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 リーナの初夜権を得てから、ジョードは三日目のプレイを迎えていた。
 今回ジョードがやらせているのは、浴室で自分の体を洗わせるというものだ。泡立てた石鹸を手の平で塗り伸ばし、素手で丁寧に洗ってもらう。
「ちょうどいいわね。アンタの薄汚い体を多少は綺麗にできるんだから」
 ジョードが良い気になっていると、リーナは思い出したようにジョードを睨んで、小さな声でそう言った。
 屈服なんてしていない。
 心だけは渡していないと言わんばかりに、リーナはジョードを睨むのだ。
 だが、気分がいい。
 本当なら、剣でも抜いて斬りかかってやりたい怒りが沸いているのに、それでもリーナは言う事を聞いている。相手の意思など関係なく、自分がリーナを支配している実感が沸いて来るから最高だ。
「リーナちゃん。ジョード様のオチンポを綺麗にしないとねぇ?」
「……フンっ」
 気に喰わない表情で鼻を鳴らし、リーナは下へと手を移す。石鹸のぬかるみとたくさんの泡が乗った手は、肉棒の表面でぬるりと滑って心地が良い。偉くなった気分で――いや、実際に貴族生まれと平民の身分差でジョードの方が偉いのだが、とにかく王様気分に浸りながら、リーナの指遣いを感じ取る。

 ヌチュッ、にちゅぅっ、

 泡の弾けるような水音が、ジョードの肉棒から小さく響く。
 リーナはきちんと、亀頭の付け根から竿全体にかけてを丁寧に洗っていき、玉の袋にまで指を這わせて泡を塗る。
 悔しそうな顔をしながら――。
 納付率で文句を言わせないため、本人にとっては死んだ方がマシに違いないことを、リーナは丁寧にやっていた。
「仰向けになってよ。そろそろ感じさせてあげるから」
「感じる? 私が?」
 そんなことはあり得ないと言わんばかりに、乱暴な倒れ方でばったりとマットに倒れ、いかにも不本意そうな顔でジョードの出方を待っている。だらりと横に両手を伸ばし、腕の先で強く拳を握り締め、肩を力ませ震えているのは、本当は逃げ出したいからに違いない。
 いや、リーナの性格なら、ジョードのことをぶっ飛ばしたいという方が正解か。
 とにかく、言いなりになんてなりたくない。
 そんな気持ちが沸き上がり、だけどジョードに手を上げるわけにはいかない悔しさで、体中の筋肉を強張らせ、ただ震えているしかないわけだ。
 ジョードはそれを見るのが好きだった。
 心は決して屈していない。だけど素直に従うしか道がない。
 気の強い女をそういう状況に落とすのが好きなのだ。
「ほら、リーナちゃーん」
 ジョードは胸を揉み始める。
 リーナの乳房は普通よりは大きいが、巨乳というには少し足りない。張りが良く、硬めなので指を押し返そうとする弾力がとても強い。
 最初は顔を顰めるだけだった。
 嫌そうに、気持ち悪そうに、ジョードの手を拒みたい気持ちで腰をくねらす。
 しかし、皮膚に触れるか触れないかのフェザータッチに切り替えて、胸以外にも腹や腰をくすぐった。太ももまで指を這わせ、また胸の表面を撫でてやり、時間をかけてたっぷりと愛撫した。
 やがて変化は訪れた。
「――ひゃん!」
 乳首を指でつまんだ時、リーナは可愛らしい声で鳴いたのだ。
「あれぇ? 感じちゃった?」
「ふざけんな! 私が感じるわけないでしょ! アンタなんかで!」
「じゃあ、この声は何かなぁ?」
「なっ、んぁぁっ! あぁっ!」
 ジョードはこれまで、初夜権を利用して何人もの平民女を抱いてきたのだ。女を感じさせる方法は熟知しており、この三日目にしてリーナの体も快感に馴染んできている。
「ほら、アソコも触ってあげるよ」
 薄っすらと滲んでいた愛液を指に絡め取り、それだけのことでリーナは仰け反る。集中的に刺激を与えると、リーナは快感によって腰をくねらせ、感じているからこそ、ジョードを睨む視線を鋭くしていた。
「なんで! なん――んっ、んぁ! アンタなんかで! アンタなんかでぇぇ!」
 ジョードの手で気持ち良くなっている事実にリーナは喚く。
「リーナちゃんが淫乱だからだよ?」
 ジョードは肉棒を挿入した。根元まで埋め込むことで、リーナの肉壺が自分の肉棒に覆い被さり、根元から先までをまんべんなく締め付けるのは、今にも肉がとろけていくような甘い気持ちよさがある。
「違う! 違う!」
 リーナは背中を大きく逸らし、よがるように髪を振り乱す。
「七日間が終わったら、キアランともするんでしょ? でもねぇ、その時に思うはずだよ。キアランよりも、僕のチンポの方が気持ち良かったって!」
「馬鹿言わないで!」
 腰振りを行うと、リーナは必死になって首を振り、喘ぎながらジョードの言葉を否定する。
「ほら! 昨日より気持ちいいでしょう?」
「ちがっ、違うぅぅ! 感じてなんか! 感じてなんかァァ!」
「言え! ジョード様のオチンポが気持ちいいと言え!」
「嫌っ! 絶対イヤ!」
「言わないと納付率が悪い扱いになるよ!」
「この卑怯者! っはぁっ! 死ねばぁっ! 死ねばいいのにぃっ! クズぅ! クズぅ!」
 リーナは罵倒の言葉を吐きながら、それでも喘いでしまっている。
「早く言ってよ!」
 せかすように腰振りを早め、するとリーナはますます喘ぐ。
「――だっ、だめっ、強い! 強い! あっ、ああん! ひゃっ、ふぁぁぁ!」
 一段階快感が高まって、リーナは慌てたようによがっていた。
「言わないなら、ますます強くしてあげるよ」
 さらにもう一段階、ジョードはピストンのペースを早めた。
「だめぇぇ! 駄目! 駄目! やめっ、やめて! 速いぃぃん!」
「言う?」
「言う! 言うわよ! 言えばいいんでしょ!」
「それじゃあ、聞かせてもらおうかな」
 ジョードはそこで腰を休める。リーナは激しい快感の波から解放され、息切れのように肩で大きく息をする。
「……言うわよ。このクズ」
「さあ、聞かせて?」
 ジョードはリーナを抱き起こし、お互いに抱き締め合うような座った体位。対面座位の状態で身体を密着させ、ジョードは尻へ手をやり揉みしだく。こんな男と抱き合って、しかも膣には肉棒が入ったままのリーナは、そのおぞましさに脂汗をかいていた。
「じょっ、ジョード様……」
 ただ一言の言葉を発するだけが、針にでも刺される苦痛であるかのようにん、リーナは顔を歪めている。
「なんだい? リーナちゃん。言ってごらん?」
「わ、私は……ジョード様のオチンポが……気、気持ち……良いです……」
「今日は何回言い直す?」
「私は! ジョード様のオチンポが気持ちいいです!」
「はーい。合格でちゅよー? よく言えまちたねぇ?」
 ジョードはわざとらしく褒め称え、いい子いい子と可愛がるかのように尻を撫でる。言わされた挙句に怒りを煽られ、屈辱の中に沈んだリーナの顔には、悔し涙がたまっていた。そうして悔し涙をこぼしているあいだにも、リーナのお尻は揉まれ続けていた。
 リーナが自分の体重を預け、ジョードの胸元に顔を埋め込んでいるのは、ただ泣き顔を見せたくないだけの理由に過ぎないのだ。
「…………言わせておいて」
 怒気の篭った小さな声が、ジョードの耳に届いてきた。
「ん?」
「何でもないわよ」
「そう? 僕のことはジョード様って呼んでね」
 そういえば、リーナは今まで散々ジョードをコケにしている。ここいらで自分の立場をもっともっと自覚させ、悔しい思いをさせるのも悪くない。
「どこまで調子に乗ればお気が済むのでしょうか。ジョード様」
「そうだねぇ? 完全に僕のチンポを覚えこんだらかなぁ?」
「馬鹿にしないで。アンタのなんか、一日で記憶から消してやるわ」
「駄目だよ? さっそく僕の呼び方を間違えてるよ?」
「ふん。ジョード様。死ね」
 この腕の中で、あれだけ喘がせたにも関わらず、リーナの心だけは折れていない。プライドの高い女を好きに扱うことは、ジョードにとって楽しくてこの上ないことだった。
「リーナちゃんの初めての相手は?」
「知らないわよ。醜いオークだった気がするわね。ジョード様」
「リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様」
 ジョードはわざと、夫の名前を耳へ囁く。
「――くっ!」
 リーナはぴくんと、悔しそうに震えていた。
「復唱するんだ。リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様」
「リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様」
「もう一回」
「リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様――こんな下らないことを何回させるの?」
「うん。あと五十回は復唱してもらおうかな? 僕が回数を数えるから」
「……正気? 喉が嗄れる上に精神が腐るわ。喋る私の口が腐敗するわよ!」
「駄目だ。言うんだ」
 後頭部の髪を引っ張り、リーナの顔を自分へ向かせる。
「……このクズ」
 第一声はそれだった。
「うへへっ、復唱開始だぁ」
 リーナの顔を両手で押さえ、自分の顔を見つめさせた状態で、台詞の強要を開始した。
 まず、一回。
「リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様」
「一回ごとに腰を弾ませ、ワンピストンするんだ。僕の顔から目を逸らしてもいけないよ」
「ジョード様は趣味が悪いわね。史上最低のゲスですわね」
 苛立ちの篭った声を上げてから、リーナは尻を上まで浮かせる。亀頭が膣から抜けそうになるギリギリの高さから、腰をすとんと下へ落とし、ワンピストンを完了させた。
「さあ、二回目だ」
「リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様」
 再び腰が持ち上がり、密着したリーナの乳房が、ジョードの胸板でスライドする。泡が活性油のようになり、密着感がありながらも、滑りはとても良かった。
「リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様」
 三回目のピストン。
「リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様」
 四回目のピストン。
「リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様」
 この台詞を復唱させ、一度言うごとに腰のピストンを要求するのは、ジョードと過ごした七日間を心の奥底にまで刻んでやるためだ。初めてがジョードだと、そう口にするたびに肉棒を感じ取るわけだから、もはや永遠に忘れられなくなるだろう。
 目を合わせての復唱で、ジョードの顔まで脳裏に深く焼きつくはずだ。
「これでリーナちゃんは死ぬまで僕のチンポを忘れないねぇ?」
「絶対に忘れてやるわよ。馬鹿にしないでっ」
「ほら、台詞」
「チッ、リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様ッ!」
 腰が持ち上がり、じゅぷんと落ちる。
 この愉快な台詞を聞きながら、ジョードは台詞一回ごとの腰の上下を楽しんだ。初めは苛立ちを込め、自分は怒っているのだと言わんばかりの荒い声で復唱をしていたが、だんだんと流れ作業の淡白な口調となり、最後まで維持されていたのは、ジョードを睨もうとする眼差しだけであった。
「リーナちゃんの初めての相手はジョード様。キアランではなくジョード様」
 これが、五十回目の復唱。
 それから、ヌルゥゥゥと尻が持ち上がり、じゅっぷんと落とされるワンピストン。
「はーい。よく出来ましたねぇ? いい子いい子」
 ジョードはわざとらしく褒め称え、頭をポンポン叩いて撫でてやる。
「だけど魂だけはキアラン様。心はジョード様のものにはならない」
「へぇ?」
 これで折れないらしい。
 負けてたまるかと言わんばかりの強い視線で、リーナは勝手な自分の台詞を五十一回目に追加してきた。
 そして、リーナはジョードの背中へ腕を回して、ジョードの背中をポンと叩く。

 ――殺すフリだ。

 握り拳の小指側で叩いてきたのは、もしもリーナが短剣でも持っていたら、ジョードの背中に突き刺さっていただろう。
 もちろん、実際にできる立場ではないのだが。
「キアランがジョード様のものなんて忘れさせてくれる。初夜権を利用しなくちゃ、ロクに女に言い寄れない。権力を盾にする方法しかしらないジョードのものと、私にきちんと告白してくれたキアランとでは、まるで格が違うのよ?」
 余裕ぶった口調。
 しかし、その表情を見る限り、絶対に負けたくない意地っ張りな性格と、ジョードのやり方に対する反骨心が、ありありと浮き上がっていた。

 やれやれ、次はシルベットって決めたんだけど――。
 ま、リーナちゃんもあと四日は好きにできるし、調教しないと損だよね。
 さーて、忙しくなるぞぉ?

 この人生。
 ヤりたいことの多いジョードは、活き活きとした表情でリーナを見つめ返していた。



 
 
 

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