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 これでお尻を見せなくてはいけなくなった。
 こんな豚のような男の前でだ。
 亜由美はスカートのホックを手で探り、パチンと外す。しかし、こんな薄汚い太った男にはパンツの一枚すら見せたくない。検査を受けるとは言ってしまったものの、いざとなると中々スカートを下ろせなかった。
 学校による前もっての指示で、女子生徒はきちんと素早くパンツとスカートを脱いて、検査がスムーズに進むようにお尻を出して差し上げなければいけない。父が配置した医師であったら、ここで気遣いを発揮していたところだが……。
「脱いでるあいだくらい、向こうを向いてもらえませんか?」
 見られる時間は一秒でも少ない方がいい。
 普通なら検査とは関係のない脱衣の瞬間をジロジロ見ようとはしてこないし、診察も異常さえなければできるだけスムーズに終わらせてくれる。他に順番を待っている子もいるというのに、その子が可愛いからといって意味もなく時間を費やすなんてありえない。
 だが、校医は亜由美をじーっと見つめている。
「あの……」
「亜由美さんねぇ。反省したばかりだよねぇ? 早く脱いでくれる?」
 気遣う気配はまるでない。
 それどころか、脱衣シーンをしっかりと拝むつもりなのだ。
「脱ぐので、向こうを……」
 もう一度頼んでみるが、それでも校医はじーっと視線を送ってくる。
 返事を待っても、
「ほら、早く」
 と、せかしてくるだけだった。
 願いは通じないのだろうか。
「向こうを向いてくれれば、脱ぎますから……」
 あと一度だけ頼んでみる。
「どーせ見るんだから同じでしょう?」
 結局、通じることなどありはしなかった。
 見られながら脱ぐしか道は残っていない。
(あとで絶対後悔させてやるんだから……)
 恨めしい思いで校医を睨み、そして泣きたい気持ちでスカートをゆっくりと腰から下ろしていく。下腹部をガードするのは薄紅色のパンツのみとなった。
 制服の丈がギリギリでパンツを隠しているが、むっちしとした太ももは丸出しになる。きわどいラインを守ったその状況は、ともすればノーパンに見えなくもない。そんな自分の格好を思うだけで、亜由美は既に赤面していた。
 尻肉がたっぷり膨らんでいるせいか、パンツの布はその肉の割れ目に食い込んで、お尻の形をくっきり浮き立たせている。アソコから尻の割れ目にかけてが汗で若干蒸れていて、もしや触れればしっとりしている可能性があった。
 ゴムがお尻に食い込んで、尻肉をプニっとはみ出させている。
「ほーう?」
 亜由美の太ももを視姦しながら、校医はさも関心した声をあげていた。
 口にこそ出していないが、校医は亜由美の肉感的ボディを品定めし、点数で評価するなら何点が相応しいかについて考えている。ニタっとした顔つきに、ねっとりした校医の視線はまるで絡みついてくるかのようで気持ち悪かった。
 尻に張り付いたパンツを下ろす。
 股間を見せないように腰をくの字におり、アソコが制服の丈に隠れるようにと気を使った。校医と向き合う方向に、お尻は後ろに突き出す姿勢で尻の半分までパンツを下げる。ゴムの締め付けが尻肉を圧迫し、ゴム紐の食い込んだプニっとした変形と共にパンツはお尻を通過していく。
 そのパンツは太ももを通り、膝に絡みゆく。
 さらに下へと下っていき、最後に足首から抜けていった。
「脱いだものはカゴに入れておきますから」
 渡しなさい、と校医は手を伸ばしてくる。
 亜由美は制服を下に引っ張りながら、もう片方の手でパンツとスカートを掴み、手渡した。
 すると校医はわざわざパンツとスカートを分け、まずスカートからカゴに放り込む。
 まさか……。
 と思った瞬間。
(こ、こいつ!)
 校医はパンツを指でピンと広げ、亜由美に見せつけるようにしてきたのだ。それも高々とした位置に、校医自身が見上げるような角度でプラプラと前後に揺らす。お尻の裏面、股間の表面をわざとらしく眺めあげていた。
 亜由美がどんな下着を履いているのか、本人の前でわざと確かめているのだ。
「ちょっと! それは関係ありませんよね?」
 自然と頬の赤みが増す。
「これ? どんな素材のを履いているか確かめているんですよ。素材が肌に合わないと、稀に皮膚アレルギーを起こす人がいますからねぇ」
「そんなこと……」
 本来の担当医なら、こんなことは絶対にしなかった。
「えーっと、裏地はどうかなーと」
 目の前で自分のパンツを弄ばれるだけでも不快で恥ずかしい事なのに、あまつさえ校医は亜由美のパンツを裏返しにし、おりものの染みのついた股間部分をチェックする。染みの部分を校医は指でさすり始めた。
(やめてよ! そんなとこ……)
 お漏らし――というわけではないが、女性の膣口からは分泌物が排泄される。つまりアソコから出るものだ。パンツの染みを目の前でチェックされるのは、まるでお漏らしでも見られているような恥ずかしさがあった。
「うーん。なるほどねぇ」
 さも何か難しい問題でも理解したかのように、一人うんうんと頷いてから校医はパンツをカゴへ片付けた。
 ただ底へ放り込むのではない。
 亜由美のパンツはカゴのフチに引っ掛けられ、干された布団のようにされてしまった。
(こいつ本当に最低じゃない! 中身まで豚だわ!)
 それでなくとも醜い校医に対し、さらに嫌悪感が膨れ上がった。
 こんな男がお尻を見せる相手だなんて、絶対に信じたくない。今までの出来事は全て夢で、ふとした瞬間にベッドで目でも覚めないかと祈ってしまう。
「それじゃあ亜由美ちゃん。お尻をじっくり見てあげるからねぇ?」
 校医はじゅるりとヨダレの音を立て、いやらしい獣の笑みで瞳をギラつかせた。
(……嫌だ。こんな人、絶対嫌だ!)
 亜由美は瞳を涙ぐませ、諦めきれずにオロオロした。
 しかし、校医がイスから立ちあがり、ニヤニヤしながら無言の圧力をかけてくる。クラスメイトの集団圧力、担任からの叱責、それに押されて検査を受けると言ってしまった自分自身、あらゆるものが亜由美から抵抗の心を奪い取り、強気な心を弱めていく。
「……はい。お願いします」
 ひどく悲しい気持ちで亜由美は診察用ベッドへあがり、四つん這いの姿勢を作った。



 
 
 

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