第5話 観客の中心で

 この日、男は自らの前にサリアを立たせた。
 いつもの店で、いつものように、彼女はテーブルの客に性的なサービスを行うわけだが、今回に限っては男自身が席に着き、これからショーを始めるサリアを見上げていた。

「さ、サリアのオナニーショーを……どうか、ご覧になって欲しいなぁ……?」

 顔が引き攣っているといったらない。
 自分のことを名前で呼ぶ言動は、もちろん普段の動画の中を意識したものだが、普段との違いは彼女が正常なままという点だった。
 催眠で意識や記憶を飛ばす事無く、正気を保ったその状態のまま、ああした言動でオナニーショーをするようにと、男はそう強要している。
「は、恥ずかしいなぁ……サリア、こ、こん……なに、注目されるだなんて……思わなくて…………」
 笑えるほどぎこちない。
 正気であるはずのサリアに、無理にでもああした口調を使わせるとこうなるのか。
 それに実際、羞恥心は煽られているだろう。
 今回の席は店の中心だ。
 普通よりも大きく丸いテーブルの中心にサリアは立ち、男一人だけではなく、席を囲む他の多くの観客の注目さえも集めているのだ。
 テーブルから少しばかりの距離を取り、包囲するようにずらりと老若男女が並んでいる。おびただしい数の視線が集まる中、テーブルに立ってアソコへと手を伸ばし、たどたどしい自慰行為を開始するのだ。
「くっ、んぅぅ……! あっ、くぅぅ!」
 サリアはアソコを弄り始めた。
 耳まで赤くした恥ずかしそうな表情で、キャラクターを上手く演じる事もできないぎこちなさを帯ながら、肉貝の縦筋に合わせて指を上下させている。
「あっ、あぁ……あっくっあっ、あぁ……!」
 声を出さずにはいられない程度には、もちろんサリアには感じてもらっている。先ほどの男の部屋から、この店内の中へ移動するまで、短い時間できっと乾いていたであろうアソコは、すぐにまたべったりと濡れ直した。
「あぁ……あっ、あぁ……! あっ、あぁ……!」
 指の向こうでぬかるみを帯びていき、光沢のおかげかその濡れた感じが見える。
「あっ、あっ、あぁ……!」
 男は非常に愉快な気持ちになりながら、サリアのオナニーショーを見守っていた。しだいしだいに愛液の香りが立ち、演目を楽しむ客の中に少しだけ、わざとらしい鼻息を立て、吸い上げる呼吸音を聞かせようとする者がいた。

 すぅぅぅぅぅぅ………………。

 という、鼻で吸い上げる音がサリアへ届き、嗅がれている事を意識して、ますます恥ずかしい思いがしたのだろう。頬から火を吹き出して、より表情を硬く歪める。
 次の瞬間だ。

 ビクン!

 と、高く肩が跳ね上がった。
 さらに股を見てみれば、失禁でもしたかのようにじわじわと、表皮に光沢が広がっていた。
 大勢に見られながらの絶頂だ。
 正気であるサリアは、果たしてどんな気持ちだろうか。

「あっ、あはは……さ、サリア……イっちゃった……みんなの前で……」

 ただ演じきれないばかりか、言葉選びすらぎこちないサリアへと、誰もが興奮の眼差しを向けている。
 そこへ男は立ち上がった。

「みなさん!」

 腕を広げて司会者のように振る舞いながら、テーブルの上に乗り上がり、サリアを見守る客に向かって高らかに宣言する。
 実は今まで、一度もしていない。
 その肝心の行為を今、これにて解禁する。

「これより、臨時の本番ショーを開催致します!」

 店内は盛り上がった。
 まるで人気アーティストがライブの開催を宣言したように、たちまち熱気が上がっていた。
「というわけなんですがサリアさん。これから私とセックスする事について、どう思われますか? 心意気をお聞かせ下さい!」
 男が事前に命じたのは、オナニーショーまでだった。
 人前での本番行為など想定していなかったサリアに対して、男はわざとらしくアドリブを求めていた。
「え、えーっと、や、やばーい! サリア、こんな大勢の前でしちゃうだなんてー!」
 どうにか棒読みではない程度の、キャラ作りに無理の生じたたどたどしい口調でサリアは言った。

     *

 男がサリアに求めたのは、立って交わる体位であった。
 お互いに向かい合い、正面から抱き合うように体を近づけ、片足だけを上げてもらう。片足立ちのサリアに対して突き込んで、密着状態で腰を振り出し、男はその快感を味わいうっとりと目を細めた。
「あぁ! あん! あぁん! あん! あん!」
 サリアはキャラ作りなど忘れていた。
 始めから無理のある演技であったが、あのぎこちなさすら保てないほど、激しくも狂おしい快楽の中にサリアはいる。
「あぁん! あん! やっああぁん!」
 男の肩に両手を乗せ、しがみつくような密着の状態で、サリアは艶めかしい声を吐き散らす。
「あっ! あっ! あぁぁ! あぁん!」
 ピストンの最中に潮が噴き、男の体に滴が当たった。ちょうど腰が弓なりに引いた途端の、隙間のあるタイミングに弾け出てきたものに打たれて、しかし男はサリアがイっていようと構わず腰振りを継続した。
 腕の中でサリアの背中が震えている。
 絶頂によるビクビクとした筋肉の揺らぎが続くところへ、容赦せずピストンを続けていると、次に噴き出てくるのは愛液などではなかった。
 サリアは失禁した。
「あぁ! あん! あぁん!」
 快感に振り回される今のサリアに、果たして自分が尿を漏らしている自覚はあるのかないのか、足の表面を黄色いものが伝い流れてテーブルに広がっている。
「うおおおお! 漏らしたぞ!」
「きったねぇ!」
「そんなにイイってか?」
 観客から野次のような歓声のような声が聞こえる。
 だがサリアには聞こえていないのか、ただ喘ぐばかりで精一杯の様子であった。

「さあさあ! 皆さん! わたくし、少々悲惨な目に遭ってしまいましたが、ここは気にせず続けていこうと思います!」

 その時、射精した。
 何の遠慮もなく膣内に解き放ち、穴の中で脈打たせた肉棒を引き抜くと、白濁した糸がだらりと伸びる。
「次は肛門! アナル挿入を行います!」
 高らかに宣言した上で、男はサリアの体を抱えた。
 膝裏に手を差し込む形で宙に持ち上げ、浮き上がった下半身へと狙いを定める。苦戦しながらどうにかねじ込み、男は肛門へのピストンを開始する。

「あぁぁぁぁああ!」

 すぐにサリアは絶叫した。
 激しくのたうち回ったように、大胆に髪を振り乱し、本当に大きな声で喘ぎ散らした。
「あぁ! おあっ! あぁぁぁ!」
 もはや雄叫びではないか。
 すぐに絶頂を迎えるサリアが、そのイキようによって周囲に滴を撒き散らす。テーブルの外へ飛ぶほどの絶頂で、きっと彼女の体力を大いに削った事だろうが、男は構わずピストンを続けていた。

「あっ! あっ! あっ! あぁぁぁ…………!」

 たった数分後、また彼女の中から潮が上がった。
「あっ無理! もう――もう、限界っ、許してくれ……!」
 まさかサリアから、こんな台詞を聞ける瞬間があるとは思わなかった。催眠による暗示で、自分をそういうキャラクターと思い込ませた場合であれば、いくらでもおかしな言動を取らせてきたが、今のサリアは正気なのだ。
「あっ! 駄目だ! と、止まってくれ……!」
 なのに今、懇願してくる。
 それがあまりにも気持ち良く、男は高揚感に任せるままにピストンを加速した。

「あぁぁぁぁぁぁ――――――――!」

 また絶頂した直後、急にサリアはぐったりと、事切れたように全身をだらけさせていた。
 どうやら、失神したらしい。
 だが構わず、男は続けた。
 ぐったりとした体になおもピストンを繰り返し、それどころか観客にも解禁した。
 すると、テーブルを囲んだ円がサリアに向かってぞろぞろと、中心へ集まるように小さく縮み――。
 この宴が終わった時、サリアは全身を精液にまみれさせ、その臭気を放っていた。
 顔がまんべんなく白濁にパックされている。シャワーでも浴びたようにして、髪がすっかり精液を吸い込んでいる。バケツの中身でもぶちまけられたようにして、全身を余すところなく汚すばかりか、口内への射精で腹の中にも子種がある。
 アソコに、肛門。
 二つの穴からさえ、白濁は零れ出ていた。
 観客の去った店の中、賑やかさとは対照的に、今度は寂しいほどに静かになった空間で、男はじっくりとサリアを見下ろす。
 驚いた。

「くっ、おのれ…………」

 こんなに成り果てておきながら、悔しそうな顔をしているではないか。
 きっと、折れていないのだ。
 そこらの女性なら、既にもう二度と立ち上がれない、深い傷心をしているだろうに、彼女はまだどこか、諦めていない。
 しかし、それを自由に出来る。
 腕っ節どころか、精神さえ鋼の彼女を――。