第12話 二人の初夜

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 部屋のベッドはとても大きく、おまけに上品なカーテンに囲まれている。屋敷の自分の部屋を思わせるが、元の屋敷の方がいささか生地は高級で、他の周りの調度品も良いものを揃えていた。
 大都市の高めの宿とはいっても、貴族の屋敷には勝てないらしい。
 エレディはそんな部屋で夜を迎え、ランプが照らし出したベッドシーツの真ん中に、タオルを巻いただけの姿でアイガのことを待っている。既に浴室で身を清め、裸なりの身だしなみと思って香水まで使ってみているエレディは、さすがに覚悟を固めていた。
 今日、するのだ。
 自分と入れ替わる形となって、今はアイガが身を清め、今に同じベッドへ上がってくるだろう。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう……!

 嬉しいのか、怖いのか、自分でもわからない。
 ドキドキと胸が高鳴り、心臓がどうにかなりそうなのは確かなことで、エレディは頭の中でしきりに避妊魔法の復習を重ねている。避妊魔法は男の精子にかけるタイプと、女の子宮にかけるタイプの二種類あり、エレディは自分の子宮に呪文を唱え、確かな準備を済ませていた。
 恋をして、気持ちが通じ合えば、遅かれ早かれこういった日は巡ってくる。
 ただ……。
 セックスを目前にして、頭にチラつくあの影は、どうしても綺麗には振り払えない。トラウマのせいでセックスを怖がる自分は確かにいる。
 上手くできるだろうか、と。
 だからこそ、そういった不安も大きくなっている。

「エレディ」

 浴室から出てくるアイガは、腰にタオルを巻いただけの裸体で現れ、カーテンを開いてベッドに上がる。
 お互いに布一枚、それさえ取れば完全な裸となる状態で、膝を突き合わせるのだった。
「あ、アイガ……」
「緊張、してるか?」
 真剣な眼差しがそこにはあった。
 アイガの方こそ緊張しているくせに、目はどこまでも真っ直ぐだった。
「手がね。震えちゃって……」
 その震えを伝えるため、エレディは手を差し出す。手の甲がアイガの右手に包み込まれて温まり、この温度には魔法のようにうっとりとしたくなる。
 だが、震えは止まらない。
 兵士という兵士の数々の――顔が、顔が、顔が、下品で汚らしい顔が、人を性処理道具としてしか見ていない顔が、邪悪な笑顔が、あらゆるものが脳裏にチラつき、目の前にいるのはアイガだというのに、不安を加速させてくる。
「俺を見てくれ」
 そう言われ、エレディが目を上げると、黒髪のかかった赤い瞳に覗き込まれた。
「アイガ……」
「俺はあいつらとは違う。エレディを抱くのは俺だ。あんな奴らから……今から、エレディを奪う――」
 心臓が飛び出そうになった。
 そうだ。
 きっと今この心はトラウマに囚われていて、まるで牢獄から連れ出すように、今度は別の誰かに奪われる。
 アイガに――でも、アイガなら……。
 エレディの気持ちは固まり、アイガなら本当の本当に信用できると、すっとまぶたを閉ざして唇を捧げにいく。顎を突き出し、言葉無しに求めたものは、すぐさま与えられていた。
 顔なんてドロっと溶けて、今すぐにでもなくなってしまいそうなほど、アイガの唇から伝わる体温は甘美であった。甘く狂おしいものに憑かれ、一瞬にしてアイガのことしか見えなくなり、他の全てがもう視界にも入らない。
「アイガ……!」
 重なった唇が少しでも離れそうになった途端、今度はエレディの方から抱きついて、離れまいと唇を重ね直した。その首へと両腕を絡めつけ、アイガの全身から伝わる体温を求めて、身体を密着させていた。
 すると背中に指がきて、タオルが外される。
 そうしなければいけないように、エレディ自身もタオルを外す決意をして、お互いの身体が密着し合う隙間から、邪魔な隔たりを抜き取った。肌を直接アイガに押しつけ、全身を使って味わうように、アイガの胸板や腹筋から伝わる体温を感じ取る。

 なにこれ、なんなの……!
 し、幸せすぎる……!

 あったはずのトラウマが消し飛んでいた。
 いいや、本当に心の傷が消えたとは限らない。エレディはこれからも悪夢を見たり、男を強張るかもしれないが、少なくとも今だけは、目の前のアイガに夢中になって、他の全てが頭から消え去っているのだった。

     *

 アイガにも迷いはあった。
 性暴力を受けた相手にセックスを求めて、本当にいいのか。信頼を受けているはずの自分がエレディを裏切ったら、エレディは一体どうなるのか。
 だが、アイガにも少年的な気持ちがある。
 エレディを取られたくない、他の男に抱かれたままにはしたくない。
 抱くからには生涯をかけて守り抜くことを心に誓い、エレディのことをこの手に抱きたいと思ったわけだが、肝心のエレディの気持ちを確かめていない。キスまではしたものの、今のエレディがセックスをどう思うか、はっきりとは尋ねていないのだ。
 いっそ、はっきり確かめようか。
 悩んだ末の答えとして、それを知るための場を設けようと思っての言葉がこうだった。

「今夜、話がある」

 しかし、エレディは明らかに顔を赤らめ、それを見たアイガもまた照れ臭くなってしまい、何というべきか、そういう申し込みをしたことになってしまった。言葉の裏からサインを放ち、アイガ自身がそういう頼みをしてしまっていた。
 それを嫌がる風でもない、赤らむ反応を見たアイガは、ならばもう今夜のうちにと思ったのだ。
 そして今、鍛え上げた胸板には、エレディの乳房が潰れている。首には両腕が回って来て、唇にはエレディの必死な口づけが行われ、アイガも背中を抱き返している。
 全身が柔らかい。
 ふわっとした質感の皮膚に、少しばかり指が沈む触り心地で、こうして抱き合うことさえ想像以上に気持ちが良い。乳房が当たってくる興奮もさることながら、胡座をかいた自分の上に乗り上がり、タオル越しの自分の肉棒がエレディに当たっているのだ。
「あ、当たって……」
 キスに夢中だったエレディは、ふとした拍子にやっと気づいて、自分がどこに座り込み、アソコに何が触れているかを悟っていた。
「……すまん」
「い、いやっ、その……びっくりして……」
「そ、そうか? その、とにかく続けよう」
 お互いに狼狽えて、それを誤魔化すようにキスばかりを繰り返した。
 そのうちにアイガは大口を開けて桃色を貪り、激しく味わううちにエレディの舌が伸びてくる。舌先をぶつけ合い、絡め合う頃には、二人して目がとろけて、アイガにもエレディのことしか見えていない。
 エレディが大切だった。エレディが愛おしかった。
 だからこそ、この手で自由にしたい。
 やがてエレディを押し倒し、自分の腰からもタオルを取り去ると、その顔に不安の色が蘇り、見るからに緊張していた。
 アイガ自身もそうだ。
 持ち合わせているのは本で得た知識のみ、実践は全て初めてであるアイガには、丸裸の女体でさえも刺激が強い。ささやかに膨らんだ乳房が乳首を浮かせ、桃色の艶を放っているところが、見ていて我を失いそうになる。
 ……駄目だ、理性は持っとけ。
 自己の暴走を食い止めながら、アイガは少しでも真剣な目でエレディを見ようとした。自分がエレディを抱くには、生涯のパートナーにしたいからだ。特別に可愛くて、他の女など考えられないからだ。
 一生、共にいたい。
 そんな深い意味で、エレディのことが欲しい。
「……怖いか?」
 柔らかな頬を両手で包み、アイガは真っ直ぐにエレディの碧眼を見下ろした。
「少し……」
 不安がるものが浮かび上がって、もしかしたら自分がエレディを恐怖させるかもしれない、そんな恐怖がアイガにも湧き始める。よしんば検問所のことがなくても、純粋に緊張するはずだ。
 だが、それを越えたかった。
 どうにかして、この隔たりを突き破りたい。
「俺さ。エレディのこと、いつから好きだったかわかんねぇ。いつの間にかお前のこと気になっててさ」
 アイガはエレディの頬を両手で包む。
「これから、ずっと一緒にいようぜ。ずっと、さ」
 真摯に思いを伝えていた。
 それくらいしか、アイガに思いつくことはなかった。
「……うん。私の夫に、なってもらうよ」
 エレディは照れ臭くて気恥ずかしい表情で、アイガの胸に当てる。ちょうど心臓がいつになくバクバクしている時に、自分が本当はどれだけ緊張しているか、これでエレディにわかってしまう。
「えへへっ、アイガ、私と同じくらいドキドキしてる」
「かもな」
 胸板に張りついた手を包み、そっと握り締めてやる。
 嬉しかった。
 エレディの口からはっきりと出て来た答えを聞き、過去のどんな達成感さえ上回る感覚を覚えていた。剣術で思い通りの技ができるようになった時、学術試験で良い点数が取れた時、厳しかった親が珍しく褒めてくれた時――思い出の中にある数々の嬉しかった体験を上回り、もう本当にエレディを手放せない。
 腹は決まった。
 初めて異性を抱く体験に、どんなに心臓が激しく暴れようと、最後の最後までエレディを愛しきる。
「エレディの全てをもらう。覚悟決めとけ」
「……わかった。アイガなら、いいよ」
 エレディの腕から力が抜け、胸に当たっていた小さな手は、だらりと垂れ下がっていく。ゆっくりと目を閉じて、これから何が起きても受け入れようとしているエレディに、アイガもいよいよ本格的にその肢体を味わい始める。
 まずは胸を揉み始めた。
 両手を使い、乳房を包んで揉みしだく。鍛え込んだ握力で本気を出せば、きっと握り潰すだろうから、デリケートなものを扱うつもりで優しくゆっくり、理性が弾けて暴走しないように気をつけながら、自制心を持って感触を確かめた。
 ふわっとした膨らみは、力を込めればあっさりと指が沈んで、脱力すれば押し返される。アイガはなるべく弱々しい力で指を押し込み、じっくりと時間をかけて堪能する。そのうちに乳首が突起して、手の平にぶつかるようになっていた。
 試しに乳首をくりくりと、指先でいじめてみる。
「あぅ……」
 小さな喘ぎ声が出た。
 アイガはそのまま乳輪をなぞりつづけて、しばしのうちにしゃぶりつく。右の乳房を頬張って、吸い上げながら、口内で舌を使って乳首をいじめる。左の胸にも吸いついて、存分に舐め回して唾液を塗り込む。
「あぅ……んぅぅ…………」
 ふと、エレディの様子を窺った。
「アイガ…………」
 安らかに眠るかのようにして、どうやら愛撫に浸っている。
 童話の眠り姫を見ているようで、急に愛おしくなってきて、アイガは頬に口づけする。そのまま金髪を掻き分けて、耳の穴まで舌を入れ、首筋に吸いつき甘噛みする。
 頬を撫で、額を撫で、腰のくびれをさすってみて、腕や脚など、他のあらゆる部位にかけて愛でていく。全身の至るところを愛するうちに、アイガはいよいよ金色の草原を生やした秘所に目をつけた。
 ささやかな生え具合を指で掻き分け弄ぶと、あまりにもサラサラとした触り心地で、指が気持ち良くなってくる。髪に触った感触はいつもこうだが、陰毛までこの感じだとは思わなかった。
 そのままワレメに指をやり、努めて優しげに、決して乱雑にしないように意識しながら、上下になぞり始めてみる。
「んぅ……んぁ……あっ、アイガぁ…………」
 エレディは感じている。
 自分の愛撫に過ちはないとわかるなり、アイガはこの調子で触れるか触れないかの具合でなぞり続けて、エレディの頬が紅潮した顔を目で楽しむ。こんなにも安らかに、安心しきってくれているのも嬉しいが、甘い吐息を漏らして呼吸が色っぽいところにもそそられる。
 やがて、愛液が指に絡みつくようになってくる。
 最初はささやかな量であったが、続けるうちに増えていき、しだいしだいにヌルヌルとした触り心地に変わっていく。ついにはワレメに液体を塗り込んでいるかのような、実に滑りの良い状態が出来上がる。
 指を入れても、大丈夫だろうか。
 素人であるアイガは、急に爪の長さを気にしたが、十分に短く切って磨いてある。これなら中身を引っ掻くことはないだろう。ならば平気だろうかと、恐る恐ると挿入を試みて、指先で穴を探った。
 膣口の位置は知識的なものである。
 こうして、指だけで探って見つけ出すのは初めてだったが、どうにか上手く指先が潜り込み、アイガはそのまま挿入していく。
 ぬるぅぅぅ――っと、活性油のおかげで簡単に、押し込みさえすれば指は飲まれて、すぐにでも根元まで収まっていた。
「あぁぁ……あっ、あぅ…………」
 ゆっくり、動かし始める。
「んっ、んぁ……あっ、あぁぁ…………」
 指を出し入れしていると、見え隠れする根元に愛液が染み込んで、皮膚がすっかり輝いている。
「脚、自分で抱えてくれ」
「う、うん……でも、恥ずかしい…………」
 エレディは真っ赤な顔で脚を開いて、自らの膝を両手で抱え上げる。綺麗なM字が完成して、アソコのよく目立った卑猥なポーズに、アイガはひどく興奮した。
 小さい頃から一緒に育ってエレディが、こんなにもはしたない姿をしている。
 ランプの明かりが照らし出し、濡れたアソコがよく光る。好奇心から覗き込めば、尻の穴さえ見えてしまい、本当にエレディの全てを見てしまった気になって、大きな何かを得たというべきか、かなりの満足感が湧いていた。
「恥ずかしいってば……」
「悪いな。エレディの全部、見ちまった」
「やだもう、エッチ……」
「このまま、もっと凄いことになるんだぜ? 俺達」
 アイガはいよいよ肉棒の挿入を意識する。
 正常位で繋がるべく、エレディの股に腰を近づけ、ワレメに竿を乗せる形が出来上がると、肉棒の皮膚に愛液があたってくる。
 エレディの顔に緊張が蘇っていた。
 アイガもそうだ。
 あまりにも心臓がうるさくて、自分がどれだけ緊張していたのかを思い出し、思わず胸に手を当てる。そうすれば止まるわけでもないが、つい胸板を握り締め、押さえ込もうとしているのだった。
「アイガも、緊張してるんだ」
 上擦った声で、エレディは言ってくる。
「……ま、まあ? それなりにな」
「一緒だね」
「かもな。エレディ」
 アイガは緊張ながらに竿を握って、切っ先を入り口に押し当てる。亀頭でワレメを突いた途端、ますます心臓がうるさくなる。あまりにも激しい鼓動によって、まるで鼓膜を直接内側から叩かれているような、自分自身の体内から広がる騒音に頭が占められ、このままでは動けなくなりそうだった。
 体が強張る。顔も強張る。
 いよいよだと思えば思うほど、この緊張が全身を硬化する。
 エレディも似たようなものなのか、両手をお祈りのような形に握り締め、胸の上で固く握り合わせていた。しっかりと目を瞑り、強張った表情で挿入を待ち構えていた。
 エレディは覚悟を決めてくれている。
 だったら、最後までやり遂げなければ、そんな使命感から腰を押し込み、心臓が立てる激しい騒音と戦いながら、硬化した肉体をぎこちなく動かした。愛液で滑りが良くなっているおかげで、先端はにゅるりと潜り込み、押せば押すほど穴の形が肉棒に合わせて広がっている。
 膣壁の狭間に潜り込ませて、熱気ある肉壁の感触が竿全体を包んでいた。
 とうとう、収めてしまったのだ。
「や、やった……」
 根元まで差し込むだけで、何かを達成した気持ちが湧き起こり、アイガはすぐさまエレディの様子を気にかけた。
 痛くはないか? 苦しくないか?
 目先の快楽よりも、エレディを気遣わなくてはならない使命感から、義務のように顔付きを確かめる。
「……アイガ」
 薄らと目を開けて、エレディはアイガを見ていた。
「へ、平気か? 痛みとか、そういうの……」
 恐る恐るアイガは尋ねる。
「へへっ、そんなこと言っちゃって、アイガってば……動きたそうにしてる…………」
 緊張を誤魔化すように、無理に悪戯っぽい笑みを浮かべて、どうにかアイガのことをからかってきた。
「そりゃ? 動きてーよな」
「まだ、駄目……その前に、こっちに来て……」
 エレディは両手を伸ばし、指先をアイガの頬に届かせようと、懸命に伸ばしてくる。それに合わせて上半身を前へ前へと、だんだんと倒していけば、しだいに頬が両手に包まれ、耳が触られ、後頭部の髪が指に絡め取られていく。
 お互いの鼻先が掠れ合うほどの距離から、二人は見つめ合った。
 じっと見上げてくる碧眼に、アイガも熱い視線を落とし、まるで時間が止まったように視線を絡め合っている。
 そうすることで、お互いを感じ合っていた。
 性器でも、視線でも結合して、上下で繋がりを作った二人は、ただ見つめ合うことで全身の肌に相手を感じ取っている。この部屋に広がる空気全てを皮膚全体で確かめて、存分に取り込んでいるかのような時間であった。
 不思議と心地が良い。
 早く肉棒を動かしたいようでいて、永遠にこうして繋がり、ただ見つめ合う時間の中に閉じ込められてしまいたいようでもある。
「エレディ……」
「……アイガ」
 無意識だった。
 本当に無意識のうちに名前を呼び合い、それが自然と合図となって唇を重ね合わせる。それは激しいキスとなり、決して逃がすまいと力を込めるエレディの、自分の顔にアイガの頭を押し込もうとする両手によって、歯と歯がぶつかり、舌も絡まり合っていた。
 アイガが唇を貪ると、エレディも頬張り返す。
 お互いの顔を食べ合うように、交互に相手の唇に食らいつき、存分に味わおうと舌を激しく踊らせていた。
 ……そろそろ、動くからな。
 と、そう声に出したわけではないが、視線だけで意思が通じた。
「……うん」
 エレディは頷いていた。
 ようやくアイガは動き始めて、まずはゆったりと出し入れする。腰を引いた途端に快楽が込み上げて、肉棒が溶けてなくなりそうなほどの甘い感覚が充満した。
「す、すげぇ……」
 あまりの気持ち良さに関心しながら、アイガはゆさゆさとピストンを開始して、エレディの膣内を丁寧に抉っていく。乱暴にしないようにとの意識が強く、さほど速くは動いていないが、エレディには十分な快感があるらしい。
「あぁ……アイガぁ……あっ、んぅぅ…………」
 エレディはうっとりと目を細め、嬉しげにアイガを見つめてくる。
 アイガも碧眼に視線を絡めたまま、見つめ合いながら腰を動かし、たまに思い出したように行うキスを交えて振りたくる。
「んっ、んぅ……んあっ、あぁ……! あっ、あふぁ……!」
 幸せでならないようなエレディへと、キスの雨を降らせてやろうと、頬や耳に何度も何度も口をつけ、するとエレディは唇にも欲しいとばかりにパクパクと求めてくる。まるで親鳥に餌を求める雛である。
 アイガは唇にも何度も重ね、執拗なまでに見つめ合いながら、肉棒によっても存分にエレディを味わった。
「あぁ……あっ、あぁぁ…………あぁぁ…………」
 熱気を帯びた肉壁は、さほど緩んではいないようで、活性油がなければ摩擦に引っかかることでピストンがしにくいことだろう。アイガの直径よりも、穴幅の方が数ミリほど狭い気がするも、愛液のおかげかあっさりと出入りしてくれる。
「エレディ、避妊魔法はかけてあるから」
 耳の穴にキスをしながら、アイガは囁く。
「えへっ、私も。二重だし、安心だね」
「遠慮しねーぜ」
 アイガは少しばかりペースを早める。
「あっ、あんっ、あんっ、あんっ、あんっ、あんっ、あんっ――」
 それに応じてエレディの喘ぎもペースを早めた。
 腰が活発になるにつれ、二人して下半身に集中していき、やがてアイガは腰を振ることだけに、エレディは膣への出入りを感じ取ることだけに意識をやる。
 もうすぐだ。
 射精感が込み上げて、いよいよアイガはエレディの中に放出した。
「んあっ、あぁぁ……あ、アイガの……アイガのが…………」
 熱のこもった白濁を受け取って、エレディは頬の火照った顔で軽く驚き、まだまだ興奮の冷めない吐息を吐いてアイガを見つめる。
「エレディ、すげー良かった。俺、マジで幸せ」
「私も」
 お互いに満足しきった顔で笑い合い、余韻の中で二人は顔を触り合う。
 しばらくすると肉棒を引き抜いて、するとエレディの膣口からは、今まで栓に閉じ込められていた白濁が零れ出す。
「アイガ、いっぱい出た」
「エレディが気持ち良すぎてな」
「あーあ、洗わなくちゃ。ね? 一緒にお風呂入ろう?」
「ふ、風呂か? マジで?」
「もうシちゃったんだし、照れることないじゃん」
「照れてねーし」
「嘘だ。照れてる照れてる」
「けっ! 俺はまだまだ元気だからな。こうなったら風呂入ってもっかいするぞ」
「えー……」
「つーか、エレディには俺の体しか思い出せないようになってもらう。それくらい、いっぱいしまくってやる」
「……そ、そっか。それは、期待しておこうかな」
「おう。んで、もちろん結婚もして、色々と幸せになろうな」
「うん!」
 明るく笑うエレディは、飛びつきながらアイガに抱きつき、胸板にひたすら頬ずりする。アイガはそんなエレディをしばらく撫でると、風呂場へのエスコートを行った。