第3話「感度開発」

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 佐矢野柚葉は自己評価の低い少女であった。
 実際に地味で垢抜けないルックスをしていたし、性格が明るいわけでもなかった柚葉は、意地悪で陰湿な女子さえいれば、イジメの対象にもなりかねなかった。
 自分よりも女子はいくらでもいる。
 いや、顔ばかりの問題ではない。
 小学生の頃、クラスの中にブスがいた。あまり言っては失礼だが、自己評価の低い、自分に自信を持てない柚葉でさえ、自分はあれよりは可愛いと断言できる、崩れに崩れた醜悪な顔立ちの女子が、ブスマニアらしい男と出会って恋仲になっていた。
 考えてもみれば、自分の顔の悪さにめげず、明るく振る舞い、からかってくる男子を追いかけながらも、みんなと打ち解け合っていた。本気で悪口を言っていた男子達も、内面には愛嬌のあるその子と、いつしかイジメというよりじゃれ合うことが目的で「ブス! ブス!」と連呼していたように思う。
 積極的に人に話しかけていこうとか、明るく振る舞おうだとか、そういったことは考えもせず、ただ教室で大人しく本を読んでいるだけの自分とは違う。
 社交性が別格ではないか。
 そう思うと、ルックスなど関係なしに、自分はあの子よりも格下だったと、ますます自信を失い、大人しくなっていた。
 趣味は読書。
 雰囲気の良い図書室で過ごすのは大好きだ。
 だから日々通っていたが、するとしょっちゅう見かけるクラスメイトの安藤洋の存在が、日に日に気にかかるようになっていた。自分と同じくらい大人しく、けれどスラっとしたスタイルの持ち主で格好いい。
 そういう男は、だいぶ柚葉の好みに合っていた。
 サッカーでも得意な明るく爽やかなイケメンが、少女漫画なんかには出て来るし、中学には実際にそういうタイプの男子がいて、当然のようにモテていた。
 だが、違う。そういう男は好みの範疇ではない。
 別世界の住人に思えるから、なのだろうか。
 もっと、自分の領域と近い方が安心できる。
 はしゃがず、騒がず、寡黙な男が自分と同じように図書室通いをしているのは、まるで自分の生きる世界に思わぬ異性が現れてしまったようでドキドキして、そのうち彼を目で追うようになっていた。
 高校生になり、告白された時の衝撃といったら、どれほどのものだったか。
 天にも舞い上がる気持ちでOKして、デートを重ねていくうちに、本当に心の波長が一致していることに気づいていく。何せ、特別な気など使わなくとも、疲れていればそうなのだと気づいてくれて、洋に元気がない時も、柚葉にはそれが何故だかわかる。
 そして、学校生活や勉強や家族のことで、嫌な気持ちになることがあっても、彼と一緒に過ごしさえすれば、魔法のように心の曇りは晴れてしまう。
 お互いがお互いの拠り所となっていき、柚葉にはもう洋のいない人生が想像できなくなっていた。
 もっと深く繋がりたい。
 ずっと、ずっと、洋と一緒にいたい。

 ……彼と深く愛し合いたい。

 女の子にも性欲はあるのだが、柚葉の思い方としては、それは「セックスしたい」というより「愛し合いたい」なのだった。
 肉体を使ったコミュニケーションに憧れる。
 充実した時間を過ごしたい。
 それをあられもない言い方で済ませれば、確かに「セックスしたい」になるのだが、好きな相手でなければ性欲など沸くだろうか。確かに避妊はするとして、それでも生物的には子孫を残すためにする行為を、惚れてもいない相手としたいなど思えるはずがない。
 事実、洋に恋愛感情を抱くまで、柚葉は本当にオナニーの一つもしたことがなかったし、キスやセックスの想像をしたことがなかった。
 だが、その洋ともう二カ月だ。
 好きな相手さえいれば性欲が湧くのなら、告白される前から彼とのことを想像して、付き合い始めた後も未だ性交渉に至っていない。ムラムラするばかりである。
 彼と深く愛し合う時間を過ごしたい。
 気持ち良くしてあげたい。自分も気持ち良くなりたい。

「今日は感じやすい体造りだ」

 豚山先生はかなりの肥満だ。
 頬がふっくらと大きくなっているせいで、顔がおにぎりのような三角形になっている。顎から首にかけての脂肪もかなりのもので、どこにも首など無いように見えるほど太い。
 ついでに言えば鼻の形も、あまりにも綺麗に反り返り、平べったくて豚そのものだ。
 ニヤニヤと、いやらしい目をしているのもわかりやすい。
 こんな先生の前で裸になり、体を触られてしまうのは、乙女心に辛いものがあるものの、必要な指導と思えばこそ耐えられる。
「感度というのは開発すればするほど磨かれる」
 全裸で横たわる柚葉の背中が、柔らかいベッドシーツによく沈み、自重によって少しだけ潰れる乳房は豚山の手に揉まれていた。
 胴体に跨って来る豚山の体重で、あばら骨が圧迫されて少し苦しい。
 パイズリをしているわけではないが、いつでもそうできる位置に肉棒を置きながら、豚山は揉むことに集中していた。デリケートなものを扱う軽やかなタッチで、強すぎず弱すぎずに指を押し込み、
「どうだ? 感じやすい体と、そうでない体なら、どっちを彼氏に捧げたいと思う?」
 揉みながら柚葉の顔を覗き込む豚山。
「……か、感じやすい方です」
 ニッタリとした表情を見つめ返して柚葉は答えた。
「何故だい?」
「体がよく反応したり、声が出る女の子に触った方が、どうしても面白いんじゃないかって思うんです。その、私自身も、洋にはそういう風にいじめられたいというか……」
「そのためには何が必要だ?」
「感度を磨くことです」
「そうだね。だから、こうして磨くための愛撫を行っている」
 皮膚の表面をくすぐる指先に、甘い痺れを感じた柚葉は「うっ」と肩を強張らせ、乳首を突起させていく。
「あっ、んっ、ん……んっ……」
 今度は乳首を集中的にくすぐって、人差し指に転がされる。強まる刺激に声が漏れ、柚葉の表情はしだいにとろけ始めていた。

 き、気持ちいい……これがエッチな快感……?
 声出ちゃうし、体も反応しちゃってるけど、女の子のそういう姿に男の子は喜ぶんだよね。洋だって、私がエッチな反応しちゃってるのを見たいはずだよね。
 せっかく豚山先生がしてくれるんだし、しっかり磨いていかなくちゃ。

 乳房や乳首への攻めでひとしきり時間を使うと、豚山は柚葉の背中に腕を回して抱き起す。
「次はアソコだ」
「はい」
 太ももの上にぺたりと手が置かれると、その手はすぐに内股へと、秘所の部分へと滑り込み、ワレメの周囲をなぞり始める。先程のような甘い痺れはなく、ただ触られているんだということしかわからない。
「おっぱいの方が感じやすいみたいだね」
「そう、ですね。アソコはあまり……」
「ま、これも経験が少ないからだ。それを感じやすいように変えてやるのが性教育ってものだ」
 手の平全体でぴったりと覆い込み、五指を蠢かせたマッサージを施している。
 そして、豚山の顔が接近した。
「!?」
 驚き、思わず顔を背ける柚葉。
「おや、彼氏にキスされそうになっても、そういう反応をするのかい?」
「い、いえ、驚いただけで……」
 確かに豚山の言う通りだ。
 洋にそんな反応は見せないとは思っているが、万が一にも驚いて、顔を背けてしまったらどうなるか。驚いただけだとわかってもらえれば、まあいいだろう。嫌がったのだと勘違いされてしまったら、洋を傷つけることになるに違いない。
 そうそう起きない勘違いで、確率は低いに決まっているが、小さな不安も取り除けるなら、取り除いておくべきではないか。
「いいね? キスするよ?」
「はい」
 今度は唇の接近を受け入れて、されるがままに押し倒された。
「んっ、じゅっ、むぅ……ずず……」
 貪らんばかりに押しつけられて来る顔から、柚葉の唇に舌が深々と捻じ込まれる。ディープキスをしながら、アソコには脂肪で太った指が入り込む。
 お互いの舌先がぶつかり合い、豚山はヘビのように絡み付けて蹂躙する。混じり合った唾液が糸を引き、柚葉の口の周りが汚れていく。
 ここまで深いキスは辛かった。
 そもそも、好きでもない男としているのだという意識は強い。いくら性教育が当然の時代に生まれても、「健全なセックス」を推奨されて育った女子の心は、おいそれと軽い気持ちで抱かれるようには出来ていない。
 しかし、これに耐えれば彼氏と健全に交わる資格が手に入る。
「さあ、足を開いて?」
 M字開脚というあられもない恰好で、指の出し入れによってじっくりと攻め抜かれた。
 いきなりは感じない。
 だが、太った指の、関節ごとに段差を帯びた形状が、膣壁によって感じ取れる。
「アソコで感じられるようになるまでは、少しばかりかかりそうだね」
「……すみません」
「謝ることじゃない。ただの個人差だからね」
 ゆったりとしたピストンで、機械のように正確でブレがなく、ワレメの中から指を見え隠れさせている。たとえ愛液が出なくても、膣内にある粘膜を帯びたことで、ぬかるんでいる豚山の指は、少しばかりの光沢を纏いつつあった。
「オナニーでは感じるのかな」
「はい。少しだけ」
「ってことは、今は彼氏でもオナニーでもないから、感度が低いのはシチュエーションというか気分の問題だね。これが彼氏の指なら、一応感じているわけだろうけど、先生の指でも濡れるようにならないと、一人前の感度とは言えないかな」
 そして、そこまで鍛えた感度でもって、正しく彼氏の指が入ってくれば、より幸せな時間を過ごせることになる。
 こうして先生にしてもらうのは、何よりも自分自身のためなのだ。 
「次の指導は一週間後。そのあいだに宿題を出す」
「宿題、ですか?」
「オナニーでアソコを鍛えること」
「はい」
「調教は切り上げるけど、先生が興奮したままだからね。最後に何回か抜いてもらうよ」
「わかりました」
 仁王立ちとなる豚山の前に膝をつき、柚葉はフェラチオによって射精させようと奉仕に励む。咥え込んで顔を振り、前後に動き続けていくうちに、口内射精で出て来たものを一度は飲む。
 二度目はパイズリで抜き、顎への噴射で顔が汚れた。
 三回目はパイフェラで抜き、この日の指導は終了した。