第5話「痴漢の恥辱」

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 じゅぶっ、じゅる! じゅぶるぅぅぅ!

 それは唾液の音だった。
 愛野が、土良井が、円香と透の乳房にそれぞれ吸いつき、一生懸命になって乳首を吸い、ベロベロと舐め回す。
(やぁぁぁぁ! 無理! 無理無理無理!)
 円香は壮絶な顔をする。
(いやっ、やだ! やだやだやだやだ!)
 透の壮絶さも負けてはいない。
 キスで唇の周りを濡らされ、耳裏に唾液を塗られる嫌悪感も相当なものだったが、乳房というより一層のプライベートゾーンを好き放題にされるのは、さらなるものを膨らませる。
 乳首は両方とも唾液濡れだった。
 衣服を濡らした雨水は、もちろん皮膚にも届いていたが、それ以上に唾液こそがヌラヌラとした光沢を与え、乳首を両方とも輝かせる。
「ちゅぱっ、ちゅぱっ」
 咥えては離し、咥えては離し、舌先でチロチロ虐め、中年の汚い唾液の糸が引く。
「美味しいよママぁ!」
 土良井の甘えきった猫なで声は、悪ふざけのノリだったが、そんなことは関係無い。

 ぞぉぉぉぉぉぉぉ……!

 透の肌中がざわついた。これでもかというほど鳥肌が広がり、全細胞が悲鳴と共にざわめきながら、全身が泡立っていた。
(き、キモすぎる…………)
 自分が言われたわけでなく、透が言われるのを隣で聞いていただけで、円香でさえも耳が腐り落ちるような嫌悪を覚えていた。
(こんな下らなくてキモイ奴なんかに……)
 円香にとって、この四人全員が、既に虫以下の存在だ。地べたを這いずる哀れな死にかけの虫と見做して、心の底から見下しながら侮蔑の視線を送ってやる。そうすべき対象に、しかし今は好き放題にされている。
 しかも、気持ち良かった。
(なんで……こんなのに…………)
 ベロベロと舐められると、生理的な反応によって性感が起動して、性的な快楽が発生する。腹の底では気持ち悪いとばかり感じているのに、どうして少しでも快感が生まれ、少しでも感じなくてはいけないのかがわからない。
(キモい……キモいのにぃ……!)
 透の心も同じ悲鳴を上げていた。
 気持ち悪い……それは間違いなく感じている。汚物を肌に塗られているほどの拒否感は確かにある。それでいて気持ちいいという矛盾に苛まれ、壮絶な苦悶を浮かべていた。
「おい、そろそろ俺らにも遊ばせろ?」
 不意に火亜が言い出した。
「そうそう。俺らにも回せっての」
 と、津馬も言う。
 まるで玩具の貸し借りのような言い草に、それが二人の屈辱をますます煽る。
 そして、二人は体勢を変えさせられた。

「ほーれ! バック挿入だ!」
「入っちゃうぞー? 入っちゃうぞー?」

 火亜が、津馬が、ふざけていた。
 本当の挿入はしていない。尻にペニスをぶつけながら、腰を振ってやることで、彼らがしていることはセックスごっこだ。
(やだ……! やだ……やだ、やだ……!)
 透の顔に悲鳴が浮かぶ。
 二人が取らされた体勢は、座席に体を突くことで、尻を後方に突き出すものだ。しかも座席には愛野と土良井が座っており、さながら股間に顔を埋めようとするような状態にさせられている。もしも挿入していれば、前の口と後ろの口で二穴同時攻めだった。
 尻の割れ目に沿って、それぞれにペニスの竿が乗っている。
 クリーム色のショーツに、ピンク色のショーツに、腰を振りたくってくる火亜と津馬の肉棒が擦れている。彼らはこの摩擦から、ショーツの素材とその内側にある尻の感触を股間で味わっていた。
 そのセックスごっこにより、身体が前後に揺らされる。
(キモい! 無理! 無理無理無理!)
 円香は自分の眼球を押し潰す勢いで目を閉じて、全身から拒否信号を放っている。股に顔をくっつけさせられ、そんな状態で身体が揺らされれば、ペニスに向かって頬ずりするかのように擦れて当たる。鼻や唇も、しきりに擦れて接触する。
(もうやだ! なんで! なんでこんな!)
 透も同じように目を瞑り、その力強く閉ざしたまぶたから、涙の滴を浮かべつつあった。
「いいケツしてんじゃねぇか! ええ? 円香ちゃんよォ!」
 火亜は大いにテンションを上げ、尻たぶを掴んで撫で回す。手の平を駆使してショーツの繊維を存分に味わい尽くし、さらには平手打ちまでかまし始める。

 ぺん! ぺん! ぺん!

 何も悪いことをしていないのに、子供の体罰のような真似をされ、円香はより一層の激しい苦悶を浮かべた。痛みを与える目的ではない、さほど強い力もかかっていない平手打ちだが、恥辱を煽るには十分だった。
「へへっ、俺もやってみるか」
 津馬は隣を真似したくなったかのように腕を振り上げ、透の尻も叩かれ始める。

 ぺん! ぺん! ぺん!
 ぺん! ぺん! ぺん!

 二人の尻が叩かれていた。
 愛野と土良井は、それら尻の打たれる様子を撮るために、片手でスマートフォンを操作しながら動画撮影を開始する。
 もちろん、もう片方の手では頭を押さえ、二人それぞれの顔が自分のペニスから離れないように、逃げないように力を込めている。逃げようとする力を感じれば、それ以上の力で握力を込めたり、押さえ込むなどして、顔とペニスの接触を保ち続けた。
(なんで……なんで…………!)
 透はもう泣き出している。
 目尻から溢れた滴は、やがて頬から流れ落ち、涙の筋が出来上がっていた。

     *

 悪ふざけの内容は移り変わる。
 彼ら四人にとっては、はしゃいでふざけて騒ぐノリであっても、円香と透が味わう屈辱は想像を絶するものだ。
「ほらほらほらほら!」
 火亜と津馬により、身体が持ち上げられていた。
 赤ん坊を抱えるようにしたM字開脚で、二人はショーツ越しのアソコを嫌でも見せびらかす形とされ、愛野と土良井によってスマートフォンを向けられる。執拗なまでにパシャパシャと、シャッター音声を鳴らし続けて、その音が透と円香を苛んでいた。
「へっへっへっ、気持ち良くしてあげるよぉ」
 愛野はニヤニヤしながら円香のアソコに触り始める。
「いっぱい感じていいんだよぉ?」
 土良井も透のアソコを触り始める。
 ショーツ越しの摩擦によって、指と繊維による摩擦の音が鳴り、二人のワレメには愛撫による刺激が与えられる。
「ふざけないで! 気持ち良くなんてなるわけないでしょ!」
 円香はほとんど金切り声を上げていた。
 感じるわけがないからやめて欲しい、そんな意図が存分に込められていたが、彼らがそれを汲み取るはずもない。
「いや! いやだ! もうやめて! お願い!」
 透も喚く。
 しかし、上がりに上がったテンションで、土良井は鼻息を荒くしながら擦り続ける。透の叫びなど聞こえてすらいないように、爪や指腹で刺激を与えた。
 最悪なことに、二人は感じていた。
(なんで……! なんで、なんで!?)
 透はその事実に動揺している。
 乳首を舐められた時もそうだったが、肌中が気持ち悪さを感じているはずなのだ。今も細胞が拒否反応を起こし、体中の神経に嫌悪感の信号を走らせている。触れられた部分から腐食が広がるようなおぞましさに、肌という肌が泡立っている。
 どうして性的な快感が少しでもあるのか、まるで理解できなかった。
 愛撫を受けるうち、二人のアソコは徐々に愛液を漏らし始める。最初は水分の気配だけを醸し出し、雨で濡れていたせいで膣分泌液の感触はわかりにくい。もう少し量が増え、ほんの少しでも糸が引くようになってから、愛野と土良井はようやく濡れ具合に気づき始める。
「いいねぇ! 感じてくれて嬉しいよぉ!」
「僕も僕も!」
 そして、しっかりとした染みが出来上がる。
 ワレメのラインに沿って滲み出た愛液は、ショーツに水分を浮かべるにつれ、楕円形の染みを作り上げる。
 愛野は、土良井は、濡れた記念に一枚撮った。
 スマートフォンの画面の中に、愛液で湿ったアソコは大きく映り、それを一緒になって本人に見せつける。
 二人は赤らみながら顔を背けた。
(もうやだ! なんでこんな目に!)
 さらには電気マッサージ器を持ち出していた。
 愛野が、土良井が、その棒状の器具の先端部を押し当てる。先端の丸いマッサージ器は、スイッチを入れると振動して、それがアソコに刺激を与える。
「んんぅぅぅぅ……!」
「やぁぁぁぁ……!」
 その快感に、むしろ上げるのは悲鳴であった。
 こんな連中に、こんなにも惨めな思いをさせられながら、快感まで与えられる。その状況に喜びの声など上がらない。無理にでも感じさせられ、強制的な快楽に体中が震えることで、悲痛な表情を浮かべていた。
「やめて! お願いやめて!」
 透は必死に首を振り、嫌だ嫌だと訴えながら髪を激しく振り乱す。
「いい加減にして! やめてってば!」
 円香も同じように叫んでいた。
 だが、四人の男達全員が、そんな悲鳴や嫌がる様子を可愛いものと認識している。かえってテンションの上がる反応であり、泣き叫ぶ様子にニヤニヤしている。
 二人のアソコに何かが溜まっていた。
 振動が膣内にまで伝わって、内側の肉が鳴動する。ちょうどクリトリスの位置だったせいもあり、敏感な肉芽がみるみるうちに突起して、愛液の分泌量を増やしていく。
 何かの弾ける予感があった。
 見えない何かが急速に膨らんで、風船が破裂する直前のように大きくなる。

「あぁぁ――――――」
「いやぁぁ――――――」

 二人は絶頂していた。
 ビクンと、大きく脚を跳ね上げて、次の瞬間にはじわりと愛液を滲ませる。細い楕円形だったショーツの濡れは、見るからに染みの面積を広げていた。
「ははははっ! イっちゃったねぇ?」
「イったイった! 気持ち良かったねぇ?」
 愛野と土良井が嬉々として煽る。
「やだ……もうやだ…………」
「もう帰りたい…………」
 恥辱に濡れ、二人は俯く。
「遠慮しないの! もっといっぱいイカせてあげるから!」
「さあさあ遠慮なく!」
 二人は何度も執拗にイカされた。
 電気マッサージ器の威力があれば、簡単によがってイキ散らすとわかってから、まるで玩具の反応を楽しむように、何度もクリトリスに当て直す。ビクビクと脚が跳ねるたび、四人揃ってはしゃいでいる。
 ショーツの濡れはクロッチからさらに広がり、もはやフロント全体が愛液を吸い込んでいた。
 下着の内側では、敏感な肉芽は腫れるかのように大きくなり、濡れすぎた布地は単に愛液を吸水するだけではない。吸水の限界を迎え、なおも愛液が増え続けることで、表面をヌルヌルとした粘液でコーティングしたようになっていた。
 電気マッサージ器の先端と、アソコとのあいだで糸が引く。
 愛野と土良井は、ここまでイカせ、濡らせてやった記念に、またもスマートフォンによる撮影を繰り返した。

     *

 火亜が円香で、津馬が透で遊んでいる。
 座席に顔を埋めさせて、またしても尻を突き出すポーズを取らせ、一緒になって縦横無尽に撫で回す。手の平で尻の感触をよく味わい、おまけに津馬は舐め始めた。

 ねろぉぉぉぉ…………。

 と、唾液をたっぷりと纏った舌は、パンティラインに沿って斜めに直進する。ゴムと皮膚の両方に舌先が触れ、だから半分の唾液は吸水される一方で、もう半分の唾液は皮膚に直接塗られていく。
「いやぁぁぁ………………!」
 透は悲痛な声を上げ、肌を泡立たせていた。
 津馬も同じくライン沿いに舐め始め、その気持ち悪さに円香は全身を震わせる。先ほどはイカされることでビクっと弾んだ二人だが、今は純粋な嫌悪感だけでブルっと震え、怖気を感じているのだった。
 二人の尻に唾液が擦り込まれる。
 透は涙を流し、円香は必死に耐え忍ぶ。
 ほとんど拷問に耐える思いで、二人は地獄の時間を過ごしていた。尻を存分に撫で回し、舐め尽くしてくる彼らに対して、耐えることしかできなかった。
 そして、二人のショーツがずらされる。
 尻たぶの片方が出るように、割れ目の内側にゴムが入ったと思いきや、円香に対する火亜と、透に対する津馬で、隙間にペニスをねじ込み始める。

 ゾクゥゥゥゥ…………!

 背筋全体に寒気が走る。
 ペニスが触れてくることへの嫌悪感で、全身の細胞が騒いでいた。
「へへっ、楽しませてもらうぜぇ?」
「ま、悪く思うなよ」
 火亜と津馬が行うのは、ショーツと尻のあいだに差し込んで、そこでペニスをしごく行為であった。パンツコキとも、尻コキとも言える方法で、二人の尻の割れ目に沿って、それぞれの肉棒が前後していた。
 肉槍がショーツを内側から突き上げて、その瞬間だけ亀頭の形に沿って布は膨らむ。ピストン運動の流れで引っ込むと、突っ張った直後の布はたるんでしまう。
 円香は強く歯を食い縛り、透は顔を座席のシートに埋め込んでいた。
 必死に耐えていた。
 抵抗して暴れても、力ずくで押さえ込まれるのは目に見えている中、愛野がハサミまで所持していたことへの恐怖もある。ただただ必死に耐え忍び、地獄が過ぎ去るまで辛抱強く待ち続けることしかできずにいた。
 火亜と津馬が射精する。
(うぅぅぅ……!)
 円香が引き攣る。
(気持ち悪い! 無理!)
 透が悲痛な顔をする。
 愛液ではフロント側しか濡れておらず、雨によっても少しばかりしっとりとした程度であった。そこに大量の精液が吐き出され、尻の表面をドロドロに穢されたことにより、ショーツがいとも簡単に粘液にまみれていた。
 肉棒が抜けた時、ショーツは一瞬にして吸水量の限界を迎え、布に吸いきれない分を表面に滲ませる。ねっとりとしたコーティングを帯びて、白濁は表面に染み出ていた。
「お? 我々もドピュっといきたいですなぁ?」
「いっちゃいましょうかぁ!」
 愛野が円香を抱きすくめ、土良井も透に腕を回し、力ずくで強引に押し倒す。二人は並んで床に寝かされ、今後は前側に肉棒をねじ込まれた。
 性器のワレメと、ショーツの布と、そのあいだに肉棒は挟まった。
 そして、仰向けで脚を開いた正常位じみた体勢で、尻が床につくせいで、皮膚には先ほどの精液がますます染み込む。肉棒が触れてくる気持ち悪さと、にじゅりと粘液の音が立つことへの嫌悪感で、耐えがたいものが二人を包み込む。
 愛野と土良井は楽しい遊びのように腰を振り、性器に肉棒をなすりつける行為を満喫した。
 ピストンを行えば、愛液のおかげで表面をぬるりと滑る。執拗な摩擦を与えていると、肉棒との隙間でそれは泡立つ。徐々に射精感を高めたところで、一緒になってショーツの内側に射精して、二人の下着はますます精液濡れとなっていた。
(無理……気持ち悪いよ……)
 透は悲痛の眼差しを浮かべる。
(こいつら……早く死んでよ……)
 円香は呪いさえ胸に抱いた。
 男達四人はその後も辱めを繰り返し、わざわざ円香の手に握らせて射精した。透の胴体に跨がって、パイズリしながら射精した。亀頭の周りに残ったヌルヌルとした汚れを拭き取るために、ワイシャツやスカートを利用した。
 そして、記念撮影も忘れない。
 円香の頬に二本の肉棒を押しつけて、亀頭でほっぺをぷにりとした写真を撮る。ショーツをずらし、肛門を撮って本人に見せつける。しまいにはスカートを脱がせ、ショーツも膝まで下げた上、全裸同然の写真まで撮り始めた。

「はい! チーズ!」

 と、男だけは笑顔でピースサインを作っての撮影で、土良井と津馬が二人して透を立たせ、それぞれの腕を回していた。恥じらいもなくペニスを露出し、乳房もアソコも丸見えの透を真ん中に立たせての記念写真は、彼らの中ではかげがえのない宝物となる。
 似たような撮影を円香によっても行った。
 円香が真ん中に、腰と肩には愛野に火亜の腕が回って、両側だけは楽しそうにピースをする。円香は暗い面持ちで俯き気味だった。
 やっと解放される頃には下着がドロドロだった。
 もはや、ドロっとした粘液の中に浸して取り出した直後のように、精液をまんべんなく吸水しきって、本当にベトベトのものを穿かされた。ワイシャツやスカートのところどころにも精液が染み込んで、そんな二人を残して停車駅を降りる四人は、とてもとても満足そうにしているのだった。