第3話 機械の登場

 もう何人か、入れ替わり立ち替わりの、指の挿入が繰り返される。根元まで差し込んだら、すぐに次の順番に譲って終わる、ただ具合が確認され続けるだけの時間に、カイニスの次の言葉によって変化が起こる。
「そろそろ刺激してやるといい」
 彼女の言葉に従ってか、次に挿入してくる男は、指をピストンさせてきた。
「んぅ……あっ、あっ……!」
 強い刺激が走った。
 腿がぴくっと跳ね上がり、ベルトもろともアームを持ち上げ分娩台を一瞬揺らす。愛液が滴るせいか、指と膣壁の狭間で汁が捏ねられ、くちゅくちゅと小さな小さな音が立っている。
 さらにカイニスが横から手を伸ばし、乳房を揉むなり乳首を摘まんだ。指圧によるマッサージを加えられ、胸にも刺激を感じるアグライアは、さらに呼吸を乱して喘いでいた。
「あっ、あぁ……くっ、んっ…………」
「おや、いい顔になってきた」
「そう……で、しょうか……」
「頬は赤く、呼吸は乱れ、表情にも反応が見受けられる。屈辱というだけではあるまい? アグライア、お前はそろそろ快楽について自覚しているはずだ」
 嬉々とした表情でカイニスはそう語る。人の姿がどう見えているかについて、本人に向かって言って聞かせてくる彼女の、誰かの堕落に喜ぶ顔に、その思い通りになる屈辱をアグライアは感じていた。
「さあ……んっ、どうで……しょうね…………」
「誤魔化したところで、この乳首が物語っている。お前がどれほど、この状況を気持ち良く思っているかについてな」
 カイニスが指を上下する。人差し指を真っ直ぐ伸ばし、素早く動かし乳首を転がし、そうして走る刺激が乳房を満たす。
「あっ……あぁ……あっ、あっ………………」
 どうしても、声が漏れる。
 乳首の快感も、アソコに出入りしてくる指も、アグライアの肉体を強く責め立て、芯から火照る体が興奮の度合いを上げていく。
 その時だった。
「頃合いだ。あれを」
 カイニスが男の一人に命じると、台の上に置かれた籠、その中身が現れた。男からカイニスへと手渡され、そして彼女が装着するのはグローブだった。
 指や手の平の部分はありふれた軍手ほどの厚さだが、手首の部分だけが厚い手枷のように太い。
 単なるグローブではあるまい。
(何をする気なのでしょうね)
 アグライアは警戒していた。
 おそらく手首の厚い部分にバッテリーを内蔵して、手の平や指の部分には何らかの機能が備わっている。布を二重にでもして、小さなものが狭間に仕込まれているのだろうとアグライアは想像していた。
「これはセンサーやマイクロカメラを仕込んだ特別なものだ。無線式のデータ送信を行い……いや、説明するよりも、アグライア……実際に体感してみた方が早いだろう」
 カイニスが指を挿入する。
 まさにそのタイミングで、アグライアに見えやすい、正面の方向にモニターが現れた。キャスター付きの台に乗せられ、点灯した画面に映っているのは――肉だった。
 まるで生肉に穴を空け、そこにレンズを押し込んだかのような映像が、カイニスの指の動きに連動して蠢いている。指が外へ出ていけば、映像も穴底から遠ざかる。指にカメラが付いていなければ説明できない、膣口の中身を中継した映像に、アグライアは直ちに先程の言葉を思い出す。
 本当にマイクロカメラが仕込まれているのだ。
 しかも、その中継をアグライア本人に見せつけてこようとは、随分な趣味をしたものではないか。
「どうだ? 普通は見えない場所を見るというのは、好奇心をくすぐられるのではないか? いや、長寿のお前がとうにそんな歳のはずもなかったか」
 カイニスは愉快そうに出し入れを繰り返し、さらに手首のスイッチを押し込んだ。内部的なパッドが起動して、ぴりぴりと淡い電気が走る刺激が入り、その快感にアグライアは咄嗟に顔を硬くした。
「うっあっ……!」
「おっと、顔色が変わったようだ」
 ニヤっと、カイニスは笑っていた。
「そう……でしょうか……」
「ああ、そうとも」
 カイニスは再び手首に触れ、カチカチとボタンを押して出力を切り替える。まるで指が振動でも始めたような、膣壁を内側から震わされる刺激を受け、そのせいかますます愛液が噴き出していた。
「あぁ……あっ、あぁ……あっ、んっあっあぁ……!」
 刺激の強さに太ももが震え、脚が上下に蠢きベルトが持ち上がる。それによってアームから台座へと振動が伝わって、小さくではあるが分娩台が揺れていた。
「あああっ……!」
 より大きな声が出た
 その直後である。
『あああっ……!』
 たった今の声が再生される。
 膣壁の映るモニターで、一人の男が何やら周辺機材を触っていた。人の声をリアルタイムで録音して、ここぞとばかりに聞かせてきたのだ。
「よくも、こんな真似を思いつきますね……」
 人の喘ぎ声を再生して本人に聞かせてみようなど、この中の誰が思いついた事なのか。あるいはこれも、カイニスが考えた数十通りの計画の一つなのか。
「ひゃっ! あっ、いやぁ――あっあぁぁ――!」
『ひゃっ! あっ、いやぁ――あっあぁぁ――!』
 声が出てしまった途端、すかさずそれが再生される。お前はこんな声を出したのだぞ――そう伝えんばかりの態度が、空気として形成されていた。
 そんな中で声など出したくはないのだが、刺激の強さで呼吸の荒さを抑えきれない。どんなに快楽を抑えたくとも、胴がピクピクと蠢いて、髪も振り乱してしまうアグライアであった。
「アグライア、膣の蠢きが映像に現れているぞ」
 画面の肉ヒダがヒクヒクと脈打っている。
「そのようです……んっ、ね……あっ……!」
『そのようです……んっ、ね……あっ……!』
 口を開いた拍子にまた喘ぎ声は出てしまい、その再生が心を辱める。
(まったく……)
「このまま、どこが弱いのか探してみよう。このあたりか? それともここか?」
 カイニスはモニターを見ながら膣壁の触る位置をずらして、どこかに弱点が存在するつもりで探り始める。指の腹を下向きにしばしなぞられ、上向きでも摩擦され、挿入の深さも変えながら、幾つものポイントを調べられ、その最中にもアグライアは髪を振り乱してしまっていた。
 どこを探られても声が出る。
(そんな……特別な弱点など……)
 そこだけが特別に感じるというような、秘密のポイントが膣壁のどこかに分布しているなど、そんな事があるはずはないとアグライアは考えていた。
 だが、その時だ。

「あっ、あぁ……あっ、あぁ……あっ……! あぁぁぁ!」

 そのポイントがあった。
 上向きの指をぐっと天井へ押しつけられ、振動が強く伝えられた時、膣壁を通じたその内側、クリトリスにまで快楽が伝わって、アグライアは目を見開いてしまっていた。
『あっ、あぁ……あっ、あぁ……あっ……! あぁぁぁ!』
 声を再生され、聞かされて、その恥辱にアグライアは苛まれた。
「ここのようだな」
 ポイントを見つけたカイニスは、その一点を重点的に指でなぞって刺激してきた。
「あぁぁ……! あっ、あっ……! あぁ……!」
 本当に気持ち良かった。
 信じられないほどの刺激が走り、アグライアは目を大きく見開いていた。
「あっがぁぁ――!」
『あっがぁぁ――!』
 話は膣への刺激や声の再生だけではない。
「このグローブはな? アグライアぁ……バイタルを取得している。どの部分でより感じたのか、データに記録されているわけだが……」
 カイニスは指を抜く。
 強烈な刺激から一瞬だけは解放されるも、入れ替わりで細いバイブが現れた。グローブを外した彼女はそれを握って、指を二本束ねるよりも少し細い、ピンク色の器具を奥へと押し込みスイッチを入れる。
 やはり振動した。
「んぅああっ! あぁ――あぁぁぁ――――!」
 大きな声で喘がされ、それにモニターにも映像が続いていた。グローブが外れた時には一時的に途切れたが、バイブの挿入に合わせて改めて中継され、振動に揺るがされる膣壁の有様を突きつけられる。
 ただの振動ではない。
 おそらく皮の裏側にはミリ単位の電極がいくつも散りばめられており、振動の強い箇所、弱い箇所がバイブの表面に分布している。膣壁の上側、クリトリスへと通じるポイントに限って刺激が強く、カイニスの握り方も上に密着させようとするもので、震える膣壁から愛液が勢いよく滴った。
「あっ! あっ! あっ! あっ!」
 髪を乱していると、不意に刺激の在り方が変わった。カイニスがグリップのスイッチを押したかと思ったら、設定の切り替えでも行ったのか、ピリピリと流れ込んでくる刺激となって、それがまた快感だった。
「あぁぁぁぁ……! やっ、いやぁ……!」
『あぁぁぁぁ……! やっ、いやぁ……!』
 そしてまた、自分の喘ぎ声を聞かされる。
 さらにそればかりか、このバイブにはピストン機能さえ搭載されていた。カイニスがグリップから手を放し、なのに前後に動き始めてアグライアは驚いた。
「あっ……がっ……!」
 独りでに動いている。
 誰も触れていないのに、まるで透明人間がグリップを握ったように動いている。電流を流し込まれるような刺激の、それがツボを貫く快楽と共にピストンの摩擦まで襲ってくる。二重の刺激で首が仰け反り、頭で背もたれを押し返して、アグライアはビクンと胴体を浮かせていた。
「どれが一番気持ちいい? どれが好みだ? 感じ方を暴いてやろうじゃないか。お前の反応の強さが計測され、どんどんログが溜まっている。機械がお前の性癖を暴く」
 バイブが振動に切り替わる。
 ブィィィィ――と、震えを伴うピストンが膣を抉って、アグライアはその快楽に翻弄された。
「あっあぁぁ――――!」
 大きな声を上げた時である。
「カイニス様、今のは大分――良かったようですな」
「ほう? 今のか」
 快楽の嵐に晒されて、髪を振り乱すばかりのアグライアには違いを感じる余裕もなかったが、データでは何か観測されたらしい。そのせいか振動が強くなり、膣壁がじっくりと震わされ、内側からクリトリスへと届く刺激でビクビクと脚が弾んでしまっていた。

「あぁぁぁぁぁ――――――!」

 その時、潮が舞い上がった。
 何滴かの滴が上がる噴水から、アグライア自身の体へと雨が降り、ヘソや内股にぱらぱらと付着していた。
「半神ならば耐えるだろうと想像していたのだがな」
「あなたは――」
 何か言おうとしたアグライアだが、途端に刺激の強さ切り替えられる。
「あっあぁ――あっ、あぁぁぁ――!」
 喋る余裕が失われ、言葉の代わりに喘ぎ声を吐き出して、アグライアは改めて髪を激しく振り乱す。
 振動が強くなっていた。
 自動的なピストンも再開され、膣口をじっくりと嬲ってくる。弱い部分に押し当たるように、上へと力がかかってきながら出入りして、その刺激が下腹部を細やかに震わせる。
 それをカイニスは優越感に満ちた眼差しで見つめていた。
 男達もニヤニヤと、興奮を隠さない目つきでアグライアの事を視姦している。
 辱めの極地で苛まれ、アグライアは喘ぎ続けた。
「あっ……! あっ……!」
 拘束から逃れる事も、快楽を拒む事もできない彼女には、与えられる刺激の通りに喘ぐ事しかできなかった。
「アグライア、お前の処女を奪ってやるぞ? せっかくの乙女だからな――機械で喪失させてやろう」
 もうカイニスの言葉も届かない。
 頭の中にすら快感の嵐が吹き荒れて、何か喋っている事はわかっても、言葉の内容が処理できない。ただ薄らと、新しい企みの気配について感じるだけで精一杯だ。
 キャスター付きに台が手押しされ、床でタイヤの転がる音が聞こえた。男という男の数々の、一人が大きな機材を移動させ、アグライアの前まで運んでいた。

 ディルドを生やした箱状の機材であった。

 テーブルほどの高さの箱の、銀のフレームに覆われたフォルムの横面に、ボタンやモニターなど操作系統がちらりと見えて、ディルドの切っ先がアグライアへと向けられる。震えるバイブを停止して、今度は代わりにそれが入って来ようとしていた。
 ぴたりと押し当てられ、アグライアは息を呑む。
(こんなもので……私を…………)
 脱出したいと考えても、やはり体に力が入らない。迫るディルドをただ受け入れる事しかできないアグライアは、嫌でも覚悟を決めるしかない。
 それにしても、凶悪なデザインである。
 太いのはもちろんのこと、弓なりのカーブで反っている。表面がまんべんなくイボに覆われ、亀頭にすらそれら突起が生やされている。
 竿にはいくつかの継ぎ目があるが、もしや内部にモーターの芯が入っていて、回転機能が備わっているのかもしれない。
「どうだ? 見てみるといい。これがお前の処女を奪う素敵なペニスだ。まったく、羨ましいものだなぁ?」
 カイニスが横から手を伸ばし、くいっとアグライアのあごを持ち上げる。俯いていたアグライアの視線は、そうして機材を真っ直ぐに見つめさせられていた。
「羨ましいなら、あなた自身が遊ばれてみては」
 皮肉が彼女には届かない。
「アグライア、私はお前の喪失が見たい。ああ、アグライア、アグライアが散らすぞ……!」
 機械で人の処女を奪ってやる。
 それがカイニスにはよほど面白い事らしく、これから起こる出来事を前にして恍惚としていた。
 ……入ってくる。
 太い亀頭が性器へと押し当てられ、肉貝のぷっくりとした膨らみが潰される。