翌朝、信乃歩はフェラチオを強要された。
 学校で昨日の男子の一人に呼び出され、誰もいない男子トイレに連れ込まれ、個室で王様気取りで玉座にでも座すような、偉そうに足を開いた座り方をする彼の股座に、信乃歩はひざまずく事となった。
 彼は田中というらしい。三年生で、志帆と同じクラスという話だ。
 他の男子もきっと志帆によって集められ、あの場にあらかじめ集合していたのだろう。
 その時の写真で脅されて、それでなくとも気の弱い信乃歩は泣く泣く従い、怒張する肉棒を目の前にしていた。
 隆々とそびえる田中のソレは太く長く、こんなものが自分の中を貫いていたなど信じられない。嫌だの気持ち悪いだのといった感情以前に、これが自分の小さな口に入りきるのだろうか。
 出来る事なら、尿を排泄するような器官を口に入れたくはない。どうにか逃げ出せればいいのにと、信乃歩の頭はそればかりだ。
「おい、さっさとしろ」
 その一言にびくっとして、信乃歩はあっけなく屈してしまう。
 恐る恐る手を伸ばして根元を握ると、想像以上の肉の硬さと熱さが手に伝わってくる。
 剥き出しの亀頭に唇を触れさせ、その亀頭半分を口に含みながら口内で舌を伸ばす。葉が当たっては痛いに違いないだろうと、間違っても噛んでしまわないように気を使った。
 これでやり方は合っているのだろうかと、上目遣いで田中の顔色を伺いつつ、舌先で鈴口をペロペロと舐めた。
 ――良かった……。
 田中が実に満足そうにしているのがわかって、信乃歩は正直なところ安心した。もしやり方が間違っていたり、下手だと言われて怒らせることになれば、もっと酷いことになるのではと内心恐怖していた。
 それが思った以上に満足してもらえて、信乃歩はひとまずの安心を得た。
 しかし、偉そうに背筋を伸ばして自分を見下ろす相手に、よりにもよって性器をしゃぶらされるなど、まるで自分が奴隷にでもなったようで惨めでもあった。
 ――そっか。私に立場をわからせるためにやってるんだ。
 初めから自己評価の低い信乃歩にとって、こんな立場こそ自分にはお似合いのようにも思えていた。どうせ汚れてしまった身だ。また挿入されるよりはよっぽどマシな扱いだろう。
「ほら、もっとやる気を出すんだ」
「ふぁい」
 信乃歩はより舌の運動量を増やし、鈴口を懸命になめずる。しだいに先端から分泌液が出てきたのか。舌に苦味ある味が乗っかるようになってきた。
「さあ、頭を全てしゃぶるんだ」
 亀頭を口内に包み込むと、それだけでアゴを大きく開けていなくてはならなくなった。やや息苦しい気分になり、頬骨に負担を感じる。亀頭を丸々口に含んだことでの口の中身の狭苦しさに、今にも歯を当ててしまわないかが心配で堪らない。そして、痛みを与えて怒られやしないかが怖かった。
 唇を亀頭の根元にフィットさせ、舌でまんべんなく研磨する。なめずりまわしているうちに、亀頭の表面がいかにプニっとしているのかが舌先の感触でわかった。しかし硬い肉の芯がしっかりと通っており、どれだけ頑丈なのだろうと考えそうになるほどコチコチだ。
 ――だ、大丈夫。なのかなぁ?
 二度も指示を出されたので、気になって田中の顔を見上げてみる。得に怒った様子ということはなく、やはり悦に浸っていた。
 今は良くても、そのうち文句を言われないだろうか。
 信乃歩は舌まわしに精を出し、先走り汁の味を感じながら懸命に亀頭を磨く。鈴口から伸びた裏筋の線へ舌を這わせ、ベロリと亀頭を潰すかのように力を加える。舌のざらつきある面を強く押し当てなめずりまわした。
 やっているうちにコツに気づいた。適度に首周りの筋肉を使って微妙に頭を動かせば、きちんと舐めやすくなる。
 こんな技なんかを体得するなんて、まるで自分がいやらしい存在に堕ちているようだ。
「いいぞ? さらに奥まで咥えてみろ」
 嫌なことをしているのに、褒められると安心するのが複雑だった。
 信乃歩はとにかく歯に気をつけながら頭を前進させ、唇を滑らせながら、自分の顔を陰茎の根元へちかづていていく。口内領土が犯されていき、頬の内肉に肉茎の太味を感じる。限界まで咥えると喉奥で食道の入り口が塞がれそうで、そうなる手前で信乃歩は田中の顔色を伺う。
 ここまでで許して欲しい。許しを請うように信乃歩は彼を見上げていた。
「限界か?」
「ふぁ、ふぁい」
 まさに舌の根元あたりに亀頭が来ている。怒張したそれに今にも喉を塞がれそうで、唇のほんのわずかな隙間からしか息が吸えない。息を保つためにアゴを限界まで開いているのがつらい状態だった。
 到底全ては咥えきれない。勃ちきった陰茎の長さは信乃歩の口の広さを完全に超えており、手で根元を握ったその部分までが信乃歩の限度だ。約半分を口に含めているか、いないか。といったところだった。
「まあいい。頭を前後させるんだ」
 根元まで咥えられずに、不満を与えてしまっただろうか。
「ぁい……」
 信乃歩は首を後ろに引いて後退する。まるでナメクジが這うかのように信乃歩の唇が茎の皮を這い、唾液の足跡を残していく。その粘液が活性油となったおかげか、口をスムーズに動かすことができた。
 そして亀頭の先端にまで後退し、ペニスとキスでもしているような図になりながら、これで大丈夫なのかと顔色を見る。
「吸うんだ」
「チュッ、チュゥウウウ……」
 唾液の水音を立てて先端に吸いつき、信乃歩は先走り汁を吸引する。苦い味を吸い取るなど嫌だったが、まさか目の前で吐き出すわけにもいかず、それは飲み込むしか道がない。不快な味が体内に入り込み、それが自分の身体で消化され吸収されるのかと思うと、心から泣けてきそうだった。
 ――私もう、本当にただの奴隷だ……。
 こんなことになってしまって、信乃歩は他でもない自分自身を呪った。メールで呼び出された時点で理由をつけて断る勇気があれば、男の群れを見た時点で全力で逃げ出すだけの判断力があれば、どこかで今の事態を回避できていたかもしれない。
 それももう、今頃になって考えても仕方のないことだ。
「いいぞ? 吸ってから咥えるんだ。そうやって頭を動かせ」
 田中のいい気になった命令口調で信乃歩は動く。
 頭を再び前進させる時に、やはり唾液で滑りが良くなっていた。スライドする唇がねっとりと足跡を残し、皮の表面に唾液を絡めていく。舌と陰茎の下面も摩擦して、まんべんなく唾液をまぶしていった。
「茎の周りも、もうちょっと舐めろ」
 ――茎の周り……。
 限界まで咥えていると、口が狭くて下面しか舐められない。ある程度下面を舌で撫でてから後退した。
 ――こう、なのかなぁ……。
 口内の空間に余裕が出来れば、深めに咥えたままでも少しは茎の上面を舐められる。舌を根元から回転させるようにして、舐めまわしながら頭を引いた。
「チュゥゥゥッ」
 亀頭とキスし、汁を吸い取る。
 舌を回しながらの前進でペニスを飲み込み、田中を見上げる。得に何を言うでもなく快感に浸っている顔だったので、ひとまずこのまま続けることにした。
「チュウゥゥ……」
 亀頭と三回目のキスをして、同じ要領を繰り返す。
 信乃歩は言われたまま、指示されたままの動作に従事していた。満足させなくては怒られるかもしれない不安はあるが、だからといって余計な応用をして注意されたらと思うと指示通りの行動までしか信乃歩には取れない。
 もっとも、こんなことで応用を利かせたいとも思わないわけだが。
 何度目かもわからないキスの末に、田中に言われる事となった。
「同じことばっかしてないで、いろんなやり方を織り交ぜてみろ」
「いろんなって……。えーっと……」
 いきなりそう言われても、例えばどういう舐め方があるのかなど信乃歩には思いつかない。思いついたとしても、それが正解だと思える自信など到底でない。何か答えを出すでもなく、解答を煽るでもなく、信乃歩はただひたすらにおろおろしてしまった。
「舌を伸ばして先端をペロペロ」
「は、はい」
 指示どおりに舌先を尽き伸ばし、鈴口を舐めずさる。
「亀頭の生え根を攻める」
「はい、ええとその……咥えて、ですか?」
「どっちでも――いや、両方だ」
「はい」
 握っていた手で茎を持ち上げ、恐る恐る亀頭の付け根を攻めてみる。向きを変えて横側を舐め、そして咥え込んでから舌をまわす。先端で付け根をこするように意識して頭を動かし、田中の様子を見上げた。
 これでいいのだろうか。
「そうそう。色々と技を変えながらやってもらわないとな」
「んっ……クチュ、クチュ」
 先端を吸い、茎を舐め、亀頭をあらゆる角度から舌攻めする。咥え込んで頭を前後しながら、満足されて解放してもらえるのはいつだろうと、信乃歩はひたすら待ち続ける。
「出すぞ」
「んぐっ!」
 頭を押さえつけられ、そして――

 ドクン! ドクッ、ビュルルッ!

 口内に白濁を放出され、その味が舌一杯に広がっていく。喉をつたって体内へ流れ込み、胃や食道さえも犯された気分になりながら、信乃歩はそれを飲み込んだ。
「ごくん!」
 ああ、私って本当に……。
 自分がどんな存在に成り下がったのかを、信乃歩は痛いほどに実感した。 


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