第4話 連続絶頂の果て

 燃える。
 細胞が炎を放ち、一気に熱を高めているように、アソコがじわじわと高ぶっている。指でローションを擦り込まれ、アソコにピストンをやられてから、弥栄は激しい快楽に見舞われつつあった。
「はぁっ、くぅん! んっ、あぁ!」
 いや、アソコだけではない。
 今は触られていない乳房でさえ、内側から発火して、燃やされでもしているような熱さがある。もう極限まで突起して、これ以上は硬くならない乳首へと、まだ血流が集まろうとする気配がある。
 快楽が膨らんでいる。
 その急速な膨張に、危機感を煽られた戦慄が顔に浮かんだ。
「んぅぅぅぅ……!」
 凄まじい快楽だった。
「んっ、あっ! なっ、なんの――くすり……!」
 声が甲高くなり、どれだけ我慢を意識してみても、足腰が無駄にくねり動いてしまう。体中を駆け巡る電流で、常にどこかの筋肉が反応して、それがピクピクとした動きに現れたり、肩や腰をモゾモゾさせる挙動に現れる。
「ようやくお気づきですか?」
「あっ、んぅぅ――び、びやっ、く……!」
「ですが気づいても遅いのですよ。何か手段はありますか? 何も身に着けていない今のあなたに、一体どのような手立てがありましょうか!」
「あっ! あぁっ、あぁ! あぁぁ! あぁぁん!」
 脳さえ痺れる。
 ピリピリとした感覚が頭蓋骨の内側を飛び交って、絶えず反射を繰り返す。脳細胞が無限に貫かれる感覚に、ものを考える余裕すら失いかけていた。
「あぁああ! あっ、おあぁあ!」
「気持ちいいですねぇ? 絶頂はもうすぐですか?」
「あっあっあっあぁぁ……!」
「わかりますよ? あなたが今にイキそうであることが!」

「あぁぁぁぁあぁあああ――――――!」

 その瞬間、ぴちゃっと水の飛沫が放たれ、弥栄から飛び出た滴はハンターの衣服や床を汚した。
 いや、そればかりではない。
 弥栄には知り得ないことだが、二人がいるのは地上三階。大抵の声は外の誰にも聞こえないが、それなりの大声にもなれば、近くを通りかかった人物の耳にも届く。
 なんだ? 今の声。
 誰かセックスでもしてんのか?
 などと、そんな二人の青年の存在に、今の弥栄が気づくはずもないのだが、ハンターの方はぴくりと耳を反応させ、さりげなく背後を気にかける。
「おやぁ? 今のお声が外に聞こえたようですよ?」
 ハンターは大きく両腕を広げていた。
 そんなわざとらしい動作のために、今までアソコに続いた指ピストンが中断され、弥栄は深く息を吐き出した。まるで呼吸を我慢し続けていたように、やっと息ができるようの大きく肺を動かして、弥栄は己の体を整えようと必死であった。
「それは呼吸法ですか? いいですねぇ、呼吸法! 日本の創作物には呼吸法の力で戦う漫画がありますからねぇ! 私としてはロマンを感じてなりませんが、しかし石川家の呼吸法は媚薬を軽減できるのでしょうか?」
「…………」
 弥栄は何も答えない。
 何かを言い返したり、睨み返すような余裕がない。
 指ピストンが続いていたつい先ほどまで、弥栄が感じていた快楽は、肉体を上から下まで串刺しに貫通しようとするものですらあった。それが途絶えた今なお、弥栄の身体には余韻としては強すぎるものが流れ続けている。
 何もされていないのに、ただ立っているだけで気持ちいい。
 そうとしか言いようのないほどに強く残って、快楽を伝える神経信号は途絶えていない。こんなにも感度の上がった状態で、また再び乳首やアソコをやられたら、一体自分がどうなってしまうのか、想像もつかなかった。
 正気を失いかねない恐怖と同時に、実際にそうなった時にはもう、怖がるもなにも頭が真っ白であろうことさえ予感している。
「せっかくです! 一階へ参りましょう!」
 ハンターが指をパチリと鳴らす。
 たったそれだけで、手錠には音声認識の機能でも入っていたのか、急に拘束が外れて弥栄の両手は解放される。しかし、せっかく自由の身になりながら、このチャンスを活かして戦う気力が出せず、足腰がへたってすぐに座り込んでしまっていた。
 そして、ハンターはそんな弥栄の身体を抱き上げて、お姫様抱っこで移動を始める。
「い、嫌です……下ろして下さい……」
 辛うじて、細々とした声を出す。
「もう本当に、あなたは震えた仔猫に成り下がっているのですねぇ?」
「うぅ……」
「さあ、次はもっと楽しいですよ?」
 階段を移動して、一階へと辿りつく。
 何も置かれていない殺風景な部屋の中、暗闇に包まれた屋内だが、月明かりや街灯が少しは差し込み、完全な漆黒までには至っていない。夜目の利く二人には、これならごく普通の明るさをした空間と変わらなかった。
 弥栄が窓の向こうへ目を向けると、そこには二人の青年が立っていた。
 ビルの手前際の道路、その向こう側にある外灯の下、二人の青年が明かりに照らし出されている。雑談で時間を潰しつつ、たまにスマートフォンを見ている二人の様子は、おそらく大学生かそのあたりで、待ち合わせの仲間を待っているのだ。
「騒いだら見つかってしまいますねぇ?」
 ハンターは腰に片手を回してくる。
 そして、弥栄は窓際にまで歩かされ、窓に両手を突かされる。
「あちらは気づいておりません。それにこの窓、内側が見えにくい素材で出来ているので、外からは黒い人影が辛うじてわかるくらいでしょうか?」
 しかし、弥栄からははっきりと、窓の外の景色が見える。
「おわかりになりますか? あなたが下手に騒がなければ、気づかれることなく済むという趣向の、まあちょっとしたゲームですよ」
 そんなことがゲームなど、弥栄にはたまったものではない。
 どうにかこの状況から逆転して、ハンターを取り押さえてみせたい思いは、まだ辛うじて弥栄の中には残っているが、すっかり媚薬の回った今の自分が、一体どれほど無力なのかも感覚的に理解していた。
 もう弥栄は思い知っていた。
(この人には……勝てない…………)
 悔しさに歯を食い縛ると、そんな恥辱を帯びた自分自身の表情が、窓には薄らと浮かび上がった。
 愛撫が再開される。
 ともすれば、後ろからバック挿入をされてしまいそうなポーズにおいて、しかしハンターは尻の真後ろにしゃがみ込み、アソコを覗き込んでいる。片方の手を膣口への挿入に使いつつ、もう一方はクリトリスを弄る行為に、たちまち弥栄の脚は強張った。
「んぅぅぅ………………!」
 激しい電流が駆け巡り、強張る足腰の筋肉は、ぎゅっと凝縮されていた。
「いいですねぇ? その我慢!」
「んっ、んぅぅぅ――――――!」
 始まる指のピストンと、クリトリスを撫でる愛撫は、手つきそのものは柔らかで繊細だ。激しすぎることのない、実に手慣れた性器の扱いに、しかし弥栄は激しく唾を飛ばしかねない快楽に翻弄されている。
「んっ! んぅぅ!」
 必死に歯を食い縛っていなければ、いつ大きな声が出るかもわからない。
 バレたくなかった。
 こんな辱めを受けた上、一般人にこの有様を目撃されてしまうなど、ただでさえ地に埋まりかねない石川家の名を、いよいよマントルまで沈めかねない。それだけは、それだけはと、必死の思いで頬を硬くし、苦悶の顔で声を抑え込む。
「んぅぅっんっ、んっんっんっんぅぅぅ――――!」
 窓に当てた両手は拳に変わり、爪が食い込むほどに強く激しく握り締められている。
「んっ! んっんぅぅぅ――――!」
 途中からは無意識だった。
 バレたくない、石川家の名を守りたい、その強い願いが無意識下で働いていなければ、快楽のあまり真っ白になった頭では、もう我慢を続けることなどできなかっただろう。
「んんんんん!」
 我慢を続けていながら、表面的にはもう我慢の意思を保っていない。
 無意識の、ある種の自動的な行動こそが、なおも弥栄に我慢を保たせていた。

「んっんぅぅぅぅ――――――!」

 その時、弥栄の尻は上下左右に振りたくられ、内股には愛液を垂れ流す。
 二度目の絶頂だった。
「おやおや、あと何回イクのでしょうねぇ?」
 そんなハンターの煽り言葉も、もう弥栄には届いていない。
 ただ指のピストンが続く限り延々と、肉体の水分が愛液として絞り出されて、我慢の声も延々と吐き出される。
「んぅぅ! んっ、んっ!」
 拷問に耐えて聞こえる苦悶の声。
 それが十数秒、さらに数分と続いた結果――。

 びくん!

 と、今度は背中が弾み上がった。
 尻を突き出すポーズのために、真っ直ぐであった背中が一瞬猫背に、それから弓がしなったように逆方向へ反り返り、弥栄は天井を見上げんばかりに口を開け、声無き声の絶叫と共に絶頂していた。
「これでも声を出さないとは、その芯の強さは見上げたものです」
 しかし、弥栄はとっくに玩具と成り下がり、遊ばれるがままだった。

「んぅぅぅぅぅぅ――――――!」

 またイった。
 その絶頂は腰を小刻みにぶるぶると震わせる結果として、尻肉が振動して見えるものだった。

「んんっんぅぅんぅぅぅぅ――――!」

 またイった。
 今度は大きく仰け反って、姿勢が変化するあまり、胸を壁に押しつけそうな勢いだった。

 じょっ、ジョロロロロロ――――

 ついには失禁した。
 それまで尿意のなかったはずの弥栄のアソコは、しかし出せるだけの量自体はあってのことか、イキ続けることによってだんだんと、少しずつロックが外れていた。あらぬ痴態すら曝け出し、尿道口から床へ向かって、一直線に流れ落ちる弥栄の尿は、びちゃびちゃと音を鳴らして飛沫を散らす。

 ニヤァァァ――――

 と、それを見てのハンターの表情は、口角が極限まで吊り上がり、邪悪に歪んだ今までにない笑顔であった。
 水溜まりが広がっている。
 その広がりは弥栄自身の足さえ濡らし、それをハンターは勝ち誇った笑みで見下ろしていた。
 最後の最後には矯正が外に聞こえ、窓の外に集まる青年達が明らかに興味を示しているが、彼らがここに入り込んで来る前に、素早く姿を消すことなど、ハンターにとってはいかにも容易い。

 そして、翌朝から石川弥栄は姿を消す。

 ハンターは弥栄どころか、その母親さえ標的にして、人質として身柄を確保したのだ。
 もしやどこかで、いずれかの夜、沙幌の街で新たな辱めが密かに始まるのかもしれない。