いよいよもって、アソコの診察が開始となる。
先日との違いを言うならば、先日は瑠璃自身の指で肉貝を開いていたが、今回はテープが貼られていた。片方につき三本ほど、テープの力で皮膚を伸ばして、桃色の肉ヒダは外気に晒されていた。
瑠璃自身は膝の付近、脚の裏側を抱えることで、M字開脚という羞恥のポーズを維持していた。
「さぁて、士堂さん」
医師が医療用のビニール手袋を嵌めている。
それを瑠璃は見上げていた。仰向けの視点から、股の向こうに立つ医師のことを見上げていると、当たり前だがアソコに顔がぐっと迫って、指まで近づく瞬間が視界に収まる。ジェルをまぶしてある指が、膣に挿入される瞬間を、瑠璃自身が見届けていた。
指が埋まってきた。
ジェルによって滑りが良い、摩擦に引っかかることなく、スムーズな出入りを行う指は、まず真っ先に根元まで入り込む。指の届きうる一番奥がくすぐるようなタッチで探られて、自分の性器が調査されているのを瑠璃は実感していた。
顔には蒸気でも上がりそうな赤熱が続き、そして脳すら熱せられる。
瑠璃は医師の様子から視線を外し、この状況から少しでも意識を逸らすため、壁や天井に視線を走らせる。この男を殺す時、置いてある棚やデスクがたまたま邪魔にならないように、せっかくだから頭に入れておこうとしていた。
だが、極力意識を逸らしてみても、瑠璃の赤面は申し訳程度にしか薄れない。傍からすれば、何ら変化がないようにすら見えるくらいだ。
あまり効果は実感していない。
ぬちゅり、ぬちゅりと、ジェルのせいで聞こえる水音と、何よりも膣内にある指の感じに意識は絶えず引っ張られ、逸らそうとしても逸らしきれない。余所を向いていたいのに、引力に引っ張られ、何度でも同じ方向を向き直させられているように、瑠璃の心はどうしてもアソコにあった。
しかも指遣いが変化する。
最初は指の角度を変え、上下左右の膣壁を調べる風だったのが、微妙なピストンを帯び始めている。気のせいかと思う程度の、実に些細なピストンから始まって、しだいに指の動きははっきりと、明確な抜き差しへと変わっていく。
(これって――この人、やっぱり……)
瑠璃は半ば以上に確信していた。
診察だったのは最初だけで、今はもう愛撫のために触っているのだと、瑠璃はその指遣いから感じていた。
始末の悪いことに、それが気持ちいい。
(感じちゃ……駄目…………)
感じまい感じまいと意識して、快楽からも気を逸らそうと、改めて壁や天井に、室内の設置物に視線を走らせるが、アソコに生じる快楽は引力が強かった。意識を逸らすことなど許してくれず、瑠璃の心を絶えず引っ張り続けていた。
「気持ち良くなっちゃったかな?」
医師はわざわざ尋ねてくる。
もうその頃には、瑠璃の膣内では愛液の分泌が始まって、ジェルというよりその汁気で滑りが良くなっていた。
「すみません……少し…………」
「いいんだよ? いいのいいの」
声もどこかねっとりしている。
何かを企んでいることが、ひしひしと伝わってくるような、どことなく不安を煽る声に思えた。
「このあたりなんて、どうかな?」
「ひっ……あっ、んぅ…………!」
その時、瑠璃は声を出してしまう。
「気持ちいいかな? 正直に頼むよ?」
医療上、正しい答えが必要であると匂わせながら、しかしねっとりと尋ねてくる。
「き、気持ちいい……です…………」
心の底から恥じ入りながら瑠璃は答えた。
瑠璃が刺激を受ける今の箇所は、膣のやや浅い位置、それも指を上向きにした腹側だった。さらに言うなら、クリトリスに座標を合わせたような位置からの、ぬかるみを帯びた摩擦は強い電流を生み出していた。
脚がしきりに開閉した。
モゾモゾとした浅い動きで、微細な開閉を繰り返す。膣壁もヒクヒクと反応して、クリトリスには血流が集まっている。今頃は突起した肉芽が包皮の内側から顔を出し、医師の目前に現れてしまっていることだろう。
ついでのように乳首も硬い。
最初に乳房の診察を受けたせいでもあるが、肉体を興奮させられているせいで、胸にも改めて血流は集まっている。敏感になった乳首は、ブラジャーを外したままでいるせいで、セーラー服の内側に擦れて気持ちがいい。
瑠璃は体の二箇所で感じていた。
アソコと乳首、上下で発する電流に、瑠璃は我慢の表情を固めていく。声を出すのは恥ずかしい、あからさまに感じた姿を晒すのも恥ずかしい。せめてもの我慢をすることで、少しでもいいから恥ずかしさを軽減しようと努力していた。
「んっ、んぅぅ…………!」
だが、努力虚しく、瑠璃の太ももはピクピク震える。
「また反応しちゃったね」
その指摘で頭が燃え、頬も熱気を放出した。
「んっ、んっ、んんぅ……そ、そこは……あの…………」
先ほどからやられている膣内の箇所は、Gスポットと呼ばれている。その位置はクリトリスが下へ下へと根を伸ばし、その根っこの先を届かせたような位置にあるので、やられているのは膣であっても、根っこから刺激を送り込まれるようにして、クリトリスすら気持ちいいような感じがしてくるのだ。
医師としては芽吹いた植物の根っこに刺激を吸わせ、そして吸い上げてしまった電流で敏感に、ビクビクと反応するように、クリトリスは悦んでしまっていた。
*
池山信夫は瑠璃の反応を楽しんでいた。
ジェルをまぶした指を入れ、最初のうちは反応があまりなく、あくまでポーズを恥ずかしがったり、指の入っている状況に対して、堪えんばかりの表情をしているだけだった。あちらこちらに視線を走らせている様子から、必死に意識を逸らそうとしているのも、不思議とひしひしと伝わって来た。
だが、やがて反応は変わってきた。
続ければ続けた分だけ、指には熱が感じられ、ピストンによって汁気も溢れる。ジェルというより、愛液によって滑りが良くなり、ピストンがスムーズになる頃には、Gスポットの刺激でわかりやすい反応を見せてくれるようにまでなっていた。
(いいねぇ? いっぱい撮ってあげるからねぇ?)
白衣の胸ポケットにあるペン型カメラ、デスクや棚に隠してあるカメラは、もっぱら本のページを切り抜いて、その内側に仕込んである。壁紙の裏にも、天井の方にも、あらゆる角度から診察台を映している。
それら複数にわたるカメラによって、瑠璃の色気ある反応は記録され続けている。
あとでいくらでも編集して、動画サイトにアップすれば、たちまち視聴者が集まって、瑠璃をネタにするだろう。パソコンやスマートフォンの向こうで息子を握り、せっせと精液を搾り出すのだ。
人の裸を勝手にアップロードすることで、そういった視線に晒してやること自体が面白い。
ある種の愉快犯である信夫は、その瞬間を夢見ながら、せっせと右手を動かしていた。
(セーラー服っていうのも、正解だよねぇ?)
今日は上を脱がせていない。
セーラー服と下半身裸の組み合わせは、ほとんど趣味のようなものだったが、巨乳によって押し上がった服を見ながら、一方では丸出しの股にも目を向けるのは、なかなかに趣があって素晴らしい。
信夫は鼻息を荒げつつ、Gスポットの刺激のためにピストンを活発化していった。
「あっ、あぁ…………」
声のトーンが上がっている。
弱点を擦り抜くためだけの、決まった箇所だけを狙ったピストンで、瑠璃の表情はめまぐるしく変化していく。声の我慢ができなくなればなるほどに、喘いでいる自分自身に対して恥じ入ったり、声を聞かれて恥ずかしいかのような、感じてしまって情けないかのような、物思いの気配を瞳に浮かべる。
「んぅ……んっ、んぅぅぅ………………」
ついには顎さえ強張らせた。
唇を内側に丸め込み、これまで以上の我慢の顔で、頬すら固くしながら声を抑える。これ以上は喘ぐまいと努力する表情は、目尻にも力が入って、力んだ表情筋がピクピクと震えている。
(よっぽど恥ずかしいんだねぇ?)
単に裸を見られるより、その上で感じた様子を見られたり、声を聞かれたりする方が、もっともっと恥ずかしいというわけだ。せめて見られる以上の恥ずかしさだけでも抑え込み、耐え抜こうとしているわけだ。
(お、そうだ)
そんな時、信夫はちょっとした悪戯心を脳裏に浮かべ、そのままピストンを続行する。
「んぅぅ……んっ、んぅ……んぅぅ……んぅぅぅ…………」
抑えに抑えた声に耳を傾け、視線はクリトリスの突起に注ぐ。
表情の面白さもそうだが、今にも敏感に成り果てているクリトリスは、まるで電流を充満させ、少しでも触れればビリっと弾けしまいそうな、爆発寸前の気配を醸し出して見えるのだ。
「んぅぅ……んぅぅぅぅ…………」
一体、どこまで高まっているだろう。
いいや、クリトリスはもう少し取っておこうと、信夫はピストンだけに集中する。滴る愛液を摩擦に巻き込み、かき混ぜているうちに、指には白い泡立ちが付着していた。その泡立ちの固まりが、新しく出て来る愛液に溶かされて、しかしその愛液もまたいつかは泡立ち、白濁した汚れが広がっていた。
試しに肛門を覗き見る。
すると、膣口から垂れた滴が皺の溝へと飲み込まれての、濡れてしまった光沢をとっくの昔に帯びていた。
一旦、ピストンを停止する。
人差し指は根元まで差し込みつつ、ピストル型の拳から力を抜くと、埋め込んだ指を伝って膣から愛液が流れてくる。水溜まりが徐々に広がろうとしているような、薄らとした水気が攻めてきて、それは手の平の内側にかけてまで濡らしてくる。
なるほど、手もここまで濡れるかと、信夫はさらにもう少しだけピストンを繰り返す。
「んっ、んっ、んぅぅ……んぅぅぅ…………」
我慢じみた声に耳を傾け楽しみながら、手の平へ流れ込んで来る愛液も目で楽しむ。手の平に小さな小さな水溜まりを作ったように、ちょっとした量が溜まる頃には、他の指にまで愛液は広がっていた。
直接触れてはいないはずの部分まで、いつの間にやら濡れ広がり、ビニール手袋が全体的に表面を湿らせていた。おもむろに指を抜き、手の甲を確かめると、裏側さえもしっとりとした光沢を帯びていた。
「士堂さん?」
そして、信夫は向かって行く。
顔の真横にまで回り込み、今の今まで愛液に濡らされ続けた右手を突きつける。
「ほら」
お前はこんなに濡れたんだぞ。
そう伝えてやるためだけに、信夫は右手を見せびらかしていた。指のあいだに糸まで引かせ、濡れた光沢に満ちた右手を拝ませた時、瑠璃は驚愕に近い眼差しで固まっていた。
瞳を小さく丸めて唖然として、しばし固まった直後には、顔から悲鳴が上がってきた。
「――――――っ!」
実際の声は上がっていない。
だが、表情が悲鳴を上げたと言いたくなるほどの、壮絶な何かが瑠璃の顔には滲み出ていた。突きつけられた真実がよほど衝撃だったようにして、目尻に涙まで浮かべながらの赤熱しきった表情から、ありもしない蒸気が上がってみえるかのようだった。
じゅわぁぁぁ……!
と、熱した鉄に水をかけた瞬間の、そんな蒸気の存在を、信夫は本気で錯覚してしまっていた。
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