第5話 絶頂テロップ

 次に光を迎える調教は、細いディルドの挿入だった。処女である点に考慮して、あまり太すぎないものを選んで差し込んで、スイッチを入れれば振動する。
 さらにクリトリスにはローターが付いていた。
 テープで固定されたローターは、クリトリスと密着して直接的に刺激をもたらす。
 膣とクリトリス、二点への刺激が光を襲っていた。
「あっぐぁ……あぁ…………!」
 しかも、ただ挿入しているだけではない。
 ディルドの方は角度が考えられており、膣内からクリトリスの位置を狙うようにして、とある一点に先が押し当たっている。天井の向こう側を狙う振動と、直接触れているローターで、挟み撃ちのように敏感な肉芽を責めているのだ。
「ぐあっあっ、あぁ……あぁ…………!」
 その強い刺激によって、光は髪を振り乱す勢いで喘いでいた。激しく首を振りたくり、前髪を乱す姿は、当初では考えられない反応の激しさである。
「さて、この激しい反応ぶり――ここで、最初の南条光を改めて見てみましょう」
 視聴者への映像が切り替わる。
 まだ感度開発が始まったばかりの、性器の縦筋を指でなぞっていた際の光は、それをくすぐったいとしか思っていなかった。あとは人にプライベートゾーンを触られて、それが不快であろう様子が見受けられる以外、他にこれといった反応はなかった。
 一体コイツは何がしたいんだ?
 と、本気で疑問に思っていそうな顔ですらあった。
 だが、それが今はこうである。
「あぁぐぁ――やっ、やばい――まっ、またっ、あぁ……!」
 再び絶頂に近づいていた。
「お? イクか? イクのかね? はははっ、人々に二度目の絶頂を見せてやるがいい!」
 白衣の男は自分がヒーローに対する悪役であることを思い出し、悪の幹部を意識した演技でもって、光の絶頂を大いに煽り立てていた。
「くあぁぁぁぁああああ――――――――――!」
 ビクっと背中が跳ね上がり、そのついでのように尻まで一瞬は浮いていた。その体の激しい弾みで、分娩台のアームが音を立て、椅子全体にも揺れは及んでいた。
 やはり潮が舞い上がる。
 何滴もの滴が何センチもの高さに至り、そして下降して床や光自身の体に振り撒かれる。
「これで二回目だ」
 テレビ画面にはカウントの表示が入っていた。

『絶頂回数:2回』

 そして、白衣の男は視聴者に向けて言う。
「ここで一旦切り上げて、次の番組『あなたの学校にお邪魔します!』にしばし時間を譲ります。ですが、次にまた我々の時間が始まる時、このカウントはどこまで進んでいるでしょう」
 画面上の表示位置を把握している白衣の男は、何もない宙を指で示して、それが視聴者にはテロップを指して見えている。
 番組は終了して、CMへ移っていた。
 そのCMが空けるなり、しばしの時間がバラエティ番組のために使われる。一時間以上もある番組が終わりを迎え、またCMを挟んだ末に、ようやく南条光のコーナーが再開された時には――。

『絶頂回数:11回』

 画面に映ったその時から、光の顔には疲弊が滲み出ていた。おびただしい量の滴が光自身の腹や胸を汚した光景は、『あなたの学校にお邪魔します!』という番組が流れるその裏で、いかに激しい調教が行われていたのか想像を大いに掻き立てる。
 撮影場所も変わっていた。
 ベッドの上へと開発現場を移しているので、濡れれば濡れただけシーツにも染み込んで、まるでお漏らしをしたような円が広がっている。
「ご覧下さい。視聴者の皆様」
 白衣の男がその円に指を振れさせ、するとシーツと指のあいだには糸が引く。ゆっくりと丁寧に腕を持ち上げている限り、千切れることなく伸び続ける糸に対して、テレビカメラは向けられていた。
「ちなみにですね? この南条光、一度は本当にお漏らしをしています。というわけで、収録映像を公開しましょう」
 映像が切り替われば、三回目から十一回目にかけての絶頂光景が連続で放映される。

「あっ、あぁあああああ――――――――!」

 三回目の絶頂では、まだ分娩台への固定のまま、ローターとディルドの合わせ技によって潮を噴いていた。

「んぐぁっあぁあああ………………!」

 四回目の絶頂も、やはり場所を変えていないので、映像としては変わり映えしていない。分娩台の上で背中をビクっと弾ませて、その勢いでアームや椅子全体を揺らしていた。
 だが、五回目は場所が変わった。
 次の映像からは急に撮影現場が切り替わり、ベッドの上で絶頂していた。

「あっぐああああああ――――――――!」

 顔の両側で拳を作り、必死にシーツを掴んだ絶頂で、やはり潮を噴いている。その時の絶頂はレンズに滴が付着したので、その水滴も映像に乗っていた。

「あぁあああああああ――――――――――!」

 と、このようにして、絶頂シーンだけを切り抜いた映像が流れていく。
 切り替わるたび、テロップ表示のカウントは進んでいた。

『絶頂回数:3回』
『絶頂回数:4回』
『絶頂回数:5回』

 こうして、現在の回数である十一回へと近づいていく中で、九回目の絶頂で光はお漏らしをしたのであった。

「あぁあああああ――――――――!」

 ビクビクと痙攣のように体を震わせ、そして滴を飛ばしているのは変わらない。
 ただ、この九回目の絶頂では、直後に放尿が始まった。
 膀胱が緩んだのだ。
 人は誰しも、トイレでしか出さないという、排尿に対する心の枷をかけている。絶頂によって追い詰められ、性器に刺激を受け続けた光から、その枷が外れてしまったのだ。
 この時には既に十分な円が広がっていた。
 愛液だけによって形成された染みの広がりは、しかし急速に面積を拡大した。アソコの付近で数センチの直径だったのが、突如として周囲の純白を侵食して、みるみるうちに面積を広げていったのだ。
 こうして南条光はお漏らしをテレビで公開された。
 放尿シーンが大勢のファンの目に触れたのだ。
「お漏らしをしたようだなぁ? うん? 大勢の人々の前で小便を漏らす恥の気分はどうだ? それでよくぞ我らの野望を阻止しようなどと思ったものよ」
 と、それがその際の、白衣の男が光にかけた台詞であった。
 そして、その放尿のシーンにやや尺を取った上、続けて十回目と十一回目の絶頂を放映する。
 全絶頂シーンの公開が終了して、収録映像から生放送に画面が戻るなり、白衣の男の言葉はこうだった。
「さて、お漏らしでシーツを汚してくれた小娘のために、今は新しいものに変えてあるがご覧の通り、またアソコを弄ってやれば漏らし直したわけですよ。まあ、この濡れっぷりは全て愛液によるものですがね」
 股から広がる愛液の円は、体温による温かさが残っているので、手を近づければ蒸しっぽい微妙な熱気が感じられる。
 これほど絶頂を繰り返し、愛液も漏らした光への、感度開発の調教はまだ続く。

     *

 それから、光は困惑していた。
 カメラが回っている状況で、今度は姿勢を変えて四つん這いに、白衣の男は後ろから筆を使って愛撫してくる。
 その箇所は肛門だった。
(そんな汚いところ……)
 肛門も性感帯になり得ることを光は知らない。
 どうして、そんな場所を筆でくすぐっているのか、それで何がしたいのかが光にはわからない。
(恥ずかしい思いをさせようってカンジなのか?)
 乳首やアソコで快感が生じるのは、さすがに身を以て思い知っている。絶頂までさせられて、女の体が持つ機能を存分に教え込まれた。
 だが肛門でも同じ事が起きるとは、無知な光は思っていない。
 くすぐったかった。
 柔らかな毛先によって、乾いた皺を一本一本なぞられる。その感触から得られるものは、くすぐったかったり、毛の当たり方でムズムズするというものだけだった。
 筆責めがカメラに映る。
 視聴者の見ている画面は、肛門が大きくアップとなって、その皺を延々と筆でなぞっているものだ。細い毛先を中央に置き、内から外へ走らせて、皺を一本ずつなぞる彼の手つきは、もしも筆に色が乗っていたなら、とても地道に塗り替えていく作業となるだろう。
 この時にはディルドもローターも外されていて、今までの強い刺激からは解放されている。絶頂を味わう心配もなく、ただ無心にポーズを維持するのみだが、丸裸で尻の穴を映されては、やはり少しは頬が染まろうというものだ。
 長時間の全裸によって、羞恥心の感覚は麻痺したはずが、光は久々に恥じらいを思い出していた。
(意味、ないだろ……)
 この番組で撮りたいものは、乳首や性器で快感が走った際の、激しくよがった女性の姿だ。それはさすがに理解したが、ならば肛門を苛める必要はないはずだと、光は本気で思っているわけなのだった。
 だが、光は気づいていない。
 というより、自覚していない。
 ここまで感度開発の進んだ肉体は、神経そのものが性的刺激に対して敏感になっている。皮膚が刺激を察知しやすい体となり、今はまだくすぐったいとしか感じない光なのだが、性感帯の発達は驚くべき速度で進んでいる。
 もしも快楽を感じるための専用の神経帯が存在すれば、今頃はみるみるうちに根を張って、肛門の皮下にびっしりと生やされ始めている。
 無論、人体にそのような仕組みはないが、例えるとするなら、そのような侵食が肛門で進んでいた。
「んっ、んぅ……んっ、くっ…………」
 光にとって、それは急な出来後だった。
(なっ、なんだ?)
 乳首やアソコでは散々に感じたはずのものなのに、同じものを肛門で感じた途端、光はまず首を傾げていた。自分自身に起こった事を訝しみ、眉を顰めていた。
「ぬっ、んぅ――んっ、あぁ――――あぁぁ――――――」
 だが、白衣の男はほくそ笑む。
 レンズを向けるカメラマンも、テレビ越しに生放送を見つめる視聴者も、光の身に起こった事を理解していた。
 世界中で本人だけが、理解していなかった。
(なんか……またムズムズと…………)
 自慰行為すら知らない無知の身なので、肛門と快楽は無関係のはずという思い込みが光にはあった。
 お尻が微妙に蠢いている。
 微かな挙動で揺すりでもするような、本当に小さな動きで左右にフリフリと振られている。無意識のうちに、光は腰をそのように動かしている。
「ぬっあっ、あぁ――あぁぁ――あぁぁ――――――」
 感じ続けさえしていれば、光はやがて気づいていた。いくら何も知らない光でも、十一回もイクような体験をした直後だ。今までと似たような感覚が延々と走っていれば、乳首やアソコだけでなく、本当は肛門にも同じものが生じるのだと、光はやっとのことで理解していた。

「あっ、あぁっくぁぁぁ――――――――!」

 そして、光は唐突にイった。
 ビクっと、お尻を一瞬だけ弾ませて、するとアソコから弾け出てきたかのように、一本の糸がぷらぷらと揺れていた。
 散々に絶頂を繰り返したアソコの中には、それでなくとも愛液が詰まっていた。ぬかるみをたっぷりと含んだ膣壁から、さらに新しく量が溢れて、滴を外に弾き出した事により、そのまま糸が伸び始めたのだ。
 絶頂時のビクっと弾む反応で、糸に及んだ衝撃は、何秒も先までぷらぷらとした揺れを帯びさせる。
 揺れながら、長さが伸びる。
 しかし、その揺れも徐々に弱まり、だんだんと落ち着いてきたところで、あとは静かに真っ直ぐとシーツを目指し、愛液による染みの円へと吸収された。
 その感覚が光にはない。
 自分が糸を垂らしていたなど、感覚的には気づきようがなかった。
 だから白衣の男の言葉で光は驚く。
「見ましたか? 今のぷらぷらと揺れる糸を」
(はっ!? 糸!?)
「エロかったですねぇ? 愛液の滴によって伸びた糸がだんだんと長くなり、シーツに付着して吸収される。まさしく、イった証拠をじっくりと拝んだような気になりますねぇ?」
(なっ、待て――あ、あたし――そんなことに――――)
 そんな光への追い打ちのようにして、今度は指による愛撫が始まった。
「ぬぁぁ――――」
 ローションをまぶしてあった。
 ぬるっと滑りの良い指先でくすぐられ、その摩擦からは濃密な刺激が走る。
「あぁ――あっくぁぁ――ああぁぁ――――」
 そうしなければ耐えきれないようにして、光はシーツをぎゅっと固く握り締め、額を押しつけていた。そんな体勢になる事で、お尻だけが高らかとなっていた。
 その差し出されたも同然の尻に対して、白衣の男は活発な指遣いで愛撫を続ける。ただ表面をなぞってくすぐるだけではない、指圧して揉み込むやり方も交えた責め方で、アソコに触れずして愛液を出させているのだった。
「んっあぁ……あっ、くあぁ…………!」
 膣壁で分泌がみるみる進み、肉貝の表面がぬかるんでいく。内股にも愛液の気配は広がり、そして快楽に翻弄されてお尻は小さく蠢き続けている。

「ふあぁあああ――――――!」

 また、唐突に絶頂した。
『絶頂回数:13回』
 カウントの数字が進み、アソコからは再び糸がつーっと伸びて、それがシーツへの付着で吸収される。
 そのさらに数分後だ。

「んぁあああああ――――――!」

 カウントがまた進む。
『絶頂回数:14回』
 今度はぷしゃっと、スプレーから滴が飛び出たように、シーツの上に散乱していた。既に濡れた繊維の上に新しく振り撒かれ、その一滴一滴が面積の拡大を手伝うのだった。
 これだけ絶頂が繰り返されれば、視聴者の盛り上がりもそれ相応のものとなる。
 となれば、辱めのシーンを目一杯。
 ヒーローが囚われの身から脱出して、コスチュームを纏い直しての逆転劇は、もうやらなくて良いとの通達が出されていた。
 それはある意味、光の敗北と言えるだろう。
 こんなにイキさえしなければ、そのせいで必要以上に盛り上がる事がなければ、予定されたシーンをその通りやらせてもらえたはずなのだ。
 悪の目論見通りに感度が開発されきって、好きなようにイカされ続けてしまった。その事実こそが逆転シーンの省略を決めた以上、光は快楽に負けたのだ。
 もはや構成上のオチなどない。
 番組ジャックという怪人の目的も、捕らえたヒーローを見せしめに辱めるシチュエーション設定も、光がエッチな反応さえしていればどうでもいい。
 脚本がしっかりしている必要がなく、れっきとしたヒーロー番組なら回収すべき要素は投げ捨てられ、あとは絶頂回数のカウントが進むのみで二十四時間テレビは終了するのだった。