• タグ別アーカイブ: 内科検診
  • 士堂瑠璃の猥褻診療 ~調査ために悪徳医師に身を捧げ~

     晴らせぬ恨みを晴らす闇の稼業、闇狩人である士堂瑠璃は、でっち上げの検査で少女達を辱めているという悪徳医師の調査を開始する。自らを囮とするため、大人しい少女を演じ、診察の指示に従い続けていくことで、その視線に乳房を晒し、性器や肛門の検査でさえも受けることとなる。


  • 恥辱の校則と学校生 ~青木佳純の入学~

    晴れて合格の決まった学校には、なんと信じられない校則があった。青木佳純の入学は恥辱に満ちた校則を守りながらも、学校生活を送っていくこととなる。


  • ララの診察オイル治療

    作品一覧

    
    
    
     ついに念願が叶ったが、あからさまな顔をするわけにはいかない。
     一人の医師として、その中年は毅然と表情を引き締めていた。願いが叶ったことへの歓喜は押し隠し、表面では真面目で事務的な顔を装うが、心の中では舞い上がる勢いだ。
     前々から思っていたのだ。
     せっかく、彼女と同じ町に滞在して、その手の層向けに開業したのだから、一度くらいは来てくれても良いだろうに、どうして一切姿を現す様子がなかったのか。
     来る日も来る日も現れない。
     もっとも、そう簡単には風邪など引かず、他の病気にもならないのなら、まあ仕方あるまいと納得していたが、理由はそれだけではなかった。
     彩南高校の養護教諭として、一人の宇宙人が御門涼子という名で働いていたのだ。
     ひょんなことから知った事実に、一人の医師として戦慄した。
     つまり、とても敵わない商売敵がいたわけだ。彼女は高校生として生活をしているわけで、わざわざ街角の病院を探すより、何かあったら保健室へ行く方が早かったのだ。それは確かに、街角でひっそりと開業する小者医者になど診てもらおうとは思うまい。
     しかし、今回はこういうわけだ。
    
    「いつもは他のお医者さんなんだけどね。今日はお休みでどこか行っちゃってるみたいなんだよねー」
    
     と、そう語った彼女の口から理由を知った時、何という幸運に恵まれたのだろうと、医師として改めて歓喜した。
     おそらく、こんな機会はもう二度と現れないだろう。
    
     ララ・サタリン・デビルークが下着一枚のみの姿で座っている。
    
     ある日、乳房に急な違和感が出て来た上に、微熱で額も温まってきたという。
     医師として症状を聞き出すと、それは宇宙から来た病原菌のせいだと判明した。地球由来ではないのだから、誰かが持ち込み、広めてしまったのかもしれないが、そういった犯人捜しは医師の仕事には含まれない。
     医師として果たすべき使命、それはあくまで目の前の患者を治すことだ。
     そこで使命感を持って告げたのだ。
    
     ――表皮を直接視触診する必要があるので、裸になっていただけますか?
    
     伝えるや否や、ララは何の疑問もなく、抵抗すらなさそうに服を脱いだのだ。
     確か、衣類はコスチュームロボットで再現しているという話であったが、今日は普通の服を着ていたのか。目の前でシャツをたくし上げ、ブラジャーを外していく。その一枚一枚を脱ぎ去る姿をついつい凝視してしまっていたのが先ほどまでの話である。
     そして今、ララは下着一枚のみを残して椅子に座り、目の前で背筋を伸ばしている。
     桃色の髪を持つ麗しの少女は、やはり肉体もまた美しく、ふっくらとほどよく実った乳房が可愛らしい。形、大きさの美観もさることながら、肩から脚にかけての、全身のすらっとしたラインもよく整っているではないか。
     うっかり、見惚れてしまいそうな魅力が全身から放出されている。
     しかし、一人の医師として、それら欲望めいた感情は、顔には一切出さずにいた。
    「あっ、パンツも脱ぐ?」
     ララは疑うどころか、むしろ別の疑問をぶつけてきた。
     話に聞いていたように恥じらいなく、惜しげもなく裸体を晒しているのだ。そう指示さえしてしまえば、最後の一枚すら脱ぐのだろう
    「いいや、それはいいです。必要な時は改めて伝えますので、ますは乳房をしっかりと、よーく見せてもらいますからね」
    「うん。よろしくね、オジサン」
     ララにとっては、不調のためにメンテナンスにやって来て、調整をしてもらおうとしている気持ちしかありはしない。一人の医師として、これから行う行為はまさにその例えのように、不調を取り除くことでしかないのだが、それ故に合法的に乳房を拝み、じっくりと観察が行える。
    「ええ、お任せ下さい」
     医師は前のめりとなり、視診のために乳房へ顔を近づけた。
     やはり、綺麗だ。
     髪の房が少しばかり垂れかかり、桃色が光を反射しての、毛並みが生み出す光沢の線が横乳の側へと通っている。
     自分がたまたま開業した町に、あのデビルーク星の第一王女がいるとあっては、是非ともその裸体を見てみたいと願ったものだが、この日まで叶うことはなかったのだ。
     念願叶い、こうしてララの乳房を拝んでいると、瑞々しい乳房に対する欲望がムラムラと湧き起こり、思うままに揉みくちゃにしたくなる。
     いいや、いけない。
     ここで行うべきことは、あくまで診察や治療のみである。
     王女相手に度がすぎれば、この仕事を続けていくことはできなくなる。
    (いや、しかしですね。乳房を視診する必要性は確かであるからして――)
     言い訳めいたことを心で呟く。
     実際、医師が自分に言い聞かせている通り、問診から得た情報と、綿棒で唾液を採取させてもらった結果を鑑みるに、必要な行為であることには間違いない。本人も乳房に違和感があるというように、表皮や皮膚の内側など、そういったところにしこりか炎症が出来上がり、それがそのまま病原菌の巣となる恐れもある。
     高度な技術によるスキャンでは、不思議とその病原菌は捕捉できない。
     服を脱いでもらい、肉眼で直接診る行為は、確かに必要なことなのだ。
     もっとも地球の価値観では、こうした診察はセクハラやドクターハラスメントと言われかねないものらしい。だから、宇宙のことなど何も知らない、地球の少女が相手であれば、ある種の緊張感が湧いてならなかったことだろう。
    「ねえねえ、何かわかった?」
     相手がデビルーク星の少女で助かった。
     無論、王女相手というのは肝に銘じておく必要があるにせよ、ここまであっけからんとしている相手である。地球の常識をどこまで学び、どこまで順応しているのかはわからないが、地球基準のクレームがつくことはないはずだ。
    「そうですね。乳房にある違和感というのは、どういった具合ですか?」
    「うーん。皮膚が突っ張るっていうか、何かある? みたいな。ちょっと説明がムズカシーなー」
     唇に指を当て、考え込んでみる仕草の末に、出て来る言葉はそんなものだった。
     痒い、痛い、であれば言語化しやすいが、それらとは異なる違和感なので、適した表現が思いつかないといったところか。
    「視診しての感じを言いますとね。皮膚の表面には何もなさそうなので、触診をしたいのですが」
    「触っちゃうってこと?」
    「そうなりますね」
    「そっかー……。うーん、でも病気は治したいし、お医者さんなら触ってもいーよ」
     他人に胸を触らせることに関しては、それなりに思うところがあるらしい。
     迷う素振りがないでもなかったが、とはいえ本人の許可が出たところで、医師は乳房に両手を伸ばす。柔らかでかつ弾力があり、ふわっと、もっちりとした感触に指を沈めた瞬間に、より一層の歓喜が心に溢れた。
    (おおっ、なんという幸せでしょうか!)
     王女の乳房に触れる機会など、二度とないかもしれない。
     医師はこの機会を逃さぬように――否、れっきとした触診から、皮下に隠れた違和感の正体を見つけ出すため、指先を駆使して丹念に調べ始める。揉むという行為は、あくまで捜索の上で必要な行為に過ぎない。
     これは指や手の平を使った調査であり、捜索なのだ。
     医師は最初の数秒、まずは手始めに指の強弱を駆使して揉んでみる。手の平の中央にぶつかる乳首の感触と、若干のゴムらしさを思わせる弾力を味わいつつ、すぐにタッチを変えて調べ込む。
     指をぷにっと押し込んだ。
     それは端から端へ順々に、地道に皮膚を押し潰していく方法だった。乳房の生え際、横乳のラインに指を置き、くにっと押し込み指先だけで少し揉む。それを数秒行ったら、たった一センチだけ横にずれ、その箇所にもまた押し込む。
     最終的には乳房の表面積を余すことなく、一切を触り尽くす形を目指して、時間をかけて行う触診方法だ。宇宙医学で学ぶれっきとした手法であり、指で何かを見つけ出すか、あるいは本人が何かを訴えれば、その箇所こそが患部である。
     ここに指が来た時にだけ、変な感じがする。
     そういう答えが得られれば、まずは治療への第一歩を進んだことになる。
     しかし、その答えはなかなか得られず、指を触れさせた箇所だけが着実に増えていく。医師は端から端まで触りきると、ラインを上げてもう一度、端から端へ一箇所ずつ押し潰す。まるで列に並べたものを一列ずつ順番に確かめていくように、医師は外から内に到達するたび、下から上へとラインを引き上げながら触っていた。
     ぷにっと押し込む指により、その箇所だけが丸く凹んで、乳房には浅いクレーターができあがる。押し込んだ状態で揉むように指を動かし、数秒感確かめて、それからまた隣へ移っての繰り返しで、端への到達によってまたラインを上げる。
     とうとう、乳首の存在するラインに入った。
     内心では胸をワクワクさせ、楽しみにやっていくが、やはり顔にそれは出さない。あくまで真面目を装って、しかも行為そのものも宇宙医学に存在する方式通りだ。
     女王の乳首に触れることへの恐れ多さはありつつも、それ以上に触ってみたい好奇心の方が上回る。れっきとした診察なのだから、決して何の問題もあるまいと、純然たる事実を言い訳のように心で述べ、自分に言い聞かせながら押し込みを続けていく。
     そして、またラインを上げ、とうとう乳首に指を接近させていた。
    (もう少し、もう少しで……)
     端からのスタートで内側に迫っていき、指はだんだんと乳首に迫る。
     やがて、乳輪のすぐ隣に指を押し込んだ時、その凹みに引きずられ、乳輪の桃色もまた沈んでいた。
     そこから指を離した瞬間、変形からあっさりと元の形へ戻っている。
    (よし……)
     意を決して、乳首の真上に指を置く。
     ボタンでも押すようにして、そこも同じく押し込んで、乳輪全体を万遍なく凹ませるクレーターを作り出すのであった。
    
         *
    
     もう片方の乳房にも、同じ診察を行った。
     端から端への地道なタッチで、一列ごとのチェックであるように一回一回ラインを変えて、下から上へと地道に進める。丸みの上端まで調べ尽くして、その結果として得られた答えは、結論から言うとエステ療法が手っ取り早い。
     特定の箇所だけに指を入れ、そこだけに特別な痛みがあったり、違和感が生じるようなことはないらしい。ただただ、皮膚の下にある張るような感じとやらのみで、それは指で押してどうこうといった変化はないとのことだ。
     あとは微熱だけがララの患う症状の全てである。
     熱はただの併発だろう。
     放っておいれも治るかもしれない病気なのだが、風邪に比べて悪化によるリスクがあり、万が一の場合は重症化する。つまり、風邪と同等と見做され舐められやすく、しかも甘く見た通りに治ってしまうのが大半で、運悪く重症化を引き当てた者だけが、肺か心臓、または両方に後遺症を残すことになる。
     せっかく病院に来たからには、たった一パーセントでもその確率があるのなら、さっさと除去してしまうのが正解だ。
     大元の病原菌を断てばいいわけだが、その治療薬の形態が少々特殊で、錠剤を経口摂取すれば良いわけではない。ララが患っている病原菌は、主に胸部を目指す特性があり、そこに巣を作り始める。
     その巣から全身にかけて、悪いものが分泌され続け、健康が蝕まれていくというのが、重症化した場合のケースである。
     今回、ララの胸にはまだ病巣が作られ始めているだけで、完成しているものは一つもない。それが触診から得られた手がかりの一つであり、ならば手術による切除は視野に入れなくて済むわけだ。
     初期症状のうちから治療薬で治せるのはいいものの、形態が特殊というのは、マッサージを施すことである種の刺激を与えつつ、じっくりと塗り薬を浸透させていくのが、もっとも確実に菌を死滅させる方法という点だ。
     医療行為でありながら、エステやマッサージ師さながらの施術が要求される。
    (ですが、きちんと練習済みなのですよ)
     何故なら、美人の患者がやって来て、そのオッパイを揉む機会に恵まれはしないかと、前々から研鑽を積み上げて、発揮する機会もない技術を身につけてきた。とうとう実践の日が訪れた上、その相手がララであるという幸運を逃す手はない。
    「ねえ、ララさん。治療方法のことなのですが――」
     一人の医師として、治療法の説明を開始した。
     マッサージ療法のような方式を取り入れつつ、それと同時に塗り薬を擦り込んでいくのが確実であること。その塗り薬が一種のオイルであり、今回の菌に対する特効成分が多量に含まれていることなどを伝えると、ララは少しばかり迷う素振りを見せつつも頷いた。
    「治す方が大事だよね。オジサン、お願いね」
     あっさりと受け入れていた。
    「ではそこの台で横になって頂いて」
    「こうかな」
     診察台を指した時、ララは早速のようにそこへ上がって、仰向けとなって手足をだらりと真っ直ぐ伸ばす。気をつけの形になることで、座り姿勢の時よりも下着がばっちりと見えやすくなり、ピンクの布地にレースや刺繍の入った華やかさが目を引いた。
    (これがララちゃんのパンツ……)
     ごくりと、密かに生唾を飲む。
     悟られないように、できるだけさりげなく凝視して、その柄を目に焼き付ける。
    「オイルを持ってきますので、そのままでお待ちください」
    「はーい」
     薬棚から取ってくるため、その一瞬だけ場を外し、小瓶を片手に戻ってくると、ララはすっと目を瞑る。これから始まる治療に対して、心の準備を整えようとしているのが見て取れた。
    (そうだねぇ? これからオッパイをたくさん揉まれるんですからねぇ?)
     ニヤニヤが止まらない。
     表情を硬く引き締めていなければ、今頃はどんなにいやらしく、下品な笑みを浮かべてしまっていることか。
    「ではひんやりしますので、少々我慢してくださいね」
     医師は小瓶の蓋を開け、胸のあいだに垂らし始めた。
     ふわんわりとした膨らみの中央に、つー……っと、オイルの細い柱が形成される。糸を引いて垂れていき、表皮へ触れると同時に円を成して広げていく。その面積を広げるオイルは、注ぎ口から着弾点を繋ぐ形で、ピンと真っ直ぐに伸びた細々とした柱を成していた。
     五百円玉よりも大きな円になったあたりで注ぐのをやめ、医師は小瓶に蓋をしたあと、両手によって塗り伸ばすため、改めてララの乳房に触れ始めた。
     まず指先でオイルを掻き取りつつ、それを乳房全体に塗り広げる。
     両手の指で掻き分けて、内側のカーブに少しばかり広げると、医師はすぐに手の平全体を駆使した乳揉みを開始する。
     最初はただ、揉むだけだ。
     そこに施術的な技法はなく、塗り広げることさえできればいい、そのついでに揉みしだくための手つきによって捏ね回す。オイルが塗り広がっていくにつれ、皮膚に水気が染み込みしっとりと、表面が光沢を帯びてヌラヌラと、輝きを纏い始めていた。
    「んぅ……」
     何かを感じているのか、ララは一瞬だけ小さな声を上げていた。
    (気持ちいいのかな?)
     ララが少しでも感じているのかと思うと、医師はますます興奮しそうになる。
     ひとしきり塗り広げ、隅々までオイルを纏った乳房は、乳首の先端から生え際にかけてまで、綺麗に光を反射している。きめ細かな肌の中から、砂粒よりも小さい光を散りばめてあるように、キラキラと輝いていた。
     オイル濡れの乳房は色香を増し、見ているだけで甘い果実の香りが漂い、それが鼻孔を貫くかのようだった。
    「ではここからが施術となります」
     医師は真っ先に乳首を狙い、指でくりくりと責め始める。
    「んぅぅ…………」
     悩ましげな表情がそこにはあった。
     指でつまんで強弱をつけ、さらに上下に弾き抜く刺激を与えていると、何かを我慢しているような、悩ましい表情で頬を赤らめ、顔がしだいに色気を帯びる。肉体がそういう反応をしめしていることは明らかで、医師は必要以上に乳首を責めた。
     施術として必須とされる分を越え、マニュアル上の目安とされる刺激時間よりも長々と、数分以上はかけて乳首を弄る。
     つまんで引っ張り、次は押し込む。
     さらに捻ろうとするような力を軽くかけ、あるいは指を上下に動かすことで弾き続けて、医師は乳首を弄んだ。
    「んっ、んぅ……んぅぅ……んぅぅぅ…………」
     ララの漏らしている声は、しだいに甘いものを帯びていく。
     火照った頬が存分に色香を漂わせ、吐き出される息の熱っぽさがよくわかる。顔を見ているだけでさえ、鼻孔を貫く香りでも漂っているような、頭のくらっと揺れる錯覚に見舞われて、理性を強く保っていなければ、いつ自分が暴走するかもわからない。
     乱れた呼吸の音と共に、息遣いも大きくなって、胸が肺によってわかりやすく上下に動く。浮き沈みを伴う乳房に指を躍らせ、医師はじっくりと揉み込んでいた。
    「一通り馴染ませたところで、必要な部位を指圧して刺激していきます。先ほど言いましたように、薬の効果を促進して、病気を確実に治すためです」
    「う、うん……わかってるから、大丈夫だよ……んっ、んぁ……あぁ…………」
     ララの色気がさらに増す。
     揉みしだいているうちに、ララはかすかに首を動かし、ほんの僅かであるが髪を振り乱すようにもなっていた。
    「はぁ……はあっ、はぁ……あぁ…………はぁ……はぁ………………」
     息遣いは荒っぽく、見れば太ももを軽く引き締め、さりげなくモゾモゾとさせている。両腕にも落ち着きがなくなって、気をつけのようにだらっと伸ばしている両手の先で、意味もなく指を動かして、やたらに開閉させていた。
     表情を見ていても、唇を引き締めたり、頬を固くしてみたり、何かを我慢している様子がみるみるうちにわかりやすくなっていく。
     医師はなおも揉み続けた。
     指圧という建前を守るため、頭の片隅から施術マニュアルの内容を引きずり出し、刺激するべきツボの箇所へと義務的に指を入れている。しかし、意味のある箇所へやりつつも、ほとんど揉んでいるだけだった。
     指圧そのものは、こうもあからさまに揉みしだき、手の平全体を駆使して味わう真似などしなくても行える。それをわざとらしく揉みこんで、明確に味わっているわけなのだ。
    (……物足りない)
     医師はそう考え始めていた。
     しかし、いくらなんでも本番までは画策できない。さすがに後のことを考える理性が働いて、陵辱に走ることにはブレーキがかかってしまうも、他に何かできることはないものかと、医師は思考を巡らせる。
    (そうだ)
     確か、今回の病原菌には類似型があり、そちらの場合は性器に移動する特性がある。男性の場合は亀頭や睾丸、女性の場合は陰唇やクリトリスなどに病巣が作られて、その部位にはしこりの固まりが発生する。
    (よし、口実はある)
     医師はタオルを手に取って、オイルを拭き取り始めていた。
    「ララさん。乳房への診察はこれで終了となります」
     拭きながら、そう伝えた。
    「ホント? よかったー!」
     今まで我慢を帯びていた表情は、その瞬間にパっと明るいものへと切り替わる。ここまで中年の異性に揉まれ続けて、体中に力が入っていたところ、やっと安心できたといったところか。
    「ですが、念のため。もう一箇所、診ておきたい場所があるのです」
    「えー? どこどこ?」
     文句でもありそうに、ララは唇を尖らせている。
    「性器です」
    「性器って、アソコってこと?」
     ララは即座に不安を帯びていた。
     明るく変わっていた表情は、直ちに曇ったものへと移り変わっていた。
    「ええ、あなたはデビルーク星の王女様とお見受けします。その大切なお体に万が一があってはなりません。もちろん、お求めであれば理由はきちんと説明させて頂きますよ」
    「うーん。でもなぁ……うーん……」
     ララは太ももをさっと引き締め、両手をへその下までやったと思えば、指を絡ませモジモジとした仕草をする。
    「よいのですか? 大切な性器に万が一があった場合、いつか大切な人との時間を過ごす際にも支障が出ますが」
    「うそ! それはダメ! わ、わかった! アソコも診察して!」
     どうやら、真に受けたらしい。
     万が一のケースという、それ自体の嘘はついていないが、アソコの診察は本来必要ないものである。病原菌の種類は完全に特定できており、乳房の診察のみで十分とわかっていながら、わざと別の可能性を提示したのだ。
     ララはその嘘に気づいていない。
    「ではパンツを脱いで頂きます」
    「そ、そっか……パンツも、取らないとね……」
     さすがのララも強張っていた。
     下着一枚の格好が平気だったり、乳房の視診まではあっけからんとしていたのに、アソコを見せるのはララとて恥ずかしいらしい。下着のゴムに指を入れ、引き下ろしていく際の、緊張に強張った表情は、今までにない反応だった。
     脱がせきり、そしてポーズを取ってもらう。
     アソコを確認する以上、もちろん股を大きく開き、M字にしてもうらのだ。そのポーズを取る際の、赤く染まり上がった表情といったらない。
     アソコに顔を近づける。
    「いや…………」
     小さな小さな悲鳴が聞こえた。
    「では失礼して」
     指で中身を開いた時、そこにあるのは美しい肉ヒダだった。薄桃色で血色が良く、膣口に張った白い膜の存在から、処女であることが確認できる。しかも僅かに湿っており、肉体がそういう反応をしかけている様子であった。
     さらにクリトリスの部位を見てみると、包皮の中身が突起して、数ミリほどの肉芽が飛び出ていた。
    (これがララの性器……)
     医師はしっかり、目に焼き付けた。☆
     最初は視診のつもりになりきって、ありもしない患部を一応は探していたが、もはやポーズ取りなどやめて、医師は完全に視姦していた。
     顔を近づけ至近距離から、これでもかというほど視線を注ぐ。
    
     かぁぁぁぁ――
    
     と、見上げれば、燃え上がった表情がそこにはあった。
     歯をぐっと食い縛り、さすがに屈辱を感じている様子のララは、頬を固く強張らせ、表情筋をぷるぷると震わせている。一分一秒でも早く終わって欲しいと、切実に願う気持ちが読めるかのようだった。
    「肛門も綺麗ですね」
     医師はついでのように皺の窄まりに目をやった。
    「やっ……! そこは関係――」
    「まあまあ、これも診察ですから」
    「う、うぅ……」
     診察の一言で、ララは簡単に押し黙る。
     静かに屈辱を堪え、ひたすら辛抱するばかりと化していた。
    (そうかそうか。穴は恥ずかしいのですね?」
     医師はニヤニヤと症例写真という口実を思いつき、カメラまで使って羞恥を与えた。撮影したいと告げた時の、引き攣った表情といったらなく、しかし医学のためと押し切ってシャッター音声を執拗に聞かせてやった。
     撮影時の、苦悶に満ちた表情といったらない。
     裸体を平気で晒したララが、まさかここまで恥じらってくれるとは、意外でならないあまりに顔さえ写したくなってきて、角度やズーム機能の工夫を駆使して、どうにか表情の映り込む写真も撮って、ようやくララを診察から解放する。
    
    「ふー……。最後は恥ずかしかったなー」
    
     終わりを告げ、下着を穿き直している後ろ姿を見ていると、生えた尻尾が左右に揺れる。
    「でも、これで良くなるんだよね」
    「もちろんです」
    「よかったー。ありがとねっ、オジサン」
    (おお、なんと……!)
     なんと、特をした気分だろうか。
     こちらは一体、どれほど余計なことをして、必要以上の時間をかけながら、できうる限り楽しんでいたことか。
     それにも気づかず、感謝までしてくるとは。
     純粋な少女を騙してしまったような罪悪感と同時に湧くのは、そこに興奮をそそられる背徳感でもあるのだった。
    
    
    


     
     
     


  • 逢坂大河 強制健康診断

     学校での健康診断の時、病欠をしてしまった大河は、別に日程を設けて病院で受けることになるのだが、そこにエロオヤジでいっぱいの衆人環視が形成されていた。

    第1話 まずは制服を脱ぎましょう
    第2話 次に身体計測を行います
    第3話 内科検診を始めます
    第4話 締めの羞恥はアソコと肛門


  • 遠野秋葉、保健室にて

    
    
    
     転校生の立場では知る由もなかった。
     その人物は女子高生と接するために養護教諭になったような人間で、もっぱら女子からの評判が悪いことなど、外の人間は知るはずもない。
     お尻を触られた。胸を触られそうになった。
     具体的な被害の声も数件ほど上がっており、内々では問題視の向きこそあるものの、校内で起こったことを大ごとにして、世間を騒がすようなことにはしたくない。事なかれで済ませたい学校特有の体質から、未だ警察やマスコミが出向く事態には至っていない。
     しかし、評判は確かに悪く、初対面であるはずの少女からしても、あまり印象が良いとは言えなかった。
    
    「先生、どうぞよろしくお願いします」
    
     保健室の中、黒髪の清楚なお嬢様が頭を下げる。
     皺一つ無い制服の似合った身なりの良さ、この学校には二人といない美貌に加え、頭を下げる動作一つを取っても、その立ち振る舞いは洗練されている。礼儀作法の板についた彼女の所作は、この少女が遠野財閥のお嬢様であることの説得力をいくらでも高めていた。
     彼女の名は遠野秋葉。
     まだ若いが、亡き父に代わって財閥当主を務めている。
     その当主たる秋葉が転校して、お嬢様学校からわざわざ平凡で一般的な高校へ転入しようというのだから、驚く者は少なくない。
     手続きの際もやたらと理由を気にされて、何度か尋ねられている。養護教諭もまた内心では事情に興味を持っているところだが、しかし彼の眼差しは、そんな個人の事情よりも別のところばかりに向けられていた。
    (へへっ、可愛いなぁ?)
     何故、こんな学校に。
     そんな疑問はすぐさま薄れ、それよりも彼は秋葉の容貌の方に興味を持つ。
     そして、その眼差しこそ、秋葉から見た養護教諭の第一印象を悪くしていた。
     ただでさえ、彼は顔が不細工で体格も悪い。頬の大きく膨らんだ肥満の中年で、首に脂肪のたるみまで作ったいかにも不健康な外見で、髪も薄くなっている。脂の多い体質なのか、皮膚の表面には何かテカテカとしたものが滲み出ており、頬も額も光りやすい。
     皮膚の色合いのせいか、目にクマが出来て見えるのも、不健康な印象を強めている。
     これでにったり気色悪い笑みを浮かべて、あまつさえ鼻の下まで伸ばしていては、視姦めいた眼差しを前にして、思春期の少女が身震いするのも無理はない。
    (いやらしいわね。気持ち悪い)
     初対面で失礼なのはわかっているが、はっきりと気持ちを伝えてやろうかと、本気で考えるほどだった。
     もっとも、秋葉はそれをおくびにも出さない。
     単に目つきが不快な分には、やはり初対面の礼儀を守り、正しく振る舞う。内心ではさっさと養護教諭の前から失礼したいとは思いつつ、しかしここには身体検査を受けに来ていた。
     元から在籍していた生徒は、健康診断や身体測定をとっくに所定の時期に受けている。
     だが、秋葉は違う。
     もちろん、前の学校では受けているが、転入手続きの際に言われたのだ。他校で受けた身体検査のデータを使い回すことは出来ないので、ここで新たに受け直す必要がある。面倒ながらこれも手続きの一貫と思い、そして今日は検査を受けにやって来た。
     つまり、この養護教諭は検査担当者だ。
    「へへっ、さてさてお嬢さん。今日はこの通り、利用者は誰もいなくてね。どうせだ、少しお茶でもどうかな」
    「いいえ、そんな。どうぞお構いなく」
    「いやいや、ちょうど紅茶の準備をしてあってね。ささ、どこかその辺りに座ってくれたまえ」
     この保健室において、座れと言われてパっと目につくものといったら、テーブルの周りに適当に置かれたパイプ椅子だ。背もたれも付いていない、丸いパイプ椅子へとひとまず座ると、秋葉の前にはきちんと皿に乗せてのティーカップが置かれるのだった。
    「では遠慮なく頂きます」
     秋葉は取っ手の部分に指をやり、つまむような持ち方で持ち上げる。カップの縁に口をつけ、まずは一口啜ってみるに、秋葉は眉間に皺を寄せそうになっていた。
    (なんですか。この味は……)
     自分がどんな表情をしているか。
     直ちに気づいて顔を繕い直すのだが、味に対する気持ちは変わらない。庶民の用意する紅茶
    が秋葉にとって安物になのは、もちろん仕方のないことだが、それにしてもおかしいのだ。
     何かおかしなものでも混ざったような苦味と、喉に通した後に現れる後味は、単に不味いと評するのは正確ではない。おそらく、これは純粋な味ではない。隠し味のつもりか何かで、余計な物が混ざった味だ。
     ただお湯で茶葉を広げて適当に煎れさえすれば、それだけで良かった。
     琥珀の煎れた紅茶には敵わないことなど、最初から頭ではわかっていた。
     不味くさえなければいいつもりで飲んでみて、不味かったとあらば、あれこれ指摘してやりたくもなる。初対面の先生だから抑えるが、これが兄の煎れた紅茶だったなら、きっと口うるさくしていたはずだ。
    (残すわけにもいかないわね。まったく……)
     仕方なく飲みきって、皿の上にカップを置く。
    「ごちそうさまでした。先生」
     表面的には上品に振る舞って、心の中では早く舌に残った味が消え去ることを願っていた。
     秋葉が紅茶を飲む間、養護教諭は使用器具や書類の準備をしていた。
     丁度良く準備は済み、各種検査を開始する。
    (本当に、嫌な目つき……)
     人の体つきを品評でもしていそうな、品定めのような目つきが不愉快だった。
    
         *
    
     まずは聴力検査に始まって、秋葉は機材を耳に押し当てる。音が聞こえるあいだはボタンを押し、そうでない時はボタンから指を離しておく。この方式による検査を済ませた後、視力検査をやり、そのいずれも書類への記入は中年の手で行っていた。
     秋葉と養護教諭の二人きりなのだから、当然といえば当然だが。
    (待って、ということは……)
     次は身長を測ると言ってきて、秋葉は身長計へと向かって行く。
     一時的に上履きを脱ぎ、その両足で台に乗り、柱に背中をつけて背筋を伸ばす。バーが頭に触れた時、一六〇センチの数字が書類の中に書き込まれる。
     身長とくれば、次は体重に決まっていた。
    (体重……)
     秋葉は体重計に近づくが、その上に乗るのを一瞬躊躇う。
     重くなっていたら嫌だ。その重い数字を男に知られるのも嫌だ。年頃の少女らしい心理が働き、乗せかけた足を秋葉は一度引っ込めていた。
    (仕方、ありませんね。こんなことで駄々を捏ねては、何歳児かっていう話ですし)
     凛は体重計に乗る。
     その直後、養護教諭の妙にニヤニヤとした顔に気づいた。
    「……な、なんですか?」
     思わず声に出してしまっていた。
    「ああ、いいや? 何でもないよ?」
    「そうですか」
     それにしてはニヤついていたような、と、本当ならそう言葉を続けたいところ、秋葉はそれをぐっと抑える。
     気づけば、鳥肌が立っていた。
     この男は嫌だ。生理的に受けつけない。
     顔を合わせた瞬間から今の今まで、妙に唇が吊り上がっていたり、目がニヤニヤと怪しげになっていたりと、はっきり言えば気持ち悪い表情が多いのだ。そして、顔立ちや体格の悪さが表情のおぞましさに拍車をかけ、背筋には寒気まで走る始末だ。
     気温はそう低くはないのに、ぶるっと震えそうになる。
    (早く済ませましょう。早く終われば終わるほど、早めに出ていけますから)
     この養護教諭から少しでも早く離れることを考えて、秋葉は体重計に上がっていく。
     重量に応じて針が動き数字を示す。下を向いた秋葉が見た体重は、四四キロという一キロだけ痩せた数字であった。
    (あ……)
     嬉しい。
     反面、痩せればその分、体の熱量が減るような気もして喜びきれない。
    「さ、お嬢さん。次は目とか喉を診ていくからね」
    「はい。よろしくお願いします」
     今度は椅子に座って向かい合い、病院で受ける診察さながらに、秋葉はまず眼の状態から診てもらうことになる。
     養護教諭はライトを片手に、一切の遠慮無く頬に手を当ててきた。
    
     ぞくっ、
    
     細胞が騒いだ。弾けるように鳥肌が立つ。
     落ち着かない。
     体の内側に見えないモヤモヤの塊が生まれ、それが背中を這い回っている感覚。
     頬にじわじわと染み込む手の感触。手の平の温度が皮膚に伝わり、細胞の隙間に浸透している。手汗が肌に移ってくるのもわかり、それさえ肌に染みているのかと思うと、体中が震えてきそうだ。
     養護教諭は指で下まぶたを裏返し、ライトで照らして血色を確かめる。
     右手が離れ、秋葉の向きでは左の頬が解放されるが、手のべったりと貼りついていた感触は、見えない手形となって残っている。養護教諭の手の形そのままに、脂や菌を肌に付着させられたような感覚がする。
     もう片方の手で、養護教諭は反対側の頬にも触れ、やはりまぶたを下に引っ張る。
     顔が迫っていた。
     近い、近い、近い――先ほどよりも、距離が近い。
     この静かな保健室では、一度でも意識してしまうと、自分自身の呼吸の音さえ耳障りになってくる。まして、それが他人の息遣いで、しかも肌に当たってくるともなれば、不快感はより大きいものになってくる。
     口臭からして、顔を顰めずにはいられない。
    (嫌っ、早く済ませて……!)
     目が合っている。
     眼を診ているのだ。視線が重なるのは当然だ。
     だが、見つめ合うかのようで気まずい。いつまでも耐えきれず、秋葉はつい視線を横へ背けてしまっていた。
    「ああ、こっちを診てもらえるかな?」
     喋ってきた。
     息が、臭い。
     その臭う息が、肌に触れてくる。
    「え、ああ、はい。そうですね、すみません」
     落ち着かない。そわそわする。
     秋葉は無意識のうちに拳を握り、膝の上でしきりに強弱をつけていた。握力を緩め、強め、拳を収縮させ続ける。肩もやたらにモゾモゾと、落ち着きなく動いている。
     見つめ合えば、当然その顔立ちが目に入る。
     こんなにも近くから、ニヤついた眼差しが向けられる。
    「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
     養護教諭の息遣いだった。
    (何、を……そんなに……嫌っ、気持ち悪い……)
     秋葉は気づく。
     鼻の下が伸びきって、荒っぽく熱の籠もった呼吸音からも、興奮が伝わって来る。
     そう、興奮。
     この男は興奮している。
     性的な目を、向けられている。
     一度それに気づいてしまうと、もう元の気持ちではいられない。
     何にそこまで時間がかかるのか、いつまでもライトで照らしてくる。わざと時間をかけているのだ。
     今の養護教諭が楽しんでいるのは、明かりに対して瞳孔が収縮する反応だ。照らせば反応することが面白くて、彼は人の瞳孔で遊んでいる。そうした細かな情動まで、秋葉は決して読み取っているわけではない。
     ただ、この男の興奮だけは伝わっている。
     この瞳に、醜い顔をいつまでも映していたくない。
     気持ち悪い、肌が穢れる。
     汚染、される。
     手で触れられている部分から腐食が広がり、体中に汚染物質が拡散してくる。体を蝕まれてしまう。嫌悪感というものは、それほどの錯覚を生み出すらしい。幻の感覚だとわかっていても、頬から顔の全体へ、首へ、肩へ、腕へと伝え広がるものに、筋肉のそわそわと落ち着かない箇所が一つ一つ増えていく。
     やっと、手が離れた。
     どちらの頬も、汚い手から解放される。
     汚い、と、
      体がそう認識していた。
     汚染物質を付着させ、細胞を侵食してくる根源のように、心と体が見做していた。
    「喉を診るからね」
    「……は、はい」
     口を開ける。
     ライトで照らされ、口内を覗き込まれる。その瞳が喉の状態を観察して、秋葉の具合を確かめている。
     やけにじっくりと見ていた。
     こうした診察は、この人生で何度か受けてきているが、その時にはなかった感情が今はある。醜い眼差しで舌の根まで観察され、丁寧に診られているのは、何か……嫌だ。
    「いーってしてごらん?」
     歯並びまで診ようとしてくる。
    (本当にいつまで……いい加減に……)
     その時だった。
    「!」
     目を見開く。
     気づけば手首を掴まれ、持ち上げられていた。親指の当て方で、それが脈を取るためだとわかるのだが、もはやこの男に対しては、血流を把握されることさえ嫌悪感の元になる。人の肌に触って、セクハラを楽しんでいるに違いないせいで、こんなことが屈辱に思えてきた。
    「うーん。ちょっとわかりにくいね」
     わざとらしい。
     手首ではわからないことにして、一体どうしようというのか。
    「首の脈でいかせてもらうよ?」
    「な……!」
     今度は首筋に触られた。
    
     ぞわぁぁぁぁ…………。
    
     毛穴が大きく広がっていく。
     もちろん、錯覚。嫌悪感で毛穴の大きさは変わらない。だが、感覚だけは確かにある。この男のせいで、皮膚に穴という穴が空き、見るにおぞましい状態となっていく。そのイメージが強く湧くのだ。
    
     どくん、
    
     心臓が弾む。
     首は、この場所は、急所だ。
     この男の危険性は、そういう種類のものではない。人を殺しもしなければ、生き血を啜ろうとすることもない。
     だが、心がこの男を拒否している。
     拒絶対象に首を触られ、本能が剥き出しになりそうだった。遠野の血が全身で騒ぎ、この男を排除してやりたい衝動に駆られる。
     秋葉はふと気づく。
     黒髪の一房、肩にかかった毛先が色を変え、赤く染まりつつあった。
     違う、駄目だ。
     セクハラだけで命まで奪うのは間違っている。こんなところで遠野寄りのものを表に出すわけにはいかない。
    
     どくん、どくん、
    
     心臓は弾んでいる。
     信号を放っているのだ。
     外敵がいる、危ない、排除しろ。
      危機を伝える信号が駆け巡り、体中いたるところの細胞が騒ぎ立てる。騒げば騒ぐほど、毛先から徐々に染まりつつ赤色は広がってく。
    (駄目……駄目……)
     自分にそう言い聞かせ、必死に平常心を保つ。
     どうして、こんなセクハラ男に気を遣い、自分を抑えなくてはならないのか。その理不尽さに対する怒りさえ、秋葉は抑え込んでいる。
     首の脈だけではない。
    
     ぴと、
    
     と、もう片方の手で、秋葉の手の甲に指を置く。
     人の肌触りを楽しんでいるのがわかる。
     だから、ますます理不尽に対する思いは強まる。こんな男に対して、いつまで我慢をすればいいのか。どうして耐える必要がある。
     どうして、どうして、どうして……。
    「はぁ……はぁ………………」
     秋葉の息遣いは荒い。
    「はあっ、はぁっ、はぁ……」
     そして、養護教諭も荒い。
     だが、同じハァハァという息遣いでも、秋葉と中年では大きく違う。爆発しそうな不快感を抑え、平常心を保とうとする秋葉と、可愛い女の子に対する変態的な興奮が滲み出ている中年の違いがそこにはある。
     音だけなら、人からすれば似たようなものに聞こえる。
     その似たような音に、不思議と違いがあり、人はその違いを感覚的に判別できてしまう。
     養護教諭は唇の端からヨダレさえ垂らしていた。あからさまな目つき、伸びきった鼻の下には留まらなかった。
     今この現場を人に見せれば、この中年を危険人物と判定するだろう。
     そして、そんな危険人物と秋葉は二人きりで過ごしていて、肌には指が触れている。遠野の血などない、ただの普通の女の子だったとしても、体の内側から放たれる信号が全身に対して危機感を訴えていただろう。
    「脈は十分かな」
     指が離れる。
     離れても、皮膚に何かが付着して残ったような不快感がある。
    「聴診器を使うからね。服をちょっと、持ち上げてもらえるかな」
    「……え、ええ」
     声が強張る。
     きっと警戒心を隠せていない。
     信用できない男の手が、乳房と距離を縮めてくる。その状況ほど警戒心を煽るものはない。自らのセーラー服を持ち上げて、ヘソを出すだけで赤らみながら、養護教諭の聴診を受け入れる。
     本当は拒みたくてたまらない男の手が、服の隙間に入り込み、下着の上から聴診器を当ててくる。乳房のあいだ、胸の中央。聴診器をつまんだ手はそこにある。中年の手の甲は、セーラー服のその部分だけを微妙に押し上げ、膨らませている。
    
     どくん、どくん、
    
     心臓は高鳴っている。
     遠野の血を騒がせようと、鼓動は激しい。
     今、それを聴かれている。
    
     どくん、どくん、どくん、どくん…………。
    
     心臓のすぐ近くに、警戒対象の手。
     まさか、わかっている。
     この男の持つ危険性は、痴漢、セクハラといった種類のものだ。鋭い爪が伸びてきて、心臓を抉り抜くかのような危険性などではない。
    (駄目よ……抑えて、でないと、せっかく兄さんと…………)
     転校前に通っていたお嬢様学校は、わざわざ屋敷から通うには距離がありすぎる。よほど早起きしなければ遅刻する。それを兄の学校に転校して、生活リズムを変えられるようにしたのである。
     朝食を一緒に摂ることも、登下校を共にすることも、これからはできる。
     だから、こんなところで……。
    
     くらっ、
    
     眩暈がした。
     一瞬、意識がぼんやりする。
     幸か不幸か、養護教諭が指を伸ばし、下着の表面に触れたタイミングは、それと一致していた。下着を触られたことに気づき、不快感を本当に爆発させるには至らずに済んでいた。
    (まさか、反動で……)
     無理をして、意識的に抑え込もうとしたせいか。
     意識がぼんやりとする理由を、秋葉自身はそのように捉えている。
    
     ……にぃ、
    
     秋葉は気づいていない。
     養護教諭の口角が一体どれだけ吊り上がり、その表情はより醜いものになっているのか。眩暈に夢中で、すぐそこにある顔付きに気づく余裕がない。
    「お嬢さん。診察の上では異常がありそうには見えないけど……」
     中年はニヤニヤしている。
     声さえ、興奮で上擦っている。
    「少し体調が悪そうだ。次は心電図をやることだし、ベッドに横になるといい」
    「…………」
     秋葉は動かない。
     ただベッドに視線をやるだけで、立ち上がろうとしない。もちろん眩暈は気になる。今すぐに休みたい欲求は大いにある。
     問題はこの男だ。
     信用できない男と二人きり、この状況でベッドに入り、眠りたい女の子などいない。
    「心電図、あるからね」
     養護教諭はそう言葉を繰り返す。
    「…………はい、わかりました」
     ようやく、立ち上がる。
     抵抗感を抱きつつ、ベッドに上がり、横になり、秋葉は天井を眺めた。
     すると、すぐさま手首に、足首に、心電図の器具が取り付けられる。もうこれさえ終われば帰っていい。心電図のあいだだけ、この瞬間だけ体を休め、測定が終わった瞬間に起き上がろう。
     そして、一刻も早くこの男から距離を取る。
     そう考えて、しかし、どうしようもなく意識は…………。
    「あ、れ……」
     持たない、薄れていく。
     沈みゆく意識と共に、秋葉は眠りについていた。
    
         *
    
     眠っている。
     少女が、ぐっすりと眠っている。
    「よしよし、効いたみたいだね」
     養護教諭は手を伸ばし、肩を掴んで揺すってみる。最初は軽く、しだいに強めに、ついでに頬もペチペチと叩いてみて、眠りの深さを確かめる。目覚める様子がないとわかると、その顔を一気に欲望に染め上げた。
    「げへっ」
     靴下を引っ張り抜き、匂いを嗅ぐ。
     その臭気を鼻孔に吸い上げ、歪んだ欲望を満たすにつれて、唇から流れるヨダレの量は増えていく。誰が見ても醜い獣と化した表情で、男は秋葉の服を脱がしにかかる。
     身動きをしない人間から服を取るのは、それなりの労働となる。
     眠っている分、秋葉の体重が衣服にかかり、引っ張りにくくもあるのだが、養護教諭は労力を惜しまない。腕を引っ張り、仰向けから横向きに変えても起きないことに気づいてからは、ブラジャーのホックさえ問題なく取り外し、いよいよ秋葉は全裸となった。
     ベッドに上がり、秋葉を味わう。
     乳房に吸いつき、ちゅぱちゅぱと音を立て、ベロベロと舐め回す。どちらの乳首も唾液で汚し、その小さな胸を揉みしだく。性器にも指をやり、ワレメを丹念に弄んだ。
     時間をかけて味わっていた。
     薬の効果は何時間ほどが目安になるのか、最初のうちは意識しながら楽しむが、夢中になっていくうちに忘れていき、いよいよ養護教諭自身も裸になる。全身で秋葉を味わおうと抱きついていた。
     仰向けの秋葉に対して、上から体重を押しつけて、たまらない密着感を彼は楽しむ。
     唇を重ね、頬張った。
     舌先でベロベロと、その閉じ合わさった唇を激しくなぞり、さらには押し込む。舌の表面を伝って流れる唾液を彼はそのまま流し込み、飲ませてやる優越感まで楽しんでいた。
     そのうち、唇の隙間に舌を差し込む。
     押し込もうとする力によって、閉じ合わさった歯が開く。養護教諭はそのまま口内を蹂躙した。舌先を反り上げて、歯の裏側さえなぞった挙げ句、ついには舌と舌とが触れ合っていた。
     全身が歓喜に震える。
     細胞の一つ一つが悦びに満ち溢れ、興奮のあまり目が血走る。肉棒が根元から疼くことなど言うまでもなく……。
    
     いいや、挿入はまずい。
    
     薄らとした理性が働き、彼は挿入だけは控えていた。
     しかし、その胴体に馬乗りになり、自らの手でしごいて白濁を振りかける。精液によって乳房を汚し、さらには手で塗り伸ばして擦り込んで、自分のエキスを秋葉の肉体に浸透させる優越感を楽しんでいた。
    「じゅぶぅ……」
     また、キスをする。
     飽きもせず頬張って、その唇が離れるたびに糸が引く。秋葉の口回りは養護教諭の唾液に汚れ、その唾液が皮膚の表面で乾いた上から、さらに唾液は追加され続ける。
    
     カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、
    
     それは時計の針の音。
     夕暮れの校舎の中には、もう部活動に励んだ生徒も帰宅を始め、校舎全体から喧噪が薄れていく。保健室に届く物音などなくなって、ついにはただの時計の針がうるさいほどの静寂に包まれていた。
    
     カチッ、カチッ、カチッ、
    
     秒針が一周する。
     ようやく、中年は満足してきていた。
     白衣に着替え、それから秋葉にも服を着せてやり、睡眠薬の効果が切れるまで静かに待つ。
    
         *
    
     秋葉は目覚めた。
    「あ……れ…………私、いつのまに…………」
     手で頭を押さえながら、ベッドから身を起こす。
     ぼんやりとした脳が徐々に意識をはっきりさせ、そして覚醒しきった秋葉には、すぐさま戦慄が浮かんでいた。
    
     ぞくっ、
    
     その寒気は、あるいは秋葉自身の想像が生み出したと言えはする。
     だが、この保健室でセクハラ魔と二人きり、その上で眠ってしまったことは真実だ。何をされていてもおかしくない、その想像は決して間違ったものではない。秋葉は慌てて自分自身の体を探り回した。
     自分に対してボディチェックをしたところで、キスや痴漢の痕跡は目に見える形では残らない。
     頭ではわかっていても、それが秋葉の反射的な行動だった。
    「ああ、やっと起きたね。お嬢さん」
     ビクっと、バネに弾かれたように、秋葉は勢いよくそちらを向く。
     養護教諭は何食わぬ顔でペンを置き、今まで打ち込んでいた書類仕事を中断していた。
     そこに邪悪の気配はない。人にいやらしい視線を向ける際の、セクハラ特有の嫌な感じはしてこない。
     その理由は、簡単。
     彼はもう、既に満足しきっている。
     だからルックスが醜いなりに爽やかで、落ち着き払った大人の顔をしているのだ。眠っていた秋葉には、そんなことがわかるはずもなく、だから先ほどまでとの雰囲気の違いに困惑していた。
    (こんなにまとも、でしたっけ……)
     首を傾げたくもなってくる。
     しかし、あのいやらしい目つきが消えたおかげで、秋葉の想像は薄れていた。信じたくないが故の、心の防衛反応でもあるにせよ、何も起きていないに違いない。自分が眠っているあいだ、先生らしく仕事をしていたに違いない。
     そう、思い込むことができた。
     ならば話は簡単だ。
     痴漢やセクハラの追及を考えることはなく、むしろ眠ってしまい迷惑をかけたお詫びを言い、いくらかの言葉と挨拶を交わして保健室を去っていく。
    「遅く、なってしまいましたね」
     もっと早く帰るはずだった。
     しかし、窓の外を見てみれば、赤焼けの空が夜の紫色へと移り変わろうと、そのグラデーションを地平線から浮かべている。
     いくらかすれば、もう本当に夜になる。
     早く、帰らなければ……。
    
     ……ぞくっ、
    
     しかし、廊下を進んでいる最中、またしても寒気が走る。
     秋葉は勢いよく振り返り、するとその視線の先にあったのは、さっと部屋の中へ引っ込む白衣の影だった。
     見送りのつもりでもあったのか、今まで秋葉の背中を見ていたらしい。
    「気持ち悪い…………」
     おぞましさに鳥肌を立て、我が身を抱き締めながら、秋葉は上履きから靴に履き替え、早足で学校から去って行く。
     一匹の獣が、獲物に舌なめずりをしていたように思う。
     やはり、寝ているあいだに胸くらいは触られていたのでは……いいや、考えたくない。考えないようにしておこう。
     頭の中から振り払い、秋葉はそして家に帰った。