててもらうよ」
     すぐ尻の真後ろに医者の気配はある。
     その診察映像を撮るためのカメラも、医者の隣で三脚台の上にセットされ、レンズの中にはしっかりと肛門が収まっているはずだ。
    (やっぱり、変な気分……)
     診察だろうと、肛門を見られて良い気分がするわけではない。
    「んぅ……」
     ジェルをまとったビニール手袋の指先が来て、凛は小さく呻いていた。そのまま指は挿入され、直腸の中へと埋まってくる。
    「あー。確かにあるねぇ? 瓶が入ってるってわけか」
    「そう……みたいで……」
    「浅いところにあるのは不幸中の幸いだね。最悪の場合は手術で切り開くなんて羽目になるけど、これなら引っ張り出せるだろうし、何とかなりそうで良かったじゃないか」
    「ええ、まあ……」
     それはもちろん良かったのだが、そもそも中年オヤジがおかしなミスさえしなければ、こうしたことには始めからなっていない。そう思うと恨めしい気持ちの一つも湧いて来る。
    「ところで、ついでに健康診断とか、色々やってくれって言われてるんだ」
    「え……」
     凛は軽く引き攣る。
    「なんで、とりあえず直腸検温するから」
    (え、なんで……健康診断って、この流れで……?)
     まったくもって、嫌な予感しかしない。
     これまでの経験を考えると、これから行う内容も、きっとこんな裸のままでの実施になるに違いない。
     医者は手始めに体温計を差し込んだ。
     細い異物感は瓶を挿された時ほどではなく、取れなくなった物の方がよっぽど気になる。ジェルもまぶしてあったのか、何らの問題もなく入り込み、体温計は数センチの深さまで肛門に収まっていた。
     尻から棒を生やした有様でしばらく待つ。
     音が鳴り、検温終了が告げられると、医者はそれを引き抜き確認する。
    「ま、普通か」
    「あの、一体……」
    「ん? 診断の意味は何かって? アイツに言われたのもあるが、アンタはあの国でライブやってきたんだろ?」
     凛は面接や肛門PCRのことを思い出す。
    「ええ、まあ」
    「あの国で流行ってるウイルス、潜伏期間中は検査でも発見されにくいらしいってな。万が一ってこともあるから、ついでに調べて欲しいそうだ」
    (そう言われると、仕方ないけど……)
     もろもろの経験が積み重なり、不本意にも慣れてしまってはいるが、好きで慣れているわけではない。できれば、そういった裸体での測定や診断は遠慮したいところなのだが、検査では見つからなかっただけで、本当はウイルスを保有しているかも、などと可能性を提示されては気になってしまう。
    「……でしたら、お願いします」
    「ああ、任された」
     その時だ。
    
     ぺちっ、
    
     ごく軽い力であるが、凛は尻を叩かれた。
    「さ、下りろ」
     ひとまず診察台でのチェックは済ませたと、そんな合図を兼ねた一発だったのだろうが、それで尻を叩かれた恥辱感に凛は顔を歪めていく。
    (ああもう、私は……)
     少し喜んでしまった自分がいる。
     変態チックな性癖に目覚め、こういうことに体が反応するようになっている。裸をみんなに見られたり、尻を叩かれて嬉しいマゾヒズムは、我ながら問題があるとは思いつつ、直そうと思って直せるわけでもないのだった。
    
         *
    
     凛は身長計の柱に背中をつけ、ピンと真っ直ぐに背筋を伸ばしていた。
     もちろん、服は一枚も着ていない。
     一糸纏わぬ姿のまま、台の上ではかかとを揃え、頭上にバーが下りてくるのを待つばかりなのだが、医者は凛の体を見ているばかりで、一向に数字を確かめる気配がない。ただの視姦のようでもあり、顎に指を当て、何か考え込んでいるようでもある。
    「あの、早く……測って欲しいかなーと、思うんですけど……」
    「いいや、乳輪がデカいなって思って」
    「えっ、それはちょっと……体つきのことを言うのは、さすがに…………」
     身体について指摘され、むしろ喜んでしまう気持ちを抑え、凛は努めて常識的な意見を述べていた。
    「ああ、まあそれもそうだ。しかし、にしてもでかいな」
     医者は凛の乳首を気にしながら、バーに手をやり下ろし始める。
     事実、凛の乳輪は大きめで、ぷっくりとした膨らみがある。それが興奮で盛り上がり、先端を固く突起させているのだ。
     中年オヤジと交わっての興奮は、セックスの中断によって冷めやんでいたはずである。肛門に瓶がはまった驚きと、車に乗っていたあいだの時間で、それまでの快感は何もかもリセットされたと思っていた。
    (私、なんで興奮なんか……)
     だが、リセットではない。
     冬眠のように一時的に眠りにつき、潜伏していた快感は、まるで発散のチャンスを逃したくないように目覚めていく。体中に隠れ潜んでいた快楽信号が蘇り、今こそ辱めを得ようとシグナルの放出を始めてしまう。
     触って欲しい、虐めて欲しい。
     そういった願望を顔や仕草に浮かべ、実現しようとする自分を抑え、何とか平静を保っているのだが、医者の視線が乳首を向くと、いつまで我慢していられるかの自信がなくなる。
    「うーん」
     医者は品定めのように乳首を見ていた。
    「あの、なんですか?」
    「こういう感じの乳首、見た覚えがあってね」
    「なんですかそれ。気のせいじゃ……」
    「そうかもしれないけど、気になったもんでね……っと、身長だったな」
     医者は思い出したように数字のチェックを行う。さも手で押さえてやる必要があるように、腹に触って軽く圧してくるのに対し、もはや何も言葉が浮かばない。凛はただただ、計測の終わりを待って静かに過ごす。
    「なるほどね」
     確認を済ませた医者は、書類の中には一六五センチと数字を書き込む。
     身長計測が終わった時、次に待ち受けるのは体重計だ。
    (ちょっと躊躇うね……)
     凛は体重計を前に二の足を踏む。
     正月明けで微妙に油断していたのだ。幸い、腹が明確にたるむほどではないが、指でつまめば油断のほどがわかってしまう。普段のスタイルなら、余分な皮下脂肪もなく、もっと引き締まっているはずなのだ。
     注意深い人間なら、腰のくびれたカーブ具合も、変化がわかってしまうことだろう。
     絞り上げたスタイルならともかく、油断した直後に計測を受けるのは、こんな裸の格好を抜きにしても抵抗がある。
     とはいえ、早いところ体重計に乗った。
    「五四キロか」
    (うぅ…………)
     凛にとっては悪い数字だ。
     思ったよりも重かったことで、そんな数字を声に出された不快感と、油断の指摘でもされたかのようなバツの悪い気持ちが湧き起こる。
     そして、スリーサイズの測定だ。
     医者はメジャーを手に取って、ネックレスをかけるかのように頭上から引っかける。凛は脇の下に隙間を作り、バスト計測のメジャーを受け入れると、背中にかかったそれを医者は手前に引っ張った。
     ピンと、軽い力で背中にかすかに食い込んで、両手と両脇のあいだにそれぞれ真っ直ぐに伸びている。医者は少しのあいだ乳房を眺め、それから巻きつけ始めると、わざわざ乳首の近くに目盛りを合わせ始めていた。
    「……んっ!?」
     刺激に驚き、凛は軽く目を丸める。
     医者はメジャーを使って刺激してきたのだ。
    「んっ、んぅ……んぅぅ…………」
     乳首を上下に動かしてくる。
     さながら、レバーを切り替え続けるかのように、乳首の角度を上下にやり、擦れ続けることで刺激が走る。ただでさえ突起しきっていた乳首は、元気に喜ばんばかりに快感のシグナルを体中に発信して、全身のいたるところにスイッチを入れる。
     エッチなことが始まったぞ――と、そう知らせて回るかのような信号が、アソコや尻の中を巡っていき、性感帯を活発化させていく。
     愛液が滲み始めて、クリトリスも突起していた。
    (や、やばい…………)
     頭まで染まっていき、微熱のこもった媚びた視線をいずれは向けてしまいそうだと、凛は表情を抑えに抑える。どうか私とセックスして下さいと、そんなアピールを自らしてしまうことだけは避けたかった。
     医者の手はそこで止まって、今度こそ本当に目盛りを合わせる。
     ちょうど乳輪の上だった。
     乳首をほんの少しだけ、たった一ミリだけ持ち上げるような微妙な位置で重なり合い、そこにある数字を見るために、医者の目はぐっと近くまで迫って来る。至近距離から視姦されている気になって、乳房を構成する細胞の一つ一つがざわついていた。
     全ての細胞が視姦に反応して、悦びや恥じらいでそれぞれ震え出している。徐々に温度が上昇していくように、細胞の運動は活発になっていく。もはや視線を注がれているだけでさえ、凛にとっては快感になりそうだった。
    (そ、そりゃ……私って、変態みたいな性癖、芽生えてきてるけど……)
     視姦だけで刺激を感じるに至るなど、自分は一体どこまでおかしな世界に目覚め、開かなくてもいいような扉を開いてしまうのか。
    「八二センチだね」
     数字を声に出されることで、秘密を読まれてしまったような、気恥ずかしさから来る刺激が走る。頬に熱がこもって赤らみ始め、凛の顔にはようやく羞恥心が浮かび始める。
     メジャーは腰に移っていた。
     緩めたメジャーを下へとずらし、医者は改めて手前に引っ張り、両手の指でぴんと伸ばした状態を作り出す。それをヘソの近くに巻きつけて、目盛りの重なりあった部分から数字を良い取った。
    「六三センチ」
     また一つ、秘密を読み上げられた気になって、頬に熱っぽい刺激が走る。
     そして、最後はヒップ測定だ。
     医者はメジャーの位置をずらす。緩んだものが尻のカーブの上に乗り、引っかかり、医者はそれを直すため、抱きつかんばかりに両腕を後ろに回す。性器に顔が迫ったことでの緊張感で、ゾクゾクとした興奮に見舞われた。
    (近い……!)
     見れば、医者の目は至近距離から注がれている。
     何の遠慮もなくジロジロと、毛を生やしたアソコを眺め、両手では尻たぶに触れてくる。べったりと張りついた手に撫で回され、そのちょっとした摩擦が興奮の刺激となり、息が荒く乱れてきた。
     メジャーの絡んだ指で、しばらくはそれを巻きつけることなく、ひとしきり楽しむために撫で回す。豊満な尻山に指は食い込み、やがてようやく医者はメジャーを巻きつけ始め、皮膚に軽く食い込んできた。
     性器の近くに目盛りは合わさる。
     数字を読むため、やはりまた視線が迫り、至近距離からの視姦に細胞が疼く。興奮で表皮の組織が細やかに震え、騒ぎ立て、アソコの奥にまで伝わる信号で、愛液を分泌するためのスイッチが入る。
     ワレメにまで及んだ陰毛には、透明な液体が絡み始めていた。
     毛が愛液を吸うことで、その水分によって本数が束ねられ、根元にはしっとりとした蒸れの気配が強まってくる。
    「もしかして、見られるだけで感じてる?」
     この医者はありえない言動が多かった。
     そして、そんな言葉の責めで悦んでしまう自分がいて、凛はそれを強く咎めることができずにいる。
    「いえ、そんなことは…………」
    「いやいや、香りがするね。愛液の香りだ。まったく、君って随分といやらしいみたいだ」
     呆れ果てたように言われ、凛は屈辱と共に興奮を増す。
    「八七センチか」
     スリーサイズの測定が完了すると、医者はそれらを書類に書き込み始めていた。
     自分の秘密が書かれている。
     読まれてしまった秘密が情報として取得され、書類の中に収まっていく。特殊な性癖なのかもしれないが、凛はこうしたことでも興奮して、体中を疼かせてしまうのだった。
    
    
    

    
    
     中編
    
     凛は椅子に座って背筋を伸ばし、その真正面から医師は聴診器を近づける。
    (私の心臓、凄い鳴ってると思うけど……)
     誤診が心配になるほどに、胸の内側では鼓動が激しい。
     体が興奮しているせいだ。
     もしかしたら、まだ体には媚薬の効果が残っていて、裸で恥辱を味わうことを引き金に、全身が疼いているのかもしれない。
     聴診は何も問題なく行われ、すぐに背中を向けることになる。
     髪を一時的にどかした後、背中から音を聴いてもらい、すぐまた前に向き直る。
    「ここまで異常は見つかっていないけど、とりあえず触診もしておこうか」
    (しょ、触診……!)
     期待と不安が織り交ざった。
     胸を触ってもらえることへの期待と、それを喜ぼうとしている自分自身への葛藤めいた何かと、変態の道へ進んでいくことへの不安が渦巻いている。
     胸に両手が伸びてきた。
     この状況を嬉しいと思いつつ、そんな自分のおかしさも自覚しているから、素直に喜んではいられない。自分でも直した方が良いとは思いつつ、一度興奮のスイッチが入ると、もう強くは拒めない。
     結局、凛は無抵抗にも胸を揉ませていた。
     手の平に包み込まれて、五指を踊らせる手つきに意識をやり、快感への集中力を高めていく。はち切れんばかりに膨らんだ乳首は、手の平が上から被さり、圧迫をかけられるだけでさえ敏感に反応していた。
     医者はあらゆる角度から指を押し込み、何かの調査であるように、生真面目な顔でタッチを始める。下乳のいたるところを、横乳のあらゆる箇所を、谷間のラインに沿ったアーチを、しきりに指圧して確かめている。
     そんな調査の手つきで甘い痺れが充満して、乳首にはますます快楽信号が集まっていた。
     これ以上は突起できず、いくら興奮しても硬度は限界を迎えているのに、それでも乳首に甘い痺れが集まることで、触れられれば弾けそうなほどまでに仕上がっていく。
     実際に触れられた瞬間だ。
    
    「んんぅ!?」
    
     驚くほどの激しい快感が胸から走り、四方八方へと電流が拡散した。
     しかも、この一度の刺激だけでは甘い痺れは散りきらず、まだまだいくらで痺れるようなウズウズとした感覚は残っている。
    「声が出てるね」
    「んっ、んぅぅ…………! んぁっ、あぁ……! やぁぁ……!」
     凛は乳首の快感に翻弄された。
     軽くつままれ、引っ張られているだけで、もう逆らえないかのように体が快感を受け入れて、されるがままに喘いでしまう。ぷっくりと膨らんで、何ミリかの厚みを得た乳輪も、ぐるぐるとなぞられれば想像以上に気持ちが良く、指先一つで肉体が支配されたかのようになる。
    「んぃぃ……おぁぁっ、あぁぁ……!」
     元から真っ直ぐに伸ばしている背筋だが、体中に電気が走り、余計にピンと張ってしまう。反射的に反り返りそうになり、気づけば天井に視線をやるようにもなっていた。
    「あぃぃ……! んぃっ、んぁぁ……!」
     息が激しく乱れていく。
     乳房が快感に溶けていた。胸が生えている感覚というよりも、そこに今まであったものが熱く溶かされ、消えてなくなりそうな気になるが、見ればそこにはきちんと乳房がある。そんな当たり前のことに安心するほど、細胞の一つ一つが溶解して、トロっと崩れ落ちていく錯覚があった。
    「うーん。凄い敏感だけど、何? 媚薬でも飲んだ?」
    「んあぁぁっ、あっ、それは……お尻に入った瓶が…………!」
    「瓶の中身が媚薬? ああ、なるほどね? 腸から吸収してるってわけ。そりゃ、まだ体に効果が残っているわけだ。ちょっとの刺激で体が媚薬成分の存在を思い出して、冷めたと思った興奮が簡単に蘇ったりするってことだね」
     医者の男はそんな風に一人理解を進めていき、勝手に頷き納得している。
    「んぃっ、んぁぁ……! あっ、あぁぁ……!」
     その一方で、気持ち良さに凛は肩をモゾモゾと動かし続けていた。
     医者は人差し指だけで凛を翻弄していた。
     いいや、正確なことを言うなら、この医者には凛を翻弄したり、こうまで思い通りに喘がせるつもりはなかった。媚薬が入っているとはいえ、予想以上の感度を見て、何となく面白くなってきてしまった。
     結果としては、ただの指一本の前に心が組み伏せられているように、快感の波に逆らえず、凛はただ喘ぎモゾつくままとなっている。
     ピンと、真っ直ぐに伸びた人差し指で、左右の乳首をくすぐっている。乳首の先端を触れるか触れないかのタッチで可愛がり、やわな刺激を与えるだけでも、凛は顔に快感を浮かべ、見るからに感じている。
    「媚薬についての問診といこうか。ぶっちゃけ、濡れてる?」
    「んぅっ、んぅぅ……それは……その………………」
     答えにくい質問だ。
     それに指でやられ続けている状態で、タッチを中断することなく、そのまま質問をしてくるので、内容の答えにくさに加えて息が乱れた微妙な喋りにくさも重なってくる。
    「どうなの? 一応、体調の確認も兼ねてるんだけど」
    「は、はい……濡れてます……たぶん、ですけど…………」
     凛のワレメに染み出た微妙な愛液は、まだ本人がはっきりと自覚するまでの量には至っていない。中年オヤジと交わっていた時の愛液など、ホテルを出る前にとっくに拭き取ってあり、元々は乾いていた状態が湿り気を帯びたに過ぎないのだ。
     股がむわっとしている気がする。
     凛自身の感覚ではそういったところなので、その微妙さもあって、はっきりと濡れているとは言いにくい。たぶん、という言葉で予防線を張らずにはいられない。
    「なるほど? そういう感じね」
     もっとも、医師は凛の様子でその細やかな部分を悟る。
    「んぁぁ……あっ、あぁぁ…………!」
     凛の目には微熱が浮かんだ。
     医者の指遣いが変化して、乳首を四方八方に倒し始めたのだ。指先でクリクリと弾き抜き、遊んで楽しむタッチによって、ありとあらゆる角度に向かって倒れていき、その直後には元の形状へぷるっと立ち戻る。
     下から上へ持ち上げると、途中までは爪の上に乳首が乗り、指の角度に合わせて上昇していく。それ以上は持ち上がることのない角度にまで到達すると、乳首を置き去りに指だけが上へと進み、乳首の方はぷるっと正面を向き直す。
     右から左へ弾く時、斜め方向へ弾く時、その都度その都度、指が乳首を置き去りにして、乳首は元の形状に戻っている。
     そんなタッチをしばらく続け、やがて満足してなのか、医者は両手を引いていき、そこで内科検診を終了する。
    
         *
    
     そして、次は写真撮影だった。
     カメラを持った医者の前で、凛は一糸纏わぬ姿のままに直立不動を保っている。こんな格好のままカメラを向けられ、これから裸を撮られることに、アイドルとしてまずいかのような危機感と、マゾヒズムをくすぐる快感が綯い交ぜになっていた。
     最初に述べたウイルスを理由に、表皮の撮影をしたいらしい。
     医学上必要な写真であり、資料としての活用とか異なる使い方は決してしないと、医者はしきりに強調しながら凛のことを説き伏せたのだ。
     押しの強さだけでなく、中年オヤジとの関係にも遠回しに触れながら、微妙な脅しも織り交ぜての言葉巧みな誘導には、高校生の凛は逆らいきれない。押し切られる形で無理にでも合意を引き出され、凛は撮影を受け入れていた。
    
     パシャ!
    
     大きな音でシャッター音声が鳴り響く。
     それが凛には刺激となり、アソコをひくりと疼かせていた。
    
     パシャ! パシャ!
    
     真正面から、乳房にレンズを近づけての撮影で、目の前のカメラには裸体のデータが増え続ける。こうして記録を取られていると、過去にも恥ずかしい撮影をされた記憶が蘇り、恥辱感は尚更に膨らんでいく。
    
     パシャ! パシャ!
    
     その音は立派な刺激だった。
     マゾヒズムを煽り、くすぐられた心から快楽信号が生み出され、乳首やクリトリスのあたりがムズムズと気持ちいい。
    
     パシャ! パシャ!
    
     乳房は正面からだけでなく、横からも撮っていた。
     医者は真横に回り、横からもシャッターを切り落とし、やはり一つのアングルから何十枚も、執拗に取り続ける。その末に逆サイドへ回り込み、同じく何十枚も撮った挙げ句に、後ろへ回ると尻を撮る。
    
     パシャ! パシャ!
    
     デジタルカメラのモニターには、おぞましいほどの枚数でお尻のアップが収まり続ける。その分だけ凛は尻で興奮していた。
     このままアナルまで覗かれて、視姦されてみたい。
    (……駄目だ。私、そんなことばっかり考えちゃってる)
     妙な期待を頭に浮かべた瞬間だ。
    「前屈して、自分の足首を掴むんだ」
     心を読んだかのように、期待通りの指示が飛んできて、凛はすぐさま言われるままのポーズを取ってしまう。足首を握り絞め、前屈姿勢で高らかとなった尻は、相手の目からはどう見えて、カメラにはどう映るか、凛はよくわかっている。
    (や、やばい……)
     愛液が滲み出そうだ。
     乳首が破裂しそうだ。
    
     パシャ! パシャ!
     パシャ! パシャ!
    
    「前の穴も後ろの穴も、なんともまあ毛むくじゃらだな。なんで剃らない? どうせ、見せる機会は多いんだろう? ひょっとして相手の趣味か?」
     この医者は中年オヤジの知り合いだ。
     枕営業など承知していることで、連鎖的に考えを及ばせて、凛が答えるまでもなく彼は勝手に真実に辿り着く。
    「ま、そういうことなら、仕方ないな」
     医者はそのまま撮影を続けていく。
    
     パシャ! パシャ!
     パシャ! パシャ!
    
     肛門にレンズが近づくのも、アソコに近づくのも気配でわかる。
     その接近に合わせて細胞がゾクゾクと騒ぎ立て、ワレメの表面を湿らせる。もっと辱めを受けたい期待感が湧いてしまう。
    「次は分娩台に座ってもらう」
    「は、はい」
     一瞬、嬉しいと思ってしまった。
    (ほんと……やばい…………)
     自分の変態ぶりに複雑になりながら、腹の底では喜んで分娩台に上がっていき、アームに膝を乗せて開脚する。ただでさえ全裸だというのに、ポーズまで恥ずかしくなる惨めな状況に、より一層のこと顔は赤く染まり変わっていた。
     慣れた相手の前で裸になるのと、初対面の相手に裸を見せるのは、やはり感覚が違っていた。
    
         *
    
     婦人科検診もするのだろうか。
     アームに両足を乗せ、股がM字となったあられもない格好で、凛は手で口元を覆い隠している。過去の数々の経験にも関わらず、初めて会う男を相手にこれなので、久しく湧いて来る羞恥心で、自分がどこまで赤面しているか、凛自身にもわかっていない。
     ただ、普通の顔色はしていないだろう。
     医者はアームに乗った膝にベルトをかけ、両足をそれぞれ固定する。何も鍵がかかっているわけではないが、凛が自分でベルトを外して脱出するには、背もたれから体を持ち上げ、どうにか手を伸ばしてみて、といった具合に必ず手間がかかるだろう。
     拘束され、身動きを奪われた感覚に陥るには十分だった。
     脱出不能などではなくとも、ベルトがある限り脚はアームの上から動かず、股を開ききったポーズを自分の意思では変更できない。この状態だけでも十分にマゾヒズムを刺激して、心が興奮の熱を高めていく。
    (やばい、きっと今度こそ濡れてる……)
     凛は目を瞑っていき、密かに恥じ入っていた。
     汗ばんだかのような蒸れた感覚が、ワレメを覆う陰毛の根元で強まっている。先ほどまではそれがもう少し薄らと、微妙な程度のものだったので、濡れていることへのはっきりとした自覚は持てなかった。
     だが確実に、染み出たものを毛が吸い取り、陰毛のいくらかが水分によって束ねられているはずだ。
    「さーて」
     医者はカメラの用意をしていた。
     三脚台にデジタルカメラをセットして、そのレンズが向いてきた瞬間に、凛は興奮でごくりと生唾を飲んでいた。
    (撮られる……)
     性器の診察を行う際、医者自身の背中や頭が壁になり、三脚台のカメラからは肝心なところが隠れてしまう。それを意識して、斜めから撮ろうと角度を調整した上、白衣のポケットにはもう一台のカメラまで忍ばせていた。
     準備を済ませた医者が椅子を置き、性器と向かい合う形で座り込む。
    「媚薬の影響確認も兼ねるからね」
     そう告げると、医者は指でアソコを左右に開く。
    (うぅ……な、中身が……)
     赤い肉ヒダを覗き込まれ、凛はより大きな羞恥に駆られた。
    「うん。だらーって、出てるねぇ?」
    「いやぁぁ…………」
     はっきりとした言葉で告げられて、凛は顔から火が出る思いに駆られて両手を手の平で覆い隠す。
    「ビラビラが愛液で光ってるねー。毛にもだいぶ絡みついているよ」
     医者が声に出して語っている通り、肉貝の表面は皮膚が水分を吸い込んでいた。しっとりと濡れたところに熱く疼いての熱気が立ち込め、そこだけが局所的に蒸し蒸しとしている。夏場なら不快とされる蒸しっぽさも、アソコから漂う分には興奮のオーラに感じられる。
     医者は小陰唇を指でなぞった。
     人によってはワレメの中からはみ出して、ニワトリのトサカに見えるそれは、こうして左右に開かなければ、外気に触れることはない。そんな秘められた部分に視線を注ぎ込み、クリトリスの状態もチェックする。
     肉芽は突起していた。
     膣口を見て、尿道口を見て、クリトリスの部分を見れば、陰核亀頭という呼び方があるように、皮の内側から剥け出たような突起物が数ミリほどの高さでそそり立つ。
    「ふーん? これはだいぶ、薬が効いてるわけだ」
     医者はそう納得する。
     凛におかしな性癖が芽生え、密かに自分の変態性を気にしているなど、そんなことは知らない彼である。凛がここまで感じたり、アソコを濡らしている原因は、全て媚薬が原因のように捉えていた。
     それ決して間違ってはいないが、凛は思うのだ。
    (媚薬なんかなくても、もしかしたら……)
     濡れていたかもしれない、と。
     医者はテープを用意して、ワレメの左右にそれぞれ貼りつける。中身の開いた状態へと固定して、次に取りかかるのは触診だった。
    「ぬぁぁぁぁ…………!」
     医療用のビニール手袋を嵌めた指で、膣口の中に指を進行させていく。
     すると、凛は大きく喘いでいた。
    「こりゃあ、また」
     触診のために内部を探り、指で軽く擦っているだけでも、性的な意図など何もないタッチで凛は感じてしまっている。指が入った途端に明らかに愛液が増え、好奇心のあまり試しにピストンしてみると、滑りの良さでスムーズに出入りする。
     医者は膣内の触診を早めに切り上げ、すぐに指を引き抜くものの、指先とのあいだに長い長い糸を引かせた上で、改めて顔を近づけまじまじと眺め回す。
    「もう少しチェックするからね」
     医者はそう言って、小陰唇を指先でなぞった。
     ビラの部分も愛液を帯びているが、濡れた指で触ったことで、新しく付着し直す。なぞれば塗りつける形となり、触れれば触れるだけ光沢は広がっていた。
     そして、次にクリトリスの上に指を置く。
    「――ひん!」
     凛の大きな喘ぎと、腰のビクっとした弾みように、医者は随分と目を丸めて驚いていた。
    「へぇ、ここまで効果がねぇ?」
     医者は媚薬の効果のほどを見ていた。
     どの程度の接触で、どの程度の反応を示すのか。感度に個人差があるなど承知の上で、とはいえ敏感ぶりの確認をしておきたい気持ちがある。
     好奇心が半分以上、あとは薬の効きを把握しておきたい気持ちから、医者はクリトリスをくすぐった。
    「んぅぅぅ……!」
     その下にある小陰唇も、指先でビラを捲ろうとしてみるように触ってみる。
     時々、膣の方に指先を入れ、それから上部への愛撫に戻っていた。まるで薄れた絵の具を補充するかのように、溢れる愛液を付着させ、それをしきりに塗り伸ばしている。
    「んっ、んぁ……! んぁぁ……!」
     だいぶ乱れきっていた。
     これならイカせることは簡単に違いないと、医者はクリトリスへの愛撫を活発にしていった。膣口から何度でも愛液を掬い取り、粘液をまぶした指で、滑りのよいぬるやかなタッチを施すと、凛はしきりに脚をビクつかせる。
    「んっ! んぁ!」
     感じ方は激しくなり、太ももが跳ね上がっていた。
     ベルトで固定していなければ、きっと脚がアームの上から外れていた。
    
    「あぁぁ……! あぁぁぁ! あっ、あぁぁぁぁ――――!」
    
     凛は絶頂していた。
     急に潮を噴き上げながら、数秒かけて背中を浮き上げ、背もたれから浮かせたままに痙攣させる。それが落下のように沈んだ後、医者の顔と白衣には、飛び散った愛液の滴がおびただしく吸い込まれていた。
     霧吹きを顔にかけられたかのように、顔と首回りが愛液にまみれたのだ。
     医者は微妙な顔をして、とりあえず顔を拭く。
     それから、テープで開いた中身にカメラを近づけ、何度かシャッターを切り落とす。満足いくまで画像をフォルダの中に増やしていき、それが済んだら三脚台の方のカメラを向く。こちらのカメラは動画撮影となっており、今の絶頂の瞬間が収まっているはずである。
    
         *
    
     次にレントゲン室へ案内された。
     絶頂の直後ということもあり、何分かの休憩をもらったが、クリトリスには未だ強い電流を流されたような余韻がある。
     そんな余韻を気にしながら、凛は案内に従い進んでいった。
    「直腸に指を入れたんで、浅い位置にあるのはわかっているけど、まあ一応ってやつだな。なるべく正確に位置を把握しておいた方がやりやすい」
     撮影を行うのは、そういったわけらしい。
     そのレントゲンは診察台に横たわり、仰向けやうつ伏せの姿勢となって、天井から降りて来る機材で撮影する形式だった。凛は医者の指示に従い仰向けに、下腹部目掛けて降りて来る機材から撮影を受け、念のためにもう一枚、うつ伏せでも撮影する。
     撮影後には実際にレントゲン写真を見せてもらい、その中に映った瓶の形を見せてもらうと、尻の内側にある異物感を思い出す。
    (そうだよ。これ、早く取ってくれないと……)
     写真撮影も、レントゲンも済ませたのだ。
     さすがに、そろそろ摘出に取りかかって欲しいような、それともまだ辱めを受けていたいような、どちらともつかない気持ちで心が左右にふらふら揺れる。
     乳首は敏感に腫れ上がり、クリトリスもワレメの奥で突起状態を保っている。
     それから、レントゲン室を出てからのこと。
    
    「これが撮影結果でね。ま、瓶の位置はよくわかったんで、この後はいよいよ摘出作業といくんだけど……」
    
     凛と医者は向かい合わせで座っていた。
     デスクを隣に、張り出されたレントゲン写真を目にやると、白いシルエットの形で瓶の形状が写っている。こうして写真を見ていると、お尻の内側にある異物感を思い出し、早く摘出して欲しい気持ちの方が大きくなった。
     だが、医者はニヤりと笑う。
    「……なんですか?」
     あまりにも得意げな表情で、ニヤニヤと凛のことばかりを見てくるので、怪訝に思って首を傾げる。
    「他にも、今まで撮った写真をいくつかまとめたんで、見ていこうか」
    「えっ」
    「ほら、これだ」
     医者はノートパソコンを開く。
     開いたフォルダの中には、凛に見せるために選んだ写真が選抜され、他の写真とは取り分ける形で保存されているようだが、そのうちの一枚が開かれた時、凛は一瞬画面から目を背けた。
     肛門が大きく映し出されたのだ。
     それは前屈姿勢となり、自分で自分の足首を掴んだ際の、肛門接写の写真だが、自分でも確かめることのない、こんな恥ずかしい部位を見せつけられると顔が赤らむ。
     冷静に考えると、こうして裸で座っている方が恥ずかしいはずでも、しかし画面の中身の方が見ていられない。
     本当に毛むくじゃらだ。
     あの人に言われ、剃らないようにしているから当然だが、肛門の皺の放射に合わせてびっしりと、おびただしい量が外側に向かって倒れている。皺も放射状なら、尻毛も放射状だった。
     異物の挿入経験があり、だから緩いのかもしれないが、医者が語る言葉は少し違う。
    「中に入った瓶に押されて、外側に押し広げられている。ってところかな? そのせいで穴が開いて、洞窟の入り口みたいに少し開いているわけだけど、俺はこれとよく似た肛門を知っていてね」
     医者はパソコンのマウス操作を行った。
     今の画像を閉じた後、別のファイルを表示する。
    「こ、これって……!」
     凛はぎょっとしていた。
     以前、肛門PCR検査を受けた際の、肛門の大きな写真がそこに映し出されていたのだ。
    「うーん。よく似てるねぇ?」
    「き、気のせいじゃ……」
    「ああ、他にもあるよ? っと、これはついさっきの写真ね?」
     医者はさらにマウス操作を行って、クリック表示によって開いた乳房のアップを画面に呼び出す。正面からの撮影と、真横からの撮影で、二種類を見せられたが、こうして見ると本当に乳首が立っている。
     特に横から見た場合、大きめの乳輪が薄らと膨らんで、どうにか山になろうとしているように、ぷっくりとしているのだ。その上にある乳首は、平常時に比べて幅も高さも数ミリほど変わっており、触れれば普段以上の硬さである。
    「で、これは医学資料として持っていた写真なんだけど、どう思う?」
     医者が次に表示した画像は全裸の直立不動だった。
     先ほどのものではない……。
    
     過去に撮られた全裸写真だ。
    
     目線こそ入っているが、目の前にいる本人と、写真の顔立ちを比べれば、何をどうしたところで渋谷凛にしか見えはしない。
    「どうかな?」
     医者は得意げな顔をしていた。
    「ど、どうって…………」
     凛は焦っていた。
     動画の流出は知っていた。
     モザイクがかかっていたり、目線が入っているおかげで、ネット界隈では『渋谷凛激似』と評されており、それを偶然にも目にしたことがある。本人なわけがない、それにしても似すぎていると評判であり、ファンはおそらく、頭の中では本物の渋谷凛に置き換えて楽しんでいる。
     それはいい。
     決して、何一つ良くはないのだが、あくまでも激似のAV女優だと思ってる。未成年のこんな動画が出回るわけがないと、先入観でもあるおかげか、それら動画を見る人間は、別人であると思い込んだ状態で、脳内で置き換えるのだ。
     このことを事務所に相談して、無理に削除を迫るのは怖い。
     それをすれば、それこそ「これは私の動画です」とアピールしてしまうかのようで、そういった働きかけがやりにくい。
     そもそもの話、この手の相談とはやりにくいものである。
     加えて、よしんば削除させたところで、ネットの海に数いるユーザーは、きっと動画を保存している。元々の動画が消えても、だったら自分がアップしてやろうと、別の誰かが動画投稿を行えば、立派ないたちごっこというわけだ。
     黙認せざるを得ない。
     そして、それによって仕事や私生活に影響が及んだことはなく、ただネット上であるファン同士のやり取りでは、たまに話題に上がっている。
     それをわざわざ見たくないので、エゴサーチはしていないが、SNSをやっていれば、話題になっている事柄は必ず目につく。その中に自分に関する話題があれば、どうしても気になって、その時だけは辿ってみるが、するとあの動画を話題にしたやり取りが目に触れる。
     気にしなければ、それまでの話だった。
     気にしないように、気にしないようにと意識してきた。忘れようと努めて過ごし、仕事や学校生活の忙しさで頭の外に追い出し続けていた。
     だが、とうとう今になって、こんな形で流出動画の影響が現れたのだ。
    (ちょっと待って? 私って、今どうなってる? もしかして、脅迫されかけてる?)
     凛は戦慄していた。
    「他にもあるんだけど、見る? みーんな医学資料なんだけどさ、ネットのエロ動画として、シーンの一部を切り抜いたものが流出している。ネットの連中が本人激似って思い込むのも無理はないよね。だって、こんなの普通は出回らないもの」
     勝ち誇った笑みを浮かべた医師に対して、凛は完全に引き攣っていた。
     追い詰められ、逆に笑うしかないように口角が吊り上がり、しかし瞳には恐怖と焦燥ばかりが浮かんでいる。
    「これさ。どうしよっかなー」
    「……どうする気ですか」
     恐る恐る凛は尋ねる。
     凛には今、ちょうど大きな仕事が控えている。あの中年オヤジと寝ることで、より輝くための舞台を手に入れた。それをこんなところで台無しにされたくない。
    「そうだね。ま、俺の言うことを聞いてくれたら、わざわざどうこうしないけど」
     もう、そういった要求には慣れてしまった。
     伊達に枕営業をしてはいない。
    「……一回限りでお願いします」
     凛がそう口にすると、医者はにやっと満足そうに微笑んでいた。
    
    

    
    
     後編
    
     医者が要求してきたのは土下座であった。
    「せっかく裸なんだし、全裸土下座っていうのもいいんじゃない?」
     そんな思いつきに、凛の脳裏には過去の土下座が頭を駆け巡る。初めて土下座をした時は屈辱に震えたが、今となってはプライドの切り売りにも慣れてしまった。
     いや、慣れたと思っていた。
     いざ両膝を突き、ニヤニヤと微笑む医者の前で膝立ちになった時、どうしようもないほどの大きな恥辱感が湧き起こる。
     本当まだ、完全には無心な人形になりきれない。
    (今から……頭を床に……そんなの、絶対にファンには見せられない……)
     表には出せない、裏の活動だ。
     枕営業と同じように、影の仕事をこなすと思えばいい。
     凛は膝立ちの姿勢から、さらに腰を下ろしていき、背筋を伸ばした正座となる。そこから上半身を前へ倒して、だんだんと土下座の形となっていく。
     床に対して直角九〇度だった身体は、しだいに下へ向かっていく。角度が変わるにつれて前髪がしだいに垂れ下がり、医者から見ればその影に顔が隠れる。四五度の角度を通過した時、その両手は床につき、そして頭も床に接近していった。
     綺麗な土下座が出来上がる。
     溢れんばかりの屈辱を堪えていながら、下腹部は興奮もしている自分自身の状態に、つくづく自分の変態性を痛感する。医者がどんなに大きな優越感に浸り、土下座した裸の凛を見下ろしているか。それを思うとアソコが疼き、恥辱に心は燃え上がる。
    
    「どうか……お願いします……」
    
     凛は言葉を口にする。
     自分の心を刃物で刻み、傷つけているかのように痛い。
     垂れ下がった前髪の影で、まさに目の前にある床が薄暗い。凛は床の素材や模様に視線を注ぎ、鼻先を触れさせんばかりにしながら言葉を紡ぐ。
    
    「……どうか、あの動画の正体が私であることは、決して誰にも言わないで下さい。アイドルとしての生命に関わります。この通りですから、どうか秘密にして下さい」
    
     声が震えていた。
     屈辱と歓喜が渦を巻き、アソコではヨダレを垂らしながらも、床に置いていた両手にはプルプルと力が籠もる。
     満足そうに見下ろしてくる視線を全身の肌で感じた。
     しばらく、凛はこのままだった。
     優越感に浸って土下座を眺め、楽しんでいる医者のため、このプライドも尊厳も投げ捨てた姿を維持して耐え忍ぶ。
     そのうち、何か金具の音が聞こえてきた。
     枕営業で何度も体を重ね合い、経験してきた凛にはわかる。それはベルトを外し、チャックを下げる音だ。
    「さあ、顔を上げて」
     身体を起こし、正座の姿勢に戻っていく。
     すると、目の前には肉棒がそそり立っていた。突き出された剛直の切っ先は、赤黒くはち切れんばかりとなって、竿には血管を浮かせている。
     屈辱感はそうそう晴れない。
     抉り抜かれた心には、そのまま穴が出来上がり、それが埋まるまでには時間がかかる。土下座の上で性行為など、奴隷の扱いを受けるかのようで身も心も震えて来る。
    「今からですか? まだ摘出が……」
    「奉仕が済んだら取ってやるとも」
    「……わかりました」
     凛は頷き、肉棒へ手を伸ばす。
     根元を握り、先端を口に含めた。
    「んぅ……んむぅ…………」
     こんなことは、もう何度もやって来ている。
    (大丈夫、今更なにも問題ない)
     凛は剛直を頬張って、頭を前後に動かし始めた。
    「んずぅ……んぅ……んむぅ……んぅぅ…………」
     舌を蠢かせ、たまに吐き出し竿の周りを舐め上げる。鈴口をチロチロとやってから、また咥え直して前後に動く。
    「んぅ……んっ、んんむぅ…………」
     凛は静かに奉仕していた。
     これが入って来たら、どれくらい気持ちいいだろうかと、心の片隅では考えてしまう。自分からセックスについて考えていることに、凛は我ながら顔を顰める。
    (たぶん、最後まですることに……なるよね……)
     口に物を入れているせいか、唾液がみるみるうちに分泌される。頭を前後させているうちに、それは自然とまぶされていき、唇に見え隠れする竿は光沢を帯びていた。
     収めきれる限界まで飲み込むと、喉の奥に亀頭がぶつかる。
    「んっ、んぅ……んぅぅ…………んずっ、じゅるぅぅ…………」
     しだいに活発に動いていた。
     医者の腰に両手を当て、やがては前髪が前後に揺れるほどのペースで励んでいく。
     そして、射精の瞬間は訪れた。
    
     ビュルゥゥゥ――ドクッ、ドクゥゥ――――――。
    
     口内に広がる青臭い味も、決して初めてのものではない。
     凛は唇の筋肉を駆使して締め上げて、こぼさないように頭を引く。後退するにつれ、凛の口から出て来る竿は、医者自身の白濁が生み出すぬかるみさえも纏っていた。
    「じゅぅ……ちゅぅぅぅ…………」
     吸い上げる力を使い、一滴も外に出すことなく、凛は口内に溜まった白濁をキープする。
     そして、そのこぼさずして頭を引ききる動作の終幕を飾らんばかりに、唾液と白濁の入り交じった白い糸が引いていた。
     唇と亀頭の先端で、そのあいだに伸びるアーチの中心には、滴の塊が出来上がっていた。糸を形成するための、粘性の高い水分は、しかし下へ下へと重力に引かれていき、質量が中心に移動している。
     その結果として集まった質量から、滴の玉が作り上げられ、その重力がますます糸を下へと引っ張っていた。
     滴が垂れて、糸が千切れる。
     たった一滴だけを膝に落として、凛は精液を口内に収めきる。
    「見せてごらん?」
     その言葉に応じて、凛は口に溜まった精液を見せる。顎を上向きに、大きく開いた口の中には、下顎の器を白い濁りで満たしていた。
    「飲んでくれ」
     凛は唇を閉じ、嚥下する。
     飲み干したことをアピールするため、改めて口を開いて見せた時、医者は満足そうに頷きながら、竿に残った汚れを指し示す。凛はそれをペロペロと舐め取って、あと数分はお掃除という名の奉仕を続けた。
    
         *
    
     摘出は分娩台で行われた。
     クスコというクチバシのような形の器具を使い、肛門を可能な限り開帳して、そこに器具を差し込み瓶を掴む。そして引っ張り出すというわけだが、四つん這いでは姿勢のために奥に落ち、取れにくくなりかねない。
     そこで重力を下にするため、婦人科検診を受ける際と変わらない、両足を分娩台のアームに乗せたM字開脚というわけだった。
    (お尻、きっついなぁ……)
     自身の股の向こうでは、クスコで開いた肛門の中身を医者が覗き込んでいる。随分と大きく開いているため、無理に広げられる苦しさで顔を顰めずにはいられない。
     器具が差し込まれ、医者はそれによって瓶を掴む。
     フックの付いた棒状の器具を使っているらしい。
     広がった穴へと挿入して、瓶の口に引っかけると、医者はそれをするすると引っ張り出す。指で掴めるまでに出て来ると、医者は手も使って引き出して、無事に摘出は終了した。
     これでひとまずは安心だった。
     だが、あの中年オヤジにはさすがに一言言っておきたい。プレイ中の異物挿入が原因でこうなったのだから、今後は勝手に物を入れるのはやめて欲しいと、なるべく強く言っておく必要があるだろう。
     そして、あとはこの医者だ。
     摘出が終わった以上、話は次に移っていくはずだった。
    
         *
    
     数日後。
     渋谷凛はブレザーの内側に黒のカーディガンを着込み、その内側には紫色のセクシーな下着を身につけて、先日の病院へ向かっていく。
     診療時間の終わる直前だったが、院内では様々な根回しが効く人物らしく、到着時間に合わせて受付近くのベンチ型ソファで待ち構えていた。
    「やあ」
     凛を見るなり、楽しみそうな顔をしていた。
     それもそうだ。
     これから、するのだから。
    「どうも」
     凛は軽く会釈する。
    「君のバックに付いてる人と色々と話す機会があってね。ま、話し合いの末、秘密を守る約束は正式に交わしてある」
    「そうですか。なら、良かったです」
    「ああ、もちろん忘れてないね? 色々と」
    「わかってます。そのつもりで来ましたから」
    「こっちだ」
     医者の案内に着いていき、凛は個室へ連れ込まれる流れとなった。
     本当は患者の入院に使うベッドだろうが、今は入院患者が少ないらしく、この個室は空き部屋となっている。隣の部屋にも人はおらず、おまけに防音性も高いため、声は気にしなくていいという。
    「学校帰りか?」
     医者は羽織っていた白衣を脱ぎ、シャツのボタンを外し始める。
    「そうですよ。友達と過ごした後、そのままここまで」
    「へえ、寄り道か」
    「そちらこそ、お仕事はいいんですか」
    「構わない。きちんと調整しているさ」
     ちょっとした会話を交わしつつ、凛もブレザーを脱ぎ始め、カーディガンのボタンを一つずつ外していく。暖房が効いているおかげで、寒さの心配はしなくていい。安心してワイシャツまで脱いだところで、紫色のブラジャーを曝け出す。
    「ほう?」
     医者の目が下着に向いた。
     凛が付けているのは透けブラだ。
     華やかな飾り付けが多いながらも、カップの部分には透ける布が使われている。薄布に通常の布を重ねる形で、下弦と上弦は隠れていても、その中央にある大きめの乳輪は、透けたパープルの奥からくっきりと見えている。
     谷間のカーブに沿って豪奢なレースの飾り付けが行われ、肩紐にもリボンやワッペンの数々が施されたこのブラジャーは、完全に見栄えを重視しており、運動や就寝などにはまるで向いていない。
     こういった時間のための、色気の演出に使う専用の下着であった。
    「買ってもらった下着の一部ですよ。こういうのがいいと思って」
    「確かに悪くないね」
     トランクス一枚にまでなった医者は、まだ脱いでいる最中の凛に迫り、ブラジャー越しに乳首をつつく。
    「んぅ……!」
     その瞬間、小さく声が上がっていた。
    「媚薬は?」
    「飲んできました」
     この前の薬である。
     肛門であんな目にあったばかりのため、言うまでもなく経口摂取なのだが、そろそろ効果が出て来る時間である。全身が火照り初めて、暖房など関係無しにところどころが温かい。
     乳首が突起して大きくなるまで、一分とかかることはないだろう。
     スカートのホックを外し、脱ぎ捨てる。
    「これはいい」
     医者は満足そうな笑みを浮かべた。
     ショーツは極小のスキャンティ――極めて布の少ないタイプであり、レースとリボンの飾り付けを目立たせたパープルは、ブーメラン型のカーブを成していた。下腹部を覆いきることはまずあり得ず、未処理の陰毛は生え散らかり、よれ曲がった毛先がショーツの上にかかっている。
    「未処理は相変わらずか。ま、いいけどね」
     医者は背中に手を回す。
     それに促されるようにしてベッドへ上がると、医者はすぐさま愛撫を始めた。頬に手をあて、首をくすぐり、鎖骨を指でなぞっていく。腰のくびれを撫で回し、手始めのタッチでは恥部を避けるも、数分も体つきをまさぐるうちに、やがてその手はブラジャー越しの乳首に来た。
    「んぅ……! んっ、んぅっ、んぅぅぅ……!」
     媚薬が効いている。
     皮膚が弾け飛ぶかと思うほど、激しい電流が迸り、凛は驚きに目を丸める。一瞬の驚愕が過ぎ去ると、あとは快楽に翻弄されて肩をしきりにモゾモゾさせ、悩ましげに髪を左右に振り乱す。
     乳首はものの数秒で突起していた。
     乳輪が数ミリ分の厚みを帯び、若干の山なりに膨らむと、乳首もしだいに硬化して敏感さを増していく。薄い布を内側から突き上げて、ブラジャーから完全に形を浮かせていた。
    「んぁぁ……あぁっ、あぁぁぁぁ…………!」
     乳首をつままれ、生地越しに刺激されているうちに、体中が火照って汗ばんだ。
     ショーツの内側が蒸れてきて、もう愛液の分泌が始まろうとしていると、凛には感覚でわかっていた。性感帯のスイッチが入り、まだ触れられもしていないクリトリスも、ワレメを開けば突起しているはずだ。
     医者の右手が下へと移る。
    「んぅぅぅぅ! んっ、んぁっ! あぁぁ!」
     腰が跳ね上がった。
     ショーツ越しに行うワレメへのタッチ一つで、こんなにも気持ちいい。ここまで感度を上げる媚薬のために、挿入まで進んだ時、自分はいったいどこまで乱れることになるのか、今のうちから怖くなる。
    「あぁ! あっ! あぁっ、やっ、いやぁ!」
     ショーツの中に指が来た。
     ただでさえ少ない布に対して、手の平を入れるまでもなく、ただ指が入っただけでワレメや膣に先端が届いている。医者はワレメをぐにぐにと指先で揉みしだき、たったそれだけで愛液が付着してくるのを感じると、その滑りを活かして活発な愛撫を行う。
     最初はヌルヌルと塗り広げ、ワレメの筋や周囲の皮膚を撫で回すだけだった
     だが、それによって愛液の量は増え、より滑りが良くなると、そのまま指の挿入まで行って、軽いジョブのようにピストンを開始する。
    「んあっ、あっ、あぁ……あぁぁ…………!」
     凛はしきりに太ももを反応させた。
     電流によってビクビクとなった挙動に合わせ、脚を左右に広げて閉じ合わせる。膝が立ち、体が翻弄され、やたらに開閉を繰り返した。
     膣から指が抜けるも、愛撫そのものは終わらない。
     今度は指先でクリトリスの位置を探って、密かに飛び出た突起を撫で回す。ワレメを開かなければ見えないが、しかし確かに大きく育ち、敏感に成り果てたクリトリスは、凛に巨大な快楽の爆弾をぶつけてきた。
    
    「おあああああ! あっ! や、やばいです! 声が……声がぁぁ……!」
    
     我慢は不可能だった。
     頭に雷が落ちたような衝撃と共に、アソコから全身にかけて細かな電流が拡散して、手足の指先にすら甘い痺れが走っていた。
    「大丈夫だって。何ならドアまで防音性が高いから、ね」
     医者は耳元へそう囁き、クリトリスへの責めを続行する。
    「あっ! あっ! あっ! あっ! あぁぁっ、あぁぁっ!」
     もはや素の挿入より、媚薬あってのクリトリス責めの方が気持ちいい。
     脳の内側から強い衝撃が生まれ続けて、意識さえ朦朧としてくる快感の暴力に、このままではいつ失神するかもわからない恐怖さえも芽生えてくる。
    「んあぁぁっ! よ、良すぎて! あのっ、ちょっと加減を! あぁぁあああ!」
    「ははっ、どうしようかなぁ?」
    「あっ、あぁぁ! あぁあああ!」
    「また全裸土下座してくれたらいいよ?」
    「し、します! します!」
    「オチンポのおねだりをするような台詞を言って欲しいね」
    「言います! 言いますから!」
    「はい、なら少し休憩を与えよう」
     そこで指は止まったものの、停止直前の最後の一瞬で、凛はビクっと全身を弾ませる。軽い数秒ほどの痙攣と共に、じわっと愛液の量を溢れさせ、お漏らしに近いまでの濡らし具合でショーツを汚し、シーツにも染みを広げた。
    「はぁ……はぁっ、も、もう少し……休ませて…………」
     あまりの気持ち良さに、そう懇願せずにはいられなかった。
    
         *
    
     そして、凛は再び土下座する。
     ブラジャーとショーツを脱ぎ去り、それらを隣に置きながら、ベッドシーツに額を押し込んでいるのだった。
    「……どうかお願いします。私のアソコに先生のオチンポを挿入して、いっぱい気持ち良くして下さい。そして、ピルを使った私の中に好きなだけ射精して、子宮の中身を満たして下さい」
     支配を受けた奴隷に成り下がり、マゾヒズムを全快にして惨めでみっともない台詞を口にする。
     それに気をよくした医師は、トランクスを脱ぎ捨てていた。
    「ああ、そっか。そういえば聞いたな。ピル、飲んでるんだって?」
    「最近はそうです。だから、今日も問題ないです」
    「ならゴムは使わないからな」
    「どうぞ」
     凛はこくりと頷き、仰向けとなって両足を左右に開く。綺麗なM字を形成すると、医師は枕元に下着を移し、肉棒の切っ先をワレメに当てた。
    (……来る)
     凛は挿入に備えて心で身構え、目を瞑る。
     すぐさま、肉棒は膣穴を押し広げ、濡れきった内部へと進行を開始する。愛液にまみれた入り口は、侵入を拒むどころか逆に歓迎して、つるっと滑り込む勢いであっさりと亀頭は埋まる。指で広げて覗いた際の、見た目には小さく見える膣口は、柔軟性たっぷりに大きく広がり、医者の太さを飲み込んでいた。
    「ぬぁぁっ、あぁぁっ、あぁぁ…………! ああっ、やっ、やぁ…………!」
     根元までぴったりと収まって、結合しただけで気持ちいい。
     医者はすぐに動くことなく、ニヤニヤと凛の肢体を見下ろして、おもむろに乳房を揉みしだく。乳輪をなぞられると、それだけでピクっと周りの筋肉が反応して、肩や二の腕のあたりが弾けたように動いてしまう。
     乳輪に押し込まれた指は、ミリ単位の膨らみに対して凹みを作り、その部分だけが局所的なアーチとなる。医師はそのまま指先で乳輪を揉み、たったそれだけの刺激にさえ、凛は激しい息遣いで目をとろんとさせていた。
    (気持ちいい……ヤバイ、本当に気持ちいい……今はもう、それしか考えられない……他の何もどうでもいい…………)
     全ての事柄が頭の中から薄れていく。
     代わりにあるのは、胸を責めてもらえる指先と、そして膣内に収まった肉棒だけだ。まだピストンをしてこない肉棒だが、五感の触覚がその存在を感じ取っているだけで、そこから快楽信号を生み出して、周囲に拡散させている。
     じわじわとヨダレを垂らし続けるように、膣内で分泌される愛液は、この収まった肉棒にぬかるみをまとわせている。膣壁と肉棒のあいだで愛液の層が生まれ、その層が厚みを得ようとする勢いだった。
     医者はおもむろに動き始める。
    「ひっ! ひあっ、ああぁあっ!」
     凛は絶叫した。
    「これは凄いな。どれだけ感じる気だ?」
     あまりの感じように、医者はかえって狼狽えながら、汗ばんだ顔で腰を振る。滑りよく出入りする肉棒をピストンさせ、快楽を貪り始めた。
    「あああああああ! あぁぁっ、あぁぁぁぁぁ…………!」
     凛の頭は簡単に真っ白になっていた。
     組織が弾け飛ばんばかりの激しい電流は、雷とすら言える勢いで両足を貫いた。太ももは硬く強張り、ふくらはぎにまで力は入り、足首が大きく反り返る。シーツを鷲掴みにした両手には力が籠もり、背中は浮き沈みを繰り返した。
    
     ぎし! ぎし! ぎし! ぎし! ぎし! ぎし! ぎし!
    
     絶叫めいた喘ぎ声の中から、かすかに聞こえるパイプ型ベッドの軋んだ音は、ピストンのリズムとまったく同じに聞こえている。
     だが、物音はそれだけではない。
     凛の背中はしきりに浮き上がり、アーチとなった直後に脱力して、落下の勢いでベッドに身体は叩きつけられる。その背中を使ってベッドシーツを叩き続ける音でさえ、ピストンのリズムとどことなく一致している。
     貫くことで出来上がるアーチは、リズムに乗ってベッドを叩きつけるようにして、執拗に浮き沈みを繰り返す。
    「あぁぁああ! ああっ! あああっ! あぁぁぁ!」
     凛はもう声の心配などしていない。
     この声が外に聞こえている可能性など、快感の嵐に理性を攫われ、もう考慮している余裕はどこにも残されていないのだ。
    「おあああ! あぁぁ――! あぁぁぁあぁ!」
     凛は絶頂していた。
     その潮吹きはピストンの動きに合わせ、ちょうど医者の腰が凛の股へと密着したタイミングで行われ、だから潮であって潮ではない。医師の腹部に直接噴射した形となり、肉棒の根元にはおびただしい愛液がまとわりつく。
    「あぁあああ! ああぁぁあ……!」
     医者は構わず腰を振る。
     凛はそれに髪を激しく振り乱し、汗ばんだ肌に何本も付着していく。頬や額にへばりついた髪は、もうどんなに顔を振っても肌を離れない。
     そして、医者は射精した。
    「いくぞ……!」
     ピルをいいことに遠慮無く、凛の膣内へと注ぎ込む。
    「んんんんんぅぅぅぅぅぅぅ――――!」
     熱いものが膣内に広がって、その刺激によってまたイって、凛は性交だけで体力の底を突くほど激しく全身を震わせた。
     余韻に浸った顔はみっともなく、ヨダレまで垂れている。
     医者はそんな凛の朦朧とした様子を見て、肉棒を引き抜いた直後にスマートフォンを取り出すと、記念に一枚撮影する。
     それから再びベッドに上がり、医者は二回戦目に臨んでいった。
    
         *
    
     医者による流出はしていない。
     しかし、話題になった動画の数々のキャプチャー画像を本物の渋谷凛と比較して、細かな特徴や体格の一致を指摘する声が出たことをきっかけに、もしかしたら本物では? といった疑惑は流れ始める。
     もちろん、未成年のアイドルがいくらなんでも、こんな動画の通りの体験をした上に、そこの流出まで重なるなどありえないと、信じない人間も一定数いるわけだ。
     だが、信じる者は信じるようになってきていた。
     たとえ信じないにしても、一致度の高さはあまりにも奇跡的である一点だけは、誰しもが認めるところである。
     いずれにしろ、流出動画は渋谷凛の動画として使われた。
     信じようと信じまいと、どうであれ動画は魅力的なものであり、視聴する者の精液を搾り取るには十分なものだった。 
    
    


     
     
     


  • プラチナ 屈辱の健康診断

    
    
    
    ~前編~
    
    
     ロドスより通達。
     某任務の地域にて、新種のウイルスが流行していたと判明。感染力は非常に高いが、幸い治療法は確立している。
     当該地域に出入りを行った者は、指定の隔離施設にて健康診断を受けるものとする。
     通達は以上――。
    
         ***
    
     連絡を受け取って、指定の施設とやらを訪れるが、健康診断実施にまつわる詳細を見てため息をつく。
    「私、女の子なんだけど」
     感染力の高い新種という割りには、たかだか錠剤を飲んで安静に過ごすだけの治療法でいいらしい。気になることといったら、感染拡大を防ぐためにも完治まで外出禁止になる点くらいだ。
     こんなに早く薬が出来ている理由は気になるが、今はいい。
     問題なのは男性だらけの場所で診断を受けるということだ。
     当該地域に向かった女性が一人だけ、他は全員男性だったという経緯に、検査を担当可能な者の予定が一日しか空かないといった事情が重なったことが原因だ。
     日程が被るくらい、まあいいだろう。
     しかし、担当者達の滞在可能な時間さえも限られており、実施時間帯すらずらせない。果ては男女同室でまとめて一括で行いたいとの旨まであり、さすがに文句の一つも言いたくなってくる。
    「どいつもこいつも……」
     プラチナは深いため息をつく。
     何十人もの男が集まり、行き来している屋内では、一人だけ混ざった少女に対する注目は密かに集まっていた。みんながみんな、あからさまなわけではないが、チラチラと気にかけてくる視線はいくらでもある。
     服装については事前に着替えの指示があり、プラチナの場合は薄手のシャツを着ておくように言われている。内側の下着は外しておき、すぐに胸を診察できる状態にしてあった。
    (だから、あんまりこっち見ないで欲しいんだけど)
     柔らかなシャツに乳首が浮き出てきそうで、腕でさりげなく隠していなければ落ち着かない。
     しかも、スカートで来るようにとの指示すらあった。
    (それってさ。たぶん、アソコも……)
     考えたくはないが、わざわざ指示を出してきた以上、その可能性は十分にある。
     さらにあった指示として、髪が長い場合はゴムで束ねておくようにも言われている。プラチナはそのために、今日は特別にポニーテールだった。
     ここに集まった面々は、番号札の配布によっていくつかのグループに分けられる。グループごとに呼び出しを行い、まとまって検査室へ入っていく実施方式となるらしい。
     ロビーで待機していたプラチナは、番号札の一番から二十番をまとめて呼び出すアナウンスに応じて立ち上がり、検査室への案内について歩いた。
     そして、検査室に着くなりだ。
     機材や測定器を扱うための職員達が、こぞってプラチナに視線を集め、女の子の存在に明らかにそわそわしていた。女性を診るとは聞いていなかったのか、どうなのかは知らないが、妙に注目されても困る。
    「アンタ達、あんまりこっち見ないでくれる?」
    「は、すみません」
     文句をつけると、たまたま近くにいた職員の一人は、適当に会釈をして謝ってくる。
     プラチナはため息をついた。
    (さっさと帰りたいね)
     見れば機材の扱いに関して質問を重ねていたり、年配から実施時の注意を受けている若手の姿が見受けられ、どうも経験の浅い者が多そうな気がするのだ。
    「さて、プラチナさん」
     一人の中年がプラチナの元に歩んで来た。
    「アンタは?」
    「私がこの健康診断の責任者です。事情は聞いているとは思いますが、我々は様々なポイントを常に忙しく行き交っている身の上でして、この診断も出発時間に間に合うように済ませなくてはなりません」
    「そんなに急いでいるんなら、これも無駄話だね」
    「確かに、では早いところ診断を済ませてしまいましょう」
    「そうだね。よろしく」
    「そこでなんですが、見ての通り男性ばかりです。ここはお早めに検査を受けて頂き、なるべく早く施設を後にしたいのではと考えますが、どうでしょう」
     診察の順番を一番にして、女はさっさと帰らせようというわけか。
     最初から男女別にしておくなり、プラチナだけが別室で受けられる用意があれば、それが一番ありがたかったのだが、見渡す限りの職員の大半は、経験が浅そうなわけである。ならば人材も足りていないのかもしれない。
    「ちょうど、さっさと帰りたかったところだよ」
    「承知しました。では早速、内科検診の方から受けて頂きたく思います」
     中年はその方向を手で示す。
     プラチナが目を向けると、一人の青年が首に聴診器をぶら下げながら座っていた。
    「よろしく」
     すぐさま青年の前に腰掛けた。
    「はい。ええ、プラチナさん? ですね。よろしくお願いします」
     青年はすぐに聴診器を握り絞め、最初はシャツの上から音を聞く。
     しかし、みるみるうちに難しい顔を浮かべて、プラチナにこう告げた。
    
    「……で、では胸を出して頂けますか?」
    「はあ? 恥ずかしいんだけど」
    
     男だらけの環境だ。
     露出を求められるなり、口を突いて出るのは反抗的な言葉であった。
    
         ***
    
     精度が悪いか何かで、服の上からは聞こえないとでも言うのだろう。
    「あの、どの道……皮膚も見ますし……」
     などと付け加えてくる。
     そして、診察上の指示に従わなければ、次にどんなことを言ってくるか。
    (わかってるよ。感染してたらまずいっていうんでしょ?)
     つい反射的に吐き出してしまった台詞に、青年は困り切った顔をして、目でベテランに助けを求めていた。
     新種のウイルスとやらに感染して、症状が出た場合の話は聞いている。
    (私だって、それは真っ平)
     治療薬があるというなら、感染の有無は是非とも確かめ、ここで安心しておきたい。
    「わかったわかった。少し我慢すればいいってわけだ」
     本当は冗談じゃない。是非とも突っぱねたい話ではある。
     だが、たかが錠剤を飲んで安静にするだけという割りに、発症した場合の死亡率は高いというのが恐ろしい。
    (自分だけは生き残り、薬を持たない人間は必ず死ぬ。それって、とっても裏を感じてならないんだけど)
     だから引っかかりはする。
     ウイルス流行の裏には、プラチナの知らない何が一体隠れているのか。
     だが、今ここで気にするべきは、自分が感染しているかどうかだ。
    (命を握られた気分っていうんだか)
     プラチナはシャツを掴み、たくし上げる。
     担当職員の面々どころか、他のロドスのメンバーまでいる中で、ただ一人の少女が乳房を出すのだ。こんな状況を歓迎するのは、よほどの露出狂くらいでである。
     そして、言うまでもなくプラチナにそういった趣味はない。
    (やだやだ)
     シャツを持ち上げ、腹部がほとんど露出したあたりで、頬が急速に加熱する感覚を覚えて手が止まる。まるで反発力が働くように、乳房を出す直前になって手が上がらなくなり、どうにか思い切って振り切らなければ、抵抗感で最後まで胸を出せそうにない。
     周囲からの視線も感じた。
    (プラチナがおっぱい出してるんだ)
    (あっちには見えてるってことだよな)
    (どんな胸なんだろう)
    (やっべぇ、興味沸く!)
     もしも周りの心が読めたら、それら男の声という声が聞こえたことだろう。
    (……注目しないで欲しいんだけど?)
     読めこそせずとも、自分に集まる視線の数は、肌中にひしひしと感じられた。
     こうなると、ますます胸を出しにくい。
     最後まで出し切れば、周りから向けられる感情はどんなものになるか、女の身なので想像がついてしまう。乳房への好奇心が一気に集まり、自分も見てみたいかのような気持ちを誰しもが抱くのだろう。
    (はあ、やだやだ。本当に嫌だね)
    「……あの」
     困り切っている青年は、非常に言い出しにくそうに、気の弱い声を出してくる。
    「はいはい。これでいいわけ」
     結局、出さなければ終わらないことはわかっている。
     プラチナは反発力を押し切って、最後までシャツをたくし上げると、茶碗ほどの膨らみを持つ美麗な半球ドームを曝け出す。実に丸っこく、色白で柔らかそうな乳房には、桜色の乳首がよく目立つ。
     恥辱感が沸いてきた。
     美白肌とは対照的で、桜色はいささか注意を集めやすい。
     青年は固唾を飲み、内心の歓喜で今にもニヤけそうな顔立ちから、必死になって表情を繕おうとしているのが見て取れた。興奮と喜びが一瞬でも見え隠れしたおかげで、プラチナに対する性的な気持ちの存在は明らかなものとなっていた。
    (……最悪だね)
     プラチナはますます顔に羞恥を帯びて、青年から目を背ける。
     あくまで診察、他人の肌など見慣れたものとして、単なる物体の一つとして見てもらえれば、一体どんなに良かったことか。女の肌に本当は興奮している男から、それでも診察を受けるなど、いかにも屈辱的である。
    「では聴診から……」
     青年はまじまじとした視線を向けてきながら、聴診器を近づける。
     ひんやりとした感触が胸の中央に当たってきて、その冷気にプラチナの体は一瞬だけ、かすかにプルっと震えていた。
    「………………」
     無言となり、耳に意識の集中を始める。
     しかし、目はばっちりと大きく開かれ、必要以上の視線を乳房に注ぎ込んでくる。荒い息遣いまで聞こえてきて、この胸が青年の興奮のネタになっていることは、プラチナにははっきりと感じ取れてしまうのだった。
    (………ああもう、こっちは本当に恥ずかしいのに)
     プラチナが我慢している一方で、男の方は得をしているかと思うと腹が立つ。
     それに、乳房に触れそうな距離に異性の手が来ている状況は、プラチナに緊張感まで招いてくるのだ。たった数センチでも指が動けば、いとも簡単に触れられてしまうのは、生殺与奪を握られ下手に身動きが取れない気持ちに似ていた。
     拳銃を向けられれば、引き金一つで簡単に命を奪われる。
     それと似て、触れようと思えば触れてしまえる位置に、青年の手は来ている。命とまでは言わないまでも、何かを握られている気分になるもの無理はない。
     十分に聴いたのか、聴診器が遠ざかる。
    「皮膚を全体的に見たいので、そのまま脱いで頂いても……」
     その要求にプラチナは天を仰いだ。
    「周り、男なんだけど」
    「……すみません。しかし、その」
    「はいはいはいはい」
     事情の説明などもういい。時間の無駄だ。
     こうなったら、速やかに診断を終えてもらうのが一番手っ取り早いと考えるしかない。
     プラチナはそう割り切り、シャツを脱いで見せるのだが、上半身裸になった途端に顔の熱が上がっていった。頬がさらに赤らんで、顔中に羞恥の浮かぶ感覚が自分でわかる。
     これで後ろからの視線圧も強まった。
     青年の目も、視診の意図ではあるのだろうが、口角の微妙に吊り上がってみえるあたりから、ニヤニヤを隠しきれていない。周囲を行き交う職員すら、ついでのようにプラチナの胸に目を向けるのだ。
    (……ジロジロと)
     見られている側にしてみれば、これでは視診と視姦の区別がつかない。
    「後ろを向いて頂けますか?」
    「…………え」
    「あの、後ろを」
    「…………」
     プラチナは閉口する。
     シャツは脱いでしまっており、この状態で後ろを向けばどうなるか。
    (いや、手で隠す)
     咄嗟の思いつきで腕のクロスを作り上げ、頑として見せまいと自分自身の身を固く抱き締める。青年には背中を向けると、プラチナの目の前に集う男という男の数々は、少しがっかりしたような、それでも目を背けられずに見てしまう、吸引力に抗えないまま顔ばかりを並べていた。
    (冗っ談じゃない!)
     プラチナは憤然とする。
    「あんまり見ないでくれる?」
     大きな声ではっきりと、厳しい声色と目つきで男達を咎めてやる。
     すると、途端に気まずそうな顔で目を逸らしたり、どこか適当な方向を向いたりし始めるが、プラチナへの意識をどうしても持たずにはいられないらしい。気になって気になって、チラチラと窺おうとしてくる気配がいくらでもあった。
     さらにだ。
    「一応、ベテランの目でダブルチェックといきますかね」
     先ほどの中年が現れるなり、目の前でしゃがみ込む。
    「な、なに? ダブルチェックって」
    「後ろの子ね。経験が浅いから、皮膚の視診も慣れていないんですよ。経験豊富な私が誤診防止のチェックに入ろうというわけです」
    「へえ? 熱心なもんだ」
     プラチナは声が上擦っていた。
     冗談じゃない、本当に冗談じゃない。
     この状態で腕を下ろせば、どうなるかぐらいはわかっているはずだ。
    「見せて頂けますね?」
     中年は実に穏やかに、余裕の態度で頼んでくる。
    「気遣いって言葉、知ってる?」
    「ええ、存じていますが、こちらの事情は既にわかって頂けているはず」
    「そうじゃなくて、後ろの視線をどうにかして欲しいんだけど」
     せめて、乳房を見せるのは医者だけに留めたい。診断とは関係のない、医療関係ではない職員の視線など、一秒たりとも浴びたくない。
     プラチナの要求したい内容は、せめてその程度のものだった。
    (だいたい、衝立くらい用意して欲しいもんだね)
     そういえば、衝立すら置かれていないことに気づき、プラチナはますます憤りを膨らませる。
    「あー、プラチナさん」
    「……なに」
    「これはあくまで、あなたが感染していた場合の話なんですがね。治療薬を持っているのって、現状では我々だけなんですよ」
    「それで?」
    「簡単な話です。きっちり、詳しく診ておかないと、誤診で見落として、感染者に薬を出さないなんてケースを発生させかねません。どうかご協力を」
     プラチナの求める配慮については無視しながら、中年は実に遠回しに脅迫してきた。
     言葉通りに捉えれば、ただ正論が述べられただけである。
     しかし、薬を持っているのは自分達だけで、感染者相手なら生殺与奪を握ることが出来る。プラチナ自身の命はもちろん、他の人間を人質のように扱うことも可能だと、この中年はそう告げてきているわけである。
    「私はただ、周りの連中に後ろを向いてもらうとか。関係無い人の目から隠れるようにして欲しいってだけなんだけど」
    「うーん。おっしゃることはわかりますが、手間がかかりますので」
    (なにが手間だ)
     要するにこの男は、プラチナの胸が大勢の男に視姦されるよう仕向けたいのではないか。何か恨みでもあって目に物見せるなり、人の恥じらう姿でも見たいのではないかと、プラチナは中年のことを疑い始めた。
    「おっと、あまり時間を取られますと、プラチナさん一人のために何人の人が診断を受け損ねることになるか」
     それもまた、穏やかで優しい口調ながらに、しかし確実に脅迫だった。
    (……なんだっていうの)
     良くも悪しくも、プラチナの診察順は一番だ。
     周りを見れば、数人の医師により、一度に平行して何人かの診察は開始して、ちょうどプラチナの隣でも男がシャツをたくし上げている。
     だが、プラチナのせいで時間を食えば、受け損ねる者が出るのは言う通りなのだろう。
     相手の立場の強さを考えると、下手に逆らえない気になってくる。
     それでも、やはり本当は見せたくない。
    「…………あとでクレーム付けてやるから」
     屈辱にまみれた真っ赤な顔で、ぎゅっと抱き締めるような腕力のこもった腕から力を抜き、だらりと下ろす。
    
    「医者以外は見るな!」
    
     すぐさま一喝すると、おおよその男が視線をどこかに背けていく。自分に集まっていたものが散り散りに、視姦の圧が少しのあいだは消え去ったが、数秒もすればチラチラと気にしてくる気配は蘇る。
    (くぅぅぅぅ……! これじゃあ何回言えばいいんだか!)
    「ふーむ」
     中年も、視診の名の下に乳房をジロジロと眺めてくる。
    「アンタが壁になってくれたら、せめて後ろからの視線が遮られると思うんだけど?」
    「いやいや、こちらの方が見やすくてね」
    (こいつ……!)
     プラチナは歯軋りした。
    「失礼します」
     その時、青年は後ろから聴診器を当ててきて、聴診まで始まってしまう。
     二人の医師により、前後からの挟み撃ちを受けながら、周囲の視線は確実に乳房に集まって来る。あれほど大きな声で言ったにも関わらず、一人また一人と、もうさっきの言葉は忘れ、プラチナの乳房を見始める。
     視線の量はしだいに増え、その分だけプラチナの抱える羞恥心も膨らんでいた。
    「こうやってね。聴診と視診によって、既に症状の気配が出ていないかを確かめる。ウイルスにはいくつも型があるから、感染といってもタイプによって症状に差異がありますからね」
     などと解説を交えつつ、中年は目を見開きながらの視診をしてきていた。
    (あれがプラチナのおっぱい)
    (すっげぇ、綺麗だ)
    (美乳だろ美乳)
     周囲の男は鼻の下を伸ばしきり、また怒鳴られるかもしれないことなど忘れ、何人もが視姦を行っていた。
    「終わりましたので、またこちらを向いて下さい」
     後ろから声がかかり、プラチナはさっさと男達に背を向ける。
     再び聴診器が当たってきた。
    (……また?)
     見落としが心配なのか、何なのかはわからないが、再び胸の中央に当てて来る。数秒も音を聞けば、ペタペタと位置を変え、乳房のすぐ下の位置から音を聞こうと試みる。
     そのうち、次の瞬間だった。
    「――んぁっ!」
     声が出てしまった。
     聴診器が乳首に掠め、それが思わぬ刺激を生み出したのだ。感じたのもあれば、驚いたということもあり、プラチナは肩を跳ね上げてしまっていた。
    (今のは?)
    (か、感じたのか?)
    (感度いいってことか?)
     周囲の男に広がる劣情は、まるで室内の空気を変質させるかのようにして、プラチナ本人にも伝わっていく。きっと今ので興奮するなり、下品なことを考え始める男がいくらでもいるのだろうことを、肌中が感じ取っていた。
    「すみません」
     謝りながらも、青年は乳房の頂点に聴診器を置き、乳山を押し潰してきた。
    (ちょっと……!)
     まるで聴診器を使って揉まれるようだ。
     潰しては脱力して、すると乳房の弾力が聴診器を押し返す。潰して、脱力して、潰して、脱力して、それを延々と繰り返す青年のやり方に、みるみるうちに甘い痺れが溜まってくる。
     性の経験はなく、せいぜい過去に何度かオナニーに興味を持ったかどうか程度のプラチナである。その自分の感度がここまで高いなど、想像だにしていない。思いもしない快感に驚きを隠せなかった。
    「や、やめてくれる?」
    「ああ、すみません」
     青年は聴診器を引き下げる。
     だが、それでまるっきり安心するかといったら、そうでもない。辱めを受けた余韻が乳房に残り、ピリピリとしたかすかな電流が未だ走り続けている。心の中にも、好き勝手に遊ばれたような屈辱感がこびりつき、やめてもらった程度で晴れ晴れとするわけがない。
    「では触診の方を行っていきますので」
    「触診って……」
     プラチナは大いに引き攣った。
     青年の両手が迫りかけ、その瞬間に体が後ろへ引けそうになっていた。
    「はい、逃げちゃ駄目ですよ?」
     そこで中年が背後に立ち、肩に両手を置いてくる。
     プラチナは反射的に固まってしまい、結局は動くこともできずに、手が乳房に触れてくるのを受け入れてしまっていた。
    (うっ、やだぁ……!)
     表情がしわくちゃに歪んでいく。
     お椀ほどある乳房は、青年の手にしっかりと包み込まれ、指の蠢きによってよく揉み込まれていた。踊る指遣いによって柔らかな変形を繰り返し、脱力すれば弾力が指を押し返す。
    「んっ、んぅ……んっ、んぅぅぅ…………んっ、んぅ………………」
     揉まれれば揉まれるほど、先ほどの甘い痺れが強まった。
     せっかく、少しは引いたと思ったものが、こうも早く蘇り、その快感に肩がモゾモゾと動いてしまう。息遣いも荒くなり、喘ぎ声というほどではないが、呼吸の中に色気ある声が混ざってしまう。
    「なあ、感じてないか?」
    「そうみたいだ」
     ヒソヒソと話す声がプラチナの耳には届いていた。
     目を向ければ、そこで機材を見ていた職員達が、プラチナの様子に気づいて小さな声で話し始めていた。
    「あーあー。診察で感じるなんて」
    「よっぽろ感度が高いんだろう」
    「しょっちゅうオナってるんじゃないか?」
     それらの声を聞けば聞くほど、プラチナの胸で屈辱が膨らんでいた。オナニーが大好きであるかのように見做される恥ずかしさに、顔から火が出そうになっていた。
    (なにがしょっちゅうだ!)
     プラチナは職員達を睨む。
     それに気づいた職員らは、気まずそうに作業に戻る。
    「んぅ!」
     だが、ひときわ大きな声が出てしまい、せっかく離れた職員達の視線が再び集まった。
     乳首をつままれたのだ。
    「アンタ……な、なにするの……んぅ……んっ、んぅ…………」
    「あの、これも必要な触診でして。感染していると、型によっては乳首に症状が出て、特別な痛みが出るんです」
     申し訳なさそうな顔をしながら、青年はしきりに乳首を虐めてくる。
    「んっ、んぅぅぅ……! 痛くなんて、ないから…………」
    「ところで、これは突起している状態ですか?」
    「は、はあ!?」
    「いえ、その。ウイルスの影響で肥大化するケースがあるので、性的興奮による突起とは必ず区別をつけなくてはいけません。これは突起状態でしょうか?」
     言葉だけなら、必要な質問の一環として尋ねてきたに過ぎないものだ。
     だが、顔を見れば違う。
     その顔は明らかに何かを期待している。期待通りの答えであって欲しいかのような、怪しい下心がひしひしと感じられ、周りからさえ似たようなものが伝わって来た。
     背後の中年、順番待ちのロドスのメンバー、周囲を回る職員達の、全てがプラチナの回答を聞き逃さないように意識している。露骨に目を向け、集中して聞こうとしている者は言うまでもなく、一見して興味がなさそうに、目すら向けていない者でさえ、プラチナの声を聞き逃さないため、耳に神経を集中している。
     部屋全体がそういった空気に包まれていた。
     プラチナの乳首が突起している理由は、ウイルスなのか性的反応によるものか、その真実を決して聞き逃してはならない。
     重大な発表を待つ空気がみるみるうちに形成され、こんな中で答えなくてはならないプラチナには、これはたまったものではない。
    (なんでこんなことになるんだか! 最悪っ、本当に最悪!)
     こうしているあいだにも指は動いて、乳首を弾いたりつまんだり、青年は刺激を繰り返す。
    「んぅ……くっ、ぬぁぁ……! や、やめ…………!」
    「どちらですか?」
     青年はあくまで尋ねてくる。
     こうなったら、なるべく小さな声で答えよう。
    「さっきまではこうじゃなくて……つまり、せ、せ、性的に………………」
     ただそう答えるだけでも、炎が燃え広がるかのようにして、顔中に羞恥の熱は広がっていた。今まで白かった耳にさえ、赤らみは及ぼうとしていた。
    「き、聞こえませんね!」
     青年は震えた声で言ってくる。
    「はあ!? 絶対聞こえてた!」
    「いいえ! もう少し大きな声で!」
     できるわけがない。
     自分はエッチな快感を感じていますなど、そんな宣言を誰が大声でするものか。
    「だ、だから、性的に……大きくなってるから……」
     先ほどよりは大きめに、かといって小声の範囲を超えないように声量だった。
    「すみません。聞こえません」
    「喧嘩売ってる!?」
    「いえ、すみません。けどもう少しだけ……」
    「だから感じたせいで大きくなってるから、もうこれ以上言わせないで」
     とうとう普通の声で答え、あくまで大声は出さなかった。
     もっとも、それで十分だった。
    「聞いたか?」
    「ああ、確かに言ってたな」
    「感じたせいか……」
    「へえ、あのプラチナがねぇ?」
    「確かにあの反応はエロかったもんなぁ?」
     四方八方にヒソヒソとした声が広まり、それに合わせてプラチナの胸にある羞恥心も、急速に膨らんでいた。屈辱感も合わせて膨張して、顔の温度がますます上がる。拳が硬く強張って、暴れてやりたい衝動さえ抱え始めた。
    「ねえ、もういいんじゃ」
     プラチナは怒気を帯びた声で言う。
     すると、背後から青年へと、中年が指示を出す。
    「さあ、そろそろ」
    「……本当にやるんですか?」
    「もちろん、立派な方法の一部だからね」
    「ええ、なら……」
     そのやり取りには不安を煽られた。
     中年は立派な検査方法だと語りつつ、それを実践しなくてはならない青年には、疑問と迷いがある様子だ。そんなものを見せられては、自分は一体何をされるのかと、薄々の恐怖を感じずにはいられない。
     青年の手が遠のいた。
     代わりに顔がぐっと近づき、至近距離から視診される恥ずかしさが込み上げる。
    (……って、見るだけ?)
     てっきり、何か特別なことをやられるのかと思い、その直後に青年がしてきたのが視診である。乳房をこうもジロジロと、嫌には嫌でも、不安に対して拍子抜けではあった。
     だが、次の瞬間である。
    
     ぺろっ、
    
     突如として、想定すらしなかった行為を受け、乳首に唾液の染みた感触が残っていた。
    「……は?」
     まず呆然としてしまう。
     そのあいだにも、もう片方の乳首を舐め上げられ、全身に鳥肌が立っていた。
    「……なっ! なにすんだ!」
     椅子を倒す勢いで立ち上がり、プラチナは必死の形相で胸を隠した。
    「いえあの……」
    「味覚による検査ですよ。れっきとした方法なんです」
     狼狽する青年をフォローするように、中年が穏やかに説明した。
    「あ、ありえない……」
    「いえいえ、症状が乳首に出る場合、味による判定が可能であるとわかっています。というわけで、どうでしたか?」
    「はい。異常なしです」
     さも当然のことをしたと言わんばかりである。
     ……冗談じゃない。
     たとえ今のが事実としても、身体を舌で舐められるおぞましさには、いくらなんでも背筋に寒気が走ったていた。乳首に残る唾液の感触に、嫌悪感からみるみるうちに鳥肌が広がって、乳房全体が泡立つ感覚さえ覚えていた。
    「プラチナさん。次はスカートを脱いで頂きます」
     人がここまで引いている状況で、何事もないように次の指示をしてくる中年の神経がわからない。
    「どうしました? プラチナさん。あまり時間を取られてしまうと……。それに、治療薬を出す出さないを決めるのは我々ですよ?」
     脱ぐしかなさそうだった。
     プラチナはスカートのホックを外し、残り少ない衣服を手放す。
     ショーツ一枚となった途端、頭が弾け飛びそうなまでに羞恥が膨らんだ。
    
    


    
    
    
     ~後編~
    
    
     次はスリーサイズの測定だった。
     担当者は別となり、今度は眼鏡をかけた別の青年と、さらに金髪の青年が補助につき、プラチナは二人のあいだに挟まれる。
     メジャーを持った眼鏡青年の前で、プラチナは頭の後ろ両手を組んだ。
    (ジロジロ見て……)
     眼鏡青年は明らかに乳房に視線を奪われ、表情を取り繕おうとしながらも、興奮を隠しきれていない様子である。隣に立つ金髪青年も似たようなもので、バインダー留めの書類に目をやって、真面目なフリをしながらも、チラチラと乳房を盗み見ていた。
     それだけではない。
    「……パンツだ」
    「白だな」
    「ああ、覚えておこうぜ」
     小さな声だが、そんな会話が周りから聞こえてくる。
    (…………覚えなくていい!)
     プラチナは憤然としていた。
     穿いているショーツは純白の輝かしい生地であり、滑らかな布地には柄のレースが縫い込まれている。
     どんな下着だったかを頭に焼き付け、素晴らしい思い出として持ち帰ろうとする視線は、周囲からいくらでも感じられた。
    「……み、見ないで欲しいなー」
     大きな声を出してみる。
     すると、プラチナの視界にいる限りの男達は、総じてわざとらしく目を逸らし、明後日の方向を向いてみせるのだが、気になって気になって仕方のなさそうな様子は隠せていない。
    「では」
     眼鏡青年は抱きつくかのように腕を背中に回してくる。
    (……うっ、やだ)
     先ほどの、ぺろりと舐められたトラウマが蘇り、顔が乳房に接近しただけでも寒気が走り、体がぶるりと震えてしまう。密着まではされないが、今にも胸に顔を埋めてきそうな距離感は、トラウマを差し引いても緊張を誘うものだった。
     メジャーが背中に引っかかる。、
     そして、眼鏡青年は胸に巻きつけてくるのだが、目盛りを合わせようとする際に、さりげなく乳首に擦りつけてきた。
    「…………んっ」
     声が出かけて、プラチナは咄嗟に歯を食い縛り、顎を力ませていた。
     それが一度だけならいい。
     本当に良いとは思わないが、一度くらいならただの偶然として流してやることは出来ただろう。それが二度も三度も続けられると、わざとやっているとしか思えない。
    「んっ、んぅ……ちょ、ちょっと……?」
    「あ、動かないで下さい」
    「だから、擦られると……んっ、んぅ……!」
     プラチナはしきりに体をよじらせてしまっていた。
     感じてしまうのだ。
     擦られるたび、乳首から何かが弾けたように快感が広がって、身体が丸ごと反応してしまう。肩が軽く引っ込んだり、胴を捻るように動いてしまう。
     眼鏡青年はそのせいで目盛りを合わせられないかのように振る舞って、しきりに乳首を責めてきているが、プラチナに言わせれば、それさえやめてくれれば動かずにいられるのだ。
    「お、怒るよ!? んっ! んぅ……!」
     自分でも驚くほどに感度が高く、声が出るほど感じてしまう。
    「ですから、動かれると……」
    「一回っ! 一回胸から離れて!」
    「はあ、では」
     そのいかにも仕方なさそうに言うことを聞き、これで満足かとばかりの顔を向けてくる眼鏡青年に、ますます腹が立ってくる。
    (っと、なんなのアンタ)
     睨まずにはいられなかった。
     とにかく、甘い痺れの余韻は残るが、これで一旦は落ち着いた。
    「…………乳首には、気をつけて」
     プラチナは実に躊躇いながらそう言った。
     気持ちいいので、身体が反応する。嫌でも体は動いてしまう。そう宣言することの恥ずかしさと屈辱感に、心がプルプルと震えてくるが、そう伝えでもしなければ、また同じことをやられてはたまらない。
    「へー?」
    「やっぱ感じやすいんだ」
    「乳首オナニーよくやるってことかな?」
    「そうじゃないか?」
     本人達は小声で話しているつもりだろう。
    「聞こえてるんだけど!」
     プラチナは怒りに声を荒げた。
     何が乳首オナニーだ。
     そんなことは……本当に、本当にたまにしかしない。だから、自分自身の手で感度を鍛えているわけではない。それに性交の経験もなく、処女の自分がここまで感じやすいことに、プラチナは本当に驚いているのだ。
    (こんなの…………)
     プラチナは思ってしまう。
    (これじゃあ、私にそういう素質があるみたい…………)
     少なくとも、乳首オナニーなどと言い出す男なら、そんなプラチナの事実を知ればきっと言い出すに違いない。極稀にしかオナニーをしないのに、それでも感度が高いということは、エッチの素質があるからだと。
    (ふざけんな。そんなの、なくていいから)
     プラチナが憤然としているあいだに、眼鏡青年は乳房に目盛りを合わせてくる。
     乳首の近くにメジャーが来るせいで、また擦られ、感じさせられるのではないかと、プラチナは緊張と共に身構える。乳輪に食い込む形で、乳首の近くに目盛りが合わさるだけで済み、その一点だけは安心した。
     しかし、わざわざ乳首の近くに目盛りを合わせ、数字を確認しようと顔を近づけてくる。より至近距離から乳房を観察されるかのようで、頬が炎に炙られるかのごとく、恥ずかしさの熱が上がっていた。
     眼鏡青年は数字を声に出し、それを金髪青年に伝えてやる。
    「了解、と」
     金髪青年は紙にペンを走らせ記録した。
    (私のスリーサイズ…………)
     胸囲の書かれた書類を横目で睨み、その記録を後々どうしてくれようかと、プラチナは頭の中に計画を立て始める。
     しかし、今は……。
    「次はアンダーバスト」
     乳房の真下に目盛りを合わせ、やはり金髪青年に数字を伝える。
    「ほい、と」
     それは紙に書き込まれる。
    「ウエストですね」
     緩めたメジャーを下へとずらし、今度はヘソの近くへ巻きついた。
     同じく声に出して読み上げて、金髪青年がそれを書き込む。
     アンダーとウエストは比較的手早く済まされたが、次にメジャーをずらす時、眼鏡青年は再び抱きつかんばかりに腕を回してきた。
     クランタ族であるプラチナには、馬に酷似した耳と尻尾を持っている。尻尾の上からメジャーを巻いてはヒップの測定に支障が出る。きちんと尻に巻きつけるため、眼鏡青年は腕を後ろにやってきたわけなのだが、そうなると顔がアソコに接近する。
    (うぅぅぅ………………)
     ショーツ越しとはいえ、性器に対して顔が近い。
     こんな状況で心穏やかでいられるはずはなく、いかにも落ち着かない。
     尻尾の下にメジャーを通し、無事に巻きつけてきた後も、すぐには目盛りを合わせることはせず、眼鏡青年はショーツをまじまじ見つめてきた。
    (……なに、早くしてくれる?)
     そう思うが、じっくりと見つめてくる。
     長々とした視姦が我慢ならずに、プラチナは口を開いた。
    「早くして欲しいんだけど」
    「ああ、すみません」
     言われて初めて気づいたように、はっと目を覚ました顔で、眼鏡青年は慌てて目盛りを合わせて数字を読む。
     それが書類に書き込まれたことで、スリーサイズの測定は完了する。
     この時点では、まだプラチナ自身は気づいていなかった。
     どうして青年がアソコのあたりを凝視して、少しのあいだ心を囚われていたのか。単にショーツに見惚れたわけではなく、他にも理由があったのだが、プラチナがそのことに気づくのは、この次の検査でのことになる。
    
         *
    
     プラチナは診察台に横たわる。
     ショーツ一枚の姿できっちりと腕を下ろして、気をつけの形で男達に囲まれるなど、これほど落ち着かない状況は他にない。膨れ上がる羞恥心で、顔から炎が出そうなのもさることながら、全身がそわそわして、手足がしきりに動いてしまう。
    (ああ、とにかく早く終わって欲しい。さっさと帰りたいね)
     今のプラチナには、こんな恥ずかしい空間からはいち早く抜け出したい、それ以外のことを考える余裕はなかった。
    「次はエコー検査でね」
     中年が現れて、説明を開始する。
    「おっぱいにジェルを塗って、信号の通りを良くします。その上で器具を押し当て、乳房の中身を読み取っていく。機材で検査結果を読み取って、この場で健康状態が確認できるというわけですね」
    「…………早くして」
     プラチナは中年から顔を背けた。
    「では君、頼むよ」
    「は、はい! 頑張ります!」
     いかにも緊張しきった声で、銀髪の青年がピンと背筋を伸ばし、大きな声で元気な返事を返していた。
     その周囲には機材を扱う職員が配置につく。
     順番待ちの、検査の列に並ぶ最中のメンバー達も、プラチナの裸を少しでも覗き見ようと、さりげなく一歩近づいたり、しきりに視線を寄越していた。
    「で、では! 失礼します!」
     銀髪青年はジェルを手に乗せ、それをプラチナの胸に塗ろうとしてくる。
    (……うっ、あぁ、そっか。また胸だ)
     乳房に両手が近づくことで、みるみるうちに全身が強張って、プラチナは快感の予感に身構えていた。
     手が触れる。
    「んっ」
     ぴくんと、筋肉が弾んでいた。
     銀髪青年は見るからに緊張しきった顔で、気まずいような照れたような、まともに異性を直視できない様子でそわそわと、しきりに目を逸らしながら塗り広げる。ひんやりとしたジェルは、プラチナの体温と、手の平の温度によって、瞬く間に温まっていた。
    「んぅっ、んぅ……んっ、んくぅ……くっ、くふぁ…………」
     肩がモゾモゾと動いてしまう。
     どうしても息が乱れて、気持ち良さを隠しきれない。
     当然のように銀髪青年にもそれは伝わる。自分の手で少女を感じさせ、乱れさせている状況を、一体どのように思っているのか。きっと面白いとでも思っている。
    「んぁぁ……あっ、くぅぅ…………!」
     胸が揉まれているも同然だった。
     ジェルを塗り広げるために、手でじっくりと塗り伸ばす。ひとしきりやったと思いきや、さらに量を増やして塗り込んで、プラチナの乳房はぬかるみによって表面をコーティングされていく。
     乳房の皮膚は余すことなく、何ミリかにもなるジェルの厚さに包み込まれていた。
    「では準備が済んだので、次はエコーをやっていきます」
     銀髪青年は手を拭くと、バーコードの読み取り機にも似た器具を握っていた。
     それを乳房に近づけ押し込んでくる。
    「ぬぁっ、くふぁ……!」
     やはり感じてしまう。
     器具を押し込み、潰さんばかりにスライドしてくる。その読み取り機はコードで大型の機材と繋がっており、乳房から読み取った情報を職員がチェックしているはずだった。
    「あぁぁ……! あっ、あぁぁ……!」
     プラチナはそれどころではない。
     こんなことでも感じてしまい、湧き出る快感に翻弄される。胸から多大な電流が発され続けているように、肩や腰がビクビクと動き続けた。
    「あぁぁ……! あっ、あっ、あぁぁ……! い、いい加減にぃ……!」
     銀髪青年は止まってくれない。
     やっとのことで片方の乳房を終え、もう片方の乳房に押し込みスライド往復を繰り返す。そうすることで、つまずくかのように乳首に毎回引っかかり、擦れてきて、快楽の電流が全身に拡散するのだ。
     エコー検査が終わっても、ジェルの拭き取りが残っている。
     胸に布巾を擦りつけられ、布越しに刺激を受ける。
    「あぁっ、あぁっ、あっ、あぁぁ……!」
     それは表面のジェルを布に吸わせて、本当に拭き取っているだけの行為だったが、プラチナにしてみれば十分な刺激がある。
    「あぁぁ……! あっ、あぁぁぁ……!」
     プラチナは髪さえ振り乱していた。
     最後まで拭き取ることで、乳房からはジェルの光沢が失われるが、頂点で突起している乳首は、より一層の敏感さを見せている。もはや空気に触れるだけで気持ち良く、風さえ浴びたくないほどに感度は上がってしまっていた。
    
         *
    
    「最後の検査ですよ? プラチナさん」
     中年の声がかかってくる。
     同時に、プラチナの腰に両手を伸ばし、銀髪青年はショーツを脱がしにかかってきた。
    「ちょっと……!」
     プラチナはそれに驚き、手で食い止めようとするのだが、素早く脱がす銀髪青年の動きに間に合わない。ショーツはいとも簡単に脱がされて、プラチナは完全な丸裸とされてしまった。
    
     カァァァァァ…………!
    
     それでなくとも、既に耳まで真っ赤であったプラチナの顔には、限界を超えてもなお赤くなろうとするかのように、体中から何かが集まっていた。もう変色しきれない代わりのように、顎から頭の頂点にかけ、みるみるうちに温度が上昇していった。
     陰毛と性器があわらとなることで、脳が茹で上がりそうなほどまでに、プラチナの羞恥は増していた。
    「ほら、これで最後ですから」
     中年は慰めのように言ってくる。
    「……だ、だ、だったら! 本当にさっさとして!」
     面白いほどに裏返った声を荒げる。
     プラチナは思いっきり、勢いよく顔を背け、天井に対して耳だけを向けていた。顔を真横に寝かせきり、強くまぶたを閉ざしていた。
    「あ、これって」
     銀髪青年の声だ。
    「ああ、愛液だね」
    「胸にしか触っていなかったのに、いつの間に濡れていたのか」
     青年の疑問に対し、他の職員が答えるやり取りは、プラチナ自身も気づかないうちに出ていたらしい愛液について暴くものだった。
    (もしかして、あの時から……!)
     プラチナは思い出す。
     スリーサイズの測定時、アソコをやたらに凝視された。
     それはあの時点で愛液の染みが浮かび上がって、眼鏡青年はそれを気にしていたのかもしれない。
     そう思うとますます頭の熱が上がって、脳が沸騰しそうになってくる。
    (あああああああああ!)
     最悪だ。本当に何もかも最悪だ。
     周囲の声、中年の言葉、胸を刺激される状況、あらゆることに気を取られ、気づくことができなかったというだけで、自分は一体どれほど濡れていたのか。
    「プラチナさん。けっこう、ぐっしょりですよ?」
    「聞いてない! そんなこと一言も聞いてない!」
     これまでにない大声を発していた。
    「そうですか。ま、ともかく最後はアソコの検査をしますので、大人しくしていて下さいね」
     そこでプラチナへの声かけがやみ、中年は周囲の職員や青年へ指示を出す。それに応じて周囲の気配が動き回って、新しい機材の準備や器具の用意が速やかに行われていく。
     しかし、その中に紛れ、自分のショーツが弄ばれているような気がしてならず、本当に落ち着かない。体中がそわそわして、細胞の一つ一つが細かく騒ぐ。
    「では足を開きます」
    「せーの」
     と、次の瞬間だ。
    
    「やっ…………!!!!!!」
    
     左右から二人の職員に足を取られ、力尽くで開脚をさせられた。
     M字となった脚の、あけっぴろげなアソコに視線が集まり、尻の下には馬のような尻尾が敷かれている。覗こうと思えば肛門まで見える体勢に、プラチナの頭はますます燃え盛り、もはや羞恥のあまりに焼け消えそうな勢いだ。
    (あああああ! 無理! 無理無理!)
     あるいは脳がマグマと化したといっても過言ではない。
     そんなプラチナのアソコへと、ぴたりと、指が置かれた瞬間である。
    
    「――――ひん!」
    
     プラチナの全身がビクっと弾み上がっていた。
    「では膣内を検査していきます」
     銀髪青年の指が入ってくる。
    「あ……あ……あぁ……あぁぁ…………!」
     指一本分の太さが膣穴を押し広げ、根元まで収まっていく。
     プラチナは股に視線を感じて激しく顔を歪めていた。
     検査のため、じっくりと覗き込み、遠慮なく視線を注いで指先で内部を調べる。それをやられる恥ずかしさに、今にもアソコが弾け飛びそうになっていた。
    「んっ! んぅぅぅぅ!」
     指が内部で回転する。
    「んぁぁ…………!」
     ピストンされ、プラチナはますます喘いだ。
     ワレメから溢れる愛液は、股のあいだから肛門を伝って流れ落ち、尻に敷かれた尻尾の毛並みに染み込んでいく。
    「あ! あ! あん! あん!」
     ピストンが加速していた。
    「すげぇ」
    「感じてる感じてる!」
    「このままイっちゃうんじゃないか?」
     野次馬となった周囲の声が降りかかる。
     もし、ここでプラチナが目を開き、身の回りを確認したら、診察台を包囲している男という男の壁に気づくことになるだろう。
    「あぁぁぁ……!」
     銀髪青年はクリトリスまで弄り始めた。
    「あん! あん! あん! あ! あん! あぁん! あぁぁん!」
     喘ぎ声はより高く、ピストンから聞こえる水音も大きくなり、ついにはプラチナの中で何かが弾ける。
    
    「あぁぁぁあああぁぁああああああ――――――――!!!!!!」
    
     絶叫していた。
     同時にアソコから上がる噴水は、青年の頭上さえ越える勢いだった。
    
         *
    
     プラチナはもう何かを諦めていた。
     すっかり尊厳を削り取られて、もはやプライドを保つ気にさえなれない中で、膣にプローブを入れられている。指ほどの太さをした器具を挿入することで、超音波検査から得られる映像を職員がモニターで確認していた。
     その周囲からは、おびただしい視線が集まっている。
     順番待ちの列さえ離れ、プラチナの裸を見ようと群がる男の輪は、そのどれもがニヤニヤとしたいやらしい視姦の眼差しで肢体を見る。
     その中で、最後には四つん這いのポーズさえ要求され、肛門さえも視姦される屈辱を味わうのだった。
     尻穴に指がねじ込まれ、直腸検査さえもが行われる。
     その途方もない屈辱に、歯が折れそうなほどに力強く食い縛り、痙攣のように顎を震わせ続けていた。
     それら検査が済まされるなり、引ったくる勢いで衣服を奪い返していき、恐ろしく高速で着替えた上で、涙目で出て行ったのは言うまでもない。
    
     許さない! こんなの絶対に許さない!
    
     拳を強く握り締め、肩にかけてまで震わせていた。
     視姦され尽くした余韻が全身に残った上、肛門やアソコの中には指を入れられていた感覚さえもが如実なまでに残っている。
     こんな屈辱は今までに味わったことがなかった。
    
     ……絶対、絶対……ただじゃおかない!
    
     その後、検査結果が報告され、プラチナは未感染だったことが明らかになる。
     施設で行われた検査内容は、全てデータとしてまとめられ、スリーサイズも含めて記載されているはずなのだが、それを確認してみれば、不思議とデタラメな数字が並んでいる。裸体で検査を行った事実も末梢され、その場で検査を行っていた人間達も、この件については不思議と口を開きたがらない。
     プラチナが一体何をしたのか。
     それは明らかにされていないが、あらゆる手段を駆使したことは間違いなかった。
    
    
    


     
     
     


  • 速水奏の健康診断

     速水奏は特別健康診断に指名され、十人ものクラスメイトの中で裸になる。
     順番の列は毎回のように男子が先で、奏は一番最後になるせいで、奏の番を迎える頃にはみんながジロジロと目を向ける。身体測定で下着姿に、内科検診では胸を出し、さらには性器や肛門さえもが視姦されることになってしまう。

    1:身体測定
    2:内科検診
    3:心電図検査
    4:ギョウチュウ検査
    5:性器検査
    6:性交調査義務


  • 森久保乃々 赤裸々な測定

     身体測定・健康診断の当日に学校を休んだ森久保乃々は、クラスメイトの保健委員に代理で測定を受けることになる。
     学校に迷惑をかけてしまい、申し訳なくて断れない気持ちから、男子相手に渋々測定を受けるのだが、保健委員が手にしていたマニュアルはどこかおかしい。
     やがて服を脱ぐ指示が出て、机の下に潜り込みたくなってしまう乃々。
     大いに恥ずかしがり、最後には・・・・・。

    1:検査のはじまり
    2:ストリップ、身体測定
    3:スリーサイズ、乳がん検診
    4:ついにショーツを脱いだ先


  • パティの羞恥医学モデル 中編

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     次に始まるのは内科検診だった。
     お互いに椅子に座って向かい合い、手始めの問診によって、日頃の食生活や体調についての受け答えが進んでいく。
     やがて校医は聴診器の準備にかかり、銀色の丸い器具をパティの胸へと近づける。乳房と乳房の中央へと触れた金属から、ひんやりとした冷気が伝わり、パティはかすかに身震いした。
     しかし、すぐにパティ自身の体温で温まり、聴診器から冷気は失われていく。
     そのまま黙々とした時間が続いた。
    「うーむ……」
     校医は耳に意識を集中している。
     顔こそ胸を向いていながらも、瞳の角度は下向きに、特別に乳房を見てくる感じはない。心音を正しく聞き取り、症状の有無を確かめることにしか関心のない、いやらしさを感じさせない事務的な仕事ぶりだ。
    (本当にただ診察をしてるだけみたい……)
     実は下心で脱がせただけではないか、疑惑がないでもなかったが、あまりの真面目さに、過剰に恥じらう方がおかしいかのように思えてくる。
     もっとも、男の指が乳房のすぐ近くに来ているのだ。今にも触れたり、掠めたりしてはこないかという緊張感に、パティの頬に汗が浮かんだ。
     聴診器が位置を変え、左乳房の下へと移った。
     もう冷気はなく、パティの体温に始めから馴染んでくる。
     少し音に耳を傾けたら、校医はすぐに手を引っ込めた。
    「後ろ向きになってくれるかな」
     そう言われ、パティは校医に背中を向ける。
     背中に当たる金属の感触は、数回にわたって位置を変え、その都度静止し、パティの脳裏には集中する校医の様子が浮かんでいた。ローライズから見える尻の割れ目を視姦されるに違いないとは、もう考えなくなっていた。
    「よし、次は側弯症の検査だ」
     背骨の歪みを調べるため、骨格の視診を行う検査だ。
     立ち上がり、背中を向けた状態で、まずは直立姿勢を保つ。そのままパティは部屋の壁だけに視線を突き刺し、静かに視診を受けていた。
    「尾てい骨は、と。ああ、最初から出ているね」
    「……うっ」
     パティは顔を顰めた。
     尾てい骨から背骨にかけて、まんべんなく視診することは知識的にわかっている。尾てい骨まで隠れるショーツであれば、その分だけ下げる必要があっただろう。ローライズであるパティの場合、始めから見えているわけだった。
    
     じぃぃぃぃぃ……
    
     視診である以上、当然の視線を感じた。
     背中のどこをどのように見られているかは、パティからはわからない。わからないから想像が膨らんで、見えない何かに皮膚を撫でられている感覚が湧いてくる。視線を皮膚で感じることなどできないだろうに、感じているような気持ちになってくるのだ。
    「じゃあ、前屈してくれる?」
     上半身を前に倒すことで、校医の目から肩甲骨の高さを見るのだ。両手の平と平を重ね合わせて、その指先を床に向けて下ろしていきながら、パティは前屈姿勢を取っていた。
     尻が確実に目立っている。
     ポーズだけを考えるなら、下着の尻を差し出して、どうぞ自由にお触り下さいと言っているようなものである。はしたない体勢を取っているかと思ったら、頭の内側で羞恥の炎はますます火力を上げていた。
     尻をいくら視姦されたとしても、後ろの様子が見えないパティにはわからない。
     わからないから、本当はジロジロと観察されているかもしれない想像が湧き、そんな想像によって肌が疼いて興奮する。
     もっと、凝視されてみたい。
     そんな願望が胸中に渦巻いて、自分がいよいよ変態であるような、おかしな子になっているような思いに駆られ、自分が恥ずかしくなってくる。裸でいたり、視姦されている可能性に加え、それを喜ぶ自分に対する思いさえもが膨らんでいた。
     思いに駆られながら、パティはひたすら姿勢に合わせ、床だけを凝視していた。
    「問題ないね。じゃあ、さっきみたいに座ろうか」
     側湾症検査が終了して、パティは改めて椅子に腰を下ろしてやる。
     本当に視姦されていたのか否か、確かめようのないことだが、ともかくローライズの尻を視線から解放して、パティは校医と向かい合う。
    「最後はね。乳房、触診するからね」
    「え……」
    「嫌だろうけど、我慢してね」
     さも当然のように、それもまた仕事の一環であるように校医は言う。
    「必要、なんですよね」
    「もちろん」
     校医は言い切る。
    「……そう、ですよね。必要もないのに、触りませんよね。わかりました。我慢しますので、お願いします」
     見て観察されるだけなら、まだしも受け入れていたパティは、心の中ではやはり大きな抵抗を抱えていた。見られることと、触られることでは、抵抗の大きさが異なっていた。
    「では」
     しかし、校医の両手は迫って来る。
     手が近づいてくることに、まるで武器を向けられたような緊張の面持ちを浮かべ、パティは肩を強張らせた固い表情で目を瞑る。
     膨らみの上に、ツンと指先が触れ、パティはピクっと肩を弾ませた。
    (胸が、本当に……あぁ…………)
     手の平に包み込まれて、ゾクゾクとした震えが肌中に拡散する。細胞の一つ一つが反応して、皮膚が細かく震える感覚に、嫌悪とも快感とも言えない、パティ自身にもわからない感覚が背筋にも広まって、頬が固く歪んでいく。
    (我慢、我慢を……)
     パティは耐えた。
     二つの乳房がすっぽりと覆われて、指の強弱によって感触を確かめられている。校医の体温と手汗が皮膚に伝わり、その感触に細胞を汚染されているような心地がする。それなのに身体は反応して、血流を乳首に集中させ始めてしまっている。
    (このままでは……)
     感じてしまいそうな予感から、パティは静かに身構える。
     タッチが変わった。
     手の平が離れたと思いきや、指で各所を押し込む調べ方が行われる。乳房のありとあらゆる位置へと、置いた指をそのまま押し込み、校医はじっくりと感触を確かめてくる。そんな触診による調査が進めば進むほど、自分の身体が把握され、何かを握られている感覚が膨らんでいく。
     次の瞬間、乳首をつままれた。
    「ひっ」
    「痛いかな」
    「痛くは……」
     自分で咄嗟にそう答え、パティはハッとした。
     しまった、と。
     失態を犯したと感じていた。
    「おや、痛くはないと。なら、今の声は?」
    「その、それは、ですね……追求しないで頂けると……」
    「ふーん?」
    「んっ、んぁ……あのっ、やめて下さい……」
    「痛みでないなら、何を感じているのか、仰ってくれないとね?」
     校医はさも悪気などないように、ただ事務的な確認がしたいだけの顔で尋ねてくる。その純粋な疑問について尋ねるに過ぎない顔は、本人は必要なチェックをしようとしているだけなのかもしれないが、パティにとっては答えにくいことこの上ない。
     気持ちいいのだ。
     乳首を触られ、甘い痺れが走って感じてしまう。
    「どうしてもですか?」
    「どうしてもだね」
     と、校医は譲ってくれない。
     それどころか、乳首への刺激を増やし、指先で上下に弾くように触ってくる。
    「あっ、んっ、わかりました! わかりましたから!」
     観念して声を荒げると、ようやく刺激が止まり、手も離れた。
    「では教えてくれるね」
    「はい。か、感じました……性的なものを…………」
     頭から火柱でも上がるかのような激しい羞恥で、今すぐここから消えてなくなりたい衝動を覚えながらの白状だった。
    「ほう? 性的な快感ね」
     不思議そうな顔をしていた。
     そうだ。
     考えてもみれば、校医は単に『触診』をしていたに過ぎず、性的な愛撫をしたようなつもりが一切ない。それなのに感じたパティの方がおかしくて、校医としても意外なのだろう。
    「すみません」
    「いいや、謝ることはないよ」
     校医はそう言ってくれるが、パティは不安だった。
    「もしかして、私みたいな反応は珍しいのでは……」
     それが不安でならなかった。
     診察の経験などいくらでもあるであろう校医が、パティに対しては不思議そうな表情をするのは、診察中に性的に感じた女性をあまり見たことがなかったからではないか。ならば、触診だけで感じた自分は、普通よりも淫らではないか。
     快楽を感じてしまい、それを白状した恥ずかしさに加え、しかも自分の恥ずべき特製に築いてしまったような気持ちで、パティはどんどん下を向いていく。
    「いいや? 珍しくはないんじゃないかな?」
    「え、ですが……」
    「今回は貴族令嬢の大切な体だから、普通よりは詳しく診察したんだ。乳房に触れる診察はそんなに多くはないから、正確には珍しい反応かどうかまではわからない、かな」
    「そうですか。普通ならいいんですが……」
     不安が解消されたわけではなかった。
     むしろ、真実がはっきりすることなく、曖昧になった分だけ、パティが特別に淫らかどうかもわかりにくくなっただけだった。
    「ま、とにかく診断はこれで終わりだよ。お疲れ様。パティさん」
    「はい。ありがとうございました」
     終了に伴い、パティはすぐさま服を着始めようとした。
     その時だった。
    「ところで、君にお願いがあるんだけど」
    「お願い、ですか」
    「パティさん。君はよく我慢してくれたし、なかなか辛抱強いらしい。そんな君を見込んで医学モデルを頼みたいんだが」
     その言葉を聞くなり、パティはすぐにピンと来ていた。
     そもそも、そうして出版された医学書を読んでしまい、他ならぬライザの裸を、印刷されたデッサンという形とはいえ見てしまった。
     つまり、この話を引き受ければ、自分の裸も顔付きで載りかねない。
     貴族の裸が……。
     しかも、本好きのタオに見られる可能性も、いくらかは付きまとうことになる。
    「どうかな? 報酬、といっても、パティさんは貴族だし、金銭による報酬よりも、市場に出回りにくいアイテムの方がいいかなぁ」
     などと、まだ引き受けるとは言っていないのに、校医は報酬の思案を始めている。
     ……どうしよう。
     まず、迷った。
     迷った直後に気づくのは、即答で突っぱねるのではなく、迷いを感じている点だ。少しでも引き受けようと思う気持ちがあるから、さっさと拒否しようとはならないのだ。
     アソコがウズウズする。
     肉体の内側で見えないスイッチが入ってしまい、言い知れない期待感が湧いてくる。
    
     あぁ、駄目だ……。
    
     ライザの裸を見た頃は、露出願望など薄らとした予感にすぎなかった。
     少しはそういう妄想をしなくもない、けれど実際に裸で人前に出ようなどとは計画さえしなかったのが、思わぬ形で機会が舞い込み、しかも同じ医学モデルの話までやって来た。
     変態めいた露出徘徊をすれば、レイプや誘拐のリスクが付きまとう。
     いや、そういったリスクでなくとも、発覚することで貴族が変態行為を働いていたと知られてしまえば、ありとあらゆる場所に顔向けできない。
     だが、医学モデルであれば、れっきとした依頼形式の仕事である。
     仕事のためにやって来た人間だけに囲まれて、身の危険にまつわるリスクはなく、特別に変態視される恐れも少ない。いわば堂々と裸を見せびらかしやすい状況に、ついつい興味を持ってしまっていた。
    「わかりました。やってみます」
     何を言っているんだろう。
     自分でもほとほと思うが、パティは引き受けてしまっていた。
    「ではパンツを脱いでもらえるかな?」
    「……え?」
     そして、きょとんとした。 
     あの医学書には穴の中まで描かれていたが、まだ話を引き受けただけである。急に最後の一枚を脱げと言われて、パティはまず驚いているのだった。
    「いいかい? 医学モデルはね――」
     校医は語り始めた。
     医学モデルでは一体何が求められ、どこまで人に曝け出すことになるのか、詳細に語ってくることで、実際に自分の恥部を観察され、絵に描かれるイメージが如実になって、パティは恥じらいの色を強めていく。
    「だから、今ここでパンツを脱げるかどうかを見たいわけなんだ」
     性器や肛門の観察が行われることも、きちんと全て説明した上、校医は最後にそう締め括っていた。
    「そういうことでしたら、まあ……」
     言葉の上では軽く引き受けるが、いざショーツのゴムに指を入れ、下げようとしてみた途端、たまらない羞恥が脳に膨らみ、手や肩が石のように固くなる。
     恥ずかしい……。
     当たり前の感情が増幅していた。
     恥ずかしい、恥ずかしい……それは今この格好でも言えることだが、アソコが見えてしまうことへの予感で羞恥心はより膨らむ。風船に急に空気を追加されたかのように、パティは赤らみの熱を上げているのだった。
     しかし、脱ぐ。
     ローライズの黒をするすると下げていき、しだいに前屈姿勢へとなっていく。膝を通過させていき、ついには足まで抜いた時、パティは脱衣カゴにショーツを入れて、丸裸で気をつけの姿勢を取っていた。
     ワレメに視線が来る。
     大切な部分を見られ、当然の羞恥が膨らむのはもちろん、未処理の陰毛をどう思われているかも不安の一部だ。冒険の疲れで、体毛の処理をせずに済ませてしまうから、脇毛の放置に加えて陰毛も伸ばしたまま、黒々とした部分に視線を浴びている。
    「うん。よく脱げたね」
    「あ、ありがとうございます」
     こんなことで褒められて、こんなことでお礼を言うこの状況は何なのだろう。
    「あとは性器と肛門も軽くチェックさせてもらおうかな」
    「え……」
     てっきり、これで済むかと思いきや、まだ確かめる内容が残っていることに、パティは軽く凍りつく。
     こうして、パティは改めて尻を向け、自ら割れ目を開く屈辱を味わった。自分の尻たぶを両手で掴み、左右に広げる恥ずかしさに、今度こそ頭が沸騰しそうなのだった。
     そして、医学モデルの仕事が決まった。
     パティには次の脱衣の機会が与えられる流れとなったのだ。
    
         *
    
     当日、パティは必要以上にスカートを手で気にかけ、風が吹くたびピクっと頭を反応させ、捲れないようにさりげなく押さえていた。
     ノーパンなのだ。
     身体にショーツの後が残らないよう、できればブラジャーも着けないように言われて、スカートの内側には下着がない。万が一にも捲れてしまえば、下着よりも恥ずかしいものが見えてしまう状況は、想像以上に落ち着かない。
     スカートの長さは普段と変わりがないというのに、中身が変わっただけでこの気分だ。
     特に階段を上がる時のことである。
    (あ、あれは……覗こうと……)
     あからさまな気配に気づき、階段の途中でふと肩越しに振り向けば、いかにも挙動の怪しい中年が腰を低めてパティを下から見上げていた。
    「あんな……はっきりと……」
     パティは軽く青ざめていた。
     日頃の生活において、あんな風に露骨にスカートを覗こうとしてくる不審者など、今まで見たことがなかった。
    (もしかして、あんまりスカートを気にしていたから……)
     パティがしきりにスカートを気にかけて、中身が見えることを恐れていたから、それが怪しい人物にも伝わってしまったのか。手で丈に触ったり、やたらに風に反応するところに目を付けられ、悟られてしまったのか。
     いいや、いくらなんでも、人の挙動を傍から見たというだけで、ノーパンにまで気づくはずがない。
     とはいえ、不審な男を引き寄せてしまったのだ。
     その事実に青ざめながら、パティは心の底で興奮する。
    
     もし、本当にスカートが捲れ上がって、ノーパンであることがバレてしまったら?
    
     想像するに、一種のマゾヒズムが刺激されて興奮する。
     見ず知らずの他人の心の中で、あの子は下着も穿かずに出歩くみっともない子だと思われることになる。そうでなくとも、露出癖を持つ変態だと思われる。気づかれることで、何か良くない思われ方をしてしまう。
     そんな状況を思っただけで、何故かアソコが疼くのだ。
    
     昨日を思い出してもいた。
    
     最後の最後で、性器と肛門のチェックと言われ、最初に校医が行ったのは、ぐっと顔を近づけ真正面からワレメを観察することだった。
     ジリジリと視線を照射され、アソコの皮膚を焼かれているような思いに駆られながら、アソコの観察を受けたのだ。
     そして、側湾症の検査でしたように、背中を向けてお辞儀の姿勢に、尻を突き出す形で自らの尻たぶを両手で掴み、左右に開いたのだ。
     肛門を見られる恥ずかしさは言うまでもない。
     それに加えて、毛のことも気になっていた。
     パティの陰毛はショーツのクロッチ位置だけでなく、さらにその下にまで領域を伸ばし、尻にまで及んでいる。肛門の周りにも、いくらかの毛が伸びているはずで、あまり綺麗とは言えないものを見られる気恥ずかしさというべきか、気まずさというべきか。
     尻毛の存在が羞恥心を増幅させたかのようで、パティはまさしく頭が沸騰している感覚を味わったのだ。
     それを今、パティは軽く思い出している。
     もしもスカートの中身が見え、生尻を覗かれてしまったら、などと想像するうちに、生々しい羞恥の記憶が脳裏に蘇ったのだ。
     見られてみたい。
     ほのかな願望をパティは自覚するのだった。