◆相手はどうもチャラ男らしい

 私が寝取らせプレイなどというマニアック極まりないものを了承したのは、言葉通りマンネリを感じていたからに他ならない。
 何かこう、刺激でもある方が、今後の関係を長続きさせるためにも良いと思った。
 好きで他人に抱かれたいかといったら、それは当然ながら違うわけで、しかし助手がそう願うなら、一時的な嫌悪感ぐらいは堪えてみよう。
 さて、そのセッティングは既に済まされ、私とチャラ男で現在ホテルに部屋を取っている。
 名前は聞いていない。
 一度きりの関係のつもりでいるので、相手の名前を知る必要はないし、私もコードネームすら教えていない。
 よって彼のことはチャラ男くんとでも呼べばいい。
 金髪で肌は浅黒く、待ち合わせの場所には、海でもないのにアロハシャツを着て来ていた。ボタンを半分まで解放して、鍛え込んだ肉体を露出していたのは、セクシーな筋肉を見せびらかすためだろうか。
 助手には悪いが、チャラ男くんのルックスは悪くない。筋肉の付き具合や脚のラインも整っていて、スタイルまで良い男なので、一度きりの他人としては最上か。
 二度も三度も会うことはないのだから、人間的な中身を重視はしない。
 見た目さえきつくなければ、とは考えていたが、なかなかどうして悪くはない。
 ただし、好みの路線でもないが。
 そのチャラ男くんだが、ベッドをベンチ代わりのようにして、縁から足を下ろして座っている。私はそんな股のあいだに座らされ、お尻にはアレが当たっているし、背中にはチャラ男くんの体温が直接伝わっている。
 加えて言うと、既にお互い全裸である。
 なのでべったりとした密着感は、とても直接的に伝わるし、アレの硬さや大きさも如実なものだったりする。
「やっほー! 彼氏くーん!」
 チャラ男くんは私のことを我が物のように抱き締めながら、目の前のモニターに向かって手を振って、そこに映る助手へと呼びかけていた。
 このプレイでは、画面越しに見せつけることになっている。
 助手としては直接見たかったようだが、それはさすがに……と感じたので断った。
「あれぇ? 元気ないねー。どうしたん? これって彼氏くんのお望みでしょう?」
『ああ、その通りだ。問題ない。始めて欲しい』
 しかしながら、助手の声は少々震えている。
「助手、いざこの状況を目にして、やっと気が変わったのかな?」
『い、いやぁ、気が変わったというか……』
 完全にオロオロしている。
 どうしよう、どうしよう、みたいな感情が溢れ出ている。
 助手はこれが見たかったのではないのかね。
「どうあれ、今更というものだよ。何、安心するといい。私にとって、他人に抱かれるのはあくまで我慢ゲームだ」
「え? ひどくなーい? こっちはボランティアを引き受けてる感じの立場なんだけど?」
「それもそうだね。悪かった。今のは失言だったよ」
「うわ、めっちゃ棒読みー。ちっとも悪いと思ってなくなーい?」
「建前では謝罪しただろう」
 という、こんな私とチャラ男くんのやり取りを見ているだけでも、助手の落ち着きの無さは悪化している。
「マジそっけないねー? ま、けど揉んじゃうよー」
 チャラ男くんの両手が私の乳房を背後から鷲掴みに、これみよがしに揉みしだく。
『うぅ……』
「ははっ、助手くん? ダメージ受けちゃってる? いちおー親切で言っとくけど、引き返すなら今のうちじゃなーい?」
『いや、続けて欲しい。実は興奮してる』
「助手くんってマゾなのかなぁ? ま、遠慮なくもみもみさせてもらっちゃうよーん」
「んっ、んぅぅ…………」
 揉まれて、私はすぐに感じた。
 何だこれは。
「探偵ちゃん。結構大きいねぇ? 指を思いっきり食い込ませたりしたらさ、あいだから肉がたっぷりはみ出る感じじゃーん?」
 随分と楽しそうに弄び、指をぐにぐにとやってくるのだが、言うほど思いっきり食い込ませたりはしてこない。乱暴な扱いは一切せずに、丁寧に揉みしだき、指は乳首に当ててきている。
「んっ、んぅ――んぅぅ――――」
『か、感じてるのか?』
 モニターに目を向けると、助手は面白いほど狼狽していた。
 なんて、滑稽な顔。
 焦りに焦ったようでありながら、鼻息も荒くして、目は血走ってもいるなんて、表情が矛盾している。
 なるほど、起きてはならない出来事を前にして、それがかえって助手の興奮を煽っているわけだ。
「んぅぅ…………」
 からかってやってもいい。
 それが助手の望みなのだろうし、このチャラ男くんの愛撫をたっぷり味わい、楽しんでいる姿を見せつけて、焦るだけ焦らせてやってもいいのだが、そこには一つの問題がある。
「へー? 探偵ちゃん。感度いいねー?」
 こいつ、調子に乗っている。
 確かにその指遣いにはテクニックがあり、乳首を指でやられれば、甘い痺れが走って仕方がない。
 しかし、助手に私のことを見せつけて、チャラ男くんはとてもいい気になっている。人のものを奪い取り、勝ち誇った笑みを今にも助手に向けているのだ。
 まったく、私は君のものになどなる予定はないよ。
「い、いいや……。いつもの方が感じているよ?」
 そう口走った瞬間、助手は少しホッとしていた。
「へー? そうなの?」
「そうだよ。悪いけど、乳首だけでイったりしている。それに比べて、この浅黒い手はいまいちだね」
「そっかー。やるねぇ? 助手くーん」
 さて、私とチャラ男くんは初対面だ。
 ハッタリも押し通せば真実になる。
『そ、そうとも! 俺の方がもっとヨガらせてやれる! シエ――た、探偵をヨガらせることについて、俺の右に出る物はいない!』
 助手はちょっと動揺している。
 そのせいでハッタリがバレそうだ。
 そして、格好つけて言う台詞としても微妙だ。
「シエ――なんだって?」
「チャラ男くん。私は探偵、彼は助手だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「本名は使いたくないのはいいけどさー。もーちょっと呼びやすい名前とかないわけ?」
「では名探偵」
「まあいいや。じゃあ、名探偵ちゃんの乳首を集中的に攻めちゃいまーす」
 チャラ男くんはモニターに向かって宣言すると、私の乳首をほどよくつまみ、指圧したり、くりくりと軽い力で捻ったり、引っ張ったり、あらゆる方法で刺激を加えてくる。
 乳輪をぐるぐるとなぞり続けて、その指の回転が乳首に何度も掠めてくるのが気持ちいい。単純に指を上下左右に動かし続けて、乳首もまた上下左右に弾かれ続けるのが気持ちいい。
「んっふぅ……ふぁあっ、あぁ…………」
 私は呼吸を乱してしまっていた。
「あっんぅ――」
 気持ちいいことは誤魔化しきれない。
 助手をからかうことの方はともかくとして、チャラ男くんが調子に乗るのは不愉快なので、そちらの理由で本当はもっと我慢したかった。
 できることなら、さも何も感じていない風に、ケロっとした顔をしていたい。
 しかし、どうやら気持ちいいこと自体は隠しきれない。
「んぅぅ……んっ、んふぁ…………」
 見れば私は、いつの間にやら脚をもぞもぞさせて、太ももを擦り合わせることまでしていた。そんな自分自身の仕草に気づくと、アソコが少しずつ切なくなって、下腹部が疼きつつあることすら自覚して、私はきゅっと唇を引き結ぶ。
「あれぇ? 探偵ちゃん。今、我慢を強めた感じ?」
 見抜かれた。
 チャラ男くんの状態からでは、せいぜい横顔しか覗き込めないだろうに、そもそも今のタイミングではモニターしか見ていなかっただろうに、余計なことを敏感に察知してきた。
「探偵ちゃん」
 耳の裏側に唇が迫ってきた。
「んっくぅぅ…………」
 ゾクっとする。
 鼻先で髪を掻き分け、耳に唇を近づけるなど、そうして息なんてかかって来た時には、体中がゾクゾクとして、肩が跳ね上がりそうになる。
「それで、どこまで見せつけてやりたいわけ?」
 小さな囁き声だった。
 助手には唇の動きだけが見て取れて、画面の向こうには聞こえないよう、ひそひそ話をして見えることだろう。
「そんなものは、こうして他人に愛撫されている姿さえ見せれば十分だよ。今頃は画面に映っていない部分で、一人みっともなく自慰行為でもしているのではないかな」
 私も小声でそう返す。
 唇の動きを特に隠しはしていないので、二人で一体、何の話をしているか、助手は気が気でないのだろう。落ち着きなら最初からないのだが、このひそひそ話にも反応して、またさらに落ち着きをなくしている。
「探偵ちゃんは愛が深いよねぇ?」
 片方の手が、右手が太ももの上に置かれる。
 たったそれだけで、私は次に触られる箇所を悟って、その予感に身構えていた。
「愛が深い? それは向こうの少年の方だろう」
「いやいや、探偵ちゃん。こんなプレイさ、よっぽど信頼がなきゃ引き受けないじゃん? いやぁ、マジで両思いじゃね? カップルなら当たり前だけど、にしたって両思いすぎない?」
「過ぎるも何もないと思うね」
「いやいやいや、重力? 深さ? なんか、そういうのが見え隠れするじゃん?」
 チャラ男くんの手が股のあいだへ入り込み、私のアソコを触り始める。初めて助手ではない別の誰かに触れられて、ほんの少しの接触で電流が弾けたように、私はビクっと反応していた。
 その瞬間、助手もまたピクっと反応して、モニターにはそれはもう情けない表情を曝け出していた。
「あらぁ、興奮してんね。ありゃ」
「だろうね。まったく歪み切った性癖だよ」
 指が割れ目を上下になぞり始めている。
 その刺激に私の膣はみるみるうちに愛液の分泌を開始して、頬もまた一段と火照ってくる。熱っぽい息遣いをしている私は、きっと色気に満ちた気持ちよさそうな顔をしてしまっている。
 いけない、少しは我慢しなければ。
 要以上の反応は見せないでやりたいところだ。
「助手くーん? 君の彼女、だーんだん濡れてきたよーん?」
「……!」
 思い出したようにして、急にモニターに向かって大声を出すものだから、私は少しばかり衝撃を受けてしまう。
「……急に発表しなくていいだろう」
 私は小声でそう言った。
 しかし、チャラ男くんはそれを無視して愛撫を続け、左手による乳首への攻めと、右手によるアソコへの攻めを活発にしていった。
「マジでヌルヌルだわー。おっぱいだけで濡れてたみたいなんだけどさー。助手くんとする時もそうなのぉ?」
『当たり前だ。胸だけでイクと、さっきも聞いただろう』
 きりっとした顔をして、毅然とした態度で答えようとしているようだが、残念ながら狼狽が見え隠れしている。動揺して、強がっているのが丸わかりだ。
「んぅ――んっ、んぅぅ――――」
 駄目だ、なかなか声は堪えきれない。
 私はなるべく歯を食い縛ったり、唇を結んでおくようにはしているが、なかなかの快楽電流が流れるおかげで、ふとした拍子に加えた力が緩んでしまう。
「あっ、あぁ……」
 指が膣内に入ってきた。
 ピストンされると余計に気持ち良くなって、脚をもぞもぞと動かしたり、肩をそわそわさせてしまったり、体中に反応を示してしまう。
「探偵ちゃーん。すっごく気持ちよさそうじゃーん」
 いけない、チャラ男くんが喜んでいる。
 この男の調子に乗った顔は見たくは――。
 あ、まずい――。

「んぅぅ――――――」

 私はその一瞬だけ、咄嗟に両手で口を塞いだ上で、ビクっと高く肩を跳ね上げていた。
 イってしまった。
 まさか、この男に絶頂させられてしまうとは……。
「助手くーん! ほらほらー!」
 そして、引き抜いた指のあいだで糸を引かせて、自慢げに見せつけている。
『ま、マジか……イったのか……』
「……いいや、イっていない。爪が当たって痛かっただけだよ。そんな絶望感のある顔をしないで欲しい」
 口を突いて出て来る言葉は、何やら助手へのフォローであった。
 まったく、私はなんて優しいんだ。
 助手の望みで他の男に抱かれていて、イカされまでしたというのに、私の方から助手を気遣ってやるだなんて、私は天使か何かではないか。
「今のでイってないは無理があるっしょー」
『そうか……イったのか……』
 だから落ち込むんじゃない。
 そうやって、しゅんと肩を落とすんじゃない。
 しかし、よく見ると助手の腕の動きは、どうもこう――二の腕の部分が前後しているような。
 ああ、本当にしているのか。
 まさか、私のこの状況を見て、自慰行為に耽るほど興奮するとは。
 助手が喜んでいるのなら、特殊性癖に付き合っている甲斐はあるというものだろうか。