◆いよいよ挿入するらしい

 私はベッドに横たわる。
「どうどう? 見えてる? 助手くーん」
 そして、チャラ男くんはモニターに向かって呼びかけている。
『見えてる。よく見えている。仰向けだといい感じに半球ドームに見えるところとか』
「なるほど、始めようか」
 その発言は許すけどね。
 私はどうも、少しばかり余裕がない。
 生挿入は断じて拒否、キスもNGだと強く伝えてあるから、当然ゴムは着いているけど、よくサイズの合うゴムがあったものだ。
 あれが私に入るのだろうか。
『あ、あぁ……シエスタ…………』
 はあ、名前は使わないことにしているのに、うっかり呼ぶんじゃない。
「じゃあ助手ちゃーん? 探偵ちゃんを頂きまーす!」
 聞こえていただろうに、聞かなかったことにしてくれているらしい。
 そうか、そこは親切なのか。
 しかし、私のアソコはすぐさま太い逸物によって拡張され、なんとも長大なものが中へと収まり始めていた。
「おっう――」
 変な声が出てしまいそうだ。
「感じるぅ? 探偵ちゃん」
「いいや、こうも太すぎると、痛いくらいだよ」
 横目でモニターを見てみたら、絶望やら悲壮やらに満ちた顔で鼻息を荒くして、きっと画面に映らない部分では必死になってしごいている。
 嘆くのか興奮するのか、どちらかにして欲しい。
 なんて面白――不安定で意味のわからない表情なんだ。
「なーんだ。痛い系? ま、そんじゃ最初はゆっくりいこうか」
 チャラ男くんはすぐにピストンを始めるが、いきなり奥までは入れないらしい。竿の半分か、四割か、そのくらいだけの部分までを収めての出し入れで、私の膣壁は存分に擦り抜かれる。
「んっくぅ――んぅ…………」
 き、気持ちいい……。
 さっきまでもなかなかだったけど、これが君彦とのセックスだったら、私は一体どれだけ夜の時間にハマっていることか。
「いやぁ、絶対感じてるっしょ? 痛くなんかないっしょ?」
 チャラ男くんは慣れた腰使いを披露して、さながら胴体を波打たせるような、実にリズミカルなピストンで私を責める。
「あっくぅ――いいや、太すぎてね……」
 正常位を横から映したアングルが、こうしている今にも助手に届き続けている。私の上下にぷるぷると揺れる感じになっている乳房にも、さぞかし視線を惹きつけられていることだろう。
「助手くーん? こーんなこと言ってるけど、探偵ちゃんはまたイキそうになってるからねー?」
『え……!』
 やめろ、ちょっと期待した声を出すな。
 それではイってあげた方がいいんじゃないかとか、優しすぎる私は考えてしまうではないか。
「イってみよっか」
「あっんぅぅ……ぬっくぅ…………!」
 だ、駄目だ。
 ピストンが急に早くなり、迫り来る快楽の波も勢いを増していく。背骨を伝って、脳天目掛けて勢いよく登り詰め、頭の中身を洗い流し、快楽だけに染めてしまいそうではないか。
「んぅぅ……んぅぅ…………!」
 また高まる。
 こうなってしまっては、もうそれは我慢のしようがなく、せいぜい装うしかないことを、私は先ほどまでの絶頂で学んでいる。

「――――――――っ!」

 声は殺し、せめてはっきりとした素振りだけは見せないようにしたつもりが、背中は一瞬だけ浮き上がったし、脚も天に突き上がり、空中をキックしたようになってしまった。
 また随分呆気なくイカされてしまった。
 我慢しようとは思っているのに、私の堪えんばかりの気持ちは、どうしても無駄だというのかな……この強すぎる快感の前では。
「名探偵ちゃーん」
 勝ち気な顔で、チャラ男くんは身体を密着させんばかりに迫って来る。胸板が近づくあまり、私の乳房が少しばかり押し潰された。
「キスはNGのはずだよ」
 私は真っ先にそれを警戒する。
「ああ、NGは守るっしょ? それよか、助手くんはやっぱ、探偵ちゃんの可愛い声とか聞きたいんじゃない?」
「親切心溢れる私としては、過剰に不安を煽るつもりはないし、そもそも君が思うほど私は感じていないよ」
 イっておいて無理があるとは思いつつ、それでも私は強がらずにはいられない。
 我ながら幼稚だとは思うけどね。
「いいや、ありゃ絶対喜ぶっしょ。俺って、こういう寝取り役を何回かやったことあって、わかるんだよねー。そういう、性癖歪んじゃった奴の反応って」
「まったく、こんなプレイに専門家がいるとは驚きだよ」
「ま、そういうわけだから、遠慮なく喘いじゃいなよ」
「気が向いたらね」
 私は素っ気なく顔を背ける。
 伝えることは伝え終わってか、チャラ男くんは体を離し、今度は根元まで押し込む上で、ピストンを再開してきた。
 その瞬間だった。

「んぐぅぅ……!」

 私は激痛でも味わったような声を出してしまった。
 だけど、恐ろしいことに、ちっとも痛いわけではない。むしろその逆、さっきよりもずっと気持ちいい。
「あれあれ? 痛いだけじゃなかった? イってませんけど? って顔してなかった? それがすっげー滑稽な顔しちゃってるけど、いいのかなー?」
「なっ、なんだその言葉攻めは……」
「ほらほら、もっと喘いでみなよー」
「んっ! んあ! あっ、あぁっ! あっ、あぁっ!」
 激しいグラインドの波に晒されると、私は我慢の余地すらなく激しく喘ぎ、髪だって振り乱していた。
 馬鹿な、何だこれは。
「あっ! あっ! あっ! あっ!」
「いい声じゃーん? さいっこー!」
「んぁっ! あっ、これは――助手に、聞かせて……!」
「助手くーん! これ演技だってさ? 助手くんにエッチな姿を見せようと、感じもしないのにフリで喘いでくれてるみたいだよー?」
「あん! あぁん! あぁん!」
 だから、なんだその言葉攻めは――困った話だが、少々興奮してしまっている私がいる。言葉による責め苦で興奮するなど、私はいつからマゾヒストになったのか。
「あっ! あん! あぁん! あんっあん!」
「いいねぇ! オッパイがでかいと、突けば揺れる! いい景色を眺めながらやるピストンって、最高に気持ちいいなぁ!」
「あっ! あぁぁ! あぁっ、あぁ!」
 私は喘いでいる最中に、シーツを鷲掴みにする握力を強めたり、何度かビクっと背中を跳ね上げたりしていたが、嵐のような快楽の中で、きっと繰り返しイっていたのだろう。
 途中からは、それはもう夢中になってしまった。
 私の中には、ギリギリまで我慢の気持ちは残っていて、助手の不安を必要以上に煽るのはよそうと思っていたのに、気づいた時にはタガが外れてしまっていた。
 まったく、正気でも失ったような体験だったよ。
 目が覚めた時には使用済みのコンドームが散乱していて、新鮮な記憶の中には、いくつもの体位すら披露した時の、騎乗位で自ら動いた時とか、バックで後ろから突かれた時とかの感覚が、それはもう如実に残されていた。