作品一覧




 ついに念願が叶ったが、あからさまな顔をするわけにはいかない。
 一人の医師として、その中年は毅然と表情を引き締めていた。願いが叶ったことへの歓喜は押し隠し、表面では真面目で事務的な顔を装うが、心の中では舞い上がる勢いだ。
 前々から思っていたのだ。
 せっかく、彼女と同じ町に滞在して、その手の層向けに開業したのだから、一度くらいは来てくれても良いだろうに、どうして一切姿を現す様子がなかったのか。
 来る日も来る日も現れない。
 もっとも、そう簡単には風邪など引かず、他の病気にもならないのなら、まあ仕方あるまいと納得していたが、理由はそれだけではなかった。
 彩南高校の養護教諭として、一人の宇宙人が御門涼子という名で働いていたのだ。
 ひょんなことから知った事実に、一人の医師として戦慄した。
 つまり、とても敵わない商売敵がいたわけだ。彼女は高校生として生活をしているわけで、わざわざ街角の病院を探すより、何かあったら保健室へ行く方が早かったのだ。それは確かに、街角でひっそりと開業する小者医者になど診てもらおうとは思うまい。
 しかし、今回はこういうわけだ。

「いつもは他のお医者さんなんだけどね。今日はお休みでどこか行っちゃってるみたいなんだよねー」

 と、そう語った彼女の口から理由を知った時、何という幸運に恵まれたのだろうと、医師として改めて歓喜した。
 おそらく、こんな機会はもう二度と現れないだろう。

 ララ・サタリン・デビルークが下着一枚のみの姿で座っている。

 ある日、乳房に急な違和感が出て来た上に、微熱で額も温まってきたという。
 医師として症状を聞き出すと、それは宇宙から来た病原菌のせいだと判明した。地球由来ではないのだから、誰かが持ち込み、広めてしまったのかもしれないが、そういった犯人捜しは医師の仕事には含まれない。
 医師として果たすべき使命、それはあくまで目の前の患者を治すことだ。
 そこで使命感を持って告げたのだ。

 ――表皮を直接視触診する必要があるので、裸になっていただけますか?

 伝えるや否や、ララは何の疑問もなく、抵抗すらなさそうに服を脱いだのだ。
 確か、衣類はコスチュームロボットで再現しているという話であったが、今日は普通の服を着ていたのか。目の前でシャツをたくし上げ、ブラジャーを外していく。その一枚一枚を脱ぎ去る姿をついつい凝視してしまっていたのが先ほどまでの話である。
 そして今、ララは下着一枚のみを残して椅子に座り、目の前で背筋を伸ばしている。
 桃色の髪を持つ麗しの少女は、やはり肉体もまた美しく、ふっくらとほどよく実った乳房が可愛らしい。形、大きさの美観もさることながら、肩から脚にかけての、全身のすらっとしたラインもよく整っているではないか。
 うっかり、見惚れてしまいそうな魅力が全身から放出されている。
 しかし、一人の医師として、それら欲望めいた感情は、顔には一切出さずにいた。
「あっ、パンツも脱ぐ?」
 ララは疑うどころか、むしろ別の疑問をぶつけてきた。
 話に聞いていたように恥じらいなく、惜しげもなく裸体を晒しているのだ。そう指示さえしてしまえば、最後の一枚すら脱ぐのだろう
「いいや、それはいいです。必要な時は改めて伝えますので、ますは乳房をしっかりと、よーく見せてもらいますからね」
「うん。よろしくね、オジサン」
 ララにとっては、不調のためにメンテナンスにやって来て、調整をしてもらおうとしている気持ちしかありはしない。一人の医師として、これから行う行為はまさにその例えのように、不調を取り除くことでしかないのだが、それ故に合法的に乳房を拝み、じっくりと観察が行える。
「ええ、お任せ下さい」
 医師は前のめりとなり、視診のために乳房へ顔を近づけた。
 やはり、綺麗だ。
 髪の房が少しばかり垂れかかり、桃色が光を反射しての、毛並みが生み出す光沢の線が横乳の側へと通っている。
 自分がたまたま開業した町に、あのデビルーク星の第一王女がいるとあっては、是非ともその裸体を見てみたいと願ったものだが、この日まで叶うことはなかったのだ。
 念願叶い、こうしてララの乳房を拝んでいると、瑞々しい乳房に対する欲望がムラムラと湧き起こり、思うままに揉みくちゃにしたくなる。
 いいや、いけない。
 ここで行うべきことは、あくまで診察や治療のみである。
 王女相手に度がすぎれば、この仕事を続けていくことはできなくなる。
(いや、しかしですね。乳房を視診する必要性は確かであるからして――)
 言い訳めいたことを心で呟く。
 実際、医師が自分に言い聞かせている通り、問診から得た情報と、綿棒で唾液を採取させてもらった結果を鑑みるに、必要な行為であることには間違いない。本人も乳房に違和感があるというように、表皮や皮膚の内側など、そういったところにしこりか炎症が出来上がり、それがそのまま病原菌の巣となる恐れもある。
 高度な技術によるスキャンでは、不思議とその病原菌は捕捉できない。
 服を脱いでもらい、肉眼で直接診る行為は、確かに必要なことなのだ。
 もっとも地球の価値観では、こうした診察はセクハラやドクターハラスメントと言われかねないものらしい。だから、宇宙のことなど何も知らない、地球の少女が相手であれば、ある種の緊張感が湧いてならなかったことだろう。
「ねえねえ、何かわかった?」
 相手がデビルーク星の少女で助かった。
 無論、王女相手というのは肝に銘じておく必要があるにせよ、ここまであっけからんとしている相手である。地球の常識をどこまで学び、どこまで順応しているのかはわからないが、地球基準のクレームがつくことはないはずだ。
「そうですね。乳房にある違和感というのは、どういった具合ですか?」
「うーん。皮膚が突っ張るっていうか、何かある? みたいな。ちょっと説明がムズカシーなー」
 唇に指を当て、考え込んでみる仕草の末に、出て来る言葉はそんなものだった。
 痒い、痛い、であれば言語化しやすいが、それらとは異なる違和感なので、適した表現が思いつかないといったところか。
「視診しての感じを言いますとね。皮膚の表面には何もなさそうなので、触診をしたいのですが」
「触っちゃうってこと?」
「そうなりますね」
「そっかー……。うーん、でも病気は治したいし、お医者さんなら触ってもいーよ」
 他人に胸を触らせることに関しては、それなりに思うところがあるらしい。
 迷う素振りがないでもなかったが、とはいえ本人の許可が出たところで、医師は乳房に両手を伸ばす。柔らかでかつ弾力があり、ふわっと、もっちりとした感触に指を沈めた瞬間に、より一層の歓喜が心に溢れた。
(おおっ、なんという幸せでしょうか!)
 王女の乳房に触れる機会など、二度とないかもしれない。
 医師はこの機会を逃さぬように――否、れっきとした触診から、皮下に隠れた違和感の正体を見つけ出すため、指先を駆使して丹念に調べ始める。揉むという行為は、あくまで捜索の上で必要な行為に過ぎない。
 これは指や手の平を使った調査であり、捜索なのだ。
 医師は最初の数秒、まずは手始めに指の強弱を駆使して揉んでみる。手の平の中央にぶつかる乳首の感触と、若干のゴムらしさを思わせる弾力を味わいつつ、すぐにタッチを変えて調べ込む。
 指をぷにっと押し込んだ。
 それは端から端へ順々に、地道に皮膚を押し潰していく方法だった。乳房の生え際、横乳のラインに指を置き、くにっと押し込み指先だけで少し揉む。それを数秒行ったら、たった一センチだけ横にずれ、その箇所にもまた押し込む。
 最終的には乳房の表面積を余すことなく、一切を触り尽くす形を目指して、時間をかけて行う触診方法だ。宇宙医学で学ぶれっきとした手法であり、指で何かを見つけ出すか、あるいは本人が何かを訴えれば、その箇所こそが患部である。
 ここに指が来た時にだけ、変な感じがする。
 そういう答えが得られれば、まずは治療への第一歩を進んだことになる。
 しかし、その答えはなかなか得られず、指を触れさせた箇所だけが着実に増えていく。医師は端から端まで触りきると、ラインを上げてもう一度、端から端へ一箇所ずつ押し潰す。まるで列に並べたものを一列ずつ順番に確かめていくように、医師は外から内に到達するたび、下から上へとラインを引き上げながら触っていた。
 ぷにっと押し込む指により、その箇所だけが丸く凹んで、乳房には浅いクレーターができあがる。押し込んだ状態で揉むように指を動かし、数秒感確かめて、それからまた隣へ移っての繰り返しで、端への到達によってまたラインを上げる。
 とうとう、乳首の存在するラインに入った。
 内心では胸をワクワクさせ、楽しみにやっていくが、やはり顔にそれは出さない。あくまで真面目を装って、しかも行為そのものも宇宙医学に存在する方式通りだ。
 女王の乳首に触れることへの恐れ多さはありつつも、それ以上に触ってみたい好奇心の方が上回る。れっきとした診察なのだから、決して何の問題もあるまいと、純然たる事実を言い訳のように心で述べ、自分に言い聞かせながら押し込みを続けていく。
 そして、またラインを上げ、とうとう乳首に指を接近させていた。
(もう少し、もう少しで……)
 端からのスタートで内側に迫っていき、指はだんだんと乳首に迫る。
 やがて、乳輪のすぐ隣に指を押し込んだ時、その凹みに引きずられ、乳輪の桃色もまた沈んでいた。
 そこから指を離した瞬間、変形からあっさりと元の形へ戻っている。
(よし……)
 意を決して、乳首の真上に指を置く。
 ボタンでも押すようにして、そこも同じく押し込んで、乳輪全体を万遍なく凹ませるクレーターを作り出すのであった。

     *

 もう片方の乳房にも、同じ診察を行った。
 端から端への地道なタッチで、一列ごとのチェックであるように一回一回ラインを変えて、下から上へと地道に進める。丸みの上端まで調べ尽くして、その結果として得られた答えは、結論から言うとエステ療法が手っ取り早い。
 特定の箇所だけに指を入れ、そこだけに特別な痛みがあったり、違和感が生じるようなことはないらしい。ただただ、皮膚の下にある張るような感じとやらのみで、それは指で押してどうこうといった変化はないとのことだ。
 あとは微熱だけがララの患う症状の全てである。
 熱はただの併発だろう。
 放っておいれも治るかもしれない病気なのだが、風邪に比べて悪化によるリスクがあり、万が一の場合は重症化する。つまり、風邪と同等と見做され舐められやすく、しかも甘く見た通りに治ってしまうのが大半で、運悪く重症化を引き当てた者だけが、肺か心臓、または両方に後遺症を残すことになる。
 せっかく病院に来たからには、たった一パーセントでもその確率があるのなら、さっさと除去してしまうのが正解だ。
 大元の病原菌を断てばいいわけだが、その治療薬の形態が少々特殊で、錠剤を経口摂取すれば良いわけではない。ララが患っている病原菌は、主に胸部を目指す特性があり、そこに巣を作り始める。
 その巣から全身にかけて、悪いものが分泌され続け、健康が蝕まれていくというのが、重症化した場合のケースである。
 今回、ララの胸にはまだ病巣が作られ始めているだけで、完成しているものは一つもない。それが触診から得られた手がかりの一つであり、ならば手術による切除は視野に入れなくて済むわけだ。
 初期症状のうちから治療薬で治せるのはいいものの、形態が特殊というのは、マッサージを施すことである種の刺激を与えつつ、じっくりと塗り薬を浸透させていくのが、もっとも確実に菌を死滅させる方法という点だ。
 医療行為でありながら、エステやマッサージ師さながらの施術が要求される。
(ですが、きちんと練習済みなのですよ)
 何故なら、美人の患者がやって来て、そのオッパイを揉む機会に恵まれはしないかと、前々から研鑽を積み上げて、発揮する機会もない技術を身につけてきた。とうとう実践の日が訪れた上、その相手がララであるという幸運を逃す手はない。
「ねえ、ララさん。治療方法のことなのですが――」
 一人の医師として、治療法の説明を開始した。
 マッサージ療法のような方式を取り入れつつ、それと同時に塗り薬を擦り込んでいくのが確実であること。その塗り薬が一種のオイルであり、今回の菌に対する特効成分が多量に含まれていることなどを伝えると、ララは少しばかり迷う素振りを見せつつも頷いた。
「治す方が大事だよね。オジサン、お願いね」
 あっさりと受け入れていた。
「ではそこの台で横になって頂いて」
「こうかな」
 診察台を指した時、ララは早速のようにそこへ上がって、仰向けとなって手足をだらりと真っ直ぐ伸ばす。気をつけの形になることで、座り姿勢の時よりも下着がばっちりと見えやすくなり、ピンクの布地にレースや刺繍の入った華やかさが目を引いた。
(これがララちゃんのパンツ……)
 ごくりと、密かに生唾を飲む。
 悟られないように、できるだけさりげなく凝視して、その柄を目に焼き付ける。
「オイルを持ってきますので、そのままでお待ちください」
「はーい」
 薬棚から取ってくるため、その一瞬だけ場を外し、小瓶を片手に戻ってくると、ララはすっと目を瞑る。これから始まる治療に対して、心の準備を整えようとしているのが見て取れた。
(そうだねぇ? これからオッパイをたくさん揉まれるんですからねぇ?)
 ニヤニヤが止まらない。
 表情を硬く引き締めていなければ、今頃はどんなにいやらしく、下品な笑みを浮かべてしまっていることか。
「ではひんやりしますので、少々我慢してくださいね」
 医師は小瓶の蓋を開け、胸のあいだに垂らし始めた。
 ふわんわりとした膨らみの中央に、つー……っと、オイルの細い柱が形成される。糸を引いて垂れていき、表皮へ触れると同時に円を成して広げていく。その面積を広げるオイルは、注ぎ口から着弾点を繋ぐ形で、ピンと真っ直ぐに伸びた細々とした柱を成していた。
 五百円玉よりも大きな円になったあたりで注ぐのをやめ、医師は小瓶に蓋をしたあと、両手によって塗り伸ばすため、改めてララの乳房に触れ始めた。
 まず指先でオイルを掻き取りつつ、それを乳房全体に塗り広げる。
 両手の指で掻き分けて、内側のカーブに少しばかり広げると、医師はすぐに手の平全体を駆使した乳揉みを開始する。
 最初はただ、揉むだけだ。
 そこに施術的な技法はなく、塗り広げることさえできればいい、そのついでに揉みしだくための手つきによって捏ね回す。オイルが塗り広がっていくにつれ、皮膚に水気が染み込みしっとりと、表面が光沢を帯びてヌラヌラと、輝きを纏い始めていた。
「んぅ……」
 何かを感じているのか、ララは一瞬だけ小さな声を上げていた。
(気持ちいいのかな?)
 ララが少しでも感じているのかと思うと、医師はますます興奮しそうになる。
 ひとしきり塗り広げ、隅々までオイルを纏った乳房は、乳首の先端から生え際にかけてまで、綺麗に光を反射している。きめ細かな肌の中から、砂粒よりも小さい光を散りばめてあるように、キラキラと輝いていた。
 オイル濡れの乳房は色香を増し、見ているだけで甘い果実の香りが漂い、それが鼻孔を貫くかのようだった。
「ではここからが施術となります」
 医師は真っ先に乳首を狙い、指でくりくりと責め始める。
「んぅぅ…………」
 悩ましげな表情がそこにはあった。
 指でつまんで強弱をつけ、さらに上下に弾き抜く刺激を与えていると、何かを我慢しているような、悩ましい表情で頬を赤らめ、顔がしだいに色気を帯びる。肉体がそういう反応をしめしていることは明らかで、医師は必要以上に乳首を責めた。
 施術として必須とされる分を越え、マニュアル上の目安とされる刺激時間よりも長々と、数分以上はかけて乳首を弄る。
 つまんで引っ張り、次は押し込む。
 さらに捻ろうとするような力を軽くかけ、あるいは指を上下に動かすことで弾き続けて、医師は乳首を弄んだ。
「んっ、んぅ……んぅぅ……んぅぅぅ…………」
 ララの漏らしている声は、しだいに甘いものを帯びていく。
 火照った頬が存分に色香を漂わせ、吐き出される息の熱っぽさがよくわかる。顔を見ているだけでさえ、鼻孔を貫く香りでも漂っているような、頭のくらっと揺れる錯覚に見舞われて、理性を強く保っていなければ、いつ自分が暴走するかもわからない。
 乱れた呼吸の音と共に、息遣いも大きくなって、胸が肺によってわかりやすく上下に動く。浮き沈みを伴う乳房に指を躍らせ、医師はじっくりと揉み込んでいた。
「一通り馴染ませたところで、必要な部位を指圧して刺激していきます。先ほど言いましたように、薬の効果を促進して、病気を確実に治すためです」
「う、うん……わかってるから、大丈夫だよ……んっ、んぁ……あぁ…………」
 ララの色気がさらに増す。
 揉みしだいているうちに、ララはかすかに首を動かし、ほんの僅かであるが髪を振り乱すようにもなっていた。
「はぁ……はあっ、はぁ……あぁ…………はぁ……はぁ………………」
 息遣いは荒っぽく、見れば太ももを軽く引き締め、さりげなくモゾモゾとさせている。両腕にも落ち着きがなくなって、気をつけのようにだらっと伸ばしている両手の先で、意味もなく指を動かして、やたらに開閉させていた。
 表情を見ていても、唇を引き締めたり、頬を固くしてみたり、何かを我慢している様子がみるみるうちにわかりやすくなっていく。
 医師はなおも揉み続けた。
 指圧という建前を守るため、頭の片隅から施術マニュアルの内容を引きずり出し、刺激するべきツボの箇所へと義務的に指を入れている。しかし、意味のある箇所へやりつつも、ほとんど揉んでいるだけだった。
 指圧そのものは、こうもあからさまに揉みしだき、手の平全体を駆使して味わう真似などしなくても行える。それをわざとらしく揉みこんで、明確に味わっているわけなのだ。
(……物足りない)
 医師はそう考え始めていた。
 しかし、いくらなんでも本番までは画策できない。さすがに後のことを考える理性が働いて、陵辱に走ることにはブレーキがかかってしまうも、他に何かできることはないものかと、医師は思考を巡らせる。
(そうだ)
 確か、今回の病原菌には類似型があり、そちらの場合は性器に移動する特性がある。男性の場合は亀頭や睾丸、女性の場合は陰唇やクリトリスなどに病巣が作られて、その部位にはしこりの固まりが発生する。
(よし、口実はある)
 医師はタオルを手に取って、オイルを拭き取り始めていた。
「ララさん。乳房への診察はこれで終了となります」
 拭きながら、そう伝えた。
「ホント? よかったー!」
 今まで我慢を帯びていた表情は、その瞬間にパっと明るいものへと切り替わる。ここまで中年の異性に揉まれ続けて、体中に力が入っていたところ、やっと安心できたといったところか。
「ですが、念のため。もう一箇所、診ておきたい場所があるのです」
「えー? どこどこ?」
 文句でもありそうに、ララは唇を尖らせている。
「性器です」
「性器って、アソコってこと?」
 ララは即座に不安を帯びていた。
 明るく変わっていた表情は、直ちに曇ったものへと移り変わっていた。
「ええ、あなたはデビルーク星の王女様とお見受けします。その大切なお体に万が一があってはなりません。もちろん、お求めであれば理由はきちんと説明させて頂きますよ」
「うーん。でもなぁ……うーん……」
 ララは太ももをさっと引き締め、両手をへその下までやったと思えば、指を絡ませモジモジとした仕草をする。
「よいのですか? 大切な性器に万が一があった場合、いつか大切な人との時間を過ごす際にも支障が出ますが」
「うそ! それはダメ! わ、わかった! アソコも診察して!」
 どうやら、真に受けたらしい。
 万が一のケースという、それ自体の嘘はついていないが、アソコの診察は本来必要ないものである。病原菌の種類は完全に特定できており、乳房の診察のみで十分とわかっていながら、わざと別の可能性を提示したのだ。
 ララはその嘘に気づいていない。
「ではパンツを脱いで頂きます」
「そ、そっか……パンツも、取らないとね……」
 さすがのララも強張っていた。
 下着一枚の格好が平気だったり、乳房の視診まではあっけからんとしていたのに、アソコを見せるのはララとて恥ずかしいらしい。下着のゴムに指を入れ、引き下ろしていく際の、緊張に強張った表情は、今までにない反応だった。
 脱がせきり、そしてポーズを取ってもらう。
 アソコを確認する以上、もちろん股を大きく開き、M字にしてもうらのだ。そのポーズを取る際の、赤く染まり上がった表情といったらない。
 アソコに顔を近づける。
「いや…………」
 小さな小さな悲鳴が聞こえた。
「では失礼して」
 指で中身を開いた時、そこにあるのは美しい肉ヒダだった。薄桃色で血色が良く、膣口に張った白い膜の存在から、処女であることが確認できる。しかも僅かに湿っており、肉体がそういう反応をしかけている様子であった。
 さらにクリトリスの部位を見てみると、包皮の中身が突起して、数ミリほどの肉芽が飛び出ていた。
(これがララの性器……)
 医師はしっかり、目に焼き付けた。☆
 最初は視診のつもりになりきって、ありもしない患部を一応は探していたが、もはやポーズ取りなどやめて、医師は完全に視姦していた。
 顔を近づけ至近距離から、これでもかというほど視線を注ぐ。

 かぁぁぁぁ――

 と、見上げれば、燃え上がった表情がそこにはあった。
 歯をぐっと食い縛り、さすがに屈辱を感じている様子のララは、頬を固く強張らせ、表情筋をぷるぷると震わせている。一分一秒でも早く終わって欲しいと、切実に願う気持ちが読めるかのようだった。
「肛門も綺麗ですね」
 医師はついでのように皺の窄まりに目をやった。
「やっ……! そこは関係――」
「まあまあ、これも診察ですから」
「う、うぅ……」
 診察の一言で、ララは簡単に押し黙る。
 静かに屈辱を堪え、ひたすら辛抱するばかりと化していた。
(そうかそうか。穴は恥ずかしいのですね?」
 医師はニヤニヤと症例写真という口実を思いつき、カメラまで使って羞恥を与えた。撮影したいと告げた時の、引き攣った表情といったらなく、しかし医学のためと押し切ってシャッター音声を執拗に聞かせてやった。
 撮影時の、苦悶に満ちた表情といったらない。
 裸体を平気で晒したララが、まさかここまで恥じらってくれるとは、意外でならないあまりに顔さえ写したくなってきて、角度やズーム機能の工夫を駆使して、どうにか表情の映り込む写真も撮って、ようやくララを診察から解放する。

「ふー……。最後は恥ずかしかったなー」

 終わりを告げ、下着を穿き直している後ろ姿を見ていると、生えた尻尾が左右に揺れる。
「でも、これで良くなるんだよね」
「もちろんです」
「よかったー。ありがとねっ、オジサン」
(おお、なんと……!)
 なんと、特をした気分だろうか。
 こちらは一体、どれほど余計なことをして、必要以上の時間をかけながら、できうる限り楽しんでいたことか。
 それにも気づかず、感謝までしてくるとは。
 純粋な少女を騙してしまったような罪悪感と同時に湧くのは、そこに興奮をそそられる背徳感でもあるのだった。



 
 
 

コメント一覧

    コメント投稿

    CAPTCHA