見られた! 見られた!
キャラクターもののショーツを見られたショックで、逃げるように家に駆け込んだ瑞葉は、机で頭を抱えていた。
「あんな! あんな奴に見られて――!」
悪夢だ。
キモオタにそれを見られる以上の悪夢はない。
「いいじゃない! 人が何を穿いたって!」
確かに高尚なものが好きだ。
美術芸術純文学。
だが、それだけというわけではない。綿密なスケジュールを組み、それを達成することが喜びだとはいっても、頑張るばかりではストレスになる。自分へのご褒美がなければやる気なんて維持できない。
美術館へ行くのも、文学作品を読むのも、瑞葉が純粋にそういう趣味の持ち主だから、本人の中では漫画アニメと同等の娯楽となっている。しかし、やはり普通に漫画やアニメを嗜む趣味もある。
瑞葉の本棚に並ぶのは、文学作品から一般小説。ライトノベルに少年漫画や少女漫画。様々なものが並ぶ以外にも、壁を見れば特撮ヒーローのポスターが貼られていた。
そう、案外色々チェックしている。多趣味な方だ。
本当の本当に真面目ばかりの堅物なら、それらの余興は無駄な時間として切り捨てる。ゲームなどしないし漫画も読まない。そんなことでは気が滅入る。無駄であって無駄ではない。むしろ無駄な時間であることにこそ意義があるといってもいい。
日頃のスケジュールをきつくするから、いざ自分をそこから解放して、時間を無駄に使う瞬間が心地いい。毎日をぐうたらに過ごしていては、解放感による快感は得られない。
つまり計画的に遊びを満喫する瑞葉は、それまでスケジュールで自分を締め付けている反動でか、趣味への没入も非常に深い。一度好きになったアニメの公式ガイドブックを購入する。好きな作者の新作は何でも買う。気になる美術はチェックする。
下着についても、少しばかり反動が現れている。
十五歳にもなって?
いいではないか。普段は真面目なのだから――。
「ああもう! 最悪! 最悪! 最悪!」
瑞葉は壁に頭を打ちつける。
「……本当にもう! なんて思われたかしら」
全ての趣味をオープンにしているわけではない。あまり友達らしい友達はなく、多少はお喋りできる程度の仲がいた程度の学校生活なので、アニメだの特撮だの変身ヒロインの視聴までは誰にも打ち明ける機会がなかった。
表向きには美術や文学趣味ばかりを挙げている。事実なのだから問題ない。
しかし、桜太は瑞葉をどう思ったか。
「悪かったわね! ガキみたいなパンツで!」
どうせ、あの変態のことだ。どんなパンツでも興奮しかねない。となると今頃は瑞葉のパンツを思い出し、シコシコと何かなさっているかもしれない。
想像して吐き気がした。
「だめ、気持ち悪い……最悪……」
最悪、最悪、最悪。
忘れよう。
なんとか今日のことは忘れて、残りのスケジュールを消化するのだ。
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