第4話 進む開発

 テレビ画面の中――。

 複数人の歌手がゲストに集まり、順番にライブを披露していく番組が終了して、次のコーナーへ移る前にCMを挟んでいる。化粧品やシャンプーの宣伝が流れ終わると、数時間ぶりに南条光が放送に姿を現す。
 裏では休憩時間を挟んだが、視聴者の前に出る時には、やはり分娩台での拘束を受けていた。アームに乗った膝にベルトが巻かれ、両手にも手錠がかかり、両手が頭の後ろへ行っているのは相変わらず、しかし今度は機材が登場していた。
 光の両側で、二台の人型ロボットが羽根を握り、柔らかな毛先で乳首をくすぐっていた。プログラム通りの自動的な反復運動の繰り返しで、延々と乳首を撫で続け、光はその刺激を感じている。
 股の下には刷毛車があった。
 電動水車に刷毛を搭載して、回転によってその毛先が自動的にアソコを撫でる。
 乳首が、アソコが、上下どちらも柔らかな毛の愛撫を受け続けているという、一変した状況が展開されていた。
「さて、テレビをご覧の皆様」
 白衣の男が視聴者に向かって語りかける。
「先ほどまでの、様々なコーナーが放送されているあいだにも、彼女への感度開発は続いていました。あんなコーナーやこんなコーナーで歌手や芸能人が活躍している裏では、彼女には一体どんな愛撫が行われていたのか。視聴者の皆様のため、軽く説明しておきましょう」
 映像は生放送から収録に切り替わる。
 それは白衣の男と格好を同じくしたスタッフが、それぞれ機材を運搬して、光の周りに運び込んでいるものだった。そして起動させることにより、羽根や刷毛による愛撫を開始している。
 その数十秒ほどの収録映像が終わるなり、画面は生放送のものに戻った。
「というわけで、羽根と刷毛による愛撫が小一時間以上は続いているわけです。言うでもなく、最初のうちは刷毛はずっと乾いたままでしたが、果たして今はどうなっているのでしょうか」
 白衣の男は刷毛車の傍らに立ち、さっと手を伸ばして一本の刷毛を引き抜く。それをカメラへ、視聴者の目の前へ運んでいくと、刷毛には粘液が付着していた。
 まるでローションで濡らした場所に毛先を走らせ、透明なものが付着したように、少しばかり濡れ固まっているのであった。
「ついに! ついにです! 南条光は濡れ始めました!」
 白衣の男はそれを大袈裟に誇示していた。
「なんだよ濡れたって、それがどうしたっていうんだよ!」
「わからないあなたに教えてあげよう。女の子の体はね、オッパイを揉まれたり、アソコを触られたりすると、エッチな快楽を感じるように出来ている。性的快感、エロティックな気持ち良さ、それを感じた体の反応こそ、アソコから出て来た透明な汁なのだよ」
 彼は光に筆を近づけ、その薄らとした濡れ具合を本人に見せつけていた。
「え、エッチなって……」
「こうしている今も、羽根が気持ちいいだろう? 刷毛車が気持ちいいだろう? それはね、あなたの体がエッチな反応をしている証拠なのだよ」
「なっ、なっ……!」
 光は急に恥ずかしそうに赤らんでいた。
 ここまで裸で過ごし続けて、羞恥心に関して感覚の麻痺していた光だが、自分の体がどんな反応を示しているか、アソコで何が起こっているか、それを具体的に知らされて、恥じらいが蘇っていた。
 お前はエッチな女の子だ。
 などと言われては、言葉による辱めが心に染み入るのだった。
「感度開発も進んだところで、次のステップに移ってみようじゃないか」
 設定上、この白衣の男は幹部の地位に就いている。そんな彼が顎で指示を出したなら、たちまち手下がスタジオに現れて、刷毛車だけを運び去る。
 そして、空いたアソコを責めるのは指だった。
 これみよがしに拳を作り、中指だけをピンと伸ばして、白衣の男はアソコの入口に先端を突き立てる。
 挿入を開始した。
「なっ、何を……やって…………」
 性知識の欠けた光にとって、アソコに指を入れることの意味がわからない。
(……これも……面白いことなのか?)
 パンツやオッパイで喜ぶ感覚で、アソコを触って喜ぶのか。だから中に指を入れたがるのか。光の理解はせいぜいそんなものだったが、すぐに本当の意味を思い知ることとなる。
「んぅ……なっ、なんだ…………!」
 ピストンが始まれば、刺激が走った。
 刷毛を濡らす程度には、既に愛液が出ているのだ。濡れた膣内に指を入れれば、潤滑油のおかげでスムーズに出入りして、負荷を除いた刺激が走る事となる。
「あっ、んぅ……んぅっ、すげぇ、ヘンな感じが……!」
 光は感じ始めていた。
 長時間にわたって反応がなかった彼女が、ここでようやくはっきりと快楽を感じている。指の出入りで水音が鳴れば鳴るほど、その我慢した表情は快感に対するものとなっていた。
 今まで光がしてきた我慢は、胸を触られたり、アソコを触られて、嫌な気持ちになってのものだった。他人との接触を嫌がる感覚ばかり堪え、快楽の我慢などしていなかった。
 だが、快楽を堪える機会が巡って来た。
 指の出入りが愛液を書きませて、くちゅくちゅと水音を鳴らしている。潤滑油を介在させた指の摩擦で、膣壁に刺激が走るたび、脚がピクピクと小さな反応を示していた。
 呼吸が熱っぽく乱れ始める。
 それに乳首への反応も増していた。
(なんか……む、胸まで…………)
 刷毛車は片付けられても、人型ロボットによる羽根責めは終わっていない。今なお、羽根の毛先が乳首をくすぐり続けている。血流が集まって、極限まで突起した乳首への刺激は、ひどく甘い感覚をもたらしていた。
「南条光。あなたは今、エッチな反応をしているのだよ」
 白衣の男がそう語る。
「そ、そんなわけ――意味のわかんないこと言うなよ……!」
 光は赤らむ。
「乳首が気持ちいいだろう? アソコが気持ちいいだろう?」
「うるさ――んっあっ、あぁ――――」
 大いに顔を歪めていた。
 気持ちいい事実で、言葉による辱めで、顔を力ませずにはいられずに、眉間で皺を固めている。頬に力がこもっている。唇にも力が入り、形がぐにゃりと歪んでいる。
「ほーら」
 白衣の男は指を引き抜く。
 まずはカメラに向かって腕を突き出し、濡れた指を視聴者に公開した。糸を引かせる真似までしてみせて、いかに光が愛液を出しているかと伝えた上で、本人の顔にも近づけていた。
「やっ……!」
 自分自身の愛液を見せつけられ、光は咄嗟に顔を背ける。
「初々しい反応じゃないか」
「やめろっ、そんなもの!」
「汚いものみたいに言うじゃないか。お前自身が出した汁だというのにな」
 白衣の男は改めて指を入れ、ピストンを再開して責め立てる。
「んっんっ、あっ、んぅ――あっ、んぅ――あぁ――」
 光は小さく髪を振りたくり、熱っぽく呼吸を見出していた。ぎゅっと硬く目を瞑り、恥じらいを堪えた顔で、それまで知りもしなかった未知の感覚に振り回され、全身を火照らせていた。
 この時間は指によるピストンと、乳首への羽根責めで終わる事になるのだが、最後の最後で白衣の男は、視聴者のためにもう少しだけ楽しみを用意する。
 性器を開帳した。
 透明なテープを貼って、開いた状態に固定して、中身をカメラに公開した。
 桃色の肉ヒダが視聴者の注目を掻き集める。
 幼いアソコが平然とテレビに映され、その愛液が光を反射した見栄えが男達を興奮させる。
 よく見れば、クリトリスが突起していた。
 愛液の存在だけではない。
 それが包皮から飛び出して、硬さを帯びている事実さえもが、光の感じた快楽を物語っているのであった。

     *

 生放送のカメラが止まる。
 同じ姿勢で居続ける負担を考え、光には少しの休憩が入るのだが、本当に休める時間は限られている。半日以上かけて感度開発を行う企画のため、カメラが回っていないあいだにも、愛撫は続いていないといけないのだ。
 せいぜい五分や十分の休憩だけが与えられ、トイレはそのあいだに済ませる事となる。
 そして、休憩が終われば愛撫の再開となり、光はまた延々と恥部を触られ続けるのだ。
 台の上で仰向けに、正常位のように脚を広げて、股のあいだに指の出入りを受け止める。
「あぁ……んっあっ、あぁ……あぁ…………」
 こうして感じている光だが、性知識に欠けている以上、自分のポーズがどのように卑猥なのかは、もちろんあまりわかっていない。
 せいぜい、オッパイはエッチなもの、アソコが見えるポーズも同じくエッチ、という程度の理解である。
 自分がセックスに適したポーズを取っているなど、まさか思ってもみていない。
「んぅ……あっ、うっ、んっ、あっ、あぁ…………」
 光の股から出入りする中指は、根元から先端まで、まんべんなく愛液を纏っていた。ピストンに応じて見え隠れする表皮は、ローショーンでもまぶしたように濡れて輝き、出入りのペースを上げればくちゅくちゅと水音を鳴らしている。
 途中で白衣の男は濡れたアソコを拭き取った。
 そして下着を穿かせるが、今更になって白いショーツにアソコを包むのは、ちょっとした趣向のためである。
 再び生放送のカメラが回る。
 その時には、やはり分娩台に手足を拘束し直して、さらにピンクローターを装着していた。一つはショーツの中に忍ばせて、もう二つを乳首にテープで張り付ける。三つの振動器具がスイッチで震え、同時に光を刺激していた。
「あっ、んぅ……あぁ……あっ、んぅ…………」
 ここまで感度の上がった光である。
 アソコも濡れやすくなってきて、すると視聴者が見る映像はどういったものになるか。
 乾いたショーツがじわじわと濡れていた。
 膣口の内部を刺激され、だんだんと染み出る愛液が、まずは薄らとした縦筋を作り出す。目を凝らさなければわからない、本当に微妙な濡れ具合は、みるみるうちにくっきりとした楕円に変わる。
 やがてはクロッチがまんべんなく濡れていた。
 白いショーツが愛液で変色しきって、触れれば糸が引くほどぐっしょりと灰色になっている。
 いかに濡れやすくなっているのか、それを視覚的にわかりやすく伝えるのが、わざわざ穿かせた目的だった。数分ほどで濡れていく光景は、視聴者を相応に盛り上げていた。
 さらにこのショーツは紐である。
 両側をリボン結びにしてあるため、その結び目を引っ張るだけで、簡単に脱がせることができてしまう。
 白衣の男はショーツを脱がせた。
 そして、視聴者へと見せつける。
「ほーら、こんなにぐっしょり」
 誇示するようにカメラへ向かって突きつけて、だから視聴者が見る画面は、濡れた部分が大きくアップされたものとなる。
「見たまえ、君自身の濡れっぷりだよ」
 次は光にも突きつける。
「やっ、やめろって! そんなもの見せるなよ」
 素早く目を背けていた。
「こんなにもエッチ汁を吸い込んでいるぞ?」
「うるさい!」
「まったく、最初は不感症かと思うほど、ちっとも感じていなかったくせに、一日のあいだにとんだエロ女になったものだ」
「エロ……! ちくしょう、馬鹿にしてぇ」
「そんなエロ女のアソコをもっともっと刺激したら、一体どれくらい反応するのか。気になるな? 気になりますでしょう? 視聴者諸君」
 白衣の男はカメラに目を向け、それから光のアソコを責め始めた。
 膣内にローターが埋まったままの、それでなくとも刺激の続くアソコへと、外側の愛撫を行っていた。縦筋をなぞるため、指を上下に動かしていた。
「あぁ……あっ、あぁ…………!」
 その上下スライドで、彼の指は愛液を掻き取っていた。
「くぁっ、あぁ……あっ、あぁ…………!」
 乳首への刺激も続いているのだ。
 テープで固定したローターは、無機質な駆動音と共に乳房を苛め、そしてアソコにも二重の刺激が加わっている。こうまで責められ、快楽によって追い詰められれば、光が未知の領域へ近づくのも時間の問題に過ぎなかった。
「あっあぁ……なっ、なんか……やば…………!」
 光は狼狽し始めていた。
 もちろん、今までの気持ち良さでも、すっかり反応を変えていたのだが、それにも増して焦りが窺える。このままでは何かがまずい、起こってはいけない事でも起こりそうな危機感を煽られていた。
 だが、この危機感は何なのか、光自身にはわかっていない。
 白衣の男にはわかっている。
 大抵の視聴者も予感している、

 ――来る。

 最初は感度の低かった光の、この半日かけた感度開発の成果が大きな形になろうとしている。
 指のピストンが活発になっていた。
 多くの視聴者がその瞬間を見逃すまいと、食い入るように画面を見つめていた。

「あぁあああああ――――――――」

 光は絶頂した。
 ビクっと胴を弾ませて、その瞬間に数滴ほどの滴を舞い上げていた。
 そして機転の利くスタッフは、その場面を即座にスロー再生、潮吹きの滴を目で追いやすいようにして、視聴者に光のイキっぷりを見せつけていた。
 光は頭を真っ白にしていた。
(なっ、なんだ……今の……)
 自分の身に何が起こったのか。
 今のは一体、何だったのか。
 光は何も理解していない。
 性的な絶頂というものを知らない。
 ただ体感的には理解していた。
 あまりにも気持ちいいせいで、体が天にも舞い上がるような勢いのために迎えた感覚ということは、身と心で思い知っているのであった。