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  • 誤った依頼相手 ~延々の乳責め~

     曾祖父の遺品を捜し求めるアニエス・クローデルは、《アークライド解決事務所》を尋ねることで助力を得ようと考えるが、署長であるヴァン・アークライトは別件のために留守だった。
     仕方がなく他を頼ることとなるアニエスだが、彼女に目敏く声をかけた情報屋の狙いは若々しく胸も大きな肉体である。
     肉体交渉を持ちかけられたアニエスは、渋々ながら応じることとなるのだった。


  • ララの診察オイル治療

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     ついに念願が叶ったが、あからさまな顔をするわけにはいかない。
     一人の医師として、その中年は毅然と表情を引き締めていた。願いが叶ったことへの歓喜は押し隠し、表面では真面目で事務的な顔を装うが、心の中では舞い上がる勢いだ。
     前々から思っていたのだ。
     せっかく、彼女と同じ町に滞在して、その手の層向けに開業したのだから、一度くらいは来てくれても良いだろうに、どうして一切姿を現す様子がなかったのか。
     来る日も来る日も現れない。
     もっとも、そう簡単には風邪など引かず、他の病気にもならないのなら、まあ仕方あるまいと納得していたが、理由はそれだけではなかった。
     彩南高校の養護教諭として、一人の宇宙人が御門涼子という名で働いていたのだ。
     ひょんなことから知った事実に、一人の医師として戦慄した。
     つまり、とても敵わない商売敵がいたわけだ。彼女は高校生として生活をしているわけで、わざわざ街角の病院を探すより、何かあったら保健室へ行く方が早かったのだ。それは確かに、街角でひっそりと開業する小者医者になど診てもらおうとは思うまい。
     しかし、今回はこういうわけだ。
    
    「いつもは他のお医者さんなんだけどね。今日はお休みでどこか行っちゃってるみたいなんだよねー」
    
     と、そう語った彼女の口から理由を知った時、何という幸運に恵まれたのだろうと、医師として改めて歓喜した。
     おそらく、こんな機会はもう二度と現れないだろう。
    
     ララ・サタリン・デビルークが下着一枚のみの姿で座っている。
    
     ある日、乳房に急な違和感が出て来た上に、微熱で額も温まってきたという。
     医師として症状を聞き出すと、それは宇宙から来た病原菌のせいだと判明した。地球由来ではないのだから、誰かが持ち込み、広めてしまったのかもしれないが、そういった犯人捜しは医師の仕事には含まれない。
     医師として果たすべき使命、それはあくまで目の前の患者を治すことだ。
     そこで使命感を持って告げたのだ。
    
     ――表皮を直接視触診する必要があるので、裸になっていただけますか?
    
     伝えるや否や、ララは何の疑問もなく、抵抗すらなさそうに服を脱いだのだ。
     確か、衣類はコスチュームロボットで再現しているという話であったが、今日は普通の服を着ていたのか。目の前でシャツをたくし上げ、ブラジャーを外していく。その一枚一枚を脱ぎ去る姿をついつい凝視してしまっていたのが先ほどまでの話である。
     そして今、ララは下着一枚のみを残して椅子に座り、目の前で背筋を伸ばしている。
     桃色の髪を持つ麗しの少女は、やはり肉体もまた美しく、ふっくらとほどよく実った乳房が可愛らしい。形、大きさの美観もさることながら、肩から脚にかけての、全身のすらっとしたラインもよく整っているではないか。
     うっかり、見惚れてしまいそうな魅力が全身から放出されている。
     しかし、一人の医師として、それら欲望めいた感情は、顔には一切出さずにいた。
    「あっ、パンツも脱ぐ?」
     ララは疑うどころか、むしろ別の疑問をぶつけてきた。
     話に聞いていたように恥じらいなく、惜しげもなく裸体を晒しているのだ。そう指示さえしてしまえば、最後の一枚すら脱ぐのだろう
    「いいや、それはいいです。必要な時は改めて伝えますので、ますは乳房をしっかりと、よーく見せてもらいますからね」
    「うん。よろしくね、オジサン」
     ララにとっては、不調のためにメンテナンスにやって来て、調整をしてもらおうとしている気持ちしかありはしない。一人の医師として、これから行う行為はまさにその例えのように、不調を取り除くことでしかないのだが、それ故に合法的に乳房を拝み、じっくりと観察が行える。
    「ええ、お任せ下さい」
     医師は前のめりとなり、視診のために乳房へ顔を近づけた。
     やはり、綺麗だ。
     髪の房が少しばかり垂れかかり、桃色が光を反射しての、毛並みが生み出す光沢の線が横乳の側へと通っている。
     自分がたまたま開業した町に、あのデビルーク星の第一王女がいるとあっては、是非ともその裸体を見てみたいと願ったものだが、この日まで叶うことはなかったのだ。
     念願叶い、こうしてララの乳房を拝んでいると、瑞々しい乳房に対する欲望がムラムラと湧き起こり、思うままに揉みくちゃにしたくなる。
     いいや、いけない。
     ここで行うべきことは、あくまで診察や治療のみである。
     王女相手に度がすぎれば、この仕事を続けていくことはできなくなる。
    (いや、しかしですね。乳房を視診する必要性は確かであるからして――)
     言い訳めいたことを心で呟く。
     実際、医師が自分に言い聞かせている通り、問診から得た情報と、綿棒で唾液を採取させてもらった結果を鑑みるに、必要な行為であることには間違いない。本人も乳房に違和感があるというように、表皮や皮膚の内側など、そういったところにしこりか炎症が出来上がり、それがそのまま病原菌の巣となる恐れもある。
     高度な技術によるスキャンでは、不思議とその病原菌は捕捉できない。
     服を脱いでもらい、肉眼で直接診る行為は、確かに必要なことなのだ。
     もっとも地球の価値観では、こうした診察はセクハラやドクターハラスメントと言われかねないものらしい。だから、宇宙のことなど何も知らない、地球の少女が相手であれば、ある種の緊張感が湧いてならなかったことだろう。
    「ねえねえ、何かわかった?」
     相手がデビルーク星の少女で助かった。
     無論、王女相手というのは肝に銘じておく必要があるにせよ、ここまであっけからんとしている相手である。地球の常識をどこまで学び、どこまで順応しているのかはわからないが、地球基準のクレームがつくことはないはずだ。
    「そうですね。乳房にある違和感というのは、どういった具合ですか?」
    「うーん。皮膚が突っ張るっていうか、何かある? みたいな。ちょっと説明がムズカシーなー」
     唇に指を当て、考え込んでみる仕草の末に、出て来る言葉はそんなものだった。
     痒い、痛い、であれば言語化しやすいが、それらとは異なる違和感なので、適した表現が思いつかないといったところか。
    「視診しての感じを言いますとね。皮膚の表面には何もなさそうなので、触診をしたいのですが」
    「触っちゃうってこと?」
    「そうなりますね」
    「そっかー……。うーん、でも病気は治したいし、お医者さんなら触ってもいーよ」
     他人に胸を触らせることに関しては、それなりに思うところがあるらしい。
     迷う素振りがないでもなかったが、とはいえ本人の許可が出たところで、医師は乳房に両手を伸ばす。柔らかでかつ弾力があり、ふわっと、もっちりとした感触に指を沈めた瞬間に、より一層の歓喜が心に溢れた。
    (おおっ、なんという幸せでしょうか!)
     王女の乳房に触れる機会など、二度とないかもしれない。
     医師はこの機会を逃さぬように――否、れっきとした触診から、皮下に隠れた違和感の正体を見つけ出すため、指先を駆使して丹念に調べ始める。揉むという行為は、あくまで捜索の上で必要な行為に過ぎない。
     これは指や手の平を使った調査であり、捜索なのだ。
     医師は最初の数秒、まずは手始めに指の強弱を駆使して揉んでみる。手の平の中央にぶつかる乳首の感触と、若干のゴムらしさを思わせる弾力を味わいつつ、すぐにタッチを変えて調べ込む。
     指をぷにっと押し込んだ。
     それは端から端へ順々に、地道に皮膚を押し潰していく方法だった。乳房の生え際、横乳のラインに指を置き、くにっと押し込み指先だけで少し揉む。それを数秒行ったら、たった一センチだけ横にずれ、その箇所にもまた押し込む。
     最終的には乳房の表面積を余すことなく、一切を触り尽くす形を目指して、時間をかけて行う触診方法だ。宇宙医学で学ぶれっきとした手法であり、指で何かを見つけ出すか、あるいは本人が何かを訴えれば、その箇所こそが患部である。
     ここに指が来た時にだけ、変な感じがする。
     そういう答えが得られれば、まずは治療への第一歩を進んだことになる。
     しかし、その答えはなかなか得られず、指を触れさせた箇所だけが着実に増えていく。医師は端から端まで触りきると、ラインを上げてもう一度、端から端へ一箇所ずつ押し潰す。まるで列に並べたものを一列ずつ順番に確かめていくように、医師は外から内に到達するたび、下から上へとラインを引き上げながら触っていた。
     ぷにっと押し込む指により、その箇所だけが丸く凹んで、乳房には浅いクレーターができあがる。押し込んだ状態で揉むように指を動かし、数秒感確かめて、それからまた隣へ移っての繰り返しで、端への到達によってまたラインを上げる。
     とうとう、乳首の存在するラインに入った。
     内心では胸をワクワクさせ、楽しみにやっていくが、やはり顔にそれは出さない。あくまで真面目を装って、しかも行為そのものも宇宙医学に存在する方式通りだ。
     女王の乳首に触れることへの恐れ多さはありつつも、それ以上に触ってみたい好奇心の方が上回る。れっきとした診察なのだから、決して何の問題もあるまいと、純然たる事実を言い訳のように心で述べ、自分に言い聞かせながら押し込みを続けていく。
     そして、またラインを上げ、とうとう乳首に指を接近させていた。
    (もう少し、もう少しで……)
     端からのスタートで内側に迫っていき、指はだんだんと乳首に迫る。
     やがて、乳輪のすぐ隣に指を押し込んだ時、その凹みに引きずられ、乳輪の桃色もまた沈んでいた。
     そこから指を離した瞬間、変形からあっさりと元の形へ戻っている。
    (よし……)
     意を決して、乳首の真上に指を置く。
     ボタンでも押すようにして、そこも同じく押し込んで、乳輪全体を万遍なく凹ませるクレーターを作り出すのであった。
    
         *
    
     もう片方の乳房にも、同じ診察を行った。
     端から端への地道なタッチで、一列ごとのチェックであるように一回一回ラインを変えて、下から上へと地道に進める。丸みの上端まで調べ尽くして、その結果として得られた答えは、結論から言うとエステ療法が手っ取り早い。
     特定の箇所だけに指を入れ、そこだけに特別な痛みがあったり、違和感が生じるようなことはないらしい。ただただ、皮膚の下にある張るような感じとやらのみで、それは指で押してどうこうといった変化はないとのことだ。
     あとは微熱だけがララの患う症状の全てである。
     熱はただの併発だろう。
     放っておいれも治るかもしれない病気なのだが、風邪に比べて悪化によるリスクがあり、万が一の場合は重症化する。つまり、風邪と同等と見做され舐められやすく、しかも甘く見た通りに治ってしまうのが大半で、運悪く重症化を引き当てた者だけが、肺か心臓、または両方に後遺症を残すことになる。
     せっかく病院に来たからには、たった一パーセントでもその確率があるのなら、さっさと除去してしまうのが正解だ。
     大元の病原菌を断てばいいわけだが、その治療薬の形態が少々特殊で、錠剤を経口摂取すれば良いわけではない。ララが患っている病原菌は、主に胸部を目指す特性があり、そこに巣を作り始める。
     その巣から全身にかけて、悪いものが分泌され続け、健康が蝕まれていくというのが、重症化した場合のケースである。
     今回、ララの胸にはまだ病巣が作られ始めているだけで、完成しているものは一つもない。それが触診から得られた手がかりの一つであり、ならば手術による切除は視野に入れなくて済むわけだ。
     初期症状のうちから治療薬で治せるのはいいものの、形態が特殊というのは、マッサージを施すことである種の刺激を与えつつ、じっくりと塗り薬を浸透させていくのが、もっとも確実に菌を死滅させる方法という点だ。
     医療行為でありながら、エステやマッサージ師さながらの施術が要求される。
    (ですが、きちんと練習済みなのですよ)
     何故なら、美人の患者がやって来て、そのオッパイを揉む機会に恵まれはしないかと、前々から研鑽を積み上げて、発揮する機会もない技術を身につけてきた。とうとう実践の日が訪れた上、その相手がララであるという幸運を逃す手はない。
    「ねえ、ララさん。治療方法のことなのですが――」
     一人の医師として、治療法の説明を開始した。
     マッサージ療法のような方式を取り入れつつ、それと同時に塗り薬を擦り込んでいくのが確実であること。その塗り薬が一種のオイルであり、今回の菌に対する特効成分が多量に含まれていることなどを伝えると、ララは少しばかり迷う素振りを見せつつも頷いた。
    「治す方が大事だよね。オジサン、お願いね」
     あっさりと受け入れていた。
    「ではそこの台で横になって頂いて」
    「こうかな」
     診察台を指した時、ララは早速のようにそこへ上がって、仰向けとなって手足をだらりと真っ直ぐ伸ばす。気をつけの形になることで、座り姿勢の時よりも下着がばっちりと見えやすくなり、ピンクの布地にレースや刺繍の入った華やかさが目を引いた。
    (これがララちゃんのパンツ……)
     ごくりと、密かに生唾を飲む。
     悟られないように、できるだけさりげなく凝視して、その柄を目に焼き付ける。
    「オイルを持ってきますので、そのままでお待ちください」
    「はーい」
     薬棚から取ってくるため、その一瞬だけ場を外し、小瓶を片手に戻ってくると、ララはすっと目を瞑る。これから始まる治療に対して、心の準備を整えようとしているのが見て取れた。
    (そうだねぇ? これからオッパイをたくさん揉まれるんですからねぇ?)
     ニヤニヤが止まらない。
     表情を硬く引き締めていなければ、今頃はどんなにいやらしく、下品な笑みを浮かべてしまっていることか。
    「ではひんやりしますので、少々我慢してくださいね」
     医師は小瓶の蓋を開け、胸のあいだに垂らし始めた。
     ふわんわりとした膨らみの中央に、つー……っと、オイルの細い柱が形成される。糸を引いて垂れていき、表皮へ触れると同時に円を成して広げていく。その面積を広げるオイルは、注ぎ口から着弾点を繋ぐ形で、ピンと真っ直ぐに伸びた細々とした柱を成していた。
     五百円玉よりも大きな円になったあたりで注ぐのをやめ、医師は小瓶に蓋をしたあと、両手によって塗り伸ばすため、改めてララの乳房に触れ始めた。
     まず指先でオイルを掻き取りつつ、それを乳房全体に塗り広げる。
     両手の指で掻き分けて、内側のカーブに少しばかり広げると、医師はすぐに手の平全体を駆使した乳揉みを開始する。
     最初はただ、揉むだけだ。
     そこに施術的な技法はなく、塗り広げることさえできればいい、そのついでに揉みしだくための手つきによって捏ね回す。オイルが塗り広がっていくにつれ、皮膚に水気が染み込みしっとりと、表面が光沢を帯びてヌラヌラと、輝きを纏い始めていた。
    「んぅ……」
     何かを感じているのか、ララは一瞬だけ小さな声を上げていた。
    (気持ちいいのかな?)
     ララが少しでも感じているのかと思うと、医師はますます興奮しそうになる。
     ひとしきり塗り広げ、隅々までオイルを纏った乳房は、乳首の先端から生え際にかけてまで、綺麗に光を反射している。きめ細かな肌の中から、砂粒よりも小さい光を散りばめてあるように、キラキラと輝いていた。
     オイル濡れの乳房は色香を増し、見ているだけで甘い果実の香りが漂い、それが鼻孔を貫くかのようだった。
    「ではここからが施術となります」
     医師は真っ先に乳首を狙い、指でくりくりと責め始める。
    「んぅぅ…………」
     悩ましげな表情がそこにはあった。
     指でつまんで強弱をつけ、さらに上下に弾き抜く刺激を与えていると、何かを我慢しているような、悩ましい表情で頬を赤らめ、顔がしだいに色気を帯びる。肉体がそういう反応をしめしていることは明らかで、医師は必要以上に乳首を責めた。
     施術として必須とされる分を越え、マニュアル上の目安とされる刺激時間よりも長々と、数分以上はかけて乳首を弄る。
     つまんで引っ張り、次は押し込む。
     さらに捻ろうとするような力を軽くかけ、あるいは指を上下に動かすことで弾き続けて、医師は乳首を弄んだ。
    「んっ、んぅ……んぅぅ……んぅぅぅ…………」
     ララの漏らしている声は、しだいに甘いものを帯びていく。
     火照った頬が存分に色香を漂わせ、吐き出される息の熱っぽさがよくわかる。顔を見ているだけでさえ、鼻孔を貫く香りでも漂っているような、頭のくらっと揺れる錯覚に見舞われて、理性を強く保っていなければ、いつ自分が暴走するかもわからない。
     乱れた呼吸の音と共に、息遣いも大きくなって、胸が肺によってわかりやすく上下に動く。浮き沈みを伴う乳房に指を躍らせ、医師はじっくりと揉み込んでいた。
    「一通り馴染ませたところで、必要な部位を指圧して刺激していきます。先ほど言いましたように、薬の効果を促進して、病気を確実に治すためです」
    「う、うん……わかってるから、大丈夫だよ……んっ、んぁ……あぁ…………」
     ララの色気がさらに増す。
     揉みしだいているうちに、ララはかすかに首を動かし、ほんの僅かであるが髪を振り乱すようにもなっていた。
    「はぁ……はあっ、はぁ……あぁ…………はぁ……はぁ………………」
     息遣いは荒っぽく、見れば太ももを軽く引き締め、さりげなくモゾモゾとさせている。両腕にも落ち着きがなくなって、気をつけのようにだらっと伸ばしている両手の先で、意味もなく指を動かして、やたらに開閉させていた。
     表情を見ていても、唇を引き締めたり、頬を固くしてみたり、何かを我慢している様子がみるみるうちにわかりやすくなっていく。
     医師はなおも揉み続けた。
     指圧という建前を守るため、頭の片隅から施術マニュアルの内容を引きずり出し、刺激するべきツボの箇所へと義務的に指を入れている。しかし、意味のある箇所へやりつつも、ほとんど揉んでいるだけだった。
     指圧そのものは、こうもあからさまに揉みしだき、手の平全体を駆使して味わう真似などしなくても行える。それをわざとらしく揉みこんで、明確に味わっているわけなのだ。
    (……物足りない)
     医師はそう考え始めていた。
     しかし、いくらなんでも本番までは画策できない。さすがに後のことを考える理性が働いて、陵辱に走ることにはブレーキがかかってしまうも、他に何かできることはないものかと、医師は思考を巡らせる。
    (そうだ)
     確か、今回の病原菌には類似型があり、そちらの場合は性器に移動する特性がある。男性の場合は亀頭や睾丸、女性の場合は陰唇やクリトリスなどに病巣が作られて、その部位にはしこりの固まりが発生する。
    (よし、口実はある)
     医師はタオルを手に取って、オイルを拭き取り始めていた。
    「ララさん。乳房への診察はこれで終了となります」
     拭きながら、そう伝えた。
    「ホント? よかったー!」
     今まで我慢を帯びていた表情は、その瞬間にパっと明るいものへと切り替わる。ここまで中年の異性に揉まれ続けて、体中に力が入っていたところ、やっと安心できたといったところか。
    「ですが、念のため。もう一箇所、診ておきたい場所があるのです」
    「えー? どこどこ?」
     文句でもありそうに、ララは唇を尖らせている。
    「性器です」
    「性器って、アソコってこと?」
     ララは即座に不安を帯びていた。
     明るく変わっていた表情は、直ちに曇ったものへと移り変わっていた。
    「ええ、あなたはデビルーク星の王女様とお見受けします。その大切なお体に万が一があってはなりません。もちろん、お求めであれば理由はきちんと説明させて頂きますよ」
    「うーん。でもなぁ……うーん……」
     ララは太ももをさっと引き締め、両手をへその下までやったと思えば、指を絡ませモジモジとした仕草をする。
    「よいのですか? 大切な性器に万が一があった場合、いつか大切な人との時間を過ごす際にも支障が出ますが」
    「うそ! それはダメ! わ、わかった! アソコも診察して!」
     どうやら、真に受けたらしい。
     万が一のケースという、それ自体の嘘はついていないが、アソコの診察は本来必要ないものである。病原菌の種類は完全に特定できており、乳房の診察のみで十分とわかっていながら、わざと別の可能性を提示したのだ。
     ララはその嘘に気づいていない。
    「ではパンツを脱いで頂きます」
    「そ、そっか……パンツも、取らないとね……」
     さすがのララも強張っていた。
     下着一枚の格好が平気だったり、乳房の視診まではあっけからんとしていたのに、アソコを見せるのはララとて恥ずかしいらしい。下着のゴムに指を入れ、引き下ろしていく際の、緊張に強張った表情は、今までにない反応だった。
     脱がせきり、そしてポーズを取ってもらう。
     アソコを確認する以上、もちろん股を大きく開き、M字にしてもうらのだ。そのポーズを取る際の、赤く染まり上がった表情といったらない。
     アソコに顔を近づける。
    「いや…………」
     小さな小さな悲鳴が聞こえた。
    「では失礼して」
     指で中身を開いた時、そこにあるのは美しい肉ヒダだった。薄桃色で血色が良く、膣口に張った白い膜の存在から、処女であることが確認できる。しかも僅かに湿っており、肉体がそういう反応をしかけている様子であった。
     さらにクリトリスの部位を見てみると、包皮の中身が突起して、数ミリほどの肉芽が飛び出ていた。
    (これがララの性器……)
     医師はしっかり、目に焼き付けた。☆
     最初は視診のつもりになりきって、ありもしない患部を一応は探していたが、もはやポーズ取りなどやめて、医師は完全に視姦していた。
     顔を近づけ至近距離から、これでもかというほど視線を注ぐ。
    
     かぁぁぁぁ――
    
     と、見上げれば、燃え上がった表情がそこにはあった。
     歯をぐっと食い縛り、さすがに屈辱を感じている様子のララは、頬を固く強張らせ、表情筋をぷるぷると震わせている。一分一秒でも早く終わって欲しいと、切実に願う気持ちが読めるかのようだった。
    「肛門も綺麗ですね」
     医師はついでのように皺の窄まりに目をやった。
    「やっ……! そこは関係――」
    「まあまあ、これも診察ですから」
    「う、うぅ……」
     診察の一言で、ララは簡単に押し黙る。
     静かに屈辱を堪え、ひたすら辛抱するばかりと化していた。
    (そうかそうか。穴は恥ずかしいのですね?」
     医師はニヤニヤと症例写真という口実を思いつき、カメラまで使って羞恥を与えた。撮影したいと告げた時の、引き攣った表情といったらなく、しかし医学のためと押し切ってシャッター音声を執拗に聞かせてやった。
     撮影時の、苦悶に満ちた表情といったらない。
     裸体を平気で晒したララが、まさかここまで恥じらってくれるとは、意外でならないあまりに顔さえ写したくなってきて、角度やズーム機能の工夫を駆使して、どうにか表情の映り込む写真も撮って、ようやくララを診察から解放する。
    
    「ふー……。最後は恥ずかしかったなー」
    
     終わりを告げ、下着を穿き直している後ろ姿を見ていると、生えた尻尾が左右に揺れる。
    「でも、これで良くなるんだよね」
    「もちろんです」
    「よかったー。ありがとねっ、オジサン」
    (おお、なんと……!)
     なんと、特をした気分だろうか。
     こちらは一体、どれほど余計なことをして、必要以上の時間をかけながら、できうる限り楽しんでいたことか。
     それにも気づかず、感謝までしてくるとは。
     純粋な少女を騙してしまったような罪悪感と同時に湧くのは、そこに興奮をそそられる背徳感でもあるのだった。
    
    
    


     
     
     


  • 脱衣と恥辱 if スカジ陵辱

    作品一覧

    
    
    
    (やっとみたいね)
    
     崖の上に並んだ影が、いつの間に消え去っていた。
     それが逆転の合図だ。
     きっと、もうじき自由になる。
     彼らの言うことを聞く必要がなくなる。
     そうすれば、その瞬間にも………。
    
     …………
     ……
    
     否、そうはならなかった。
     確かにドクターは緊急用の保険として、自分が囚われたり、何か不測の事態に陥った場合の控えを用意してい。それら救援オペレーターは新米で練度が低く、加えて賞金稼ぎの腕は高かった。
    
         *
    
    「ちっ、なんだ? こいつら」
    「ロドス……アイランド……?」
    
     二人の賞金稼ぎが舌打ちをしつつ、足元に倒れる複数人の男達を見下ろしていた。彼らはロドスの支給する隊服を着たオペレーターで、そのロゴマークや印字されたアルファベットを見ることで、賞金稼ぎの二人は首を傾げているわけだった。
    「まあいい、あいつの仲間だったんだろう」
    「一応、始末しとくか」
     この二人の賞金稼ぎは、突如として背後からの奇襲を受けそうになったのだ。
     それを回避できた理由は偶然も甚だしく、顔の周りにたまたま虫が飛んでいて、鬱陶しいので払い退けようとしているうちに、ふと後ろを見ると見知らぬ連中が立っていた。数では不利で、しかも多少はやれるようだったが、実践経験や腕力では賞金稼ぎ二人が上回っていた。
     そして、トドメを刺した上、二人は人質の隣へ戻る。
     木の杭を地面に打ちつけ、立てた柱に一人の人物を縛り付けているのが人質だった。この高台となった地形から見下ろせば、地上にはリーダーを中心として何人もの仲間達が一人の女を取り囲み、それを裸に剥いている。
     厄星と呼ばれ、誰からも恐れられていたバウンティハンター――スカジである。賞金稼ぎの面々は、彼女に対してそれなりの恨みを抱いており、同時に恐怖も抱いていた。だから最初に作戦を聞いた時、とても正気とは思えなかった。
     スカジがこの地で男を伴い、何かを探し回っている。
     連れの男を人質にすれば、言うことを聞かせられるかもしれない。
     相手がスカジでさえなければ、二人も喜んで賛成していた。道徳やモラルなど半分捨てて生きている部分があり、その手の行為に走ることそのものへの抵抗は特になかった。
     だが、相手が問題だ。
     よりにもよって、厄星相手にそれをやろうなど恐ろしいにもほどがある。しかし、あくまでやる気のリーダーと、危険も承知でスカジに手を出そうと考える命知らずの仲間によって、多数決で方針は決まり、人質作戦を実行する流れとなったのだ。
     いくら人質をバックにしても、スカジの前に立つなど冗談じゃない。
     そう考えていた二人は、スカジを囲む役目より、人質の見張りの方を積極的に買って出て、ドクターと呼ばれるフードの男をこうして見張っているわけだ。
     人質の確保に成功したからといって、そう上手くいくとは思っていなかった。
     相手は化け物だ。
     腕を振り抜いただけで人が吹っ飛び、剣を振らせればそれ以上のことが起きる相手だ。いくら人質を取った上、その人質との距離を取らせて、高台という接近しにくい場所まで選んでいるとはいえ、実際に目論見通りにことが進んで、スカジがストリップをしている場面を見るまでは、ちっとも安心できずにいた。
     あの化け物ならば、ほんのひと飛びでこの高所まで飛んで来るに違いない。ドクターに括り付けてある爆弾も、手掴みで引き千切るなり放り捨てるものとばかり思っていた。こうしてスカジが裸になり、乳を揉まれている場面を見てでさえ、ただ人質が有効なだけで、ここまでやって来ること自体は造作もないはずだと、まだ僅かな不安を心に残していた。
     いつでも、逃げ出す準備は整えていた。
     いよいよとなったら、仲間もリーダーも見捨て、自分達だけでも助かろうという計算が、この二人が今のポジションを選んだ元々の理由である。
     あまり文句を言える立場ではない。
     そうわかってはいるものの、今の地上を見るに少しは舌打ちしたくなる。
    「ちぇっ、マジで上手くいくとはな」
     二人組の片割れは、地上の様子を見て後悔しつつあった。
     上手くいくのであれば、自分もあそこにいたかったと、今更になったのだ。スカジのせいで散々な目に遭った覚えがあり、その裸を間近で拝んだり、乳を揉んでやれたなら、一体どれほど溜飲が下がることだろう。
    「おいおい、誰が予想できるんだ? バケモンを制御するのは無謀もいいとこってのは、間違いなかったんだ。結果的に上手くいってるだけで、命を大事にする判断の方が、生き残る上では正解さ」
    「そいつはわかってるんだけどな」
    「いざ成功例を見てしまうとってか?」
    「ああ、わかってんだ。意外な成功例に影響されて、いざ自分もって思ったところで、やっぱり痛い目を見るもんだってな」
    「そうそう。俺達は間違ってない。ただ、上手くいってる以上は、俺達にも順番が回って来ることを期待してーな」
    「だな。ま、その頃にはガバガバになってるだろうが」
    「くだらねー順番より、死なない立ち回りの方が重要さ」
     そんな雑談をしているあいだに、ふと呻き声が聞こえてきた。
     ドクターだ。
     彼が目を覚ましかけている。
     この二人はドクターがどんな人物であるかを知らない。ロドスという名前を聞いても、そんな製薬会社があったような、なかったような、といった程度の認識である。
     ただ、スカジと共にいた連れの男だ。
     男女二人組という取り合わせを見れば、誰でもその関係性を邪推する。
    「お、そうだそうだ。いいことを思いついたぜ」
    「ははっ、お前は悪い奴だなぁ?」
    「知恵があるって言って欲しいね」
     二人が得意げに笑い合った時、フードにかかったバイザーの奥で目が開く。ぐったりと俯いていた首が持ち上がり、そうしてドクターが目覚めた瞬間だった。
    
         *
    
     スカジは胸を揉まれていた。
     ドクターを人質として、ストリップを要求されてからというものの、さらに身体検査と称して穴まで探られ、激しい羞恥を味わった末にあるのは、一人一人が順番に胸を揉み、延々と攻め続ける乳揉み大会の盛り上がりだ。
     頭の後ろに両手を組まされ、全裸のままに無防備に立つスカジへと、彼らは次々に入れ替わり立ち替わり、乳房を楽しげに弄ぶ。ある者は下乳を指先で掬い上げ、ぷるぷると揺らしての乳揺れを鑑賞して、またある者は乳首を集中的にくすぐり刺激する。
     それらの責め苦に耐えながら、スカジはしきりに高台を気にしていた。
     ドクターが囚われているその場所から、見張りとして立っていた二人の影が消えている。
     スカジはそれを逆転の兆候と捉えていた。
     こうした不測の事態のため、控えのオペレーターを付近に潜ませていたことは知っている。そのオペレーター達がドクター救出に動き出し、見張り二人はその攻撃を受けて姿を消しているはずなのだ。
     人の乳房に夢中になり、揉んでばかりいる男達は、リーダーも含めて誰一人、背後の様子に気づいていない。
    (……チャンスね)
     ドクターの救出が完了すれば、すぐに合図がくるはずだ。
     スカジはその瞬間を辛抱強く待ち構え、歯を食い縛って入れ替わり立ち替わりの責めに耐え続けた。
     一刻も早く、攻撃のチャンスが欲しい。
     ドクターにこんなところは見られたくない。
    「次は俺だぜぇ?」
     よだれまで垂らした欲望剥き出しの男により、スカジの乳房は揉みしだかれる。
    「何が楽しいのか、さっぱりわからないわ」
    「楽しいんだよ。おめーにわからなくてもな」
     男は五指を蠢かせ、スカジの美乳を絶え間なく変形させる。まるでパン生地が捏ねられ続けているような、途切れることのない変形の繰り返しに、乳房の中には甘い痺れが発している。乳首はもうとっくに固くなり、誰から見ても突起した状態だった。
    「それ」
     急に乳首がつままれる。
    「……っ」
     スカジは歯を食い縛った。
    「へっ、感じてんのか?」
    「…………」
    「おらおら、可愛い声の一つでも出してみろよ」
    (……下らないわね)
     スカジの常人離れした筋力で、万力のようにきつく締め上げられた歯のあいだから、どんな声も漏れはしない。気持ち良ければ気持ちいいほど、スカジの唇はより固く閉じ合わさり、頬の強張った顔付きがわかりやすくなる一方だった。
    「おーい、そろそろ変われよ」
    「けっ、またあとでな」
     そうして人が入れ替わり、また別の男が乳房を揉む。
    「また会ったな。厄星おっぱいちゃん」
     無遠慮に手を伸ばし、乳首を集中的に責め立てる。ピンと伸ばした指先を上下左右にくねり動かし、その指先によって乳首は角度を変え続ける。上に押し上げられれば、その分だけレバー操作のように持ち上がり、弾き抜かれた乳首はぷるっとした振動を帯びつつ、元の真正面の角度へ立ち戻る。
     それが右へ、左へ、あるいは斜めに、どの方向にも角度を倒され、指がその方向に抜けていくたび、また乳首は真正面を向き直す。
    (まったく飽きないわね)
     スカジは恥辱と怒りを堪えていた。
    (一体、いつまでそうしているつもりなの?)
     何が楽しくて、こうも胸ばかりを集中的にやってくるのか、まったく理解ができなかった。かといって、肉棒への奉仕を強要されたり、果ては本番行為を求められるのも真っ平なので、わざわざ口には出していないが、せっかくの聞かせるチャンスをこんな風に消化している。
     馬鹿ではないかと思っていた。
     だが、その馬鹿に乳房を好きにされているわけで、相手の愚かしさを思えば思うほど、かえって恥辱感は増していく。心を少しでも無に近づけ、静かにやり過ごすことこそが、この状況を受け流す一番の方法なのだろう。
    (せいぜい揉んでなさい)
     スカジは視線を高台にやる。
     あまり露骨な確認を繰り返して、高台のチェックについて気取られないように気をつけつつ、スカジはその時を待って耐え忍ぶ。
    (誰から吹っ飛ばしてやろうかしら)
     その頭の中には、既に報復の展開が膨らんでいた。
     一体、誰から先に殴り倒して、地にひれ伏してもらおうか。やはりリーダーを真っ先に仕留めてから、逃げ惑う連中を一人残らず追い回し、残らず倒してやろうかなどと、ドクターが救出されたその先についての想像を巡らせる。
     剣は谷底に捨てさせられ、手元に武器はないものの、彼らなど素手で十分だ。
     裸で暴れることになるのが玉に瑕だが、呑気に服を着ているうちに取り逃がすより、この格好のままでいいから全員をなぎ倒そう。
     そんなことばかりに考えを巡らせているうちに、高台に二人分の人影が戻って来る。
    (え……)
     しかし、スカジは困惑し、絶望していた。
     てっきり、たった二人の人間など、訓練を受けたオペレーターなら、新米とはいえあっさりと制圧して、すかさずドクターの縄をほどくはずだと思っていた。人数も有利なはずで、まず負ける余地はないと思っていた。
     オペレーターが弱かったのか、高台の二人がたまたま強かったか。
     いや、そんなことはどでもいい。
     その二人の男達の、どちらもロドスの隊服を着ていないことの方こそが、今のスカジには重要かつ、最悪の真実なのだった。
    
         *
    
     まず鈍痛があった。
     気を失う直前の、何かに頭を打たれた痛みが残っており、鈍い痛みが脳を突き刺す。気分は優れず、もう一度気を失ってしまった方がいっそ楽だと感じるものの、意識はそう都合良く手放したり、取り戻したりというわけにはいかない。
    (捕まっている……)
     次に気づくのは、胴体にぐるぐると巻きつく固いロープだ。結び具合など考慮はされず、皮膚にいくら食い込もうとお構いなしに巻かれたせいで、その部分の血流は間違いなく止まっていた。
     顔を上げ、すぐそこに見えるのは、自分を捕らえた賞金稼ぎの、二人分の背中であった。
     その後ろ姿が腕を上げ、何か合図を送っている。
    (スカジ……まずい……)
     ドクターはその懸命な頭脳によって、自分の詳しい状況を把握しつつあった。
     自分が用意したオペレーターは、新米揃いで一人もベテランが混ざっていないが、たった二人を制圧するには十分な力を持っている。実践経験がないとはいえ、訓練自体は受けているので、欠片も戦力にならないということはありえない。
     と、思っていた。
     だが、事実としてそこにある背中は、賞金稼ぎの仲間のものだ。
     気を失っているあいだの出来事は何も知らず、スカジが地上で裸に去れている状況も、たった今になって初めて目にしたくらいだが、いずれにせよ整理はついた。
    (地上の人数からして、人質の見張りに回ったのは二人きりで間違いない)
     つまり、この二人さえ何とかすれば、人質の救出は完了する。
     おあつらえむきに、みんなで夢中になって胸を揉み、スカジのことを楽しんでいる始末で、こちらの様子について他に気を配っている者はいない。こっそりと見張りを倒し、誰にも気づかれないうちに人質を救出して下さいと、そう言っているようなものだっt。あ
     そして、ドクターが選んだオペレーターなら、いかに新米とはいっても、この場に密かに接近して、一瞬の襲撃によって速やかに制圧するのは、さほど難しいことではない――はずだった。
     人質救出が完了して、その合図がスカジへと送られれば、スカジにとってあの連中は、丸腰の裸のままでも問題にならない相手だ。自分がここに捕まっているかいないかこそが、スカジの状況をそのまま左右しているといっても過言ではない。
     ということは、今や絶望的だ。
    (どれくらい眠っていたかはわからないが――)
     気を失ったのは朝だった。
     そして、陽は既に高く昇って日中を過ぎている。実に数時間以上の経過には間違いなく、それだけ定期連絡が途絶えていれば、控えのオペレーターも動き出す手筈である。
     まだ仲間は動いておらず、依然として様子見の状態にいるだけに過ぎない。
     などという希望的観測はできず、ドクターは状況を悪い方に見積もっていた。
    (みんな……)
     ドクターは気を病んでいた。
     オペレーター達がやられているということは、トドメを刺されていてもおかしくない。
    (しかし、何故……)
     たとえ二人の実力が高くても、不意打ちと人数差で押しつぶせるはずである。それが成功していない疑問について、しかしいくらドクターでも、まったくの偶然は予測できない。賞金稼ぎの顔の周りに、たまたま虫が飛んでいたせいで不意打ちが失敗するなど、予想しろという方が無理だった。
    (みんな、やられてしまっただろうか)
     命だけでも助かっていれば、とは思いたいが、きっとそうもいかないだろう。
     ドクターは悔やみと無念に駆られ、拳を固く握り締めた。
     スカジにも、何と言っていいのかわからない。
    (スカジ……)
     ドクターは焦燥感を煽られていた。
     裸にされ、その上で言うことを聞かされている。胸をどんなに揉まれても、抵抗する様子も見せないスカジの姿だけでも、万力に締め上げられるように胸が痛い。
    (くっ……)
     あんな、誰とも知れない男の手に、スカジが触れられてしまっているなど……。
     あんな、あんな連中に……。
     その時だった。
    
    「おい! 見えてるか!」
    
     賞金稼ぎの群れは一斉にドクターを見上げ、宝物でも自慢するかのようにニヤニヤと、スカジのことを見せびらかそうと一人一人が体をどかす。視線を遮るものがなくなり、スカジの美しい裸体がはっきりと現れた時、ドクターの胸はズキリと痛んだ。
     ……犯される。
     それも、ただ陵辱するのでなく、人に見せびらかして、見せつけんばかりにしようとしているのが、彼らの表情から察せられた。
    「スカジ! すぐに暴れろ!」
     ドクターは叫ぶ。
    「うるせぇ!」
     その瞬間、隣に立つ見張り役の拳が飛び、頬に鈍い痛みが走る。
    「ドクター!」
     スカジの悲痛な声が届いてきた。
     反射的に駆けつけようと、一歩前に出かける挙動があるも、その動きは即座にぴたりと停止していた。ドクターの喉元にナイフが押し当てられ、スカジの足は止まっていた。
    「I字バランスをやれ」
     リーダーを思わしき男が命令している。
     その命令の内容は、やたらに大声であることで、遠いドクターにまで聞こえていた。わざとらしい大声で、あえて聞かせている様子であった。
    (くぅ……!)
     ドクターは歯噛みする。
     このままでは、文字通りに手も足も出せないまま、スカジは思い通りにされる一方だ。
    (スカジ、連中の言うことを聞くな……)
     その思いとは裏腹に、スカジは言われるままにポーズを取る。上げる片足はドクターの側へと向き、その傍らでリーダーが見上げてくる。実にニヤニヤと自慢げに、勝ち誇った笑みを浮かべたリーダーの表情は、顔つきのわかりにくい距離であっても、雰囲気からひしひしと伝わっていた。
    「おい、頭巾野郎! よく聞いておけ!」
     何を始めるのかと思いきや、リーダーはしゃがみ込んでいた。I字バランスで角度が変わり、やや上向きとなったアソコを覗き見るのに丁度いい、脚の上がったすぐ目の前に腰を下ろして視姦していた。
    
    
    

    
    
    
     ドクターの囚われている高所から、服装などはわかっても、表情の判別はつきにくく、高い視力で凝視すれば辛うじてわからないこともない。そんな塩梅の距離感から、スカジの赤らんだ横顔が確認できてしまった。
    (うっ、くっ)
     ドクターの胸に、針でも刺さったような痛みが走る。
     それは不意にスカジと目が遭い、そのスカジが目を逸らした――気がしたからだ。瞳の動きまでわかりようはないものの、何となく、そのように感じられた。
    「へへっ、聞かせてやらぁ! すっげぇ綺麗なワレメちゃんだぜ?」
     リーダーは大声で発表する。
    「貝殻みてーにぴったり閉じ合わさってよぉ! 未使用なのかねぇ!? どっちかは知らねーが、もし処女なら俺達に奪われちまって可哀想だなぁ!?」
    (こいつら! こいつら!)
     怒りが込み上げていた。
     そんな腕力さえあったなら、自分を簀巻きにしているロープなど、内側から引き千切ってみせたかった。今にも暴れ出し、連中に目に物見せてやりたかった。
    (脱出さえ……脱出さえできれば……!)
     人質という枷さえなければ、スカジがそれをやれるのだ。
     そもそも、自分など気にせず動いてくれれば、たったそれだけのことで連中は全滅する。それを封じてしまっているのが、他ならぬ自分自身の存在だ。悔しさと歯がゆさがどうしようもなく膨らんで、その感情のやり場はどこにもなかった。
    「俺達はな、尻の穴まで観察済みだ」
    「ぐっ……!」
    「お前ら、どこまでヤってんだ? ええ? どこまでにしろ、そいつを俺達に穢されちまうわけだよなぁ? お可哀想なこったなぁ?」
     リーダーは優越感に満ち溢れていた。
     いかにも嬉しそうにしている声から、その感情が嫌というほど伝わって来た。
    「んで、具合はどうなのかねぇ?」
     さぞかし楽しいことだろう。
     人に見せびらかしながら、お前の女を奪ってやっているぞと言わんばかりに行う愛撫は、きっと愉悦に違いない。
    (これが、人を呪いたくなる気持ちか……!)
     ただ見ていることしか出来ないドクターには、まさしく苦痛そのものだった。殴られた頬の痛みや、食い込んでくるロープの圧迫感より、そちらの方がよほど苦しいくらいである。
     その苦悩の感情には、オペレーターの安否がわからず、おそらくは殺されていることへの思いも大いにあった。
    「ほーれ、エッチな汁が出て来ているぜ?」
     リーダーはアソコを覗き見ながら指で触って、刺激など与えているわけなのだろう。
    「お前が寝ているあいだも、ずっと触りまくってたからなぁ? ま、おっぱいばかりやってたけどよ、こっちも温まっているみたいだぜ?」
     この距離まで聞こえるほどの大声で、自分の体について実況されたり、わざわざ解説をされる気持ちはどんなのもか。スカジの心境を思うと、まるで我がことのように苦悶が満ちて、歯軋りをせずにはいられない。
    「糸が引くぜ? あとよぉ、微妙に体が反応しちゃってな? くすぐってると、バランスを維持するのが大変そうに見えるんだよなぁ?」
     スカジの身体能力なら、片足立ちを長時間維持ことに苦はないだろう。しかし、性的な刺激が加わることで、足腰が微妙に動いたり、筋肉が跳ねたりしそうなわけだ。その様子について、リーダーは嬉々として語ってきた。
     脚がピクっとなった。顔が歪んだ。少し声が聞こえた。呼吸が乱れた。
     そういった細かな反応について、逐一ドクターに報告してくる。
    「なあなあ、どんな気持ちよ」
    「お前ら、どうせいい仲なんだろ?」
     見張りの二人組も、ニヤニヤとドクターの表情を覗き込もうとしてきていた。フードとバイザーに隠れた瞳を見よう見ようと、興奮しきった顔でドクターを凝視していた。
    「厄星を口説こうなんて、正気とは思えねぇけどなぁ?」
    「しっかし、あんなバケモンでも男を連れるとは、厄星のくせに立派な女ってわけだ」
     二人してケラケラ笑っていた。
     距離が近いだけ、その人を嘲りながら勝ち誇り、愉快そうにしている表情はよくわかるが、地上にいるリーダーや周りの仲間も、およそ似たような顔をしているに違いなかった。
    「指でも入れてみましょうかぁ!」
     リーダーの高らかな声が聞こえて、次の瞬間にはビクっと、スカジの小さく見える脚が、I字バランスのために高らかに持ち上がったその爪先が反応していた。小さな挙動かもしれないが、それはドクターの目にも確認できていた。
    「あったけぇあったけぇ! よーく温まってるぜ!」
    「くっ……!」
     焦燥感で胸が爆発しそうだった。
     スカジの裸がこんなにも多くの男に晒され、あまつさえ体中を触られている。その事実だけでさえ胸が張り裂けそうだというのに、膣に指を挿入した事実についてまで伝えてくる。
     最後までされてしまうのは、きっと時間の問題だ。
    「汁がたっぷりあってよぉ! するする動くぜ?」
     その言葉で、指のピストンまで始まっていることを知り、ドクターは思わず叫んでいた。
    「スカジ! もういい! 我慢するな!」
     声を荒げた瞬間に、余計なことは喋らせまいとする拳が再び飛んで、もう片方の頬にも激しく鈍い痛みが走った。
    
         *
    
     その時までは、リーダーもその仲間も、誰も彼もが後ろの様子を気にもかけていなかった。
     だからきっと、もしもオペレーターによるドクター救出が成功して、仲間からの合図がきていれば、スカジは急に暴れ出すことができただろう。今の今まで堪え続けて、微塵も抵抗の様子を見せずにいたはずが、突如として一人ずつ叩きのめしていく展開に、おそらくはなっていたはずだ。
     成功さえ、していれば。
     だが、現実にスカジが視線を送る先に立つのは、オペレーターの隊服ではなく、先ほどからずっとそこに立っていた賞金稼ぎの仲間に過ぎない。
    (ドクター……)
     彼のことは言うまでもなく心配だが、控えのオペレーター達も、一体どうなってしまったことか。命だけは無事であることに、一体どれほどの希望を持てるのか。気を病みながら、どこか不安定な中で乳房を延々と揉まれ続けているうちに、高台の二人組は、急に地上へ合図を送り始めていた。
     しばらくは気づかない。
     みんながスカジに夢中な中で、スカジしかそのハンドサインを見ていなかったが、そのうちに一人の男がさりげなく振り向いていた。
     そして、たった一人でもサインに気づけば、たちどころに全員にその内容は伝わっていく。
    (何だっていうのかしら)
     スカジは警戒心を抱いていた。
     一体、どんな情報が向こうから伝えられ、リーダーとその仲間に広まったのか。それが悪いものでなければいいが、スカジに対する全員の顔付きが一変して、ただでさえニヤニヤしていたのが、より一層の吊り上がった唇となっているのでは察するしかない。
     スカジにとって、何ら良いことは起きていないのだ。
    「ドクターとか呼ばれてるらしいな。あいつ、目が覚めたらしいぜ?」
    「ドクターが……!」
     そう聞いた瞬間に、スカジは改めて羞恥の炎を滾らせて、脳が煮えそうなほどの熱い思いで頭を沸騰させていた。羞恥心だけに留まらず、こんな場面を見られてしまうことへの忌避感が膨らんで、お願いだから目を閉じていて欲しと、そう訴えたい衝動にすら駆られていた。
     そして、リーダーはスカジにI字バランスを命じてきた。
     ドクターによく見せるため、遠くにもわかりやすいため、わざわざポーズを変えさせたわけなのだろう。それだけの柔軟性があり、片足のバランスを維持することにも苦のないスカジだが、ドクターに見られながら辱めを受けるのは、先ほど以上の恥辱であった。
     自分がこんな奴らに触られたり、いやらしい言葉を投げかけられている姿など、誰に見られたいはずもない。その当然の感情もさることながら、ドクターがスカジの裸を見ることで、一体どんな思いに駆られることかについても想像は及んでいき、それがスカジの苦悩を強めていた。
     自分の手の届かない場所で、どうにもできないところで嬲られる。
     それをただ、見ているしかない。
     そんな状況には苦悩しかないはずで、せめて気絶で眠ったままでいて欲しかった。
     それからというもの、リーダーがすぐそこにしゃがみ込み、下から覗き込む形でアソコを視姦され、指で触られ、膣に挿入までされる流れとなった。こんな状況でも体は反応することに、心身ともに苦悶を浮かべつつ、しかも実況までしてくることで、より大きな恥辱に心は晒され続けていた。
     やがて、そのうちにリーダーは言い出す。
    
    「やっぱ、ここからじゃ遠いよなぁ? どれくらいこっちの様子が見えてるか、あんましわかんねぇよなぁ?」
    
     最悪の思いつきをリーダーはしてきていた。
     当初の彼らは、スカジに対する警戒心から、人質には簡単に接近できないように、わざわざ立地まで選んでいた。より手出ししにくい形を作り上げ、その上でスカジに散々言うことを聞かせてきたが、よほどいい気になったまま、思い上がっているのだろう。
    (絶対に……後悔させるわ……)
     スカジをドクターに近づけても、もう問題ないと思っているのだ。
     だが、目と鼻の先という距離にさえ到達すれば、即座に飛びつきロープなど引き千切り、爆弾など遠くに投げ捨て、あっという間に解放することなど、いかに容易いことだろう。
     その逆転のイメージを膨らませ、スカジは歩く。
     両手は上に挙げさせらられたまま、背中にはナイフの切っ先を突きつけられた状態で進まされ、しばしの道のりの末に高台へ到達する。
    (こ、こんな……!)
     その最中、道端には血みどろのオペレーター達が倒れていた。
     やはり、背後から奇襲をしかけようとはしたものの、失敗して救出ができなかったのだ。
    「おやおや」
     リーダーは愉快そうに鼻歌まで歌い、倒れたオペレーターを蹴飛ばしながら歩いていた。その行為にスカジは思わず飛び出しかけるが、背中に触れる切っ先の、チクリとした感触が強まることで、反応しかけた体は即座に引っ込んでしまっていた。
     倒れたオペレーター達の元を通り抜け、スカジはその先へと到達する。
     ドクターがこちら向きに変わっていた。
     地上を見下ろすための方向から、この高所に回り込んでくるスカジに合わせて、わざわざ向きを反転させてあるのだった。
    
         *
    
     手も足も出せないドクターの前にスカジが立つ。
    (くっ、スカジ……!)
     その裸体の、なんと美しいことか。
     美麗な乳房からなる乳首の色合いも、くびれた腰に連なる脚も、アソコの閉じ合わさったワレメの外観も、何もかもが綺麗に整っている。芸術さえ感じる裸体に、しかしリーダーがニヤニヤと隣に立って肩に腕を回している。
    「よお、お前はドクターとか呼ばれてんだろ? 役職名か?」
     リーダーが訪ねてくる。
     尋ねながらも、乳房へと手を伸ばしていた。肩に腕を回しての、その腕を乳房に届かせようと下に伸ばして、これみよがしに揉み始めていた。
    「今から、アンタの前で楽しむことにするぜ」
    「やめろ……」
    「あん? 聞こえないなぁ?」
    「……頼む。スカジ、我慢しないでくれ」
     ドクターは懇願すらしていた。
     しかし、その瞬間にスカジは申し訳なさそうな、悪びれに満ちた顔で目を背けていた。見ればだらりと落ちた両腕の、拳が固く握り締められ、プルプルと震えていた。
    「おい、もう一度I字バランスだ」
     リーダーが勝ち誇った顔でスカジに命じる。
     それにスカジは無言で応じて、再びドクターに脚を開いた。高らかに持ち上がる脚からは、この距離からは今度こそ、そのポーズにおけるアソコがばっちりと見えるのだった。
    (……もう少し、近ければ)
     スカジの瞬発力なら、即座にドクターの縄に飛びつき、いとも簡単に引きちぎれる。問題は爆弾を仕掛けてあることで、その起爆スイッチを仲間の一人が握っている。スイッチを押されるよりも早く爆弾を毟り取り、遠く投げ捨てようと思ったら、あと何メートルかは近い必要があるのだろう。
     だが、ここまで距離が縮んでも、巧妙なまでにどこか一線守っている。
     ドクターに見せびらかしには来ていても、まだ完全には油断をしてくれていない。
    「……見えない」
    「あん?」
    「目が、霞んできた」
    「泣いてるってか?」
     リーダーは人を小馬鹿にした顔で、指差しまでして笑ってくる。ケラケラと笑う声は周囲にまで伝播して、両隣にいる二人組の見張りからさえ笑い声は聞こえて来た。
    「距離を詰めさせようってんだろ? バケモンの身体能力なら、あと何メートルか近けりゃ、アンタのことを救えちまうかもしれないからな。これ以上は近づけさせないぜ?」
    (……駄目か)
     最後の賭けも通じなかった。
     もう現場付近に控えのオペレーターは入っていない。あとは定期連絡が途絶えたことで、ロドス本艦が不審に思い、調査員を派遣してくるまで、救援が来る見込みはない。
    (……すまない)
     ぞろぞろと並ぶ群れの向こうで、オペレーター達の倒れた姿が何度か見えた。今は彼らの身体に隠れてしまい、もう様子は窺えないが、誰も生きているとは思えなかった。
    「おい、お前らもこっちに来い。見張ってばっかちゃつまんねーだろ?」
     と、リーダーが言った途端だ。
    「ふー。待ってたぜ」
    「俺らの順番は、さすがにもっと後ろかと思ってたもんだ」
     二人組が意気揚々と群れの中へと混ざっていき、振り向くなり勝ち誇った笑みでスカジの両隣を囲み始める。一人はアソコを覗き込む位置へとしゃがみ、もう一人はドクターの顔を見ながらニヤニヤと、見せつけんばかりに胸を揉み始めていた。
    「いい揉み具合だぜ?」
    「こっちはトロトロだな。内股にまで汁気が広がってるぜ?」
     二人して自慢げに、触った具合や見た目の変化を伝えて来る。
    「お? 乳首をやると、顔が反応してるなぁ?」
    「クリトリスでアソコが喜んでるじゃねーか」
     それはドクターに聞かせているだけでなく、きっとスカジへの辱めでもあった。人前で自慢げに誇ってみせつつも、本人にも実況を聞かせてやっての恥辱煽りに、スカジは一体どれほど苛まれているだろう。
     ぎゅっと、固く閉ざされたまぶたの震えから、嫌悪感がこれでもかというほど滲み出ている。
     揉むだけに飽き足らず、そちらの男はなんと乳首に吸いついて、口を使ってまで刺激を始めていた。
    (な……!)
     ドクターは反射的に前に一歩踏み出しかけるが、ロープに阻まれている以上、下手に動こうとした分だけ、食い込みの負荷がかかってくるだけだった。
    (スカジ……スカジ……!)
     他の周りの男達も、ぞろぞろとスカジに迫る。
     一人の男がズボンを脱ぎ、逸物を惜しげもなく解き放つと、なんと長い髪を手に取った。本人も少しばかり自信があるという綺麗な髪を、一体どうするのかと思ってみれば、彼は自らの股間に巻きつけていた。
     髪をオナホールの代わりにしようなど、そんな発想をドクターは生まれて始めて目の当たりにしていた。
    「ぐっへっへ」
     他にも一人、ズボンを脱ぐ。
     そちらはスカジの背後の忍び寄ると、やけに腰を動かしながら、挿入しているわけでもないのに何かを楽しむ。それはきっと、股間を擦り付ける行為であった。位置からすれば、尻にななすりつけて楽しんでいるはずだ。
     こんなにも、スカジが好き放題にされている。
    (どうにか……どうにかならないのか……!)
     無駄な足掻きとわかっていても、何とか後ろ手になった両手を動かし、指先でロープに触れようとしてはいる。しかし、たとえ触ることができたとしても、指は結び目にすら届かないだろう。
    (どうしたらいいんだ!)
     見ればスカジの表情は、ますます強張っていた。
     乳首を吸われ、髪をしごきに使われながら、あまつさえ尻に股間を擦り付けられている。極めつけには膣に指が挿入され、そのピストンしている結合部がドクターからもよく見える。I字バランスというポーズは、それだけ股間がよく目立っていた。
     スカジは決して、抵抗をしてくれない。
     自らの身を削ってでも、健気にもドクターを守ろうとばかりしている。
    (くっ、こんなことなら……)
     ベテランオペレーターの一人でも招いていれば、こんなことには――。
     己の失態に歯噛みして、拳を固く振るわせているドクターの前で、いよいよリーダーもズボンを脱ぎ、長大な逸物を曝け出していた。
    
    「俺が一番乗りだ」
    
     来るべき時が来てしまった。
     この状況になった時点で、その瞬間はいずれ必ず訪れるとはわかっていたが、とうとうそれが来てしまった。
     スカジの処女が今、ここで散らされることになる。
    
         *
    
     ドクターとスカジは真正面から向き合っている。
     片や杭を地面に打ち込んでの柱に縛り付けられ、片やI字バランスで柔軟性よく脚を高らかに持ち上げている。普通では決して起きない状況で、さらにリーダーが肉棒を剥き出しに、スカジの中に挿入しようとニヤニヤしながら迫っている。
     I字バランスに対して挿入するため、リーダーは足腰の高さや角度をやや調整しつつ、穂先をワレメに沿い合わせた。
    「やめろ……」
     ドクターは無意識に呟いていた。
    「嫌………………」
     スカジの口も小さく動き、溢れんばかりの嫌悪感をその声の中に滲ませていた。
    「やめてくれ……」
    「嫌……こんなの嫌よ……」
     ドクターの懇願も、スカジの拒絶も、決してリーダーには届かない。むしろ人の反応を見ることで、それをネタにしてケラケラと笑い出すくらいである。
     もう、誰にも止められない。
    「スカジ……もういい……!」
     最後の最後に、ドクターはもう一度だけ叫んでいた。
     抵抗さえしてくれれば、少なくともスカジはこれ以上の陵辱を受けなくて済む。せめて最後の一線だけでも守ってくれと、力強く訴えるドクターの声を、しかしスカジは悲痛な表情で受け止めていた。
    (スカジ……)
     にゅぅぅ……と、切っ先が埋まり始める。
     ドクターにはその結合の開始がやけにゆっくりに見えていた。景色がスローモーションに見える体験は、ある種の錯覚だったのか。
    「――――っ!」
     スカジが歯を噛み締めて、同時に時間は正常に流れ始めた。
    (こんな……こんなことが…………!)
     悔しくてたまらなかった。
     目の前でスカジが犯されている。為す術もなく挿入され、腰を振られてしまっている。まだ誰ともしたことのなかったというその穴に、名前すら知らない男のものがねじ込まれ、スカジはこれ以上なく表情を歪め切っていた。
     人の頬がここまで強張り、顔中の筋肉がピクピクと震えている光景など、生まれて初めて見るものだった。
    「おぉぉおう! 気持ちいいなぁ!」
     リーダーはおぞましく顔を歪めて、これでもかというほど勝ち誇り、狂喜すらしながら腰を振る。その大胆なストロークが一回股を打つたびに、腰のぶつかってくる衝撃に、スカジの身体は軽く揺さぶられていた。
    「ぐっ、くぅ……!」
     頬の内側で、どれほど激しく歯軋りしているかが見ていてわかる。
    「しかし、処女だったとはなぁ? ええ、なんでヤっておかなかったんだ?」
    「黙りなさい…………」
    「なんか言ったか? チンコ入ってる分際でよぉ」
    「この……!」
     スカジの狂おしいまでの無念がひしひしと伝わって、それが伝染でもしてくるように、ドクターもそれと変わらない感情を抱いていた。
    (すまない……スカジ、すまない…………)
     ドクターは顔を背ける。
     スカジの犯される姿を視界から外した時、しかし両腕が封じられているために耳は塞げず、現実から逃避することすら許されない。ドクターの耳には、スカジの堪えようとしている声が絶えず聞こえて、リーダーは嬉々として挿入の感想を語って来る。
    「ぎゅぅってチンポを抱いてくる感じがあるぜ? なあ、たっぷり濡れてっからよ? 締め付けで圧迫感がスゲーのに、腰はあっさり動かせるんだぜ? どんだけいい具合にしごかれるか、想像できるか?」
     聞きたくない言葉が次から次に耳へ飛び込む。
    「俺、このまま髪を汚すわ」
    「尻にかけてやるぜ」
     リーダーが挿入しているというのに、肉棒に髪を巻きつける男と、尻になすりつけている男のそれぞれは、未だスカジから離れず同じことを繰り返していた。それがそのうち射精感に達することで、スカジの髪や尻を汚したらしい。
    「あー出た出た」
    「これで一回分はスッキリしたぜ」
     満足感に溢れた爽やかな表情が、見るまでもなく目に浮かぶ。
     スカジをこうも辱めて、しかしそれをしている自分達は、気分爽快というわけだった。
    「んじゃ、ここで俺も中に出してやろうかねぇ」
     リーダーがそう言った瞬間だ。
    「やめて……!」
     スカジが声を荒げていた。
     今の今まで耐え忍び、歯を食い縛ってきたスカジが、中出しと聞いて初めて戦慄のようなものを浮かべて、膣内射精を恐れた瞳が震えていた。
    「お?」
    「やめて! 私を穢せればどこに出したって構わないでしょう!?」
     中だけは、それだけは……。
     その懇願をスカジが叫んだ時、ドクターも同時に思う。
     せめて、たったそれだけでも叶えてやれないものかと、強く念じすらしていた。
    
    「いいや、出すね」
    
     聞き入れるつもりもなく、リーダーは腰振りのペースを速めていた。射精に備えて徐々に早まる動きがスカジの膣を深く抉って、より大きく身体を揺さぶっていた。
    「いや……いや……!」
     拒絶感が全身に滲み出て、スカジは首さえ振っている。
     だが、その声は直ちに変化していた。
    「いやっ、いやぁ……!」
    「あぁ? その嫌はどういう嫌だ? いやぁーん、ってか?」
     リーダーがそう言うなり、周囲に笑い声が広がっていく。
    「なーに感じちゃってんだよ」
    「お前は中に欲しがってんだよ」
    「ほーら、喜べ喜べ」☆
     スカジの狼狽える様子を見て、誰もがむしろ喜んでいる。
     もう、駄目だ……。
    (くぅ……)
     ドクターは無力感に打ちのめされていた。
    「おー出る出る! 孕むといいな!」
     そんなことを言いながら、リーダーは奥まで押し込みながら、ぶるっと一瞬腰を震わせ、膣内に解き放っていた。世にも満足そうな横顔の、すっきりとした微笑みは、これ以上ないほど憎らしかった。
     だが、どんなに感情が高ぶっても、ドクターには何もできない。
    「さーて、次はどいつだ? ま、どうせ一人一回はヤるんだ。楽しんでこうぜ」
     そう言って離れていくリーダーと入れ替わりで、別の男が挿入を行った。
    「あぁ……!」
     それにスカジは喘いでいた。
    「なんで……いやっ、いやよ……いやぁ……!」
     嫌がっている。嫌悪感は残っている。
     それでも、どうしようもなく湧いてくる快感があるせいで、スカジは必要以上に髪を振り乱し、苦悩の表情で喘いでいるのだ。
     それをただ、見ているしかできない。
     無力感に心を蝕まれていきながら、傍観していることしかできないドクターは、しだいに放心へ近づいていた。
     スカジもそうだった。
     喘ぎ声が鳴りを潜めて、しだいに放心へと移り変わっていた。
    「次は俺だぜ」
    「お、ずりーぞ?」
    「うるせー。早いもん勝ちだ」
     男達は代わる代わる挿入して、楽しく見せつけながら腰を振る。リーダーは中出ししたが、他の面々は髪を汚す。尻を汚す。乳房を汚す。思い思いの箇所をその都度狙うので、一人が射精を済ませるたびに、スカジの身体に汚れは広がっていた。
     きっと、近づけば精液で臭うだろう。
     それほどまでに、体中を汚されきって、スカジはぼんやりとした顔になっていた。
     そして、目が光を失って、完全に魂を手放してしまった表情に対しても、男達の勢いは止まらない。
     輪姦はいつまでも続いた。
     一周だけで終わることなく、もう何十回という回数がスカジを襲っている。彼女の肉体でなかったなら、おぞましい回数によってどれほど膣壁が擦り切れて、負荷がかかっているはずなのか、想像もつかなかった。
     いつしか、体位が変わっていた。
    
    「んっ、んぅぅ……んぅぅ……んぅぅぅ………………」
    
     ずっと目は開けていたはずなのに、ふと夢から目覚めて急に現実の景色を見たように、気づけばスカジは四つん這いに、前後から犯されていた。口に咥える一方で、後ろから突かれるスカジの横顔は、やはり放心しきっている。
     ドクターもまた、それをぼんやりと眺めていた。
    (あぁ……あと何周するのだろうか……)
     放心のあまり、ぼやけた思考で薄らと、ドクターはそんなことを考えていた。
     一体、終わりは来るのだろうか。
     永遠にも思える光景を、ただぼーっと眺めるバイザーの内側の、そこに浮かぶドクターの瞳は、今日ほど虚ろになったことはなかった。