第4話 挿入の結末
シュタルクのことが怖い。
獣のように荒々しい息遣いで、人の脚を開こうとしてきている。反射的な抵抗で、閉じようとしているフェルンに対し、力ずくでも開脚を強いようとする。
だが本来のシュタルクなら、こんなことは決してしない。人となりをわかった相手が、その性格とは乖離した行動に走り、自分のことを害してくる。
精神魔法の恐ろしさにこそ、フェルンは戦慄していた。
もしも、だ。
それでも、ふとした拍子に魔法が解け、急に元のシュタルクに戻ったら、この荒々しい手はぴたりと止まるはずなのだ。彼ならきっと、自分自身のしでかしたことに対して腰を抜かし、立てなくなったと言い出すに違いないのだ。
しかし解ける気配などなく、フェルンの脚はとうとうM字に持ち上げられ、股の中心には亀頭が触れている。
背筋が凍った。
(こんな形で……!)
フェルンの脳裏には、以前誘われたデートのことが浮かび上がった。こうでなく、もっと別の形であったなら、どんなに良かっただろうかと、こんな犯される直前だというのに、急に妙な妄想が湧いてきていた。
触れている亀頭の、密着度合いがみるみるうちに増していく。強く強く押しつけられていくほどに、ワレメがしだいに開かれて、先端が徐々に侵入してくる。
破瓜の痛みを感じ始めるまで、そう時間はかからなかった。
「んっぐ……!」
苦悶で歯をぐっと噛み締め、眉間にも眉を寄せながら、フェルンはそれを堪えていた。
「ぐっんっ……んぅ……んぅ…………」
下腹部がひどく熱い。
肉棒が根元まで収まって、シュタルクの腰や陰毛が鼠径部に触れてくるなり、すぐにでも前後運動は始まった。
ぎしっ、ぎしっ、ぎしっ、
ベッドの木材が揺れにつられた軋んだ音を鳴らしている。
「んっぐぁ……あっ、んぅ…………」
破瓜の苦しさにフェルンは喘ぐ。
きっと肉棒は出血を纏い、それを潤滑油のようにして動いているが、そこには既に女性特有のぬめりが絡んでいる。
「んぁ……!」
嬌声が入り交じった。
こんな形で、フェルンの体には刺激が走っていた。
「あっ、あぁ……! んぁっ、あっ、あぁ……!」
ベッドがぎしぎしと揺れるリズムと一致して、乳房もまた上下にぷるぷると揺れている。
「あっ、くぁ――はっ、あぁ――――」
フェルンは額に脂汗を浮かべていた。よがるように首を左右に動かして、前髪を本来ならもっと振り乱しているはずが、髪のほとんどが額に付着していた。
「あっがっ、んっぐぅ――――」
痛いのか、気持ちいいのか、もうフェルン自身にもわからない。どちらのせいで出ている声か、既に本人が理解していない。
「いやっ、あぁ――シュタルク――様……!」
シュタルクの腰振りは獣のように荒々しい。勢いよく突き込まれたものが、ヘソの内側まで届いてくるような、奥を貫く衝撃が絶えず繰り返されている。
「あっんぅ……!」
フェルンはシーツを掴んでいた。
手枷で自由にならない両手を上にして、必死になってシーツに握力を込めることにより、フェルンはどうにか堪えていた。目尻からは涙を零し、シュタルクがふとした拍子に元通りになることを、今なお心の中では祈りながらに、フェルンは耐え抜こうとしていた。
その時である。
ドクっと、肉棒が脈打ち弾んでいた。
それと同時に広がる生温かい感触で、必要な性知識を備えたフェルンは今、自分の中に何が注ぎ込まれているかを理解していた。
受けるのはショックだった。
こんな形で子供すら出来るかもしれない衝撃を、どうやって受け止めればいいかもわからない。
そして、腰は止まらない。
一度の射精だけでは満足せず、シュタルクの腰使いはただ一瞬だけぴたりと止まり、すぐさま動き始めていた。振られる腰を打ちつけられ、フェルンの胴はシーツの上で前後に揺れ、なおも乳房を弾ませていた。
「あっ、あぁ……!」
フェルンは喘ぐ。
いつしか、痛みなどなくなっていた。壮絶な嵐に晒されて、痛みを感じている自覚を失って、あるのはただ快楽のみとなっていた。
「あっ、あぁ! あぁぁ!」
そのうち、何かが上り詰めてきた。
その感覚が膨らんで、フェルンの脳裏に蘇るのは、胸を散々にやられた際の、ソリテールにイカされ頭が真っ白になるものだった。体がビクっと弾けたかと思いきや、気づけば体を仰け反られ、天井を見上げていた。
あの時と似たような感覚が、また迫っている。
――イってしまう。
「シュタルク様……!」
本来のシュタルクに向かって、助けを求めたいように名を叫ぶが、フェルンを絶頂させようとしているのは、他ならぬそのシュタルクの肉体だ。
シュタルクは止まらない。
ぎしぎしと鳴るあまり、ベッドの木材が傷みそうですらある勢いで、リズムの通りに叩きつけてくるばかりである。
「あっ、あぁあ――――――」
もう持たなかった。
膨らむだけ膨らんで、もう破裂しそうな感覚が極限まで迫ってきて、とうとうその瞬間は訪れていた。
「――――――――っ!」
何の声も上げていない。
だが、絶叫のように大きく口を開いていた。叫んでいるような顔をしながら、フェルンは頭を真っ白に染め上げていた。
*
それにしても、精力が尽きないものだ。
ただ射精したいだけの獣と化したシュタルクは、数時間が経ってもなお、フェルンを慰み者としていた。乱暴なキスで跡が付き、首筋が、鎖骨が、二の腕が、胸や尻にすら、小さな赤らみが散らばっている。
シュタルクはそうまで激しくフェルンを味わい、幾度となく射精していた。二度や三度の射精では、到底萎えることなどないように継続するので、アソコの穴からは精液がとっくに噴きこぼれていた。
器に入りきらないほどに注いだら、溢れるに決まっていた。射精した上で肉棒を押し込めば、そうやって隙間から噴き出てきて、それが滴となって内股に筋を引いたり、シーツに付着するなどして、汚れすら広がっていた。
「あっ! あん! あん! あん! あん! あん!」
途切れない嬌声を横にして、ソリテールは机に向かって静かにペンを走らせる。ここまで観察してきた記録を書き込んで、研究の成果が蓄積されたことへの、満足そうな笑みを浮かべつつ、休憩がてらにベッドの様子を見学し直す。
「それにしても」
ソリテールは思った。
しばらく目を離している隙に、フェルンはいつの間にやら四つん這いになっていた。手枷もろとも両手をシーツに埋め込んで、爪でがっしりと鷲掴みに、堪えるように握力を込めながら、後ろから貫かれていた。
シュタルクの激しい腰使いは、尻から大きな音を鳴らし、柔らかな肉を揺らしていた。垂れ下がった乳房がより明確に、わかりやすく前後しているのは、あえて確認してみるまでもない話であった。
「体位の知識は残されているんだね」
人間の精神構造を理解していないにもかかわらず、ソリテールはシュタルクの精神を操った。フェルンを性奴隷と見做し、フェルンを犯したくてたまらないという方向性を与えてやった。
構造の理解が必要な魔法でありながら、理解せずに出力任せで強引に操ったので、シュタルクは二度と元には戻らないはずなのだ。
と思うのだが、あるいはまだ可能性があるだろうか。
なにせ、そう思っていた段階で、しかも裸のフェルンを前にしてまで、シュタルクは自分を抑えようとした。放っておいても、すぐに限界は来ただろうが、せっかくなのでもう少しだけ壊してやったが、こうも驚かされた人間のことだ。
洗脳が解除されるなり、正気に返っても驚かない。
だが、そんな瞬間が来るだろうか。
少なくともソリテールは、フェルンに魔法を使わせるつもりはない。黄金の範囲の拡大で、フリーレンを乗せて後退していた馬車も、今頃は飲み込まれているだろう。
フリーレンが黄金になった時点で、完全に積みだ。
黄金郷の人間も、シュタルクも、もう元に戻る見込みはない。
「もしかして、フェラとかの知識も、本能が覚えていたりして」
性欲に関わるものが残っているなら、その手の行為も残っている可能性はあるだろう。
観察さえ続けていれば、いずれ胸や口を使い始めるかもしれない。人間を操る魔法の、使用感にまつわる記録も、せっかくだから残しておこう。
後々、何かの機会に活かせるかもしれない。
次はどんなテーマで人間を観察しよう。
研究意欲を膨らませ、ソリテールは椅子からだんだん前のめりに、二人のセックスを眺めていた。
そこにあるのは、ただの観察対象だ。
生物研究の学者に捕まり、虫籠に入れられてしまった昆虫の、ただレポート用紙に記録を取られるためだけにある命となって、二人はベッドで交わり続けた。