モスティマは息を荒っぽく乱し尽くして、目つきを細めつつあった。
(うっ、これは……思った以上に……)
自分がどんな悩ましげな表情となり、快感の浮かんだ色気ある顔となりかけているか。モスティマはそれを思ってぐっと堪え、余計な表情の変化は見せまいとしてみるが、その我慢はあっさりと破られた。
「――ひあっ!」
モスティマは驚いた声を上げていた。
それはまるで、虫の苦手な女の子が蜘蛛やゴキブリでも目撃して、ぎょっとした顔をする時であるような可愛らしい悲鳴であった。
そして、そんな声が出て来たことに、他ならぬモスティマ自身が驚いていた。
「へえ、そういう声も出せるのね?」
サルカズ女性のしてやったりの面持ちに、モスティマはさっと目を背けた。
「……お、驚くじゃないか」
出してしまった声を誤魔化しようがなく、そう答えておくしかなかった。
アソコを触られたのだ。
性器への愛撫自体は、どうせ触られることになるであろうと予感して、泣く泣くと覚悟こそしてはいたものの、それは突然の愛撫であった。今は乳房に集中していて、他に目はいっていないのかと思いきや、唐突にやられて体中が跳ね上がった。
「あはっ、無理に気取っちゃって」
「うるさいね。常識的な反応くらいするもんさ」
「でも、いい声だったわよねぇ? あなた、最初は馬鹿馬鹿しいとか思ってたでしょ? 自分が思い通りになるはずない。私の思う通りになんて、感じてヒィヒィ言うわけない。って、そんな風に」
「……どうだろうね」
モスティマは険しい顔をしていた。
まったく、その通りなのだ。
こうも心を読まれていると、精神系のアーツに思えてくるが、それでも顔や態度で見抜いただけなのだろうか。
少なくとも、筋力ばかりが操作されている気はしない。
何かもっと、別の原理があるような――。
「見て頂戴? あなた、今はこんな感じよ?」
サルカズ女性は指先を見せびらかす。
指のあいだにわざとらしく糸を引かせて、モスティマへ自慢げに見せつけてくる。これがお前の愛液だぞ、お前を感じさせてやったぞ。そう言わんばかりの、何かをやってやった顔を向けられ、それに対するモスティマは内心で悔しげにしていた。
(まったく、いい気分はしていられないものだ)
屈辱的だった。
アーツで陥れられて、無理矢理にでもプレイに付き合わされ、裸になっただけでも屈辱に感じるところ、加えて愛液を見せつけられる。どれだけ余裕や無関心を装って、だから何だと言わんばかりの態度でいようと思っても、サルカズ女性の勝ち誇った表情を見ていると、結局は悔しい気持ちが湧いてくるのだ。
(体さえ動けば……)
いつも通りの力さえ発揮できれば、決してこんなことにはならない。
アーツユニットは手元にないが、せめて体の自由さえあれば話は変わる。変わるはずだというのに、それすら得られない歯がゆさに、モスティマは無念の思いへ沈んでいく。
「ほーら、もっといい気持ちにさせてあげる」
サルカズ女性の指がワレメに置かれた。
「んっ、んぅ……別にっ、求めちゃいないんだけど…………」
「あらあら、遠慮はいらないのよ? 何なら、絶頂でもしてパーっと潮なんて噴いてみたらどうかしら?」
「あぁ……くっ、んぅ…………!」
モスティマは歯を食い縛り、快感を堪えていた。
ワレメに対する愛撫によって、筋が上下になぞられている。指先の軽やかな動きによって、ほどよい摩擦が加えられると、それがアソコから熱を引き出す。擦られれば擦られるだけ、膣の奥では何かが生まれ、それが表面に染み出てくる。
ぬかるみが広がっていた。
「あっ、くぅぅ…………くっ、んぅぅ………………」
アソコが漏らす愛液は、ワレメの表面に少しずつ滲んでいる。それが指に付着していることで、愛撫によって愛液は塗り広がり。ワレメの周囲にかけてもぬかるみの領域は拡張されていく一方だ。
そればかりか、滑りが良くなっていくことで、余計に気持ち良くなってくる。
「あっ、ふぁ……はっ、はぁ……はぁ…………」
「無理しないの」
「無理なんて……あっ、んぅぅ…………」
愛液が塗り広がった表面を滑りよくなぞられて、そのタッチが気持ちいいために、またさらに滲んでくる。ぬかるみの層が厚みを増し、肉貝の表皮で光沢を強めると、ますます愛撫は気持ち良くなり、モスティマは呼吸を乱しきっていた。
「はぁ……はっ、はぁっ、はぁ…………!」
熱っぽい息が出ていた。
高熱にうなされでもしているような、しかし快楽こそが実態の表情に、サルカズ女性は狂喜さえ浮かべた顔で興奮する。無理矢理の愛撫で強引に興奮させられるモスティマに対して、そんなモスティマの様子を見ることで、サルカズ女性は己の欲望が満たされつつあることへの興奮を浮かべていた。
「あぁ、いいわぁ? あなた、強いそうじゃない?」
「んっ、んぁぁ……あっ、あぁ…………」
「でもね? どれだけ強くても、無力化されたら意味がないの。それが出来るのが私のアーツ。私自身は強くないけど、誰かの強さを封印できる。あなたはね、私のペットとして存分に喘いでいればいいってわけ」
「冗談じゃ――んぅぅ……んくぅぅ…………」
ペットなどと言われて反発心が働くも、その瞬間に愛撫が活発に、ワレメをなぞるペースが上がっていき、何を言う余裕もなくモスティマは唇をきつく結んだ。そうしなければサルカズ女性の喜ぶ大きな声が出てしまうと、そう予感しつつあってのことだった。
「ここなんてどうかしら」
「くぁっ、あぁぁ…………!」
耐えようとした気持ちはあっさり破られ、モスティマは喘ぎ声を上げてしまった。
クリトリスを刺激されたのだ。
突起した肉芽をくすぐる指先の、くりくりと弄り抜くタッチによって、腰が震えんばかりの刺激を感じていた。激しい電流が下半身に流れ伝わり、爪先にまで届いて指が開閉する反応さえ披露していた。
「こっちはどう?」
「あぁ……あぁぁ…………」
指が挿入されていた。
膣に中指が入り込み、そのピストンにモスティマは追い詰められる。とっくに愛液を流していたアソコの中身は、十分な水気を纏って滑りが良い。膣壁の表面にまとわりついた粘液で、指はあっさり、ヌルっと入り込んでいた。
「あっ、あくぅぅ……うっ、あぁぁ………………」
ピストンが快楽を引き出している。
指が根元まで埋まるたび、性器に触れた拳にも愛液は付着する。中指の根元の、その周りにも粘液を纏った光を及び、繰り返せば繰り返すだけ、しだいに糸も引くようになっていく。
「あっ、あっ、あぁぁ……あぁぁ…………」
「いいわぁ? あなたのその感じた顔」
「んっ、くぅぅ…………!」
「悔しいの? 屈辱なの? 無理矢理されているんだものねぇ? そういう気持ちになるんでしょう? でもあなた、何も反撃できないのよ?」
サルカズ女性は見るからに興奮している。
モスティマが感じれば感じるだけ、彼女のテンションは上がっているのだ。
「どう? このままイってみない?」
聞くにモスティマは首を振る。
「んっ、えぁっ、遠慮……するよ……十分、気持ちいいっ、から――ね…………」
ここまで好き勝手にコケにされ、いいように感じさせられている中で、モスティマはそれでも自分を保とうとしているように、いつも通りの振る舞いをしてみせようとしていた。
「いいのよ? 遠慮しないで」
しかし、サルカズ女性は容赦なく、ピストンのペースを上げようとしていた。
「あぁっ、あぁぁ…………!」
速度が上がる。
たったそれだけのことで、自分がいつイクとも知れない予感に囚われ、モスティマはつい反射的に股へ手を伸ばしていた。サルカズ女性の手首を掴み、それを阻止しようとしていた。そんな筋力など発揮はできず、掴んだところで意味がないのも忘れての、無我夢中での行為であった。
「あらぁ?」
しかし、サルカズ女性はまるでいけない悪戯を発見したように、楽しくてたまらない口実を見つけたように、おぞましいまでに口角を釣り上げる。
「何かしら? この手、何ぃ?」
怒りなどせず、嬉しそうに注意してくる。
「ちょっと、加減をして欲しいな、なんてね」
「するわけないでしょう? その手、離しなさい?」
その瞬間である。
「え……!?」
モスティマは驚愕していた。
らしからぬ驚きに目を丸め、あんぐりと口を開けながら、モスティマは両手を離していた。その手首から手を離しただけでなく、両腕を頭上にやって、頭頂部のあたりで交差させ、自ら無防備なポーズを取ってしまっていた。
「ど、どういう…………!」
肉体を操作したというのだろうか。
何か見えない力に手首を掴まれ、無理にポーズを取らされた感覚がモスティマにはあった。
余裕をもって、冷静に頭を使っていられれば、今のが一体何のアーツであり、自分は今までどのように筋力を奪われていたのか。この時点で気づくことができたのかもしれないが、迫り来る快楽の前に、モスティマにはそんな余裕など与えられていなかった。
「あぁぁぁぁぁ…………!」
モスティマはイっていた。
潮を噴き出し、その滴をサルカズ女性の頬に引っかけてしまっていた。
*
絶頂から間もなく、モスティマは開脚のポーズを取っていた。
「よーく見えるわよ?」
それを眺めて、サルカズ女性はわざとらしく羞恥を煽る。
M字開脚だった。
両足を左右に投げ出し、あけっぴろげな格好をしていることで、性器が丸見えなのは言うまでもなく、覗き込めば肛門さえ見えるのだ。
「………………」
どちらの穴にも視線を感じて、モスティマは無言で顔を赤らめる。
「さ、次は何をしましょうか」
サルカズ女性は楽しみそうに、機嫌よくにっこりと微笑んでいた。
そんな彼女の笑顔に向かってモスティマは言う。
「……認識阻害」
「ふうん?」
「脳に影響を与えるアーツだね。筋力を封印して、相手の強さを奪えるのは、その応用っていうわけかな」
イった後から多少は息を落ち着ける時間が与えられ、おかげでものを考える余裕ができた。そうやってモスティマは、アーツの正体に気づいたわけだった。
「それがわかったからといって、術から抜け出す方法まではないんでしょう?」
「このあたりで、もう十分に楽しんだとは思わないかな?」
「遠慮しないで? まだまだ、もっと気持ち良くしてあげる」
「……そう。そりゃあ、しょうがないね」
モスティマは諦めたように力を抜き、せめて覚悟だけでも決めながら受け入れる。
彼女の言う通り、アーツの正体がわかったからといって、そこから抜け出す手立てはない。
だが、大元は認識阻害だ。
例えば青を赤だと思い込ませるなど、正しい処理や認識を阻害する術なのだが、使い手の技術が高度になり、応用が利けば利くほど汎用性は高まっていく。
今のモスティマは自分の持つ本来の能力を認識できないのだ。
本当は大岩を持ち上げる筋力があったとして、しかし脳の方は肉体を小さな子供のものとでも認識している。そんなことが出来うる体をしておらず、脳に与えられた認識通りのパワーしか発揮できない。
モスティマ自身に自覚はなくとも、今の肉体は筋力の低下しきった肉体であると、脳の方が認識しているはずだ。おそらくアーツユニットが手元にあっても、脳に認識が擦り込まれ、その使い方を知らないことになっている。
そして、もう一つ。
認識阻害を受けていれば、視界に入る情報も阻害できる。コップの認識を阻害すれば、テーブルにコップが置かれていても、まるで初めから何も置かれていないかのようにしか捉えられない。
だが、モスティマは確かに感じた。
ポーズを無理に変えられる時、誰かの手に掴まれでもしたような感覚がした。
こうしている今にも、透明人間に掴まれ続けている。
人の手で触れられている感触は確かにあるのだ。
「……何人、いるのかな」
だからモスティマは恐る恐る訪ねてみる。
「たくさん、よ?」
人数は言わないつもりらしい。
しかし、否定するわけでもなく、それがサルカズ女性の答えであった。
「みーんな、私のペット。私の手で堕ちてきた可愛い子達よ」
「それがたくさん、ね。恐ろしい話だよ」
「そうねぇ? 今まで気持ち良くなったり、イったりしてきた様子は、みんな他の人達にも見られていたんだものねぇ?」
その時だった。
「――――んっ!」
モスティマは喘ぎ声を出しそうになり、反射的に唇を結んでいた。急に前触れもなく現れた快感に、驚きで目を大きく丸めていた。
乳首に誰かの指が来ている。
サルカズ女性の手ではなく、見えない誰かの指である。
「あら? どうしたの?」
わかっているであろうサルカズ女性だが、わざとらしく首を傾げた。
「いや……別に……んぅっ、んぁぁ……あっ、あぁぁ…………」
「何を一人で気持ち良くなっているの?」
「白々しい……ねっ、んっ、あぁ…………」
「なぁにぃ? 私が何かしているみたいに言うわねぇ? でも、私は何もしていないじゃない? ほら!」
そうアピールするために、サルカズ女性は両手を挙げてみせている。
そして、実際に彼女とは関係無く、見えない手の平によって乳房が揉まれ、乳首は刺激され続けていた。
「あっ、んんっ、んぁぁぁ……!」
乳首だけでは済まなかった。
「んぅぅぅぅ………………!」
アソコにも、透明な指は来ていた。
クリトリスに指の腹が乗せられて、膣口にも挿入されて、肉貝の皮膚も軽やかに撫でられている。ただ性器を責めるだけで、複数本の指が群がり、その一本一本がくねくねと蠢いているはずだった。
しかし、モスティマにはその誰も見えない。
SF映画で見る光学迷彩のように、その部分の景色が歪んでいるわけでもなく、周りには本当に何もなく、誰もいないようにしか見えないのだ。
だが、認識阻害という原理であれば、何人ものペットとやらに囲まれて、四方八方から視姦されたり、触られているのが実態なのだろう。認識阻害など関係ないカメラでも通したなら、モスティマの視界にあるはずの、本来の景色が見えてくることだろう。
「あっ、あぁぁ……あぁぁぁ…………!」
ピストンのペースが上がり、クリトリスを弄る動きも活発となっていく。
また、すぐにイキそうになっていた。
モスティマは下腹部を強張らせ、内股も硬くしながら堪えようとするものの、我慢など関係無しに絶頂の予感は膨らむ。
「んぅぅ…………!」
弾けたように、愛液の滴が四散した。
潮吹きによって撒き散らされた滴のいくらかはベッドシーツに浸透して、またいくらかは空中に消えていた。透明人間の体にあたり、そのまま一緒に透明になったようにして、視界から消え去っていた。
「やっぱり、いるってわけか……んっ、んぁぁ……い、イったばかり――だっていうのに…………!」
一瞬は止まっていた愛撫がすぐさま再開されていた。
性器への刺激は言うまでもなく、乳首への刺激も再開され、モスティマの胸は勝手に動く。感触としては人の手で触られているとわかるのだが、その姿が見えない以上、自分自身の胸を見下ろせば、乳房自身が勝手に変形を繰り返して見えるのだった。
「あっ、あぁぁ……あっくぅぅ…………!」
「足がすっごく、くねくねしているわねぇ?」
「ああぁぁ……!」
「ピクピクするみたいに、微妙に開閉しているわよ?」
サルカズ女性はモスティマの反応を実況してくる。
モスティマの一挙手一投足を楽しく観察しながらの、ニヤニヤとした実況行為に恥辱を煽られ、その都度顔を歪めることとなった。
「あっんぅ……!」
「髪を振り抜いた時の横顔、セクシーね?」
「あぁ……あっ、んぅぅぅ…………!」
「脚が縮んでるわよ? イクのを我慢しているのかしら?」
またしても絶頂が近づいて、内股を固くした時、その数センチだけ閉じた脚を我慢の姿と評してくる。そして実際、モスティマは絶頂を反射的に堪えようとして、下腹部と内股に力を込めているのだった。
「あぁ……んぅぅ…………!」
「オシッコの我慢に見えるわよぉ?」
「な……!」
それほど羞恥を煽る言葉はなかった。
彼女の言葉はそこまでだったが、お漏らしをしそうに見えると言われた気がして、モスティマはただでさえ火照った顔をより染め上げ、耳にも赤らみを及ばせていた。
「さて、あと何秒でイクか」
「あっあっあっあぁぁぁ………………!」
「当ててあげる」
「んっ、あぁ……あぁぁ…………!」
「三、二、一…………はい、イった」
「あぁぁあぁぁぁ――――――!」
サルカズ女性のカウントに合わせ、まさにそのタイミングの通りに腰が震える。ぶるっとした震えを帯びたかと思いきや、次の瞬間には潮を撒き、モスティマのアソコはイキたての熱気を漂わせていた。
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