第2話 デパートのとあるコーナーで

 数日後。
 周防有希は電車を乗り継ぎ、とあるデパートへ赴いていた。そのとあるコーナーを前にして、並んだ商品を一体いくつ買ってやろうかと目論んでいるのは、ただ純粋に買い物を楽しもうとしての事ではない。
「やってられん! ヤケ買いでもしないとやってられんわ!」
 怒りがあった。
 鬱憤が溜まっていた。
 そこで有希は女児向けアニメのグッズなど、キャラクター商品のコーナーを前にしていた。
「やはり始末すべきでは?」
 そんな有希の隣には、君嶋綾乃が静かに控えている。
「したいわ! ほんっと、ガチで暗殺者を送り込みたいわ!」
「でしょうね」
 つまり有希は憂さ晴らしで、溜まりに溜まったものを発散しようとここに来た。現在放送中の変身キャラの、戦いや変身に使用するステッキに、登場する妖精のぬいぐるみが売られた棚を向き合い、そのどれを買ってやろうかと睨みつけているわけだった。
 その時である。
「ひゃい!?」
 有希は大きく目を丸めて動揺した。
「どうなさい――なっ!?」
 そして、隣へ目をやろうとした綾乃も、ほとんど同じだけ目を見開き驚愕していた。
 お尻が触られていた。
 何者かに迫られ後ろから、急に尻たぶを撫でられて、二人は同時に肩越しに振り向いた。

「やあ、偶然だね」

 にっこりと、件の少年が笑っていた。
「あなたは……」
 有希は目つきを鋭く細め、綾乃も警戒心をあらわにする。
「これはこれは有希さん、それに綾乃さんも。二人ともこういう趣味があったのかな? それとも有希さんの方かな?」
 少年はお尻から手を離さず、握ったり撫で回したり、痴漢行為をしながらペラペラと喋り出す。せっかくの休日の、それも電車まで使った外出先で見たくもない顔を見る羽目になり、虫唾が走る思いで有希は声を低めていた。
「あなたにプライベートの話をするつもりはありません。手を離して頂けますか?」
 突き放す態度の有希なのだが、しかし少年はより活発に尻を撫で回し、やがてスカートの中にまで手を潜らせ、二人に大きな不快感を与えていた。
「お離し下さい」
 今度は綾乃が目つきを鋭くする。
「二人とも、ちょっと向こうへ行かない?」
 まるで気さくな友人のような顔をして、少年は有希と綾乃をどこかに誘い出そうとしていた。
「お断りします」
 答えたのは綾乃であった。
「あれぇ? いいのかなぁ? 立場はわかっているよね?」
「どうしてもというのなら、わたくしが一人でお相手します」
 そのきっぱりとした宣言を横目に、有希は小さくその名を呟く。
「あ、綾乃…………」
「従者としてご主人を庇うカンジ? でもさ、せっかく二人揃ってるんだし、このまま三人で遊びたいなー。ほら、ちょっとそこの壁際に行くだけだから」
 せっかく我が身を盾にしようとしてくれた綾乃だが、しかし少年がそれを許さない。あくまで贅沢に二人を味わい楽しもうとする彼の言葉に、逆らうわけにはいかない彼女達は、結局はそれに従い移動する。
 移動といっても本当にすぐそこの壁際、キャラクターグッズのコーナーから数メートルかそのくらい離れただけの、人通りの少ない道で、二人は壁に背中を預ける事となる。
 そして少年が始めるのは手マンであった。
(こんのヤロー……ぶっ殺してぇ……)
 スカートを捲られて、ショーツの中にまで手を入れられ、性器を直接嬲られる屈辱と不快感に、有希は静かに少年を睨んでいる。
(ハーレムぶっこいてんじゃねーぞクソが)
 少年は右手で有希の性器を、左手では綾乃の性器を愛撫していた。どちらのショーツにも手を差し込み、指先でくにくにとマッサージするように刺激して、感じたくもない快感がそれに応じて薄らと湧いてくるのだ。
「このような場所で……」
 綾乃の顔に苦悶が浮かぶ。
(タマ蹴り潰してやりてぇなオイ)
 心底腹を立てている有希も、少年に対して目つきを鋭くしたまま緩めない。
「うーん、二人とも濡れてきたねぇ?」
 あるのは不快な快楽だ。
 美味しい料理だからといって、最低な人間のスプーンで食べさせてもらっても、何も面白くないかのように、二人はアソコを濡らしつつ、性的な刺激を微塵も楽しんでいなかった。そして楽しんでいようといるまいと、生理的な反応が少年の指先によって引き出され、二人のアソコで愛液の分泌は進んでいた。
 有希と綾乃の浮かべる我慢の顔は、始めのうちは体に触られる不快感によるものだったが、しだいしだいに気持ち良さの我慢も含んだ風に、面持ちは微妙な変化を重ねていく。
「ヌルヌルだねぇ?」
 指で愛液を掻き取って、楽しく塗り伸ばしている少年は、腹が立つほどにこやかな顔をしていた。
 その時だった。

「ねえ、なにしてるの?」

 二人同時にぎょっとした。
 心臓が飛び出るような思いがして、少年だけは驚きもせず単にきょとんと、その幼い声に反応を示していた。
 そこには男の子が立っていた。
 何か不思議なことをしていると、素朴な好奇心を抱いた男の子が少年と二人の少女を見上げていた。
(ちょっと待て! ちょっと待て! こ、子供に見られる展開とかエロ同人だろうが! あってたまるか! あってたまるかよこんな状況がよ!)
 指で性器を刺激してもらっている、などと正直に答えるわけにはいかないが、しかしどこからどうみても、少年の手は下着に潜り、アソコが触られている状況だ。それを目撃された動揺もさることながら、質問までされている状況に狼狽えて、綾乃も完全に困り果てている。
「なんだと思う?」
 少年だけがニヤニヤと、この状況を楽しんでいた。
「うーん、パンツにさわってるし、やっぱりエッチなこと?」
 手マン、などという言葉を知らなくとも、当然そう思うであろう答えが男の子の口から出て来ていた。
「どうかなぁ? エッチなことかもしれないし、実は何か違うことかもしれないよ?」
 少年はそれを正解とは答えずに、他にも何か答えがあるかもしれない風に匂わせる。
「ちがうことって?」
「さあ、なんだと思う? 考えてごらん?」
「アソコのマッサージ?」
 と、男の子は大真面目に答えていた。
(どうすんのこれ)
 性的な好奇心が芽生えているのかいないのか、どちらともつかない純粋に見える眼差しが向けられて、そんな視線の先で少年の両手は蠢き続ける。そこで男の子が見ているのに、愛撫をやめてくれないのだ。
「マッサージだと思う?」
「うん、エッチなことじゃないなら、アソコにするマッサージがあるんでしょ?」
「僕の言葉をよーく思い出してごらん? エッチなことかもしれないし、実は違うかもしれないって言ったんだよ?」
「えー? やっぱりエッチなこと?」
「そうだねぇ? 君は今、マッサージをしているか、エッチなことか、どちらかが答えだと思っているよね」
「うん」
「クイズにしようか。エッチなことでしょうか、それともマッサージでしょうか。正解できたら、面白いことをさせてあげるよ」
 少年と男の子のやり取りに、二人揃ってみるみるうちに引き攣っていた。交わす言葉の内容も、それに愛撫をやめてくれないので、愛液の滴る部分をいつまでも気持ち良くされている状況にも汗が噴き出し、今や額に前髪が張り付きそうだ。
(小さな子を混ぜるとか、マジでエロ同人で見かける展開じゃねえかオイ! なに考えてやがる!)
 有希が顔を顰めていると、そこで愛撫がエスカレートした。
 指が挿入されたのだ。
(ぐっ……! マジでコイツ! ホントにちょっと待て)
 鉤爪の形へ沿った指先が膣口を捉え、穴の中へ潜ってくるなり出入りを始め、その刺激を受ける有希の目尻は強張って、綾乃も歯をきつく食い縛る。
「ねえ、こたえはどっちかであってるの?」
「合ってる合ってる。だけど、まだちょっと難しいだろうから、少しヒントをあげようか?」
「おねがいします」
「じゃあね、マッサージをするのはどんな時? 肩を揉んで気持ち良くして欲しい時とかだよね? 中学生や高校生だって、マッサージで気持ち良くなりたい時があっても、別におかしくないよね」
「うん」
「アソコを揉むってマッサージがあるのかもしれないね? だけど、もう一つヒントを出すと、女の人ってエッチな刺激を受けるとね、乳首が硬くなったり、アソコから透明な汁が出て来るんだよ」
「透明な汁って?」
「水みたいに透明なんだけど、ヌルヌルした感じのものかな。唾液が一番似ているかな? ほら、口の中から出て来る汁は、ツバとか唾液とか言われるでしょ?」
「アソコからだえきがでるの?」
「唾液に似ているけど、名前は愛液っていうんだ」
「あいえき?」
「そう、愛液。でもね、肩揉みで気持ち良くなるのは、別にエッチなことじゃないよね? だけど、愛液っていうものは、エッチなことをしている時に出て来るものなんだ」
 小さな子に向かって愛液などと、まだ当分は覚えなくてもいい知識を与え、その上で膣への指のピストンも続けてくる。
「うーん……」
 男の子は考え込んでいた。
 ショーツの中で蠢く少年の手を見やり、有希と綾乃の様子も交互に見やり、しばし思考を巡らせた男の子は、やがて何か重要な事に気づいた得意げな顔となる。
「わかった!」
「へえ、わかったの?」
「うん。だって、なんだかクチュクチュっておとがきこえるから、おねえさんたちはエッチなしるをだしてるんだよね。アソコへのマッサージをしてもらって、きもちよくなって、でもエッチなしるがでる。ひっかけもんだいだ。マッサージしているけど、それをエッチなしるのでるばしょにしてるから、こたえはエッチなことなんだ!」
 幼い思考のとんだ名推理が披露され、有希と綾乃は複雑な表情となる一方で、少年だけは満面の笑みを浮かべていた。
「正解!」
「やったぁ!」
 無邪気に喜ぶ子供に対して、女の子としては惨めな気分だ。面白おかしいクイズのダシに使われて、アソコをここまで好きに嬲られ、本当に屈辱といったらない。
「約束通り、面白いことをさせてあげるから、ちょっとお使いをしてきてくれないかな?」
 見事クイズに正解した男の子に、少年は一体どんなご褒美を与えるのかと思ってみれば、愛撫を一時中断して、ティッシュで指を綺麗に拭き取り、それから財布を取り出しお金を渡していた。お釣りは貰っても良いといいながら、子供を買い物に使ったのだ。
 そして戻って来た男の子が抱えていたのは、変身ヒロインが使用する変身アイテム――いわゆる魔法のステッキだ。
(なにを……する気だ…………)
 少年はそれを箱から取り出すように告げている。男の子はそれに従いステッキを取り出し握ってみせる。エロ同人のような展開に遭わされている有希としては、だんだんと予想がついて嫌な予感に駆られていた。
(それを……どういう使い方……する気だ………………)
 少年は背後へ回り、有希と綾乃を前に出す。二人は男の子と向かい合わせに、そして後ろからの命令で、スカートをたくし上げる羽目になる。
「はい、スカートをばさっと上げてね?」
 そう言われ、逆らえない二人は嫌々ながらに丈を掴んだ拳を上げて、穿いていた白いショーツを曝け出す。
「お漏らしみたく濡れているでしょう?」
「うん!」
 そんな少年と男の子のやり取りで、ますます惨めな気持ちにさせられた。指の挿入で刺激され、愛液を分泌させてしまった二人のアソコは、水気の染み込む具合で白をグレーに変色させ、すっかり楕円を完成させていた。
「さあ、有希さん? 解説してあげて? できれば素の有希さんがいいかなぁ?」
 背後からそんな注文が付けられて、そのついでのようにスカートへ手が置かれる。有希の尻に、綾乃の尻に、どちらにも同時に這い回り、すぐさま丈を捲った内側へ入り込む。ショーツ越しに撫でる手つきの不快感に、二人して体中を強張らせ、そんな中で有希は渋々と従った。
「こ、こいつは……さっきも聞いたと思うけど、エッチなことをしたら出て来る汁なんだぜい?」
「オシッコじゃないんだね」
「ちゃうわい、愛液ってんだわい」
 罪に加担させられていた。
 小さな子供に教える知識ではないだろうに、ショーツに染みた実物を見せながら、愛液という用語まで口にするなど、なんといけない事をしているのだろう。さながら真っ白な雪原に泥を撒き散らし、白銀の景色を台無しにする所業ではないか。
(くっそぉ、こんなの正気じゃいられねぇ!)
 男の子の前でスカートをたくし上げ、愛液で濡れたショーツを見せている。後ろからは少年にお尻を触られ、撫でたり揉まれたりしている。その上、性的な話について解説をさせられるという、気がどうにかなりそうな状況に、有希は本当に惨めな気持ちになっていた。
「さあ、そのステッキでアソコを突いたり、撫でたりしてみてごらん?」
(予想通りか……)
 当たって欲しくない予想が当たり、男の子が性行為に参加する流れとなって、まずはハート型の先端が綾乃へ向かう。
 本当はそれを止めたい。
 見知らぬ男の子に性行為をさせるなど、止めたいから一歩進んで、そもそも止めるべきですらある。そうしたくてたまらない思いでいっぱいに、しかし少年には逆らえない立場の有希に、せめて吐き出せる言葉といったらこれくらいだ。
「待ちなボウヤ、そーっとやるんだぜい? 乱暴にぐいぐいやったら気持ち良くならないし、むしろ痛いだけだからな」
 そう注意を伝えると、男の子は深く頷き、それから綾乃のアソコを上下に嬲る。言われた通り慎重に、強く押しつけないように意識して、縦筋を上へ下へとなぞり続けて、綾乃はどうやら刺激を感じていた。
「んぅ……んっ、んっ………………」
 ステッキで気持ち良くさせられて、呼吸が熱っぽく乱れているのをぐっと押さえ、綾乃は唇をきつく結んだ我慢の表情を保っていた。
 しばらくは綾乃のアソコを愛撫して、次は有希とばかりに隣へと移るなり、粘液の付着したハート型の先端を押しつける。やはり力をかけすぎず、あくまで軽く宛がい上下に擦り、男の子はその行為を面白がっていた。
「くぅ……んっ、んっ…………」
 モゾモゾと動いてしまうのだ。
 擦られれば刺激が走り、それがはっきりとした身動きや、大きな挙動に繋がるわけではないが、快楽が気配や様子に表れている。落ち着きを失いそわそわとしたような、何かに駆られた腰つきから、きっと男の子は快楽の存在を読み取って、自分がこのお姉さん達を気持ち良くしているのだと、楽しく思い始めているのだ。
 さらに、その時だ。
「ひゃっ!」
「んっ!」
 急により大きな刺激が走ったのは、なんとお尻の穴に指が触れてきたからだ。
「どうしたの? 痛かった?」
「い、いいや? んなこたぁないぜ?」
 冷や汗をかきつつそう答え、そして有希は少年に対しての、本当に勘弁して欲しい強い気持ちを抱いていた。
(アナル……だと……!?)
 今までは尻たぶを握ったり、撫で回すばかりであった少年の手が、ここに来て肛門を狙って来た。中指が割れ目に潜り、綾乃も動揺の刺激を受けた様子で、より強く唇を引き締め声を我慢しようとしている。
 地獄の時間であった。
 後ろからは肛門を愛撫され、前からは魔法のステッキによる愛撫を受ける。一本きりのステッキは、勝手気ままに右へ左へと移っていき、時に綾乃を、時に有希を楽しんで、それら刺激でモゾモゾと、膝や腰が蠢いてしまうのだ。
 しかも少年はこんな事まで言い出した。
「実はね? 僕とこの二人のお姉さんは、エッチなゲームをしていたんだ。気持ち良さを我慢できたら二人の勝ち、我慢できずにエッチな愛液を出したら僕の勝ち。二人とも愛液を出しているから、この二人は僕とのゲームに負けたんだよ」
 やってもいないゲームについて言い出して、ショーツの染みを敗北の証に仕立て上げ始めたのだ。
「そうなの?」
 円らな眼差しで、男の子は有希と綾乃を交互に見上げる。
 ――話を合わせてね。
 と、背後から小さな声で耳打ちされ、内心では激しい苦悶を抱える有希なのだが、深い深い無念を抱え、本当に悔しい思いながらに、無理にでも作った笑顔で答えるのだった。
「そ、そうなんだなぁ、これが。あーあ、負けちまったわ」
 本当に敗北感が湧いてきた。