後編 ゼーレの受ける機械調教
ゼーレは知らない。
男が何も説明していないのだから、知る由もないのだが、取り付けられた電極パッドは、ゼーレの肉体に性感が走った際の、神経信号や筋肉の動きを読み取っている。機械的に感じさせ、媚薬も浸透させての反応をサンプルとして採取しているのだ。
ぽたり、
と、分娩台に実のところ小さく空いている穴の中へと、一滴のしずくが落ちた時、床に置かれた器がそれを受け止める。データばかりか、こうして愛液の採取まで行われていた。
ゼーレは実験体やサンプルの扱いなのだ。
ただ商品として調教され、いずれ売り飛ばされるだけではない。こうしてデータを採取され、感じた際の反応や愛液の量さえも、ゼーレの知らないところで何らかの用途に活用されることとなる。
*
ゼーレの乳房には、さらに新たな器具が取り付けられる。
「ぬっ、あぁ――あっ、んぅぅ――――」
搾乳機だった。
吸盤のように吸いつく器具の、ベルのような形状が乳首を飲み込み、分泌液を搾り取ろうと刺激を与える。さらに乳房の周囲には、それぞれ一本ずつの触手が表皮を撫で、ねっとりと愛撫していた。
それら乳房に絡む触手は、どちらも先端を柔らかな毛のブラシとして、身体をくすぐる目的で可動している。
表面をすりすりと、横乳や下乳を優しく撫でて、軽やかに刺激を与えていた。
「はぁ――くっ、んぅ――んっあっ、あぁ……!」
今やゼーレは膣と肛門だけでなく、乳首や乳房の気持ち良さでも身悶えして、淫らな声を吐き散らす。
「あっ、くぁぁ――!」
時折背中が浮き上がり、落下のように背もたれに叩きつけられて、それがガタッ、ガタッ、とした揺れとなる。
「んぅぅ――あっ、んぁぁ……!」
髪を振り乱し、汗を流すゼーレの悩ましい表情は、本人の意図しない色気を存分に振りまいて、男の目を大いに楽しませていた。
「いいぜいいぜ? その可愛い反応を見てると、我慢するのが大変だぜ?」
「あっんぅ――んぁぁ――――!」
自分の反応が男を楽しませている事実が気に入らず、どうにか快楽を我慢したいと、意思こそ抱きはするのだが、溢れんばかりの刺激の波に、そんな思考はすぐさま押し流されてしまう。
もはや意地すら保てない。
多量に生まれる快楽の、神経信号として行き交う電気の津波に脳内が支配され、ものを考える余裕がほとんどない。時折、辛うじて生まれる小さな小さな余裕の隙間で、ふと思い出したように意地になったり、睨み返しているのがせいぜいだった。
「あっんぅぅ――」
その時、乳房から何かが染み出る。
(な、なんで!?)
と、まず驚いた。
触手が挿入されるまで、そもそも処女だったゼーレである。母乳が分泌される余地などないはずだが、しかし体内から液体が放出され、それが吸盤の持つ吸引力に吸い取られる感覚は確かなものだった。
一度や二度なら、気のせいとでも思っただろう。
しかし、決して思い違いでは済まされないだけの回数まで、似たような感覚が積み重なれば、もはや疑いようもなくなっていた。
確かに母乳が分泌されている。
(薬――どういう薬? あっあぁぁ――――)
自分から母乳が出る可能性など、何らかの薬品の効果としか考えられないが、浮かび上がった思考は直ちに快感に押し流され、ゆっくりと考え込む余裕を持てない。
「あっ! あっ! あっ! あっ!」
全身が反応していた。
手錠の鎖が執拗にじゃらついて、両脚も跳ね上がる。ベルトが食い込むのも厭わずに、アームごと持ち上げようとする勢いで動く両脚は、パーツの強度がなければとっくにベルト周りを破損させていたことだろう。
「あぁ――くっ、くぁぁ――――!」
モニターには膣壁の様子が映っている。
ゼーレ自身にはどちらの穴かもわかっていないが、触手の先端にある小型カメラと小型ライトで、照らし出された膣肉が粘液をキラキラと反射している。
閉じ合わさった壁の狭間に潜り込み、こじ開けながら奥へと進み、交代時には空いた隙間が自然と閉まる。そんな淡々とした繰り返しの映像に、ゼーレは不意に少しでも余裕を持つたびに目を向けて、視覚的にも辱めを受けた気持ちになって顔を背けていた。
「あぁ、んぅぅ――――――――――」
ビクっと胴が跳ね上がり、アーチのように持ち上がろうとした直後、少しでも浮いた腰と尻がどすんと板に置かれ直した。その際に巻き上がり、周囲に四散した潮の滴は、太ももや肩周りに付着していた。
もはやゼーレは簡単に絶頂するまでに、すっかり全身の感度を上げ尽くしていた。
「んっ、んぅぅ――――!」
数分後にはまたビクビクと痙攣のように胴体を蠢かせ、潮を噴出して周囲に散らす。今度は床にも何滴か落とした上で、イったからと触手が止まってくれるわけではなく、絶頂直後に対して容赦なく刺激は続く。
「あっがぁ――」
首で仰け反り、肩周りを浮き上げる。
「んぅ――んぅぅぅ――――!」
頭を激しく振りたくり、また絶頂で腰を浮かせる。撒き散らす潮が今度は頬にも及んだ挙げ句、モニターの中身も切り替わり、汁を噴き出すワレメのヒクヒクとした蠢きから、湿っぽい空気の漂うところが大きく拡大されていた。
「あっ、んぅ――いっ、いつまで……もういいでしょ――あっ、んんぅぅ……あぁ……!」
ほんの少しでも余裕を取り戻し、睨み返して声を荒げるゼーレだが、やはり直ちに快楽の波は押し寄せる。威勢の良い言葉を放ち続けていることができずに、言葉は途中で喘ぎ声へと移り変わった。
「あっ、あぁ――あぁぁ……あぁぁ……!」
首で仰け反り、頭によって胴体を押し上げる。首を使ったブリッヂのような状態で、大きく開いた顎を左右に振り回し、太ももは極めて激しくもぞもぞと蠢いた。
そして、また絶頂。
「んぅぅぅぅぅ――――――!」
イク際の反応で、跳ね上がろうとする太ももは、ベルトを内側から押し上げようとしていた。それで持ち上がることはなく、やはりアームが揺れるだけに留まって、数秒後にはだらりと脱力して垂れ下がる。
「んっ、あっやぁ――――」
その気力が抜けたはずの太ももに、直ちに快楽電流は流れ直して、また足首が反り上がる。指が開閉を繰り返す。髪を振り乱す動作も止まらず、ゼーレには休む暇など与えられはしなかった。
絶頂の余韻が残る体に、機械は一度たりとも停止せず、そのまま刺激を継続する。
乳首を見れば、ベル状の吸盤の内側が白く汚れていた。出て来たものは基本的に吸引され、チューブを伝ってタンクの中に蓄積されるが、吸われきらずに汚れとして残ったものが、徐々に吸盤の透明さを奪っている。
カプセル状の機械の中にデータは溜まり、喘ぎ声の声紋や筋肉の反応に、ゼーレが一体何回イったかの回数さえ記録されている。
データ採取は延々と続いていた。
一体何十分、何時間続けるつもりかもわからない、終わり知らずの刺激を受けるゼーレを残し、男はその場を去って行く。
「メシでも喰ってくるかねぇ。ま、せいぜい頑張れや」
そう言い残し、去っていく男に向かって、ゼーレは一度だけ声を荒げた。
「待っ――と、止め――これ以上…………!」
このまま放置していく気か、せめて休憩くらい与えろと、そんなつもりで叫んだ声は聞き流される。
「あっ、あぁぁ――!」
ドアが閉ざされた時、ゼーレはイった。
もはや自分のイった回数などわかりようもなく、そのカウントはデータだけが把握していた。
*
男だけが休憩を取っていた。
ゼーレの様子を見張り疲れ、一時的に部屋を去り、そして言葉通りに食事を済ませる。さらに仲間と悠長に雑談したり、長々とトイレで過ごしたり、無駄に時間を浪費してから、やっとのことで部屋に戻ろうと廊下を進む。
その頃にはもう数時間以上が経過していた。
「さーて、一体どうなってるかねー」
ドアを開き、部屋へと入る。
「と、止めなさい! 限界――限界よ……!」
「おやおや」
人の気配を察知するなり、即座に声を荒げて要求してくる。その威勢の良さといったらない。あれだけの目に遭っていながら命令口調である部分に、なかなかの気丈さを感じられた。
「ま、そういうのが好きな買い手もいるかもな」
男はカプセル状の機械へ向かっていき、ぜーレにとっては本当にやっとのことで、停止ボタンを押すこととなる。
「はぁ……はぁ……あっ、はぁ……はぁ…………」
随分と息を大きくしていた。
呼吸が激しいあまりの肩の上下するリズムはやや激しく、肋骨が膨らむことでの乳房の上下もよく目立つ。
男は機材の取り外しを行った。
膣と肛門の触手を引っ張り、乳首を吸引している搾乳機も引っ込める。スイッチを押すことにより、カプセル状のマシンにそれら触手やチューブを格納させ、改めてゼーレに目を向けた。
「ご満足ってわけ?」
なおも強気に睨み返し、その瞳には恨めしさをたっぷりと込めてきている。
「さあな」
男はワレメと肛門に目を向けた。
数時間にわたってピストンを繰り返し、ほぐし続けたどちらの穴も、すっかり緩んでいることだろう。その具合を確かめるべくして、男は二本のプローブを用意していた。
「こいつが何かわかるか?」
右手に握る二本の棒を見せた途端の、ゼーレの戦慄はなかなかのものだった。
「なっ! ま、まさかまだ――!」
「なーに、仕上げだ。これでどこまで調教が進んだか、いっちょ確かめてみようってわけさ」
男はまず上の穴に先端を押しつける。膣口の位置に合わさり、たった数ミリでも先端が埋まった途端、ここまで存分に濡れ尽くした膣壁は、その挿入をあっさりと受け入れていた。
これら二本のプローブは、膣や肛門の締まり具合を計測して、数値を示す測定器具の役割を兼ねている。グリップ部分に現れたデジタル表示の数値を見るなり、男は軽く感心した。
どうやら、大きく数字は変わっていない。
だがそれは、ゼーレが拒絶を示しているからだ。拒みたいあまりに下腹部に力を入れ、膣壁を少しでもぎゅっと締め上げ、閉ざそうとしているからだ。
それがかえってグリップを握り締め、圧力を加えている。
「んじゃ、下の方もっと」
今度は肛門に押しつける。
ゼーレの皺の窄まりは、ワレメから垂れ流された愛液をたっぷり帯びて、ふやけんばかりに輝いている。そのぬかるみに先端を当てた時、やはりあっさり滑り込み、プローブは入り込むことになるのだが、拒もうとする力自体はかかってきて、男はそれを腕に感じていた。
そして一歩下がってゼーレを眺める。
「くっ……!」
身動きの取れない、ただ睨み返すことしかできないゼーレの、怒りと羞恥に赤らみ尽くした眼差しが真正面から突き刺さる。
恥辱に染まった瞳にはそそられる。
プローブにはまった穴から香るメスの匂いと、存分に温まっての湿っぽい熱気が股の周りを漂っていた。
「きっと高く売れるぜ?」
と、告げてやる。
「ふざけないで。商品になんて、絶対に……」
「買い手がつくのを楽しみにしてな」
地上に買ってもらえるのだ。
上でいい生活ができるなら、彼女にとっても良い話になるだろう――性奴隷としてではあるが。