不覚だった。 居眠りをしてしまった。 その教師は体罰教師として恐れられ、様々な噂が立てられている。 テニス部を全国大会に導いた人物で、輝かしい実績を持ちながら、角方に顔まで利くらしい。校長がヘコヘコしているところを見たことがある。弁護士や政治家の知り合いがいると自慢したこともある。 そんな教師の授業で寝てしまうのが、一体どれほど不覚なことか。 赤城由香はテニス部だ。 恐るべき教師のしごきを日常的に受けており、何かあるたびに校庭を何周も走らされる。テストの点数が悪い、最近遅刻が多い、練習にやる気が見られない。隙を見…
最終話「パシャパシャ地獄」
前の話 目次 西連寺春菜は河川敷の橋の下に戻っていた。 円柱を背に、ベストを脱ぐように言われた春菜は、逆らうことができずにボタンを外し、濡れたワイシャツを晒け出す。これだけでブラジャーを公開しているも同然だ。雨水を吸い込み、白い布の下から肌色の見える透け具合は、身体を隠す機能を果たしていない。 中年に擬態した姿を取って、宇宙人は春菜の前にいた。 「へえ? レース付きのブラジャーか。上下きちんと揃えているなぁ?」 これみよがしに下着の写真を突きつけられ、春菜は耳を赤くして俯いた。 「どれどれ?」 好奇心たっぷりの、実に…
第2話「追われる春菜、追う男」
前の話 目次 次の話 西連寺春菜は必死に走る。 行く先々に回り込み、待ち構えている中年に恐怖しながら、やがて河川敷の橋の下へと逃れていた。 誰もいない。 橋の下、雨を逃れた春菜は、太い円柱の影に身を潜め、背中を預けて息を整えていた。無我夢中で走り回り、喉が焼け切れそうなほど、激しく体力を消耗したのだ。足の筋肉が悲鳴を上げ、肩も上下に動き続けた。 「結城くん……!」 今までのパニックが少しでも収まって、やっとのことで助けを呼ぶことを思いつく。真っ先に連絡をしようとしたのが、何故だか警察ではなく結城リトだった。リトなら、…