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 「やめろデュックゥウ! 離せぇえ!」
 セリアンヌは喉が張り裂けるほどの怒声を上げ、じたばたもがく。剣術や足捌きなど、細かい技量は優れていても、腕力は女に過ぎない。男の力で腕を掴まれては抵抗しても抵抗しきれず、あっという間に両腕とも腰の後ろに組まされてしまった。
 それだけではない。
 いつの間に用意していたのか、デュックは皮製の紐でセリアンヌの腕を縛り付け、両腕とも腰の後ろへ封じられた。固い結び目は力だけでは解きようがなく、刃物で切断しない限りはどうにもならない。
 もはや乳房は隠せない。全ての観客に見られ放題だ。
「おっぱいプルプルじゃないか!」
「すげー!」
「でっかいじゃん! 巨乳じゃん!」
 観客の目という目がセリアンヌの乳房へ集中し、視線に焼かれ、爛れるような熱い痺れが皮膚の内側を走り回る。乳首はみるみるうちに硬く突起し、大勢の人間の前で惨めを晒した屈辱感が胸に広がる。息が苦しいほどの羞恥に押し潰され、真っ赤に染まり上がったセリアンヌの顔は触れれば熱いほどになっていた。
「己! デュック!」
 セリアンヌは怒りと恥ずかしさで怒鳴り上げる。抵抗を諦めずに、何とか腕の拘束を解こうともがいてみたり、デュックの足を踏みつけたり、全力で身じろぎをして逃げようと試みる。そのことごとくが通用せず、むしろ抵抗することで体が揺れて、豊満な乳房がプルプル弾む有様が披露されるばかりである。
「揺れてる揺れてる!」
「プルンプルンだ!」
 揺れる乳房に喜ぶ男達。
 裸ばかりか抗う姿さえも楽しまれ、どうしようもない気持ちに苛まれる。ならば無抵抗の人形にでもなった方がデュックをつまらない気持ちにさせてやれると思いつくが、それはそれで気持ち悪い愛撫を受け入れることになる。やはり脱出は諦めきれず、セリアンヌはもがくことをやめなかった。
「せっかくだし、揉み揉みしてみようかねぇ?」
 デュックは背後から鷲掴みに、セリアンヌの胸を揉み始めた。踊るような指の動きが乳房の肉に沈んでいき、弾力がその沈んだ指を押し返す。丁寧にじっくり揉みほぐし、セリアンヌはますます抵抗を強めてきた。
「やめろ! 貴様ァ! 今すぐその汚い手を離せ!」
 暴れるようにして体を揺すり、足で蹴りつけ、なんとしても逃れてみせようと努力する。だが、やはり通用しない。足を踏もうとしてもかわされたり、そもそも鎧の靴があるので効かなかったり、暴れる体も力任せに捕らえていれば逃がさずに済む。デュックにとって、セリアンヌの抵抗など胸が多少揉みにくくて困る程度のものだった。
 デュックは思うままに強弱をつけて揉み、乳の柔らかさを堪能する。
「みんな見てるッスよ? セリアンヌちゃんのおっぱいが揉まれているところを」
「黙れ下衆めが! 騎士として恥ずかしいとは思わないのか!」
「恥ずかしいのはアンタでしょうが」
 指先で乳首を摘んで力を出し入れし、軽くつねる。引っ張ったり、押し込んだり、弾いてみたりと遊び始め、うなじに鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。セリアンヌは全身を左右に揺らすようにして暴れ、抵抗しているが、デュックはものともしていない。むしろ、暴れても暴れても、結局は胸を揉まれ続ける残念な有様が観衆を楽しませるばかりだった。
「己、己ぇ!」
 抵抗が通じない悔しさにセリアンヌは強く喚いた。とにかく逃げようと努力して、いいようになどされまいともがいているのに、それ以上にデュックの押さえ込みが上手すぎる。両腕を縛られているのもそうだが、ただ乳を揉むのでなく、身体を挟む両腕でサンドウィッチ状にセリアンヌを捕らえ、抵抗を封じながら乳揉みに興じている。
 何も出来ずに揉まれ続ける。
「よくも破廉恥な真似を! ここは闘技場だぞ! わかっているのか!」
 目に涙を浮かべたいほどの悔しさに打ちひしがれ、それでもセリアンヌは叫んでいた。
 自分の胸に沈んでくる指の感触が汚らわしい。大切な部分をおもちゃにされ、楽しそうに揉まれる屈辱は途方もない。
 さらにセリアンヌを悔しくさせるのは性感だった。デュックには技巧がある。どこぞで何人もの女を抱いてか、彼にとってセリアンヌに快感を与えることなど造作もなく、乳房全体には既に甘い痺れが充満している。気持ち良くさせられている。これがまた、自分の体をデュックの思い通りにされているようで気に入らない。
「はいはい、わかってやってんだよ」
 デュックはニヤニヤと笑いを浮かべ、セリアンヌを地面に引き倒す。肩膝を立て、その膝の上にセリアンヌの腹を乗せるようにして彼女を押さえ込む。体勢のために無防備に持ち上がったTバックの尻に手を這わせ、揉みしだいた。
「……くっ、何故こんな真似を」
 悔しさのあまり、セリアンヌの声は震えていた。大観衆の見守る中、乳房ばかりか尻まで好きにされているのだ。もちろん逃れようとしてはいるが、動こうとすれば背中を強く押さえつけられ、どうあがいても逃げられない。
 しかも、やはり気持ちがいい。体の中に眠る性感を思い通りに引き出され、まさに肉体を好きなように扱われている状況が惨めでならない。自分という存在を支配し侵略されるような気分がして、快楽に対する拒否感が大きく膨らんでいた。
「これも勝負の結果ッスよ。女の身じゃあ、敵だってこういう破廉恥なことを考えちまうもんだろうよ」
 デュックはむっちりとした柔肌に手の平を密着させ、滑らかさを確認するかのようにゆったり撫でる。まんべんなく形を確かめ、強弱をつけて揉むように触っていく。そうして片方の尻たぶを味わい尽くすともう片方へ手を移し、無遠慮に揉みしだいだ。
「だが、我々は同じ騎士団。仲間同士なら勝敗が見えた時点で戦いは終わらせるのが規則であり、礼儀というものだろう!」
 これだけの屈辱を味わっても、セリアンヌはその破廉恥さを許すまいと怒りの気持ちを表に出し、あらぬ行為を叱責した。既に尻は完全に撫で尽くされ、Tバックの布部分を除けば全ての肌面積に触れられているが、こんなことでは負けまいとこことを強く保っている。
「俺もさ、頼まれちゃったんだよねー」
「なんだと?」
「セリアンヌちゃんのとこに俺を躾ける話が入ったように、俺んとこにはアンタを辱めてやろうなんて話が舞い込んじゃってさー。俺、ソッコーで引き受けたわけよ」
「な、何!? そんな馬鹿な……」
 セリアンヌは驚愕した。
 まさか、王国がじきじきにセリアンヌを売り物とし、美貌の騎士が辱められる無残な姿を国民に捧げようとでもいうのだろうか。いや、国そのものとは限らない。そういう下衆な一派が勝手な行動を起こしただけとも考えられるが、とにかくセリアンヌを貶めたいのはデュック一人だけではない。今のこの展開を望んだ王国職員が他にいるのだ。
「ま、そういうわけッスよ。なんで、まあスパンキングショーとでもいってみようか」
「や、やめろ! ふざけた真似は許さんぞ!」
 親が幼い子供にするようなお仕置きを数百人の観客の前でされようというのだ。それでなくとも屈辱的な行為を人前で受けるなど、想像もしたくなかったが――。

 ペチン!

 無情にも尻肉は打ち鳴らされ、柔肉はプルンと弾むように振動した。
「貴様ァ……このぉ!」
 ペチン! ペチン! ペチン!
 打撃のたびにプルップルッと弾むお尻は、ほんのりとした薄桃色に変色する。白かった肌が赤みを帯びていく様は壮観で、観客の目を大いに楽しませた。
「うっひょぉおおお!」
「いいじゃんいいじゃん!」
 国民が喜んでいる。こんな自分の無様な姿を見て興奮し、誰も彼もが沸き立っている。
 ペチン! ペチン! ペチン!
 尻の痛みなど問題ではない。そもそも本気で痛めつける気があるとするなら、仮にも男性騎士であるデュックの腕力は並みの人間より遥かに上だ。とっくに青アザが出来ていてもおかしくない。加減された打撃の痛み自体は取るに足らないものであった。
 ペチン! ペチン! ペチン! ペチン! ペチン!
 お尻という場所が叩かれる。
 ただそれだけの事で心の中が打ちのめされ、どんどん惨めになっていく。下手な怪我よりよほど辛い。己の尊厳が取り上げられ、人権のない動物か何かにでも成り下がったような気持ちが沸き、悔しさのあまりに泣けてくる。
「セリアンヌのお尻ぃいい!」
「もっとやれ! もっとやれ!」
「ぶっ叩けー!」
 自分が守りたいと思っていたはずの国民が、こんな姿を見て喜んでいる。この無残な事実も嫌だった。
 ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ……。
 尻叩きのリズムが変わった。先ほどまでより遥かに軽く、しかしずっと小刻みに打ち鳴らし、自分の尻肉がプルプル震えているのがよくわかる。それも片方だけでなく、両方の尻たぶを左右交互に叩いてくる。
「いいねぇ、楽しいねぇ!」
 デュックは打楽器を演奏するような気持ちでセリアンヌの尻を叩き、リズムを取って左右をペチペチと鳴らしている。それもさぞ楽しげに、愉快な気分に浸りながら、ご機嫌な顔をして叩いているのだ。
「どこまで! どこまで辱めれば気が済むのだ!」
「さあねぇ?」
 ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ……。
 尻肉が振動するだけの一撃ずつが、確実にセリアンヌの精神を貶める。こんなに軽い威力だというのに、一打ごとに人間としての格を下げられ、みるみるうちに低俗な地位まで転げ落ちていくような情けのない気持ちになってくる。
 ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ……。
 抵抗はする。しばらくは大人しくしてみたが、そろそろ隙が出来るだろうと読み、デュックの膝の上から身体を転げ落とす――ようにしてこの状況からの脱出を試みた。だが、やはり背中を押さえ込まれる。
「駄目駄目、逃げない逃げない」
 ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ……。
「よくもくこのセリアンヌを……」
 セリアンヌは恨めしい気持ちを抱いた。これまで国のために忠義を尽くし、魔物を狩って国民の平和と安全を保障し続け、そして闘技場での任についていたこの自分がだ。決して価値の低い人間などではなく、むしろ生真面目にやってきた自分がこんな目に遭っている。
 自分なりに頑張って生きたつもりがこの有様だ。
 ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ……。
 本当に泣けてくる。
「んじゃあ、ずーっと同じことしててもしょうがないしねぇ。あと五発くらいで終わらせてやろうッスかねぇ?」
 デュックは観客への呼びかけを始める。
「お集まりみなさーん! こいつは生意気にも俺に説教ばかり垂れてきましてねぇ、毎日のように鬱陶しかったんッスよ!」
 大きな声で会場に向かって話しかけ、それに対する反応がちらほら返る。
「何ィ? 説教好きか」
「面倒な女だなァ」
 セリアンヌの耳に聞こえたのはそんなところだ。
「そこで! 今回はこうしてお仕置きをしているわけッスけど、まだまだ色んなお仕置きをやんなきゃいかん。スパンキングを終わる前に、是非とも皆さんと一緒に最後の五発を数えていきたいと思うんですよ!」
 ――いぇええええええい!
 ほぼ全ての観客が、同時に同じ反応で沸き立った。
「ではいきます! まず一発目! はい!」
「いーち!」
 観衆によるカウント。
 そして。
 ペチン!
 お尻を強く叩かれた。
「二発目!」
「にーい!」
 ペチン!
 デュックは観客と一体になり、観客もまた一緒になってスパンキングを大いに楽しみ、セリアンヌの心はそれこそどん底へ沈んでいく。
「三発目!」
「さーん!」
 ペチン!
 セリアンヌはここに来ても抵抗を試みたが、やはり抑え込まれて終わってしまう。背中に乗せられた手の平と、立てた膝とで挟まれ脱出を許されず、身じろきをする程度の動きしか取らせてももらえない。
「四発目!」
「よーん!」
 ペチン!
 セリアンヌは歯軋りを強くする。折れそうなほどまでに強く食いしばり、拳も爪が食い込むほどに握り締める。たったそれだけの悔しさからなる動作こそが、セリアンヌの心を唯一支えている。
「ラストォオオ!」
 最後の最後で、デュックは今までよりも大きく叫ぶ。
「――ゴォォォォォオオオォォオオオオオオ!」
 観客も一斉に席を立ち、身を乗り出しながら最後の一声に全力を尽くす。

 ペチン!

 最後の一撃が最も痛み、セリアンヌのお尻には赤い手形が貼りつくまでになっていた。じりじりとした腫れっぽい痛みが、まるでデュックの手で刻まれた奴隷以下の勲章のように思えて絶望的なまでの不快感に襲われる。
 もう死にたい、ここから消えたい。
 一瞬でもそう思ってしまうほど、今までのスパンキングでセリアンヌの心は削られ、精神的に消耗していた。




 
 
 

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