エピローグ

 後悔の念でいっぱいだった。
(どうして……あたしは、あんな…………)
 ジュディス・ランスターの脳裏には、いかにも狂った自分自身の記憶が濃密に残されている。きっと薬でも飲まされて、気をおかしくされたせいとはいえ、どうにか正気を保つことはできなかったのか、その悔しさや無念が膨らみ、唇を噛み締めずにはいられない。
 だが、暗い顔をしたり、下を向いているわけにもいかない。
 映画が完成したことで、発表会見の最中なのだ。
 役者達が勢揃いして立ち並び、一人一人に質問やマイクが向けられる。敵組織のボス役に、ケビン役、もちろんジュディスも撮影中にあった苦労話や見所をそれぞれ語る。
 その最中、どうしてもチラついた。
「今回はセクシーなシーンがいっぱいなようですが」
 記者からの質問が来ることで、そのフラッシュバックはますまつ強烈なものとなる。
「え、ええ、そうね。ちょっと恥ずかしかったけど、役者としての表現力に磨きがかかった気がするわ」
 無難な答えに徹するものの、頬の赤らむ様子や恥じらう仕草を誤魔化しきれず、きっと視聴者にも伝わってしまっていた。

     *

 当然、映像は残っている。
 撮影の全日程が終了した後、建前では削除したと語ってみせ、パソコン上での削除操作も目の前でやってみせているのだが、ジュディス・ランスターは安心などしていない。
 コピーされているのではと、きっと勘繰ったことだろう。
 その通り、コピーがある。
 ケビン役を演じた男は、自宅のパソコンでその動画を再生して、ニヤニヤと思い出に耽っていた。

『んっ、あぁっぐ……!』

 ジュディスが苦しげな声を上げている。
 初体験である彼女に快楽はなく、あるものは太いものが出入りしての圧迫感や痛みだけだったことだろう。
『んっ、んぅ……』
 だがその声は、まるで感じた喘ぎ声のように艶めかしい。
『んぐっ、あっんぅ……』
 ジュディスの裸体にカメラは寄っていた。
 表向きの予定では、ベッドから少し離れたところでカメラを担ぎ、ケビン役の男も腰にシーツを被った状態で正常位のフリを行うはずだった。映画館で流せない部分を本当に行う必要はなく、見ている人にセックスシーンであることさえ伝われば十分だった。
 しかしカメラマンにも計画は伝わっていた。
 ジュディスだけが表向きの予定を信じて、他の全員が裏の目論見を共有しているのがホテルの一室を借りた撮影だった。
『っふく、んぅ……ぐっ、あぁ…………』
 苦しげに髪を振り乱すジュディスへの、腰振りによって胴が衝撃を帯び、乳房が上下に揺れる姿がくっきりと、鮮明なまでに映し出されている。
 吐き出す息が、振りたくる際の横顔が、何もかもが美しい。
 動画を見ながら射精して、満足感に浸った男は思うのだった。
 できることなら、もう一度抱きたいものだと。