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 基地の案内を受けるレーナは微妙によそよそしくて、シンもいつもと比べて何かを意識しているような――相変わらず表情の変化はわかりにくいので、シンの方は気のせいかもしれないが。
 お互い、気でもあるのか?
 まあ、いいだろう。あってもいい。
 しかし、シンに必要な資格はないが、レーナの方にはある。共和国の分際で、有色種を迫害しておきながら、その有色種と恋仲になるなどおかしいだろう。そうだ、シンからレーナへの気持ちは自由でも、レーナからシンというのは資格がいる。
 まったく、都合良くエイティシックスを意識しやがって。
 やはり、まだまだレーナには受けるべき制裁が足りていない。
 そう確信したはいいが、ライチェスにも日頃の訓練とか、出動任務とか、勉強とか、時間が空いた時には友達と過ごしたり、色々とあるわけで、制裁を実行しようにも、そのタイミングを探す監視を常にしていられるわけではない。
 初日はシャワーを覗く程度にしてやった。
 その後の、シンに基地を案内してもらうくらいは勘弁して、初日くらいはもう何もしないでやることにしたが、ずっと見逃しているわけではない。
 数日かけて、ライチェスは機会を窺った。いくら異能があるとはいえ、使ったあとはしばらく頭が痛いのだ。酷い時にはいつは脳のスイッチが勝手に切れ、気がついたら眠っているなんてことになる。
 本当は乱用したくはないが、限られた時間でレーナを追いかけ、制裁のチャンスを見つけ出すには、どうしても異能が必要だった。なるべく節約というか、脳に負荷をかけすぎないようにはするが、まったく使わずに監視することはできなかった。
 苦労の末、やがてチャンスは訪れた。
 レーナは一人、図書館へ向かって出歩き始めた。
 その直前まではシンと同調していて、察するにシンに案内をしてもらう気でいたが、予定が合わなかったのだろう。シデンにも繋いでいたが、そちらとも都合がつかず、シンもシデンも駄目なら、その隊のメンバーも空いていなかったはず。
 で、まだ連邦人で誘える相手はいなくてか、レーナは一人で町を出歩き、案内なしに微妙に道を迷いつつ、案内板を見たりしながら図書館へ向かっていた。
 ライチェスはその後を尾行した。
 異能は発動しており、なのでバレないように気をつける必要はなく、周りの無関係な通行人の視界にすら、ライチェスの姿は見えていない。
 どうでもいいが、軍服が青に戻っている。一房だけ染めていた赤い部分も、髪を元に戻している。ライチェスの知らないところで、何か思い直すところがあったのかは知らないが、ともかく今は紺青の軍服に、腕章を付けて出歩いている。
 まあルックスは大したものだ。
 長い髪で背中を隠し、その銀色を揺らして歩く後ろ姿は、否が応でも美少女を想像させる。つまり素顔を知らずにいきなり後ろを見たとしても、可愛い子に違いない、みたいな期待感を煽られたはずなのだ。
 けどな、可愛かったら許されるわけじゃないんだよ。
「さて、それじゃあやるか」
 今日は制裁を下す日だ。
 一体、どんな制裁を下すかは、色々と考えてはしたが、まずは手始めにこうしてやろう。
 ライチェスは隣へ駆け寄り、その横顔を眺めながら――尻を触った。
 レーナは何も反応しない。
 接触に気づかせるか、気づかせないかは異能の発動具合で選べるので、自分の尻に手が置かれているのも、そのために肩甲骨のあたりとか、他の部分にもライチェスの身体が当たっているのも、レーナーは少しも気づいていない。
 実際、レーナの感覚では、何も起こっていないし、ここにライチェスがいるという事実も存在しない。それをいいことに尻に指を食い込ませたり、撫で回したりして、まずはひとしきり感触を確かめた。
 歩いている人間の尻を触り続けるのは、微妙に手こずる作業だったが、どうにか歩調を合わせて楽しみ抜いた。
「なるほどな」
 見た目は既にチェック済みだが、触ってみると改めてボリュームを実感する。厚みがあり、膨らみの分だけ円形のカーブも手に伝わる。つまりデカい。魅力的な尻だ。
「けどな、ケツがすげぇからって、そりゃ関係無いんだよな」
 さすがに触りにくいので、また後にしようと手を引くと、その直後にライチェスは思いつく。
 町を歩くということは、つまり通行人とすれ違ったりするわけで、ということはレーナの正面方向から、恰幅の良い男が歩いてくるのも当たり前だ。
 レーナはスカート。そして、前から人が歩いてくる。
 このタイミングで強風が吹いたら? まあ風は吹かせられないが、レーナや通行人の男の方は、風のせいだと思い込むかもしれない。
 ライチェスはレーナのスカートを捲った。
 恰幅の良い男の、その目が美貌に釣られていたので、その素晴らしいタイミングに合わせてスカートを握り、ぐいっと持ち上げてやった。
「黒か」
「え? きゃああああ!?」
 ざまみろ、共和国人。
 最初の一瞬だけ困惑して、すぐさま自分のスカートを確認して、真っ赤になって悲鳴まで上げる姿は傑作だ。もちろん恰幅の良い男も、ばっちりと見たはずで、微妙に嬉しそうにしていた。
「なんか、すまんね。というか、ありがとうございます?」
 その男はお礼の言葉に謎の疑問符を付けてから、気まずくもあり、嬉しくもあり、といった顔でレーナの横を通りすがっていく。
 で、レーナといったら、両手でスカートを押さえていた。必死になって引き下げて、元に戻した上で太ももに押さえ込み、また何か起きやしないかと警戒を続けている。いつまでも顔を染めたまま、きょろきょろと周りを気にしている。
「ぷっ」
 その腰がくの字になっているものだから、せっかくなので触りやすいうちに手を置いて、ライチェスは厚みある尻肉を撫で回す。尻たぶの丸みに沿ってぐるぐると、時計回りに手の平を這いずらせ、それが微妙な衣擦れを起こしているので、鋭い人間の目で観察すれば、ここに透明人間がいそうだと想像をするだろう。
 もっとも、今振り向いてみても、先ほどの男の背中以外には、今は別に誰もいないが。


 ところで、認識阻害は完璧なものでなく、あくまで人間にしか通用せず、カメラには写ってしまう。不完全なところは他にもあって、接触に気づかせないことはできても、無理のある行為をすれば、さすがに違和感を抱かせる。
 歩いているところに抱きついたり、読書とか食事の時に手首を掴んで邪魔したり、行動を阻害すると違和感を抱かせる。いくらなんでも、何かが身体に接触しているはずだと、相手の脳がさすがに気づき、透明人間の存在までは教えてしまう。
 接触にまつわる認識阻害は、なので無茶はできないが、先ほどスカートを捲ったばかりのように、上手いことやれば着衣の状態は変えられる。
「へえ、連邦の歴史か」
 その後、レーナは図書館に到着して、目的の本棚の前で本を選び始めていた。
 つい先ほどまでは、やっと再び歩き出しても、妙にそわそわした様子で、頬にも赤らみをしつこく残していた。あんまり挙動不審に見えるから、次にすれ違う通行人が、なんだこいつ、みたいな目で微妙にレーナを気にしたくらいだ。
 そして、図書館の中に入って、こうして本を選び始めても、横顔を覗くとまだ少しだけ薄桃色が残っている。一度灯った羞恥の熱が引ききるまで、随分と時間がかかっているらしい。
「おっと、今なら触りやすいな」
 今ならちょうど本を選ぶため、その場に留まっている。これ以上に触りやすいタイミングはない。背後から尻に手を置き撫で回した。
 軍服越しにも、ふっくらとした感触が手の平によく伝わる。脂肪の部分はパン生地でも捏ねるように柔らかく、けれど筋肉の部分に指が至ると、そこには微妙な硬さがある。すぐ真後ろに立つ男に、どれだけ自分の尻が楽しまれているかも知らず、レーナは気になる本に手を伸ばし、ページをいくつか捲っては棚に戻して、また別の本を手に取っている。
「ま、うちの歴史を知っておこうってのは感心するよ」
 これと思う一冊が見つかれば、席でゆっくりと読むのだろう。
 少しばかりリスクはあるが、今のうちに後ろから抱きついて、前に両手を回して胸を揉む。白いブラウスの内側から、大きな乳房の柔らかさと、ブラジャーの触感がしっかりと指に伝わり、ライチェスは鼻息を荒くした。
 こうして背中に身体を密着させ、腕まで巻きつけている状態は、行動の阻害を起こしやすい。文字に集中して動かず立ち止まっているからいいが、急に動こうとした時に、まだライチェスが抱きついていれば、その動作を封じることになる。
 動作を封じれば、相手の脳に透明人間の存在までは気づかせる。
 せっかくなので、本当はもっと長めに揉んでいたいが、今はまだ気づかせる予定はないので、素早く用事だけを済ませて手を引いた。
 さて、そちらの反応は後の楽しみにでもするとして、今は――。
 ライチェスはその場でしゃがんで膝を突き、改めてスカートを持ち上げる。顔を近づけていることで、視界の半分以上がヒップに占められ、黒いショーツの一点だけに視線は繋ぎ止められることになる。
「すっげぇな」
 漆黒が微妙なずれ込みを作り上げ、割れ目の溝に布は少しばかり巻き込まれている。柔らかな膨らみにゴムが当たって、ぷにりと微かに押し潰しているおかげで、その僅かな凹凸が尻の魅力を増幅していた。
 前側がどうなっているかも、道端で捲った時に覚えている。
 レーナのショーツは前側と尻側で異なる布を繋ぎ合わせて、前後で色合いが異なっている。黒は黒でも後ろの方が漆黒で、前側の方がグレーに近い。そのグレーの上にはより濃いグレーのフロントリボンや薔薇の刺繍による飾り付けが施されていた。
「パンツを見られているとも知らずに」
 ライチェスはポケットからカメラを取り出す。
 改めて、ライチェスの異能ではどこまで認識させ、何を認識させないかは、ある程度自由に選べる。これから出す音を聞かせるか、聞かせないかも自由なのだ。


 レーナは連邦の歴史に目を通す。
 この国で指揮官をやる以上、訪れた土地の歴史を知るのは責務であり、見聞を広めるにもちょうど良いと思って本を求めた。ついでに周辺の地形を知ったり、歴史上の戦略に目を通せれば、指揮に役立つ機会があるかもしれない。
 忘れましょう――さっきのことは……忘れる……忘れる……忘れる……。
 と、図書館に入ってから、道端でスカートが捲れたのを、まだしばらくは気にしていた。というより、少しでも早く気持ちを逸らし、他の何かに目を向けなければ、いつまでも忘れられそうにない。
 レーナは意識的に、本の中へと気持ちを逸らそうとしていた。
 何冊かの本を取っては戻し、取っては戻しとしているうちに、ようやく文字に集中できた。
 よし、これにしよう。
 そこでレーナは一旦閉じて、テーブルに足を向けようと――

 パシャ!

 そんな音が聞こえたのは、身体の向きを変えようとした直後だ。
「え?」
 カメラの音? こんなところで?
 妙に近くで聞こえた気がして振り向くが、レーナは棚と棚の間に立っていたわけで、後ろを見ても別ジャンルの背表紙があるだけだ。近くに人もいないので、誰が何を撮ったのか、どうして真後ろから聞こえた気がしたのかは、よくわからなかった。

 だが、そこで駆け去るような足音が聞こえた。

 慌ててその方向に目を向けるが、やはり人の気配はなくて、誰が走っていたようにも見えない。見えないのに、何か奇妙な違和感というか、肌がすーすーするというか、おかしな感覚がした。
「いえ、違いますよね……そんな……それはさすがに……だって…………」
 レーナは戦慄しつつ、ボソボソと独り言を呟きながら、恐る恐るといった具合に後ろへと手を伸ばす。

 スカートが捲れていた。
 持ち上がった丈がショーツのゴムにねじ込まれていた。

 な、なんでですか!? いつからですか!?
 大慌てで元に戻した。
 一体、何なのか。本当の本当に何なのか。パニックに近い頭の中には「何なんですか!?」がしつこく反芻して、もうそれ以外の言葉がない。
 先ほどのカメラの音は、なら図書館に痴漢がいて、こっそり人のスカートを捲って撮影したということ、とは思うが、シャッター音らしきものが聞こえてすぐ、レーナは後ろを見たはずだ。
 だいたい右にも左にも、近くに人がいなかった。本を選び始めた最初から、この棚の前ではずっと一人で、首を動かす際の視界のフレームにも、別に誰の姿もなかった。
 それでも撮った上、消え去った犯人は、一体どんな隠密行動を取ったというのか。こっそり捲るだけならありえるが、ショーツの中に丈をねじ入れまでされて、どうして気づかずにいられたのか。
「ど、どうしよう……どうすればいいんですか…………」
 レーナは思わず、首に巻いてあるレイドデバイスに触れかける。痴漢の相談ができる相手として、同性のシデンの顔が浮かんだけれど、犯人の見当はまるでつかないわけで、一体何をどう話せばいいのか。
 撮られた? 撮られてますよね?
 道端でのハプニングとは違い、今度は記録に残されている。自分のお尻が誰かの手元に保存されているなんて、たまったものではなくて、直ちに犯人を見つけて削除させたいのは山々だった。
 顔がすっかり赤らんでいた。恥ずかしさで頬が熱っぽくなっていた。
 それから、痴漢が存在したという事実への恐怖感も。
「どう……えっと、どう………………」
 とにかく、選んだ本を読もう。
 そんなことをしている場合か、すぐに職員を呼んで被害を訴えるべきではないか、そういう判断が頭の片隅にはあるはずなのに、どうして呑気に読書をしようとしているのか、レーナ自身にもわからない。
 忘れたくて忘れたくてたまらないので、無意識のうちに、なかったことにしようとしているなんて、そんなことをレーナは自覚していなかった。
 痴漢に遭ったことを人に話す、その抵抗感も、レーナのその行動を後押ししていた。被害に遭ったショックと動揺はきちんとあるのに、何事もなかったような行動を取ることで、ある意味なにもなかったことにしようとしていた。
 何もなかったことにしてしまうのが、一種の慰めになるという、無意識の判断。
 自覚のないままテーブルの席につき、本を開いて読み始めた。
 しかし、せっかく選んだ本なのに、尻がむずむずして集中できない。スカートを捲った犯人は、その時はもちろん直接見ていて、撮った後には画像として鑑賞する。それらを思うと、何というかお尻の細胞が騒いで落ち着かない。
 椅子に座っている今なら、お尻が見える余地なんてありっこなくて、だけど体の方が落ち着いてくれなかった。
 本当に心から落ち着かず、胸がそわそわしたままで、いくら文字に視線を走らせても、内容が頭に入らない。たった一ページの中身を吸収するのに、普通よりもずっと時間がかかったばかりか、レーナには追い打ちのような出来事が待っていた。

「……あの」

 急に一人の年配が声をかけてきた。
「わたしですか?」
 見知らぬ人物に声をかけられ、きょとんとしているレーナに対して、その年配の男は気まずいような困ったような顔をしている。
「非常に言いにくいというか、言っちゃうとセクハラになりそうというか」
「……えっと、つまりなんでしょう」
 セクハラとは何の話か。
 下着を人に見られる体験を二度もして、レーナは自然と身構える。
「さっきあなたを見かけた時からね? こっちは気づいてたんだけど、なんていうか、あなた自身が気づいてなさそうというか……」
 年配の男は急に胸を触り始める。自分の胸の、シャツを指で触り始めて、何かのジェスチャーを試みている。言葉でなく、手で伝えようとしてくる意図がわかって、レーナは自分の胸を見た。
「な、な、な、な…………!」
 レーナはみるみるうちに赤らんだ。
「ああ、やっぱり、何かうっかりしていらしたんですね」
「これは……な、なんで…………!」
「ええっと、じゃあ伝えたので、これで」
 つまり親切だった年配の男は、とはいえ視線をレーナの胸にやっていたわけで、今の今まで見てはいたわけで。

 なんでブラジャー丸出しなんですか!?

 本当にわけがわからなかった。
 うっかりやるようなミスではない。ボタンを一つかけ違えるとか、シャツを裏返しのまま着るとか、ありえるのはそういうもので、ボタンを締めること自体を忘れるなんて、いくらなんでもおかしい。
 だいたい、出かける前に一度は鏡を見たわけで、その時はきちんとしていたはずで。
 なら、なんで? いつ、どの時から?
 もう本当にわけがわからないあまり、幽霊の仕業かとすら思い始めて、レーナは大慌てでボタンを締める。きちんとシャツを閉じ直し、確かに下着を隠した後になっても、レーナはしばらくのあいだ両手で自らの体を抱き締め、胸を隠したままにしていた。


 実に傑作だった。
「いやー。きちんと撮らせてもらったよー」
 ライチェスはレーナの真正面に座っていた。
 レーナの本の読み方は、ご丁寧に本をべったりとテーブルに置き、そこに視線を落としてページを捲るものだったから、視線を遮るものがないおかげで、ブラジャー丸出しの胸を視姦しやすくて最高だった。
 共和国製の、紺青の軍服の、内側に着ているブラウスから、全てのボタンを外した上に、左右に広げまでした状態で、レーナは本棚からテーブルまで移動していた。何も知らず、気づかずに、本など読み始めていた。
「しっかし、意外と気づかないもんだなー」
 胸などは視界に入りやすいと思うし、服が脱げていることで、違和感があっても良さそうだが、それを気づかないということは、よほど先入観の魔力とは強いものなのか。ボタンの締め忘れて胸を露出しながら歩くだなんて、あまりあり得るミスではないから、きちんとしているはずだと、思い込みが形成されやすい。
 まして、実際に服装はきちんとしていて、それをレーナ本人に気づかせない形で外したのだ。
 だからこその反応。何が起こったかを理解できない慌てぶり。
 見知らぬオジサンに指摘され、初めて気づく時の顔といったらなかったが、着けているブラジャーもなかなかだった。濃いめのグレーを漆黒の刺繍とレースで飾り、美白肌とは対照的な闇色が谷間を彩っているのが何とも良い。
 やはりボリュームもなかなかで、中央に寄せ上げさえしていれば、乳房が沿い合わさって出来る谷間の溝は、きっと形成されている。
「動画にしたのは正解だったな」
 どうせ誰にも聞こえないので、ライチェスは堂々と独り言を放っていた。割と良いカメラを使っているので、動画を一時停止すれば、ベストな画像は後からでも抽出できる。なのでテーブルでは写真モードは使っていないが、レーナが未だに見応えある反応をしているので、ものの最初から動画にしておいて本当に正解だ。
 一応、本は読み始める。読みはするが、ページを捲るのとはもう片方の手で、ずっとブラウスを握ったまま、ブラジャーが丸出しだったことを延々と気にしている。頬の赤らみも、薄くなることはあっても、完全に引ききる様子がない。
「しっかし、これで足りたか?」
 割と思い知らせてはみたが、どうも物足りない。
 だいたい、共和国の残虐非道に比べれば、ライチェスが今まで行ったのは子供のイタズラに過ぎない。
「足りないな。まだまだだ」
 また次の機会にも、レーナに辱めを与えてやろう。
 そう心に決めてから、レーナが図書館を後にする時、そのタイミングでライチェスも帰るのだった。



 
 
 

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