◆もしも寝取らせに興味があったら

 そんな俺が寝取らせなんてものに興味を持ったのは、その手の漫画やAVがきっかけとしか言いようがない。何も知らなかった頃のピュアな俺には、恋人を他人に抱かせるなんて、そんな発想自体がなかった。
 しかし、ひょんなことから知ってしまって以来、俺の頭の中には妄想が膨らんでいた。
 他人に抱かれ、他人の棒で喘ぐシエスタ。
 他人に奉仕して、他人の精液を飲み干すシエスタ。
 自分ではない、別の誰かの手で抱かれ、汚されている姿を見てみたいのは、これは果たして、寝取りや寝取られという性癖なのか。
 それとも、エロ漫画の竿役はキモ男がいいか、チャラ男がいいか、ヤクザみたいな強面がいいか、という話だろうか。もしそうなら、俺のこの気持ちは、シエスタのエロ漫画とかエロ動画を見たい気持ちみたいなものだろうか。
 いや、しかしだ。
 フィクションなんかでなく、本当にシエスタが他人に抱かれ、他人の手に穢されている姿に興味を抱いてしまっている。恋人が他人と寝ているところをわざわざ見たいだなんて、俺のこの歪んだ性癖は、やっぱり寝取り寝取られに分類されるべきものに違いない。
 始末の悪いことに、この衝動はどうしようもなく膨らんでいる。
 実現したくてたまらない。
 もう病気だ。
 俺はどうかしてしまっている。
「へえ、いい度胸だね。そんな歪み切った変態性癖を暴露しようとは」
 結論から言うと、俺はこの妄想について打ち明けた。
 ソファに一緒に座って映画を見て、見終わった後は何となく、無為に肩をくっつけ合ったりしていた時、俺は自分の性癖について打ち明けた。
 別に本当に頼もうとしたわけではない。
 断じて違う。
 むしろ、俺の変態性を本人に否定してもらえば、おかしな性癖に悩まされずに済むと思ったのだ。
「悪いな。けど俺はシエスタを信じている」
「信じて送り出した私が、そのまま他の男に心を許してしまうわけだ」
「いや、それはやめてくれ」
「わがままな性癖としか言いようがないね。他人に抱かれるところは見たい、だけど本当に取られるのは嫌だなんて」
「まったくだ。返す言葉もない」
「助手。君がそれを私に打ち明けた動機は読めている。その上であえて言うけどね。もし、そのプレイを私が了承したらどうするつもりかな?」
「え?」
「どうするつもりかな?」
 これは困った。
 俺としては、えっ、ちょっと無理、みたいな反応を見ることで、病気を治すくらいのつもりでいた。今の俺はどうかしていて、本人が嫌がってくれれば、さすがに目が覚めるだろうと考えたのだ。
 だって、そうだろう。
 心を許していない、ただの他人と寝たい女の子なんて、普通はいないう。
「し、シエスタ。嫌じゃないのか?」
 よりによって、その逆を言ってくるなんて。
 これでは、これでは……。
「何を震えた声で。言い出したのは助手だろう」
「いや、そうなんだが。そうなんだけど」
「私も一つ暴露しよう。君とのセックスにはマンネリを感じていた」
「え」
「ちょうど、変化を求めてみたかったところだ。特殊なプレイとして真っ先に思いつくのは、コスプレとか、コスプレとか、それくらいだったけどね。対して君はもっと刺激的なアイディアを提示してくれちゃったわけだ」
「ま、マジか……」
 そうか、マンネリか。
 確かに俺とシエスタのセックスは、とりあえず愛撫して、濡れたら挿入してみて、という感じで、何も変わりばえがないというか何というか。
 一応、口で頼んだり、体位を変えたりとかは、色々とあったと思うが、パっと思いつく変化はそのくらいだ。
「以上の理由で、私は助手の思いつきを受け入れても構わないと思っている。それに長らく連れ添ってきた君と、初対面の他人とでは、天と地ほどの差が出るというものだよ」
「おお、そうかそうか」
「たとえ絶世のイケメンが現れて、魔法のような瞳で愛を囁いてきたとしても、私は簡単に溺れたりはしないよ。そのイケメンがついでに金持ちでハイスペックで、相当の人格者だったとしてもね」
「設定盛りまくりだな」
「安心するといい。その時だけは私も楽しむが、その時が終わったらパっと切り替える」
「おう、楽しむか……」
「助手、我が儘がすぎるぞ? 寝取らせプレイを君が思いついておきながら、ただの一瞬も気持ちいいとか、楽しいとか、感じてはいけないというつもりかな?」
「確かに、その通りだけど……」
「ま、とにかくだ。その気があるなら相手を用意するといい。もちろん今の話は忘れてもいいけど、その時はその時で、何か別のプレイを代案として出して欲しいね。なにせマンネリなんだから」
 とまあ、これから起きる展開は、全てこのやり取りがきっかけのものになる。
 それから、俺は本当に寝取らせ相手を見つけてしまい、シエスタのそのことを伝えた結果、夢にまで見たプレイが本当に始まることになるわけだった。