目次 次の話




 貴澄夏生、剛柔高校の空手部所属。
 その常人離れした強さを聞きつけて、噂に釣られる集団がいた。
 強い女というものに目がなくて、挑んでは捕らえ、負かし、犯し尽くす。実力と器量を兼ね備えた最高の女を穢すことこそを喜びとする陵辱集団だ。

「貴澄夏生。お前に決闘を申し込みに来た」

 集団だが、最初は一人で姿を現す。
 一人で歩くなつきを見つけ、行く道を封鎖せんばかりに立ちはだかり、まずは勝負を持ちかけることから、その手口は始まるのだ。
「どちらさま? やめといた方がいいよ。こう言っちゃ悪いけど、ケガするよ」
 すぐには乗ってこないとあらば、挨拶代わりに実力を見せつける。
「本当に俺に怪我なんてさせられるかな?」
 素早いステップで間合いを詰め、一般人の目であれば、さも瞬間移動によって踏み込んで見える速度で、既に男は拳を放っていた。
「ふん!」
 空手にある受け技で、顔面狙いの一撃を腕で外側に弾き出す。
 逆にカウンターのパンチを放ち――

 次の瞬間には、なつきの拳こそが顔面手前にあった。

 寸止めだ。もし寸前で止めていなければ、なつきのパンチは確実に男の鼻を潰しただろう。
 しかし、なつきはニヤリと笑った。
「……やるじゃない」
 男の放つ上段蹴りも、なつきの頬を打ち抜く寸前で、寸止めによって停止していた。
 お互いが、お互いの顔面に一撃を加えるはずだった。
「どうだ? 受ける気になったか」
「サンコーまでに、どうして私に?」
「噂はいくらでも聞いている。腕試しをしたい奴なら、いくらでもいるはずだぜ」
「面白そうじゃない。この勝負、受けて立つわ」
 勝負を受けてさえもらえれば、あとは場所を指定して誘い出すだけだった。

     **

 場所は廃墟ビル。
「おかしいわね。これって、一対一の対決じゃないの?」
 そこを訪れたなつきは顔色を変えた。
 何せ何十人もの集団による出迎えだ。学ランを着た者、リーゼント、パンチパーマにスキンヘッドに、長髪の美男子や角刈りの渋い顔つき。おそらくは同じ高校生くらいの、ありとあらゆる種類の顔立ちが、この場所にずらずらと並んでいた。
「もちろん一対一だぜ? ただし、お前と戦いたがっているのはいっぱいいてな。順番に一人ずつ相手してもらうぜ」
「ふーん。はめられたってわけ?」
 なつきは咄嗟に、自分の歩いた出入り口に目をやるが、集団がこぞって包囲網を成し、逃げ道も塞いでしまう。
 逃げ場無し、やるしかない状況だ。
 それに――。

 ――マットがあった。

 体育の授業で使うような、体育館の床に敷いて体操競技の練習に使うマットが、どういうわけか置いてある。
「こんなヒキョーもんだったとは」
「卑怯ついでに人質も用意しているぜ?」
「なッ……!」
 それは子供だった。
 一体、たった何歳の男の子だろう。小学生の男児をロープで縛り、その頬に強面の不良が刃物を押し当てている。
「なんてことを! 子供を巻き込むなんて!」
「なーに、お前が俺達全員に勝てたら解放するよ。せっかくの腕試しだからな。抵抗したら殺すだなんて野暮なことは言わないさ」
「……ふん」
「もっとも、逃げようだなんだしたら、危害を加えることにはなるだろうなぁ?」
「……いいさ。相手してあげるよ」
 なつきは構える。
「よーし、まずは俺からだ」
 一人目の挑戦者が――茶髪の男が前に出て、同じく拳を構えていた。
 かくして、一戦目。

「オリャァァァ!」
 
 茶髪の放つ拳の連続は、まるで嵐のようだった。横降りの暴風雨が、なつきだけに降り注いでいるといってもいい勢いで、秒間何発とも知れないラッシュがなつきを襲う。
 それをなつきはかわしていた。
 茶髪のラッシュが嵐なら、これだけ降り注いでいるにも関わらず、何故か一撃も浴びない不可思議な光景ですらある。
 素早いフットワークを駆使して、足腰の技巧によって自分の上半身をコントロールしながら、その一発一発が当たらない角度へと身体を反らしているのだ。あるいは体軸をずらして横に避け、あるいは腕のリーチの届かない後方まで飛びのけ、あらゆる種類の動きを一撃ごとに使い分け、必要があれば差し手で捌いて軌道をずらすことさえ行っていた。
 やがて、見切った。
「テイヤァ!」
 ある一瞬で腕を掴んで、背中に背負い込むような投げ技で、茶髪を地面に叩きつける。
 勝ったか。それともまだ動くか。
 決して油断をしたつもりはなかったが、その瞬間だった。

 ――プシュゥゥ!

 突如、スプレーが吹き付けた。噴出したものを思い切り、吸い込んでしまった。
「んぁ……! な、なにこれ!」
「へへへへっ、なんだろうなぁ? 俺はこれでギブアップだ。負けたぜ。まずは一勝、おめでとう」
 明らかにゲスめいた表情を浮かべて、だからただのスプレーではないはずだ。
 しかし、身体には何の影響も出ていない。
「…………」
 立ち上がり、仲間の下へヨロヨロと歩んでいく背中を見送って、それと入れ替わるように二人目の挑戦者が前に出る。
「今度は俺だな」
 角刈りの男だ。
 ――二戦目。

「いくわよ」
「来い!」

 今度はなつきが先手を取り、疾風のごとく踏み込んだ。常識的な人間なら、さも突風が吹きつけて来る勢いと感じるSであろうほど、常人ならざる速度で間合いに入り、腹部に拳を叩き込む。
 だが、手応えはなかった。
「そんなものか?」
「……くっ! 筋肉の鎧か!」
 分厚い肉の力に阻まれて、まるでダメージになっていない。
「オラァ!」
 角刈りの反撃。
「――んッ!」
 その拳から、咄嗟にガードを固めたなつきは、しかし両腕をクロスに束ねた防御もろとも吹き飛ばされ、数メートル先でバランスを辛うじて保っていた。
「俺には女の力なんざ効かないぜ!」
 と、角刈りは踏んでいる。
 なつきの腕力では、自分の肉体にダメージがないと、そう計算した上で突進してくる。
 だが、次に吹き飛ぶのは角刈りだった。

「透徹拳! 聖龍!」

 より強力な一撃が、筋肉のよろいもろとも角刈りを打ち飛ばした。
 なつきの二連勝だ。
 ところが、おかしかった。

「へへへっ、やるじゃねえか」
「思ったとおりだ」
「こいつは上玉だぜぇ」
「ひひひ」
「へっへっへっへっへ!」

 仲間が負けて喜んでいる。
 もっと武士道精神に溢れた堂々とした男なら、仲間の敗北であれ、相手の実力に敬意を払うことはおかしくないが、この集団の下品な笑みの数々は、決してそんなものではない。
 女を見る目だ。
 胸を、尻を、いやらしい視線で舐め尽さんばかりの眼差しだ。

 ――なんなの? こいつら……。

 先ほどのスプレーが媚薬だという事実には、なつきはまだ気づかない。

     **

 三戦目も四戦目も、さらには五戦目も、大なり小なり手間はかかるが、決してなつきが負けるほどの敵ではなかった。
 六戦目に出てきた男は手足が長く、ムチのようなしなりが鋭い強敵だった。リーチを活かして間合いには入らせない、攻防一体の立ち回りを相手にして、それでもなつきは踏み込む隙を見つけ出し、打撃を放って勝利した。
 七戦目も、八戦目も、それなりの手練れと見える実力に少しは苦しみ、けれども勝った。
 まだ、スタミナは十分に残っている。
 まだまだいける。
「はぁ……はぁ……」
 それでも、自分の息が乱れている事実になつきは気づいた。
 どことなく身体が熱い。疼くような火照るような、何ともいいがたいむず痒さが、少しずつ蝕むように全身に広がっている。

 九戦目では背後から抱きつかれた。

 筋肉の太い両腕に上半身を囚われて、なつきの背中に男の体重がかかってくる。いくら強くとも女の腕力であり、男の固いロックを力ずくでは外せない。足を引っ掛けるか、肘を使って脱出するか。自分の背中に乗った男の重心を読みながら、なつきは次の一手を思案していた。

 ――おかしい。これって……。

 この男は単に組みついた状態を維持している。
 技に繋げるわけでも、プロレスのベアハッグというわけでもなく、ただ組んでいる。組んだ状態を維持するためだけに力を尽くしている。

 ――ぺろっ、
 
 男はなつきの耳を舐めた。
「――ひっ! な、ななっ!」
「へへへへへ」
 舌先で耳の穴をほじらんばかりに、ねっとりと唾液を塗りつける。
「んんっ! なにするのよ!」
 甘い痺れが迸り、全身から力が緩む。
「なにって、立派な技だぜ?」
 そう言いながら、男は制服越しの胸を掴んだ。
「ひぁ……!」
 もちろん、利き腕は締めに使ったまま、左腕を愛撫に使用している。揉み慣れた手つきで指を躍らせ、ワイシャツの下に隠れたブラジャーさえも介して、乳首の位置を探り当て、爪で引っ掻くように刺激を与えた。
「どうだ? 技がよく効くだろ」
「んッ! くっ、やめてよ! こんなの格闘技じゃ……!」
 どうにか肘打ちを決め、腕力が緩むや否や手首を掴む。投げ技に転じて背負い上げ、地面に落として勝利した。
 だが、次もまた次も、挑戦者達はセクハラを行った。
 戦う最中に乳房目掛けて手を伸ばし、隙あらばスカートを捲り、組み付いた状態に入れば少しでも長く抱きついていようとする。首にキスマークをつけてくる男もいた。
 そのたびになつきは感じた。
 喘ぎながら活路を見い出し、どうにかしてセクハラ技から逆転するが、十五連勝を果たす頃には体力面でも疲れが見え隠れし始める。
 あのスプレーは媚薬だったのだ。
 煙として噴射された成分が、大量に肺の中まで流れ込んで、さらには激しい運動量で循環が加速して、すっかり効果が現れている。
 十六人目に捕まったとき、なつきはマットに座らされた。
「ま、またスケベな!」
 とうとう、いいように胸を揉まれていた。
 男の身体に背中を預け形となり、両手を後ろに封じられている。背中の後ろで束ねられた両腕が、密着による圧力で動かしにくいことも大きいが、何よりも手の平が、男の尻に下敷きにされている。
 さらには脚も、男によって開かされていた。
 なつきの股へと男の両足が入り込み、内側から力ずくで押し広げる。強制的なM字開脚を披露させられ、当然のようにスカート丈もずらされて、白いパンツを隠せない。

「ひゅー!」
「ついにいい格好になったな!」
「ほらほら、脱出してみろよ!」

 なつきを口々に煽るのは、なつきの手で敗北してきた男達だ。
 彼らはそれぞれ強かったが、なつきのレベルからしてみれば、その気になれば勝てる相手に過ぎなかった。だから連勝を積み重ねた。人のこんな痴態を見て喜ぶなんて、言っては悪いが人間的にも実力的にも格下だ。
 そんな連中がなつきの姿を鑑賞している。
「脱出しないと、どんどん技が激しくなるぞぉ?」
 耳元で囁いて、男はなつきの制服を脱がし始めた。
「や、やめて……!」
 必死に身じろぎをして、このロック状態を解いてやろうと試みるが、ただ衣服越しの乳首を刺激するだけで、激しい快楽電流が弾け飛び、なつきの抵抗はいとも簡単にキャンセルされる。 やがてワイシャツのボタンは全開になり、ブラジャーもずり上げられた。
「お? 結構大きいぞ。見掛けによらないな」
 生乳房を揉み始め、なつきの心はさらに恥辱へ濡れていく。
「……くっ! くぁっ、ああん!」
 もう喘がずにはいられない。
「へへへへ」
 このようにして、何人もの格闘少女を辱めたのが、彼ら集団だ。今こうしている男にも、胸を揉むだけで女の肉体をコントロールする技量がある。
「技じゃない! 技じゃないよぉ!」
 どうにか身じろぎを繰り返し、なつきは懸命に脱出を試みた。
 自分を捕らえようとしてくる動きを読み、力のかけ方と重心を誘導しきれば、横に倒れるなりしてきっかけを作り、逃げ出すことが出来るかもしれない。武術的な駆け引きのために、なつきはもがき続けていた。
「……あっ、くうっ、んんん!」
 乳首を摘まれるだけで、全身から力が抜ける。
 自分の肉体を把握している格闘家であるが故、なつきはより一層のこと、自分がいかにコントロールされているのかを理解する。理解していても、諦めなければ活路が見え、脱出の機会が得られると、諦めずに身じろぎを行い続けた。
 そして、そんな健気な努力を誰もが鑑賞していた。

「いいねいいねぇ!」
「あれだけ強けりゃ、油断すれば本当に脱出するかも」
「そんな女が快感と戦っているから面白いんだ」
「言えてるぜ! だから強い女はやめられねえ!」

 媚薬さえなければ、なつきの力ならとっくに抜ける。この組み付きを外し、即座に逆転の流れを作れるはず。その実力がありながら、出来るはずのことが達成できない。自分が媚薬にやられていることなど知らないからこそ、余計な焦りが生じていき、精神的な屈辱感は本来以上のものとなっている。

「言っておくが、試合中に絶頂したら負けとみなすぜ?」

 主犯格の男が、急にルールを追加した。
「なによそれ!」
「んで、負けたら子供に危害を加える。ひょっとしたら、俺らなら殺しちゃったりするかもしれないなぁ?」
 男児にナイフを押し当てている男が、見せびらかすかのように切っ先を頬に当て、皮膚をほんの少しだけ切り裂いた。
「んん! んんんん!」
 そして、口にガムテープを貼られている男児は、絶望の眼差しとしかいえない表情で、鬼気迫る勢いで恐怖していた。
「やめぇぇぇ!」
「だったら、お前がイかなければいい。たとえ脱出できなくても、愛撫で腕を消耗させ、スタミナ勝ちをすればチャンスが巡ってくるかもなぁ?」
「この卑怯者……! 最低だよ!」
 今のなつきにできることは、そうやって言葉で罵り、睨み返すだけだった。
 そして、おっぱいを揉まれている有様で、白いパンツも丸見えのポーズを取りながら、そのように凄まれても滑稽極まりないだけだった。
「ほーら、胸だけじゃない。そろそろアソコの面倒を見てやるぜ?」
 片方の手が、片乳から下の方へと移ってゆく。
「や、やめ……!」
「ほらよ」
 布地越しの割れ目が、指先のタッチによってなぞられた。

「――あああああああああああああ!」

 秘所に愛撫を受けたなつきは、ひときわ大きい喘ぎ声を上げていた。
「おいおい。大丈夫か? そんな様子じゃあ、すぐに負けちまうんじゃないのか?」
「まっ! まけ……ない……!」
 人質の子供のために、なつきは快楽を我慢する。

「何秒持つかねぇ?」
「いや、何分だろ」
「俺は意外と、長時間持つ方にかけるぜ?」
「ええ、マジかよ」
「あんなに気持ち良さそうにしちゃってんのにかぁ?」

 いつの間にかなつきの心は、絶頂に耐えることだけに集中していた。
「あふぅぅっ、んんっ! くっ、んぁぁぁ……! はぁっ、あっ、おふぁぁ……!」
 もう、格闘家が故の駆け引きなど存在しない。ただただ快楽の電気が走り、足腰に駆け巡るから、その反応として身じろぎしていた。
「大丈夫か?  もっと刺激が強くなるぞ?」
 男の手がパンツの内側へ入り込み、突起した肉芽にさえも指を絡ませる。
「――ああああ! あっ! はっ、はぁっ、うっ、んんん!」
「ほら、イくのか? もう負けちまうのか?」
「――んくっ、んんん! んっ、んむぅぅっ、んんんんん!」
 なつきは感じていた。
 強すぎる刺激によって、脚の筋肉が震えるたび、全身が力んでしまうたび、電流が一箇所へと集合していく。
 この、何かが集まってくる感覚。
 それはアソコに集中して……。

 ――だめ! 私はイくわけにはいかないの!

 敗北の予感がチラついて、なつきは強く歯を食い縛った。
 耐えろ、耐えろ、耐えろ――確かに知らない子供だ。名前もわからない男児だが、自分のせいで子供が死ぬなど、怪我をするなどあってはならない。

 ――我慢! 我慢よ! 私!
 ――こんなところで負けちゃいけない!
 ――負けたら、負けたら!
 
 本当に、涙ながらに耐えていた。
「あっ! ああん! あっ、あっくぅ……!」
 ビクビクと脚が弾んで、足首でさえもよがり始めて、それでもイクのだけはと我慢した。

「頑張れー!」
「な・つ・き! な・つ・き!」
「もっと我慢姿を見せてくれ!」

 いかにもわざとらしく、調子にとって、周囲はなつきを応援する。
 一秒でも長く、己の快楽と戦う卑猥な勇姿を見るために。

 だが、限界だった。

「――あっ! ああっ、だめっ、わたしっ、あああぁぁあぁああん!!」

 なつきは、絶頂した。

 そ、そんな……。
 私……負けた……。



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