前の話 目次 次の話




 健太は唯華を隣に立たせ、いよいよノートパソコンに収めた数々のデータに手を付ける。
「サボらずに毎日やってたみたいじゃん?」
 尻に手を置き、ぐにりと指を食い込ませる。椅子に座った健太にとって、隣に立った尻の高さは丁度よく、実に揉みやすい位置なのだった。
 唯華は何を言うでもなく、ただ返事だけをした。
「そうですね。毎日、やっていました」
「おかげで乳首は大きくなったし、クリも成長してるんだろ?」
「はい」
「いいじゃんいいじゃん。それじゃあ、動画見てみよっか」
 健太はこの時を待ち侘びていた。
 ただ課題のチェックをやるのでは趣がなく、もっと良い楽しみ方はないかと思い、今日この瞬間まで取っておいたのは、きっと正解だったのだろう。フォルダに並ぶ動画ファイルの、サムネイル表示を眺めることにさえ、ワクワク感が大きく膨らんでいた。
 この楽しみでならない感覚は、一人きりで眺めた時にはなかったものだ。
 フォルダ内に並べたファイルの数々というだけで、もう既に高揚感が湧いていた。
「それじゃあ、これから」
 動画のファイル名は全て日付となっている。
 課題の一日目のファイルをクリックすると、ベッドから両足を下ろし、座り姿勢となって唯華が画面の中に現れる。
『んっ、くぅぅぅ…………』
 吸引器を乳首にかけ、その刺激を受けている姿が画面にあった。
「あっはははは! オナニーじゃん!」
 健太は隣の尻をペチペチと打ち鳴らし、楽しく叩いてやりながら、動画の中の光景を笑ってやった。愉快な気分になりきって、面白おかしくてたまらないものに対する目で、健太は動画を視聴していた。
 ハンドタイプの吸引器で、スイッチの付いたグリップを握った状態で、画面の中にいる唯華は、乳首に吸引部分を当てている。冷蔵庫に使う吸盤に酷似した形状の、しかし乳首を吸い上げるためにあるそれで、自らの乳首に刺激を与えている姿は、使っている道具がそれであるだけで、オナニーに見えるに決まっていた。
 道具を乳首に当て、刺激を感じて喘いでいる。
 それがオナニーでなかったなら、一体何だというのだろうか。
「で、何? 気持ち良かったわけ?」
「……その通りです」
『んぁっ、くぅ……あぁ…………』
「へー? 言い声じゃん」
「…………」
『あっ、んぅぅ……』
「いい声だなぁ?」
 健太はわざとらしく喘ぎ声を褒めてやる。
「…………」
『んっ、んぅぅ……』
 それに対して、隣に立つ生身の唯華は沈黙を守っており、ノートパソコンの中からだけ、喘ぎ声は聞こえてくる。
「おい、どうしたんだよ返事は」
 うんともすんとも言わないので、健太はまた、さらに尻を叩いてやった。

 ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ――

 尻を叩いて鳴らしてやると、見上げた唯華の横顔には、恥辱を滲ませたような歪みが見え隠れした。
「あ、ありがとうございます……」
「そうだよなぁ? 褒めてやってんだから、そういう風に言わないとなぁ?」
 動画時間が進んでくると、今度はクリトリスの吸引が始まっていた。
『んぁぁ……! あっ、あぁぁ……!』
 声は乳首の時よりも大きくなっている。
 使っているのは、同じくグリップを握りつつ、スイッチを入れる電動タイプだ。自動的に吸引を行って、引っ張り上げる刺激を受けている姿は、吸引部分の映りが小さいために、電気マッサージ器の振動でも当てているように見えてくる。
 映像としては、それが延々と続いているだけであり、特に面白い変化はない。
 映画でもドラマでもなく、そしてAVとして作られているわけでもない。単なる記録映像は、同一の絵が代わり映えなく続くだけに決まっていた。
 そんな毎日の記録がまだまだ数を残している。
(全部見たら結構かかるな)
 さすがに飛ばし飛ばしにする必要があるだろう。
 今はまだ高揚感を胸にしているが、同じものだけを二十分も三十分も見ていれば、さすがに飽きがくるだろうと、健太は心のどこかで予感していた。
「さーて、次いってみようか」
 健太は現在の動画から次の動画へ切り替える。
 始まるのはやはり乳首に吸引器をかけ、その刺激に喘いでいる映像である。オナニーをして見える映像をニヤニヤと、しかしスキップ機能で飛ばし飛ばしに確かめて、また次の動画へと移っていく。
 それを繰り返しているうちに、乳首の成長に気がついた。
「へえ?」
 半分以上の動画を見て、後半に差し掛かってきたところで、最初の動画を改めて確認すると、やはり乳首の大きさに違いがある。一番最初の動画より、終盤の動画の方が、いくらか大きくなっており、試しに拡大機能まで駆使したところ、やはり肥大化に間違いはない。
「いいじゃんいいじゃん」
 唯華が自分好みにカスタマイズされている。
 その感覚にいい気になって、愉快でならない顔で唯華の様子を見てみると、不意に健太は気づいていた。何やら唯華は足をモジモジさせており、横顔を見る限りでも、何かの我慢を感じられる。
 もしやと思い、ものは試しでアソコの方を覗き込む。
「あれぇ?」
 すると、濡れていた。
 剛毛が水分を吸っていた。ワレメから染み出るものを根元で吸収して、水気によって束ねられた陰毛は、毛先を太いトゲのように尖らせている。
「なんで濡れてんのぉ?」
 ニヤニヤしながら、わざとらしく健太は尋ねる。
「それは……」
「それは?」
「動画を、見ているうちに……興奮、してしまいました…………」
 唯華が答えた瞬間だ。

 ぺちん!

 また、叩いた。
「あーあー。すっかり、エロい女になっちゃったよねぇ?」
 嘲るような、馬鹿にしきった顔で尻叩きを繰り返す。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 叩いているうち、唯華は表情を歪めていき、何かを我慢している風を強めていく。その堪える気配を見れば見るほど、健太からすれば快楽の我慢であることが明白だった。
「そんなに気持ちいいのか?」
 健太はさらに叩き続ける。

 ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、

「くっ……」
 唯華はその時、歯を食い縛った。
 拳にぎゅっと力を込め、目つきを鋭くしつつ耐え忍ぶ。
 そこから健太が感じたものは、ある種の反抗心だった。
「なんか久々に会って、いつもより反抗的になったか?」
 付き合いの浅い者なら、小さな変化から見え隠れする微妙な機微など、決してわかりようはないだろう。いくら久々とはいえ、形はどうあれ付き合いの長い健太であればこそ、唯華の横顔から反発の気持ちを読み取っていた。
「わからせてやる。こっちへ来い」
 健太はおもむろに立ち上がり、唯華の腕を引っ張りベッドに導く。床に膝を置きつつも、ベッドに上半身を乗せてしまっての、四つん這いに近い姿勢を取らせていた。突き出された尻を背後から鷲掴みに、健太は肛門の黒ずみを視姦して、それから性器の方を覗き込む。
「へえ?」
 改めて近くで見れば、愛液の存在はより明確だった。
 先ほどよりも量が増え、陰毛が水気を纏っている。
 指をやり、その水分によって束ねられた陰毛の、トゲとなった部分をなぞってみれば、先端と指のあいだに髪の毛よりも細い糸が引く。さらにじっくりと覗き込み、両手でワレメを開くことまでしてみれば、黒ずみを帯びたビラがあらわに、包皮から飛び出て肥大したクリトリスまでよく見えた。
 クリトリスの確かな成長を確認して、健太は満足そうに頷きながら触り始める。
 ピクッ、と。
 尻が反応していた。急に電流を流されて、筋肉が弾んでしまっているように、クリトリスを触った瞬間から揺れ動いていた。
「面白いじゃん」
 健太はその反応を楽しんだ。

 ふりっ、ふりっ、ふりっ、ふりっ、

 と、あたかも左右に振りたくり、お尻をフリフリすることで、オスに対するアピールでもしているような光景が出来上がっていた。

 ふりっ、ふりっ、ふりっ、ふりっ、

 という、尻の動きだけではない。
 見れば肛門も、きゅっ、きゅっ、と、収縮を繰り返している。健太はそれらの反応を目で楽しみ、ニヤニヤとしながらクリトリスをくすぐり続け、やがてもう一方の手で膣口に挿入を行っていた。
 膣穴への指ピストンと、クリトリスを嬲る指先の、二点による刺激を行うことで、しだいに喘ぎ声が聞こえ始める。
「はぁ……あっ、はふぁ…………」
 最初は息の乱れから始まって、それがしだいに喘ぎ声へと変わっていった。
「あっ、あぁ……あっ、んぅぅ…………」
 色気ある声を耳にして、健太はまるでオーケストラを楽しむように目を瞑り、うっとりとした表情で音色に浸る。
「んぅ、んぅぅ…………」
 健太はその音色に没入した。
 ただただ、色っぽい声を聞き、耳で楽しんでいるというそれだけなのだが、健太の表情を傍から見る者がいたとすれば、世界観への没入と映ることだろう。メッセージ性や物語性の籠もった音楽を聴き、その情景をまぶたの裏に浮かべでもしているように、健太は喘ぎ声を楽しんでいた。
 実際、思い浮かべているものはある。
 かつて、本当に憧れていた気持ち――生まれて初めて志波姫唯華の試合を見た瞬間の衝撃と、そんな唯華からバドミントンを教えてもらえる感動に、その憧れを貶めて、こんな風に扱っている背徳感に優越感。
 それらが一連のストーリーとなっている。
 唯華自身はただ快感に喘いでいるだけであっても、健太としてはそんな物語性を感じ取り、感受性のままに喘ぎ声を楽しんでいた。
「んあっ、あぁ……あっ、んぅぅ…………」
 本当に没入していた。
 自分の中に広がる世界観に、まさしく健太は浸っていた。

「あぁぁぁ――――――!」

 そして、唯華が絶頂する。 
 そのビクっとした反応と共に目を開き、音楽の終わった余韻と共に、ぐったりとした唯華の背中を眺める。自分自身の手の平を見てみれば、両手とも指がまんべんなく愛液を纏い、光沢を放っていた。
「イったね」
「はぁ……はっ、はい…………」
「勝手にイクなんて、お仕置きが必要だよ」
 そんなルールは告げていない。
 たった今になって、急に言い出したことであり、そのせいか唯華は肩越しに一度だけ、文句のありそうな顔で睨んで来る。
 だが、今の絶頂で自分の立場を思い出したのだろう。
 反抗心に満ちた瞳は、たちどころに粛々としたものへと移り変わっていた。

     *

 健太が思いついたお仕置きは、絵を描かせるというものだった。
 まさか、ごく普通にペンを持たせて、ごく普通にイラストに挑戦させても、そこに大した面白みはない。お絵かきをお仕置きとする所以は、その方法にこそあるのだった。

「うっ、難しい……です…………」

 唯華は尻で絵を描いていた。
 たまに使う機会のあるペンを、そんな風に使わせるのは、我ながら気にならないわけではないが、後でしっかり除菌ペーパーで拭き取れば、衛生的には問題がないだろうと考えていた。
 肛門にマジックペンを刺し、紙の上で尻を上下左右に動かしている。
 ずれないように、大きな紙の四隅を物で固定し、イラストとしてはキャラクター的なデフォルメをしたクマの絵を命じている。線を描き、点で目や鼻を表現してくれれば構わない。まさかプロのイラストレーターであったり、芸術家が手がけるレベルなど求めはしないが、そこそこにクマに見えるものを描くように言い渡している。
 そして、その様子を三脚台のカメラで撮影しつつ、スマートフォンの動画撮影モードも片手にして、ニヤニヤと楽しく見守っている。
 これほど愉快なことがあるだろうか。
 滑稽な芸をやらせて、それを眺めて笑いものにする。
 その優越感がたまらずに、健太は高揚しきった眼差しで、紙に引かれるガタガタな曲線に目をやった。
「あーあー」
 当然、下手だった。
 唯華に絵心があるかは知らないが、肛門に挿入したペンで、足腰を使って描くという経験は、まともな絵描きにはないだろう。ロクな線も引けず、点を打つ場所もいい加減になるのは無理のない話だが、無理なことをやらせた上で、いまいちな結果を嘲り楽しむことこそ、滑稽な芸を命じる面白さの一つである。
 描き終わった直後の紙を抜き取り、健太は唯華の目の前で、これみよがしにクマの絵を眺めてやる。
「なんだこれぇ」
 嘲ってやった。
「マジで下手クソだな。どんんだけ絵心がないんだ? 幼稚園児でもマシなものを描くと思うけど? なあ、こんなんじゃ合格は出せないよ?」
 線だけで描くクマの絵は、顔や耳などは丸を描き、目と鼻は適当にぐりぐりとやって点を作ればいいわけだが、顔を成すための曲線が歪んでいる。訳のわからない波打ちが混じり、ミスで加えた線や点で見栄えも汚く、耳を入れるポイントもずれている。
 結論から言うと、クマには見えない。
 ミスで作った点のため、鼻の穴が二つになって、豚に見えやすくなっていた。
「ねえ、これなんの動物?」
 わざとらしく健太は尋ねる。
「クマ……です………………」
「は? これが?」
 愉快で愉快で堪らない。
 唯華に向かって絵を突きつけ、本人に見せつける。何に見えるかもわからない、絵心を欠片も感じさせない歪な線が、それでも辛うじて動物に見えるのは、クマを命じたのが健太自身だからなのだろう。グチャグチャな線の固まりは、幼稚園児がクレヨンを扱って、画用紙に乱雑な線を走らせたそのものだ。
 いや、健太の場合、幼稚園時代に絵の上手い子のいた記憶がある。いくら上手くても幼稚園での話のため、中学生となった現在のクラスメイトの方が、よっぽど驚くべき画力を披露しているが、ともかく上手い子がいたわけだ。
 さすがに遠い記憶のため、脳裏に浮かぶ映像は朧気だが、手元にある唯華の絵よりずっとマシだったことだけはよくわかる。
 もっとも、そんな過去の事実はさほど重要なものではない。
「幼稚園児の方がマシだよ?」
 蔑む言葉を投げかけて、侮辱することこそが楽しいのだ。
「…………」
 唯華は押し黙っていた。
 何かを言いたげに、一瞬だけ口を開きかける反応だけを見せ、やりきれない顔で唇を閉ざして俯いている。
「なあ、クマを描けって言ったよな?」
「……すみません」
「描き直してくれる?」
「はい……」
 唯華は一体、どんな気持ちでいることか。
 肛門にペンを刺し直し、新しい紙の上に腰を下ろすと、尻でぐるりと弧を成そうと動き始める。自分の股を覗き見て、ペン先の位置は確認しつつも、足腰を駆使した描き方では、やはり線が歪になる。
 二回目なので申し訳程度には慣れたのか、先ほどよりはまだマシな線ではあるが、妙な波打ちやブレなどで、綺麗な線とは言い難い。微妙な丸の中に、さらにもう一つの丸を描き、目と鼻の点をグリグリと描き込む姿の、なんと滑稽なことであろうか。
 ぐいんぐいんと、腰を回すかのように動くことにより、肛門のペンを駆使しているが、出来上がる点もまた形が歪み、耳も口も位置が悪い。
 出来上がった二枚目のクマは、先ほどに比べて申し訳程度にマシなだけであり、やはり上手な絵には程遠い。
 しかし、上手い下手の問題ではないのだ。
「やり直しー」
 そう言ってやる瞬間の気持ち良さが、やはりたまらないものなのだ。
「わかりました……」
 頬の内側で歯を噛み締め、悔しさを見え隠れさせつつ再び尻を動かして、三枚目のクマを描き始める。バドミントンのおかげで体幹がよいおかげか、足腰の使い方は慣れさえすればすぐ身につき、加えて線と点だけで構成する記号的なクマの顔は、そもそも絵心の必要な種類の描き方ではなかった。
「はい駄目ぇぇ! やり直しー!」
 そう言ってやる瞬間の快楽で、健太はテンションを上げていた。
 興奮気味にやり直しを言い渡し、唯華は無念そうに四枚目を、五枚目を描き始め、六枚目に至ってもまだ健太は合格点を与えない。
 七枚目になって、やっと合格を言い渡した。
「いいじゃん。ま、これくらいにしておいてやるよ」
 それから、健太は唯華の尻からペンを抜き取る。
 嗅げば臭いだろうと思い、肛門に収まっていた箇所には触れないように気をつけつつ、そっとつまんだ指にぬめり気を感じ取る。先ほどからずっと出ていた愛液は、表皮を伝い広がることで、ペンまで濡らしているようだった。



 
 
 

コメント一覧

    コメント投稿

    CAPTCHA