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 冷たいシャワーの水が頭から降りかかり、全身の精液汚れを洗い流す。ひんやりとした心地良さを覚えながらも、なんだか今頃になって、キアランの前で全裸でいるのが恥ずかしくなってきた。
「……ねえ、こういうのって初めてだね」
「そうだね。リーナ」
 お互いに裸になって、同じシャワーを浴びている。
 本番以外の経験なら既にあったが、未婚の男女が淫らな行いにふけるのは、シェーム王国では犯罪とされていた。だから基本的には町を外れた野外へ行き、誰にも見つかる心配のない場所に隠れてのことだったので、こんな風にきちんと部屋でというのは初めてだ。
「これから、するんだよね? キアラン」
「そうだよ」
 キアランはリーナを抱き締め、まずはそっと口付けから開始する。背中へとまわされたキアランの腕が、お尻へと移動していき、左右の尻たぶを揉み始めた。
「あっ、キアランってば……」
「柔らかいね。リーナのお尻」
「もう……!」
 リーナは羞恥に顔を赤らめ、怒ったように頬を膨らませながら、キアランの胸元に体重を預けて、揉まれる感触をゆっくり楽しむ。
 やっぱり、ジョードとは違う。
 嫌いな男に触られるのは、まるでナメクジだのムカデだの、不快感の強い生き物が素肌を這いまわってくるような、みるみるうちに鳥肌の立つ感じがあったが、キアランに触られてもそんな感じは一切しない。
 いくら経験でジョードが上をいっていても、愛し合っているかどうかで、精神的な心地良さが遥かに違う。ただ肉体だけをコントロールされるより、キアランの手は心でも気持ち良くなっていく感じがした。
「僕がリーナを洗ってあげる」
 耳元で囁かれ、顔がカァァァァっと熱くなった。
「やだ! 恥ずかしいよ。子供じゃないのに」
 まるで本当に子供が駄々を捏ねるかのように、リーナは必死に首を振る。
「駄目。大人しくして?」
 しかし、嫌がったリーナの気持ちは、キアランのそのたった一言で溶け堕ちた。
「もう、仕方ないわねぇ……」
 人に体を洗ってもらうだなんて、幼い子供じゃないんだから、あまりにも気恥ずかしい。遠慮したい気持ちもあったが、キアランがそうしたいなら、やっぱりリーナとしても、そうされたいような気がしていた。
(やっぱり、ジョードのせいで汚いし、キアランに綺麗にされたい)
 ローションプレイで使うらしい、ソープマットの上に横になり、リーナは仰向けの姿勢でキアランの手を受け入れる。泡だった石鹸が、真っ先に乳房の上で塗り伸ばされ、乳腺をほとばしる刺激にリーナは全身をビクつかせる。
「あぁ……気持ちいい……キアランの手ぇ…………」
 乳首をつまむ指先にリーナはよがり、腹や腰を這い回る手つきにリーナは全身をくねらせる。丁寧に泡を塗り込んでいるキアランの顔つきは、ただ興奮した男の顔というよりも、もっと真剣な眼差しに見えた。
(嬉しい! 嬉しいよぉ……!)
 キアランは真面目にやっているのだ。リーナに愛を捧げようとする誠実さと、汚れを落として綺麗にしてあげたがっている気持ちがあって、その上で欲情してくれている。愛の上で性的視線を向けられるのは、とても喜ばしいことだった。
 穢れきってしまった自分は、まるで世界で一番汚い汚物を肌に塗られ、異臭にまみれてしまったようにさえ思ったが、キアランがこうして洗ってくれることで、そんな自分を綺麗な状態に戻してくれているような心地がした。
「気持ち良い? リーナ」
「うん。いいの。幸せぇ」
 うっとりと目を細め、物欲しげな顔でよりたくさんの愛撫を求める。
「全身くまなく洗ってあげるからね?」
 意地悪っぽい囁きが、リーナの期待感を大いにそそる。どんな風にされるのか、どこまで洗われてしまうのか。楽しみなような不安なような、嬉しいような怖いような、期待している反面、恥ずかしいとも思っている。
「やだってば」
 小さな声でリーナは言う。
 それから、許しを請うようないじらしい瞳でキアランを見た。まるで小動物が狼に狙われて、小さく震えているような、けれど自分の体が食べられてしまうことに期待感も抱いている。期待と不安の相反する感情が、リーナの胸には同居していた。
「だーめ」
 意地悪な一言が、リーナの全身を疼かせた。
「ば、ばかぁ……!」
 真っ赤になったリーナの様子にお構いなく、キアランは肩や腕にも泡を広げる。脇の中をくすぐられ、太ももを揉みしだかれ、膝から足首にかけても丁寧に洗われる。
 股間だけを残して、仰向けの表面にはまんべんなく泡が広がった。
(美味しい部分は最後にするつもりなんだ……)
「次はうつ伏せ」
「……うん」
 背中から腰にかけて、キアランの手が這い回る。十分に泡が広がったその次は、再び左右の太ももに両手が這い、膝の裏や足の指まで泡立ちは塗られていった。
 お尻と、アソコ。
 この大切な二つの場所は、まだ泡が塗られていない。
(やっぱり、まとめて洗うつもりなんだ……)
 最も恥ずかしい部分をまとめ、一度に泡を塗りたくられる。
 左右の手の平が、リーナの尻たぶに近づいている。うつ伏せで背後の様子が見えないリーナだが、キアランの動く気配だけでも、十分に察知できていた。
 接近しているキアランの手は、既に尻肌への接触寸前の距離にきていた。
(もう――くる!)
 確信した瞬間だ。

 ぺちゃり、

 水気のあるキアランの両手は、左右の尻たぶにそれぞれ張り付き、泡を塗り広げようと丸みに合わせて這い回った。
(こ、これ――ゾクゾクする――)
 それは良い意味でのゾクゾクだった。
 ジョードに抱かれていた際は、もっと気持ち悪いものに対するゾクっとした鳥肌ばかりであったが、キアランに尻を自由にされているのは、肌全体が興奮しているような、全身の産毛が悦びで逆立つようなゾクゾクが沸いてくる。
「――や、やだってばぁ! キアラン! ちょっとぉ!」
 本気で嫌がるのとは全く違う。仲良しがじゃれあうような嫌がり方だ。
 いや、嫌なのだ。
 嫌なのだけど、キアランにだったら、嫌なことをされても嫌じゃない。むしろ、嫌なことをされて嬉しいようなマゾヒズムが働いて、リーナは嫌だから悦んでいた。
「可愛いよ? リーナ」
 人差し指が尾てい骨の上に置かれ、さーっとラインをなぞるように、その指先は尻の割れ目へと進んでいく。
「ひっ、そこって、お尻の……」
「お尻の穴だね」
 肛門に到達した人差し指は、グニグニと揉むようにして肛門を泡で洗い、放射状の皺を一本一本なぞっている。
「――んんん! は、ず、か、し、い!」
「じゃあ、もっと恥ずかしくしてあげる」
 キアランはグニっと尻を掴み、左右に割れ目を広げることで、リーナの肛門を覗き始めた。
「ちょっとぉ! きあらぁん!」
 耳まで赤くなっているリーナは、嫌よ嫌よと言わんばかりに首を振り、必死に恥ずかしさを堪えている。
「うん。ちゃんと泡がついているから、これでお尻の穴まで清潔だね」
「意地悪すぎよぉ! あとでぶっ飛ばすわよぉ?」
「上等だよ。僕は今まで、ずっとリーナのことだけ考えてきたんだ」
「……私だけ?」
「そうだよ。ジョードなんかがリーナと色々したなんて我慢ならない。今度は僕がリーナを自由にして、一生手放さないようにするんだ」
 そんな言葉を真剣に言われると、胸が苦しいほどに引き締まる。
 キアランのばか。
「……嘘、嬉しい。本当に手放さない?」
「当たり前だよ! もう初夜権は終わったんだ。他の誰かに渡すなんて、もう絶対にありえないんだ!」
 ばか。嬉しい。
 そんな嬉しいことを言うなんて反則だ。これから何をされたって、どんなプレイを要求されたって、リーナは心良く受け入れるしかなくなってしまう。何をされても嬉しくて、何だか自分が淫らに落ちるような気がしてしまう。
「ねえ、そっち向きたい。キアランの顔が見たいよぉ」
「いいよ? アソコを洗ってあげるから、こっちを向いて?」
「……うん」
 仰向けに戻ったリーナの股間に、キアランの手の平が這い始めた。隠し切るようにして、ぴったりと覆い込んだ手の平が、泡を塗り込もうと上下に動く。
(いやぁぁぁぁぁぁぁ…………)
 次に指を一本伸ばし、割れ目に沿う形で上下に動いた。
(アソコもお尻の穴も洗われて、恥ずかしいぃぃ……恥ずかしいよぉ……)
 もうまともに顔なんて見せられない。
 両手で顔を覆い隠すと、キアランは意地悪く「リーナの顔が見たいなぁ?」と言ってくる。キアランにそう言われては、これ以上ないほど真っ赤な顔を隠してはいられなくなり、羞恥に歪んだ涙目の表情を晒すこととなった。
「可愛いな。リーナ」
「褒めないでよぉ!」
「だって、本当に可愛いんだもん」
「ばかぁ!」
 やっぱり、キアラン相手でも恥ずかしいものは恥ずかしい。
 せめてもの反撃として、恨めしそうな目つきで睨んでやる。
「ちゅっ」
 すると、キスをされた。
 ほんの軽いキス一つが、リーナの心を蕩かすには十分だった。
(――ば、ばかぁ! ホントばかぁ! 怒ってやろうと思ったのにぃ!)
 キアランの唇が重なっていると、心がとろりと溶けてしまう。体の芯まで心地良く温まり、まるで天国にでもいるような浮かれた気分にさせられて、もはやキアランには敵わない。
「ねえ、今度は僕のものを洗ってくれる?」
「しょうがないわね。全く、キアランはもぅ……」
 リーナの目の前で、キアランは仁王立ちになる。
 今度はリーナが泡を手に取り、勃起した肉棒を洗い始めた。



 
 
 

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