第3話 囚われのヒーロー

 そして、生放送当日――。

 番組ジャックを目的とした悪の怪人、それを阻止せんと駆けつけたヒーロー――しかし、サソリ怪人の毒ガスによって体が麻痺し、身動きの取れなくなったヒーローは、囚われの身となり実験を受ける事となる。

「感度開発実験だ!」

 テレビ画面の中、あるいは客席から見たスタジオの上、サソリ怪人は身振り手振りを交えて、視聴者や観客に向かって説明を開始する。
「我らの目的は、放送を乗っ取ることで思想を広め、世界中の同士に呼びかけることだ。しかし、せっかく厄介な敵を捕らえたからには、この公共電波を利用して見せしめにしてやろう」
 と、ここまで述べたタイミングに合わせたように、モニターに南条光の姿がアップとなる。
 テレビ視聴者に対しては画面の切り替えで済ませつつ、客席の人々にも詳しく様子を見せるためにも、映画スクリーンほどに大きなモニターが、スタジオの背景として設置されているのだった。
 画面の中の南条光は、せっかくのコスチュームを全て脱がされ、全裸で体を拘束されている。
 拘束具は分娩台だ。
 女性を開脚させるアーム部分に膝を乗せ、ベルトを巻きつけ固定している。M字開脚となった光は、自分の意志では脚を閉じる事が出来ないまま、怪人にも客席にも、そして生放送の視聴者にも、アソコを見られ放題となっている。
 腰をなるべく手前に出させたり、尻にシートを敷くなどして、微妙に角度を調整してあるために、肉貝の数センチ下では肛門も丸見えだった。
 両腕には手錠が使われている。
 背もたれの頭部分、シートの最も高い位置、その背面には鎖を引っかけるフックが取り付けられている。手錠の鎖はそこにかけられ固定され、なので光には腕の自由もない。
 あられもない姿であった。
 悪の勢力に対抗する希望の戦士、その囚われた姿は、なるほどショッキングなものだろう。所詮バラエティなのだが、悪に虐げられ、ヒーローに希望を見出していた人物がこれを見たなら絶句ものだ。
「くっそぉ……」
 光は赤らんでいた。
 丸裸で拘束され、恥部にも視線が注がれる。この状況を恥じらわない少女などあり得なかった。
「どうだ気分は」
「どんなことをしたって、あたしはぜってーに折れねーぞ!」
「それは頼もしい。では博士、よろしく頼むぞ?」
 サソリ怪人がそう述べると、舞台裏からスタジオへと、一人の白衣の男が姿を現した。
 彼こそが調教役。
 光の性感帯に手を触れたり、道具を駆使して感度開発を行う責任者なのだ。
「お任せ下さい。怪人殿」
「うむ、しっかり務めるのだぞ?」
 サソリ怪人はこの場を彼に任せて消えていく。
 そして、白衣の男は早速のように光に視線を走らせて、わざとらしい視姦を行った。あからさまに顔を近づけ、至近距離からアソコを眺めたり、乳房に視線を注ぎ込み、まず手始めに羞恥心を煽ろうとしているのだった。
「くっそぉ! オッパイを揉んだり、尻に触ったりする気かよ」
 光は悔しげに腕を暴れさせるのだが、力ずくで外れるような拘束などではない。ただ鎖がうるさく金属音を鳴らすのみ、脱出できる見込みは皆無である。
「オッパイ? お尻? 君は純粋な女の子だねぇ?」
「なに? なにがいいたい!」
「世の中には、そんなものとは比べものにならない、もっとエッチでいやらしいコトがある。それを今から、君の体に刻み込んであげようではないか」
 白衣の男はまず、指を置く。
 縦筋をじっくりと、ゆっくりと、随分と軽やかなタッチでなぞり始める。産毛だけを辛うじて撫でているような、触れるか触れないかの具合の愛撫に、光はたちまち我慢の表情を浮かべ始めていた。
「くっ、くすぐったい……」
「くすぐったい? ははっ、これは時間がかかりそうだ」
 そんなことを楽しみそうに口にして、白衣の男は性器への愛撫を継続する。
 最初は延々と上下を繰り返した。
 それが一分、二分と続いても、愛液の出て来る様子はなく、しかし彼はクリトリスへの刺激にステップを進めていく。ワレメの一点だけを狙い、肉貝の狭間に隠れた敏感な肉芽を揉み始めた。
 今のところは肉貝越しだ。
 ワレメに指を埋めているでも、中身を開いているでもない、ただ一箇所だけをくすぐる行為に、光は延々と我慢を続けていた。
 感度がゼロに近い彼女のことだ。
 今のところ、本当にくすぐったいとしか思っていないだろう。
 だが、時間はたっぷりとある。
 これはまだ、始まりに過ぎないのだ。
 二時間も三時間も、放映に当てる尺があるわけではもちろんないが、二十四時間テレビの放送が始まって、これはまだ早朝のパートに過ぎない。
 テレビ放送としては、やがて別のコーナーへ移行する。怪人による放送ジャックなどなかったように、トーク番組の予定通りに芸能人を集めたり、全年齢の健全なバラエティがいくつも挟まり、やっとのことで光の調教コーナーが再開される。
 クイズ番組で答えはCMの後で、などと言ったりするが、ならば光の調教は、開発の進行具合は次のこのコーナーの後で、といったわけなのだ。
 だから放送がされていない、視聴者の視線などないあいだも、アソコへの愛撫は続いていた。包皮越しにクリトリスを狙う指先によるマッサージで、それこそ二時間近くは刺激を与え、白衣の男は本当にじっくりと開発を進めていた。
 本当の本当に、半日以上はかけて、辛抱強く感度開発を行うのが、南条光を扱うエロバラエティの企画内容なのだった。

     *

 本当に延々と触られ続けた。
(こんなことして、マジで何になるんだよ……)
 性知識の欠けた光には、白衣の男のやっていることがわからない。
 確かに、女の子の体に触るのは、男にとって面白い事なのだろう。その触ってみたい場所が、お尻でもオッパイでもなく、アソコという事もあるのだろう。
 だが、この男は小一時間、ずっとアソコばかりを触っていた。
 番組が一旦切り上げられ、放送には別のバラエティが乗っている間中、感度開発という企画通りに、光のアソコは指先でくすぐられ、さすがの疑問を抱き始めていた。
 いくらなんでも、これだけ長時間、ずっと同じことをしていて飽きないのか。
(いつまでやってるんだか……)
 長く同じ体勢でいるために、いっそ座り疲れていた。アームへの足の固定でM字開脚を強要されているが、この脚の形もなんとなく疲れを感じていた。
 そんな光に対しての、止まることのない愛撫が続く。
(なんか……なんだろ、この感じ……)
 撮影再開の時間が迫り、再びこの姿が放送に乗ろうという直前、やっとのことで光は感じる。妙にムズムズとするような、ただくすぐったいだけではない、今までとは違う感覚の走る感じに違和感を覚え始めた。
(なんだ? なんなんだ……?)
 困惑しているところで改めてカメラは回り、生放送が再開される。自分の顔がテレビに流れているとなった途端、光は表情をさっと切り替え、さすがに退屈している少女から、囚われのヒーローに立ち戻った。
「どうだ? 少しは何か感じてきたのではないか?」
 白衣の男が問いかける。
「ふんっ、どうもこうも、アソコなんか触られて、最初から今の今まで、ずーっと気持ち悪いぞ」
 ヒーローとしての台詞を光は返す。
「おやおや、これだけたっぷり時間をかけたのに、未だに趣向すら理解しきっていないとは、一体どれだけ純粋に育ってきたのやら」
 呆れるでも辟易するでもない、むしろ楽しげにした白衣の男は、指遣いを活発にして攻め立てる。柔らかに踊る指先は、クリトリスのポイントを集中的にくすぐっていた。
(本当に何か……ヘンな感じが……)
「本当は感じ始めているな? 何かを」
「何かって、何だよ」
「さあ? 何かな?」
(くっそぉ、いつまで続くんだ……)
 今のところ光は、自分の体に起こったことを自覚していない。ムズムズとするような、ヘンな感覚としか思っておらず、自分が気持ち良くなり始めているとは思っていない。
 だが、光は確実に感じ始めている。
 自覚がなくとも、クリトリスは徐々に突起しつつあり、いずれは愛液も出て来るはずだ。
 しかし、白衣の男は手を離し、急に位置を変えてしまう。
 せっかく、ここまで仕上げたのに、背後に回って後ろから、今度は乳房を揉み始めていた。最初は手の平でまんべんなく包み込み、指を踊らせ揉みしだき、それを数分も続ければ、乳首だけをくすぐるタッチとなって攻め立てていた。
 乳首の開発に移ったのだ。
 乳輪をぐるぐるとなぞり続けて、その指の回転がたびたび乳首に掠めている。そんな愛撫による刺激は、光にとってはやはりムズムズと、ヘンな感覚をもたらすものなのだった。
 まだまだ、光は明確には感じない。
 この放送中にも、喘いだりビクビクと反応するような、わかりやすい快楽を示すことはなかった。
 ただ、調教は続く。
 カメラが回っていなくとも、白衣の男は乳首への刺激をやめていない。
 同じ姿勢のままでは疲れるからと、一旦は分娩台から解放しても、今度は台に寝そべらせ、仰向けの光に向かって手を伸ばす。いつまでも乳首に指を絡めて愛撫を続け、上下に転がし始めていた。
 そして、これだけ刺激を続けていれば、さすがに血流が胸に集まり始めていた。
 乳首が突起を始めている。
 徐々に硬さを帯びていき、指が触れての刺激も今までとは異なるものとなっていく。
(なん……だ……?)
 光は内心で首を傾げる。
(胸もなんか、すっごくヘンな感じに…………)
 もう気持ち良くなっているのだ。
 皆無に近かった感度が開発され、やっとのことで多少の快感が生じている。
 そんな光の様子を悟ったスタッフは、次にカメラを回す時、ちょっとした趣向を凝らすことになる。
 それにより、感度開発はさらに段階が進むだろう。