貴澄夏生が敗北すれば、子供を傷つけるという条件だった。
「さーって、お約束の時間だ。恨むなら負けたエロ女を恨むんだな」
ナイフを持つ男は、その刃を振り上げる。
「やめてええ! お願い!」
なつきは必死に懇願した。
「おやあ? 負けたお前が悪いんだぜ?」
と、主犯格。
「それでもやめて! そんな子供を切ることないでしょ!」
「そうだな。だったら、代わりにお前が罰ゲームを受けるのはどうだ?」
「ば、罰ゲーム?」
「そうだ。これからお前が負けるたび、何か罰ゲームを考えよう。もし罰ゲームを拒めば、今度こそ子供を傷つける」
「なによ。その罰ゲームって……」
「さて、こうしよう。まず最初の罰ゲームは、ここで全裸になることだ」
そう言い出すなり、主犯格はパチンと指を鳴らした。
すると。
周囲の男は一斉に準備を始める。機材を巡って小走りで駆け回り、三脚台を用意してはビデオカメラをセットする。自分用のカメラを構え始める。ハンドカメラに電源を入れ、レンズを向ける。
なつきのことをぐるりと囲む男達は、全員がカメラか何かを手にしていた。三脚台で固定してある高級なビデオカメラも五台はある。撮られるだけでも恥ずかしいのに、四方八方の角度から、あらゆるアングルでの記録が残るのだ。
拡大機能を勘定に加えれば、よりたくさんのカットで脱衣を撮れるだろう。
「そんな……!」
衆人環視の中で服を脱げなど、それだけでも決意がいる。
それが、この環境だ。
「おっと? 嫌だってか?」
ナイフ持ちの男が、ニヤニヤと刃をちらつかせた。
「ぬ、脱ぐわ……」
「おお? 聞こえねーなぁ?」
「脱ぐわよ!」
「本人からの一大宣言! みなさーん! 脱いで下さるそうですよー!」
その瞬間、盛大な拍手が広がった。
「貴澄夏生! ストリップショーのはじまりはじまりー!」
ニヤついた全ての視線が、周囲全ての方向から、なつきの肢体に絡みつく。
――こんなところで脱ぐなんて。
――誰にも見せたことないのに……。
なつきの制服は、既に先ほどまでの対戦で、ワイシャツのボタンを外されている。さりげなくブラジャーは直していたが、せっかく隠したものを直後にもう一度晒す羽目になる。
まず、上から脱ぐことにした。
見渡す限り、カメラカメラカメラ。視線視線視線。一体いくつあるのか、考えたくもない数のレンズと、男の視線が、中心に立つなつきに対して集中している。
「うぅ……」
想像以上に恥ずかしくて、痙攣でもないのに手が震えた。強張って仕方のない手で、自分自身のワイシャツを掴んで、腕から袖を抜いていく。
片方ずつ抜き終わり、ワイシャツを地面に落とせば、上半身はブラジャーのみだ。
「おおおおお!」
「生脱ぎ生脱ぎぃ!」
煽る声が、より羞恥を掻き立てる。
殺到してくる視線とレンズが、視界に入ることさえ辛くなり、なつきは強く強く目を瞑る。顔面の筋肉がまんべんなく強張って、真っ赤に染まりあがっている表情は、これ以上ないほどに歪んでいた。
――見せたくない。脱ぎたくないよ……。
両腕を背中にやり、指先でホックを探る。
手間取りつつ、パチリと外すと、乳房からカップが緩んで、あとはもう肩紐を下げるだけとなる。
涙が出た。
恥ずかしいという理由だけで、恥辱一つで目尻に涙が溜まるなど、生まれて初めての体験だ。
――悔しいよ。こんなの!
まるで寒さに震えているような手で、とうとうブラジャーを手放した。
生の乳房が、今一度衆人環視に晒された。
「おおっ、おっぱい!」
「いい形してんじゃねえか!」
「乳首もビンビンになっちゃってよぉ」
「見られまくって興奮してるってか?」
四方八方から、嫌な言葉が飛んでくる。耳も塞ぎたい。しかし、そんなことをしてしゃがみ込めば、子供に切りつけると脅しかけ、脅迫してくるのは目に見えていた。
だから、全てのことに耐えながら、なつきはスカートの留め金を外す。
スカートを脱いだ。
腰の部分を緩めたスカートは、はらりと落ちて、足元に輪を成していた。
「おおっ」
「いい感じに映ったぜ? 今の!」
「やっべえ、俺、シャッターのタイミングミスったわ」
「こんだけいるんだ。他のいい写真と交換してもらえばいいだろ」
残り、パンツ一枚。
腰の両側に指を引っ掛け、最後の一枚を下げていく。
――こんなのって!
よりぎゅっと、極限まで、まぶたに力を加えて目を閉ざし、視界を暗闇で覆い尽くす。そうしなければ、とても耐え切れない。
ウェストのゴムが下がるにつれ、腰がくの字に折れる姿勢に合わせて尻が出る。尻の割れ目のラインが長さを伸ばしきり、下半身の大事な部分は丸ごと外気に晒される。白いパンツは足を通り、膝を通過して、最後は足首の外へ抜け出ていった。
これでなつきは全裸となった。
すぐに両腕で、胸とアソコを覆い隠して、少しでも大事な部分を守りたいばかりにしゃがみ込んだ。
「脱いだわよ! これでその子は解放して!」
なつきは必死の思いで叫んでいた。
「ああ、もちろんゲームが終わったら解放するよ。お前を辱めるためのゲームがな」
主犯格の言葉は非常であった。
そればかりではない。
なつきをイカせて、敗北に追い込んだその人が、しゃがみ込むなつきに迫ったかと思えば、脱ぎたてのパンツを拾い上げた。
「俺の勝利だ!」
討ち取った首を掲げて誇示するように、その男は白パンツを掲げていた。
そうして、勝利を誇って立つ男と、全裸でしゃがみ込んでいる女のツーショットだ。まさに勝者と敗者の絵でしかない。そんな写真さえ、映像さえ、記録として収まり続けている。
「アソコを慰めてやったから、この女の愛液がついている。このパンツを俺が貰う!」
景品は自分のものだと言い張って、男は自分のポケットにパンツを入れた。
「あーあ、帰りはノーパンだな」
「一生の思い出じゃねーか」
「羨ましい。こんなことなら、俺も勝ちたかったぜ」
なつきは十分に思い知った。負け犬の気分を味わった。屈辱を味わった。
それでも、非情にもゲームは続く。
「ほーら、いつまでそうしているつもりだ? 次の勝負があるんだぜ?」
「そんな……」
「しゃがんだり、隠したりしていたら、勝てる勝負も勝てないよなぁ? まあ、勝負を捨てるんなら話は別だが、勝ちたければ頑張ることだな」
次の対戦相手らしいモヒカンが、なつきの前で構えを取る。
「こんな……こんな戦い……」
なつきはよろよろと立ち上がった。
こんな戦いはもう嫌だ。
だけど、そこに人質がいる。
「よぉ、俺が勝った場合の罰ゲームを決めておこうか。フェラチオだ」
「ふぇ、フェラって……」
「もちろん拒んだら子供が死ぬ。だが、勝てば罰ゲームは回避できるんだ。咥えんのも、人質が傷つくのも、どっちも嫌だってんなら、俺を倒してみることだな」
十七戦目。
なつきの意志に関わらず、その勝負は開始した。
**
モヒカンの放つ打撃は緩い。
「おら、おらぁ!」
当たるわけもない適当なジョブから、なつきはステップで逃げにまわった。
大事な部分は隠している。
胸も、アソコも、見せまいとガードしている。
両腕がそれでは、攻撃はおろか守りもできず、見せるのが嫌なら避け続けているしかない。
いや、なつきは反撃した。
「……くっ!」
蹴った。中段蹴りだ。
「おおっと」
だが、簡単に足首を掴まれて、マットの上に押し倒された。
「お願い……やめて……」
「だから勝てばいいんだよ。勝てば!」
モヒカンはなつきの肢体を撫で回す。
「いやっ、いやぁ……!」
そこに男を一蹴するほどの格闘家としての姿はない。悪漢に襲われて、なす術も無く犯されそうになっている女でしかなくなっていた。
「こういうのはどうだ? スパンキングでカウントを取り、10カウントで負けってルール」
思いついたようにモヒカンが言うと、ならば自分がレフェリーだと一人の男が買って出る。
「おらおら、カウントが始まっちまうぜ?」
モヒカンはなつきの胴体を持ち上げて、膝を立てた上に腹ばいにさせ、四つん這いによく似たお仕置きのための姿勢を取らせる。尻の高らかに持ち上がったポーズは、それだけで格好悪いものだったが、平手打ちによってさらに情けなさに拍車がかかる。
パン!
なつきの尻たぶが打たれ、それと同時だ。
「ワン!」
レフェリー役の男は、まるでプロレスリングでそうするように、顔を地面にくっつけてまで姿勢を低めてカウントを取る。
パン! パン! ――パン! ――パン! ――パン!
「ツー! スリー! フォー! ファイブ! シックス!」
もうなつきには、自分の状況が何もかも信じられなかった。
格闘技でも何でもない技に追い詰められ、お尻なんかを叩かれることで、あと4カウントで敗北が決定する。
パン! パン! パン!
「セブン! エイト! ナイン!」
次でラストカウントだ。
だが、今更身じろぎをしたところで、尻が左右に動いたところで、もう意味はない。
パン!
「テン!」
最後のカウント。
十七戦目にして、なつきの二度目の敗北が決定した。
**
さあ、舐めろと言わんばかりに、モヒカンはズボンを脱いだ。
目の前に突きつけられた肉棒は、実に立派に反り返り、まともに直視できないなつきは左右に視線を泳がせた。
やはり、勝者と敗者の構図である。
誇らしげな表情を浮かべつつ、仁王立ちするモヒカンと、これから奉仕を行うために正座して、暗い顔つきで俯いているなつきである。こうなる過程を知らないで、もしもこの場面だけをいきなり見ても、女が負け犬であることは存分に伝わるはずだ。
それだけ、悔しいような悲しいような、どんよりとした恥辱の心が、なつきの全身から放たれている。
「負けたお前が悪いんだぜ?」
「…………」
「それとも、人質を見捨てる方を選ぶか?」
「……わかったわよ」
なつきに男性経験は一度もない。
見るのも、触るのも、初めてだ。
それを口に咥えるなど、抵抗があるどころの話ではなかった。まして卑怯な環境で、欠片も力を発揮できないなつき相手に勝利して、そんなモヒカン相手に奉仕をする。まるで召使いのように付き従い、気持ちよくしてやらなければいけないなど、途方もない屈辱だ。
本当は倒せる相手なのだ。なつきがこんな調子では、とても本気を出させるまでには至らなかったが、それでも実力は測定できる。ちゃんと戦えば勝てる相手くらい、なつきほどの実力者であれば見分けがつく。
勝てるはずの相手が、自分の目の前で勝者として立っている。
――武術って、こんなものじゃないよ。
――もっと正々堂々、楽しいスポーツのはずなのに……。
肉棒を咥えるということは、何か烙印を焼き付けられることのような気がした。
敗者。負け犬。
自分は卑しいところへ堕ちたのだと、そう示すための証拠を植えつけられる。そういうことのような気がして、今にも亀頭に唇を近づけている自分自身に対して泣けてきた。
今までの大半は、相手から受ける仕打ちだった。
しかし、フェラチオはなつきの方から行う行為だ。
同じ屈辱でも、質の異なる屈辱といえた。
「うっひひひひ」
せせ笑うモヒカン。
唇と亀頭の距離が縮まることで、視界を占める肉竿の割合が増えていく。少しでも視線を下に向ければ、皮に血管の浮き出た剛直がよく見える。
――せめて人質さえいなければ!
――だけど、あの距離では助けられない。
――このまま咥えるしかないの?
最後の最後まで、なつきは希望に縋っていた。
偶然にも、子供を助け出すチャンスが生まれはしないか。はたまたは仲間がなつきのピンチに気づいて、駆けつけて来てはくれないか。
チャンスは、チャンスは……。
最後の一瞬まで、なつきは心の中で機会を求め続けた。
しかし、そんなものが巡ってくることもなく、もうあと1センチで、なつきの唇は肉棒の鈴口と接触する。
嫌だ。嫌だ。絶対に嫌だ。
二度と除去できない負け犬の証が、触れた途端に精神の中に刻まれて、生涯に渡って屈辱を背負うことのような気がしてならない。
――お願い! こんなの嫌だ!
そして――
「――ちゅっ」
肉棒へのキスが、衆人環視の中で行われた。
まるで亀頭の先端から、言い知れない波が伝わって、皮膚から肉へと、血や内臓まで震わせていくように、なつきの胸には敗北感が広がった。
「よーく舐めろよ? 勝者の俺に誠心誠意尽くすんだ」
「わ、わかったよぉ……」
なつきは両手で、肉棒の根元を握った。
先っぽを少しだけ含むようにして、口の中でペロペロと、舌先を動かして静かに舐め込む。そうしなければならないことが悲しい顔で、悲しい表情で鈴口をなぞり、先端部には瞬く間に唾液が塗り込められた。
「ついにフェラチオまでしちまったなぁ? どんな気分だ?」
「…………」
「へへっ、そりゃ何も言えねえよなぁ? なんたって負け犬として、勝者の俺様にご奉仕するご身分なんだからよぉ!」
モヒカンの放つ一言ずつが、なつきの心に鞭を打つ。
こんなこと……したくない……。
それでも、そうしなくてはならない。
こうして自分の立場を教え込まれて、なつきの中から歯向かおうと思う気持ちが少しずつ削り取られている。こんなことをしている自分に対する悲しみと、この地獄から少しでも早く解放されたい切実な思いばかりで、なつきの胸は満たされた。
「先っぽばかりしてねえで、もっと奥まで咥えろよな?」
「あむぅぅ……」
なつきは顔を押し進めた。
肉棒が口内を占領するにつれ、その太さに合わせて唇は丸く広がり、唾液をまとった舌は竿の部分に癒着する。
「くぷっ、じゅぅ……じゅくぅ……じゅむぅ……ちゅっ、ちゅるぅぅ……んじゅむぅぅ……」
頭を前後に動かすと、それに釣られて唾液の汚い音が鳴る。
「はぁー……極楽極楽ぅ…………」
気持ち良さに、モヒカンはうっとりと浸っていた。
「ちゅばっ、んちゅぁ……はぷっ、ちゅむぅぅ……じゅぅ……」
「……もうちょっとで……おっ、もう出るわー」
モヒカンはおもむろに頭を掴み、なつきの顔が逃げないように握力で固定する。便器で用を足すことと同じ気持ちで、口内射精を行っていた。
「んっ! んんっ、んぅ……!」
いきなり白濁を放たれて、青臭い味に戸惑うなつきは、飲めと命令されて飲み込んだ。
わ、わたし……。
「ほらほら、罰ゲームが済んだら次の対戦相手が待ってるぜ?」
いつまで……こんな勝負……。
コメント投稿