◆奉仕は交代で行われる

 私の目前には太く立派なものがそそり立っていた。
 なんだこれは、随分と大きいではないか。
 細い手首ほどはありそうな、長大なものを前にして、私は床に両膝をついている。
 奉仕を求められているわけだ。
 私だけがベッドを降りて、モニターには背中を向け、この綺麗な背中と尻を見せつけた状態で、これを咥えようというわけである。
「どう? 探偵ちゃん」
 見上げると、チャラ男くんは私を見下ろしていた。
 いや、仕方がないといえば仕方がないが、こう見下ろされると腹が立つ。
 チャラ男くんのキャラも見た目も、私の好みからは程遠い。
 それが私の体や奉仕で喜ぶなんて、私としては屈辱的は話なのだが、残念ながら助手には嬉しいことらしい。しょうがないので、この寝取らせとやらにもう少しだけ付き合うとして、こんな太いものが私の口に入るというのだろうか。
「助手くんと比べて、どっちがデカい?」
 何を聞いてくるかと思えば、これより大きなものなんて、そうそうあるわけがないだろう。
「そうだね。チャラ男くんの方が大きいよ」
「だってさー! 助手くーん!」
 その瞬間、チャラ男くんは急に勝った気になった表情で、誇らしげにモニターへ呼びかけていた。
「なんだ。大きいからなんだって……」
 振り向いてみると、プライドを傷つけられた顔の助手がそこにはいた。
 まったく、これの大きさで競うことはないだろう。
「ってわけで、このぶっといチンポによろしくぅ」
「まったく、こんなことをさせるとは――ちゅっ」
 他人のこれに口を付けるのは抵抗があるのだが、抵抗というなら裸を見せたり、触らせたりする時から大いにある。
 助手が今の私の後ろ姿を見て興奮し、一人寂しくティッシュにでも射精するというのなら、まあそれもいいだろう。
 いや、考えてもみれば哀れすぎる。
 しかし、これが君の望みだろう?
「ちゅくっ、ちゅむっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅむぅ」
 私はこの熱気に満ちた硬い逸物を握り締め、とりあえずは口付けしたり、先端を少しばかり含めてみたりと繰り返す。
 ああ、君塚君彦。
 君に歪み切った変態性癖があったところで、私にはさすがにそこまで君を苦しめ、心を痛めつけるサディストのような趣味はないのだが、いずれ鞭と縄でも用意した方がいいのかね。
「おお? 探偵ちゃんのフェラ、めっちゃいいよー?」
 私の頭に手が置かれる。
 なるほど、助手から見たアングルの私は、まさしくチャラ男くんのものであるように映るだろう。
「咥えた咥えた。舌使いめっちゃいいねぇ? これって助手くんが仕込んだフェラなわけぇ?」
 頬張りまでして頭を前後に動かせば、助手から見ても私の背中がチャラ男くんに向かって前後している。しかも頭に手まで置かれて、やたらにさわさわと撫でられて、絵的に言えば私が他の男に取られてしまった状況そのものではないか。
「じゅっぷぅ――じゅずぅ――――」
 それにしても、やはり太い。
 こんなに大きなものを咥えていたら、すぐにでも顎が疲れてしまいそうだ。
「ずっずぅぅ……じゅぅぅ……」
「探偵ちゃんフェラうめぇぇ!」
 興奮気味にわざとらしい大声を上げ、私の奉仕がいかに気持ちいいものであるかをアピールしている。
 といって大した語彙力はないようだ。
「めっちゃ絡みついてくるわー。口ん中あったけーわ。唾液ですっげーヌルヌルになってきてるわ」
 まあ、語彙がないなりに頑張っているらしい。
 というか、チャラ男くんも意外と『仕事』をしているのではないだろうか。助手本人の願いに応じて、注文通りに私との絡みをモニター越しに見せつける。
 寝取り役をいい具合に演じようとしているのは、まあよくわかったのだが、私はこの男が好きではない。
 別に嫌ってもいない。
 初対面の男だなんて、好きでも嫌いでもないに決まっているわけで、少しの好意もない相手に奉仕をしているわけだ。
 初対面なのだから、とりあえず嫌だと思っているだけではあるけど、人の勝ち誇った顔を見るというのは、なんとも恥辱感を煽られて仕方ない。
「んちゅっ、ちゅぅ――ちゅぅ――」
 私がこうして味わっているのは、文字通り屈辱ではあるまいか?
 胸のあたりにこう、それになりに来るものがある。
「じゃあ探偵ちゃーん。そろそろ交代しよっか」
「この作業から解放されるのはいいけど、交代ということはアレかな。つまりクンニか」
「そ、してもらったことあるぅ?」
「…………」
 私は無言で、肩越しにモニターを振り向いた。
『…………』
 気まずそうにしてる少年の顔が映っていた。
 まあいい、私も頼んだことはなかった。
 今度やらせるとして、しかし初めてのクンニは初対面の男となってしまうのか。
 私とチャラ男くんはポジションを入れ替わる。
 これで今度は私が上、チャラ男くんが下にはなるが、アソコのすぐ目の前に顔が迫って来るのは、なんとも気恥ずかしいものである。
 モニターの向こうで何やら目など血走らせ、ハァハァと息遣いまで荒くしてしまっている男には、裸は何度も見せているはずなんだけどね。
「んじゃっ、いっくよー」
 チャラ男くんは何の躊躇いもなく私の股に顔を埋め、ワレメに舌を這わせてきた。
「あっんぅ――――」
「感じた?」
「い、いいや、それほどでもないね」
 私は咄嗟にというか、反射的にそう答え、また先ほどまでのように歯を噛み締めたり、唇をきゅっと結んだりして、必要以上の声は出さないようにしていた。
「んっちゅぅ……じゅっ、れろぉ……」
 唾液をたっぷりとまとったものが、私のワレメを舐め上げる。私のアソコは愛液で濡れているけど、そこに唾液まで重なって、ますますの潤いに満ち溢れるというわけだ。
「んっんっんぅ――――」
 駄目だ、堪えていないと本当に声が出る。
『気持ちいいのか……?』
「はぁっくぅ……いや、何をそう、何も感じて欲しくないように言っているんだか。それほどでもないけど」
『本当にそれほどでもないか?』
「疑うとは失礼……んっ、だね。まあしかし、そこまで不安になるというのも、君がすっかり私に懐いてしまっている証拠じゃないかな」
『いや、頼む。教えてくれ。気持ちいいのか?』
「んっ、んぅ――まったく君はどっちだ? 感じていて欲しいのか、欲しくないのか、まったくわからなく――んっ! んぉっ、それ――いきなり……!」
 私は一瞬焦っていた。
 ペロペロとしてくる快感だけが続いていたので、すっかり油断していたが、この男はかなりのテクニシャンに違いない。抱いた女は数知れず、イカせた女も数知れず、その技巧によって膣に指を挿入され、舌先ではクリトリスに集中攻撃を受けていた。
「んんぅ――」
 私は思わず手で口を塞いでいた。
「じゅぅ――じゅれろぉ……!」
 舌先は執拗に激しいもので、あまりにも活発にクリトリスを舐ってくる。その下では指がリズミカルに出入りして、私に快楽電流を叩き込んできているのだ。
「んぅんっ、んっんっんっんぅぅ――――」
 私はどうにか必要以上の声は抑え、感じすぎないように我慢こそしてはいるけど、もう限界を迎えそうだ。
 いや、正直無理だ。
 もう来てしまっている。
 来るべきものがもう、本当に――いや、だが、その素振りだけは隠せるはずだと、私は表情を取り繕う。

「――――――っ!」

 といっても、肩はどうしてもビクっと跳ね上がり、絶頂を助手にも悟らせてしまっただろう。
「イったねー? 助手ちゃん」
 口周りを私の愛液で汚しながら、嬉しそうに人のことを見上げてくる。
『イったのか! イったのか……』
「嬉しそうに食いついた直後に悲しげになるとは、今の君はとてつもない情緒不安定のようだね」
『愛のためには心だって揺らすさ』
「まるで格好のつかないタイミングで格好のいい台詞を言うのは、やっぱり君の特技なのかな?」
 などと二人で喋っていると、あいだに割り込むようにして、チャラ男くんが激しいクンニと手マンの合わせ技を再開してくる。
「あっ! んぅぅ………」
 私はすぐに声を抑えた。
『いまかなり喘いだ』
「んっ、んぅ――いいや、気のせいじゃないかな」
『喘いだ』
「君は目と耳がどうかしている。精神のバランスを崩しているいい証拠…………」
 私は途中で言葉を途切れさせ、口を片手で押さえたまま、声を堪える方に意識を費やす。
 だって、そうしないとまずい。
 またアソコで快楽の風船が膨らんで、そのままパン! と弾けそうな予感に私は駆られている。
 つまり、イキそうということだ。

「んぅ――――――――!」

 駄目だ、また頭がビリっと、何か弾けたように痺れてしまった。
 やはりイってしまった。
 全身に激しい電流が行き渡って、指先にまで余韻が残っている。
 短い時間のあいだに二度もイカされてしまうとは、この男は本当にヤリ手らしい。
 待て、それでは、そんな経験豊富かつテクニックも物凄い、ついでに巨根の男に挿入されてしまったら、私は一体どうなる。
 繰り返すが、私が声を我慢したり、感じた素振りを最低限のものに抑えているのは……。
 そうだね。
 懐かれてしまった責任というか。プレイの趣旨はわかっているけど、あまり不安にさせたくないのが心情というものだ。
「んじゃっ、そろそろ本番いこっか」
 チャラ男くんがおもむろに立ち上がる。
 そのせいで私の視線は巨根へ向くが、その向こう側にある顔がピクっと反応しているのを私は見逃さなかった。