第6話 責めの果て

 また合計で三つの薬球が挿入され、出ないようにとアナルプラグでフタをされていた。外に排泄する可能性がなくなって、そしてアグライアを待つ運命は放置であった。

「半神よ。明日、また会おう」

 人を部屋の中に置いていき、長い長い時間をアグライアは一人で過ごす事となる。しかもその間、パッドやディルドの稼働が続いているのだ。
 ブィィィィ――と、ディルドが震え、少し経ったら設定がランダムに切り替わり、ピストンが始まり喘がされる。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
 どんなに大きな声を出したとしても、部屋に人が入って来る事はない。
「いやぁ……あっ、あっ、あぁ……!」
 確かに拷問で傷つけられるわけではない。針を刺されるわけでも、刃物でどこか切られるわけでも、鞭打ちを受けるわけでもない。
 だが、性的刺激が延々と継続して、そのまま何時間も過ごす羽目になったのだ。それも数時間やそこらでなく、夜が更けて朝を迎え、バッテリーでも切れたのか、パッドもディルドも沈黙して、これでようやく休めるかと思ってみれば、間もなくカイニスは戻って来たのだ。
「一日ぶりだな。アグライア、調子はどうだ?」
 疲れ果てたアグライアに向かって、ぐっすりと眠ったのだろうカイニスが尋ねてくる。
 もうこの頃には、パッドやディルドが停止してからある程度経っているとはいえ、喘ぎ続きで喉が疲れてしまっていた。
「そうですね。少し休ませてもらえれば、調子が優れるかと思います」
「そうか、それは悪いな。休憩を与える予定はない」
「それは残念です」
「さて、そろそろ抜いてやろう」
 カイニスが機材の操作を行うと、ディルドが引っ込んでいく形で、膣の外へとイボまみれのそれは抜け出た。すると、フタの内側につまったものが零れ出てくるようにして、だらっと愛液が溢れて来た。表皮を伝って肛門やその周りが濡れていき、糸まで伸びて床が汚れた。
「それにしても、アグライア。まだまだ正気を保っているようじゃないか」
「壊す、でしたか。私はそう簡単には壊れませんよ」
「そうだといいな? 半神」
 カイニスがアナルプラグを引っ張ると、丸みを帯びた円錐が外へ抜け出る。すると同時に、フタが外れて中身の零れる感覚が肛門にもあったのは、薬が溶けて液状化したものが、今の今まで溜まっていたからなのだろうか。
「なあ、アグライア……ここでは今、お前はどのくらい感じるのだろうな?」
 カイニスはビニール手袋を嵌め始めた。その指にジェルをまぶして、一体何を始める気でいるかの予感に身構えていると、彼女の行動は案の定のものだった。
 肛門に指が置かれた。
 ジェルの滑りを活かして挿入するのは、中指と人差し指を束ねた二本であった。
「はぁ……くっ、あぁ……!」
 アグライアは喘ぐ。
「ふん、なかなか感度がいいじゃないか」
「あな……たが……あっ、あっ、あぁ…………!」
 媚薬でも使ったのであろうカイニスへの、反抗的な意思をアグライアは抱くのだが、何を唱えてみようにも、ただ指がピストンを始めただけで、やはり言葉の代わりに喘ぎ声こそが吐き出された。
「あぁ……ぐっ、んぅ、ぬぅ……あっ、あっ…………!」
 皺を伝って刺激が走る。
 最初のうちはゆったりと、さして活発でもないペースで出入りをして、皺の部分と指の間に起こる摩擦が快楽に、その感覚は尻の肌や肉を通じて下腹部に行き渡る。肛門を中心に下半身がまんべんなく甘ったるくなっていくような、細胞に砂糖が溶け込む感覚に、アグライアは苦悶のような表情を浮かべていた。
「ふぅ……くっ、ぐっ……んぅ……あっぐぅ…………」
 出入りがしだいに速さを帯びる。
 介在するジェルがくちゅくちゅと、ピストンに合わせて粘っこい水音を立てていた。
「あぁぁ……! あっ、いやぁ……! あっあっあぁ!」
 髪を振り乱してしまうほど、肛門への刺激は強かった。首を左右に振りたくり、脚をピクピクと蠢かせ、アグライアは自分がこんなにも尻で感じる事に驚いていた。
(薬の……せいですか…………)
球体の薬が溶け込んで、その成分が吸収されて、こんなにも敏感になってしまったとでもいうのだろうか。
「あぁ――あっ、くはぁ――――!」
 カイニスのピストンはしだいにペースを増していく。
「ほら、もっと感じるといい。半神の乱れ狂う姿を存分に見せてもらいたいものだ」
 ジェルがくちゅくちゅと音を立てている。
 ピストンに活発さに合わせて、全身に走る刺激も強く大きなものとなり、アグライアは何度も胴を反り上げた。ビクっと弾み上がるように背もたれから体を浮かせ、その落下で分娩台をぎしぎしと揺らしていた。
「あぁ――あっ、あぁぁぁ――あっ、あぁ……!」
 やられているのは肛門なのに、快楽のせいか愛液がだらだらと噴き出している。奥から染み出るものが肉貝に広がって、ぬらぬらと光沢を帯びていた。
「あぁ……あっ、あぁ――――――!」
 そして、その時だ。

「ひゃっ! あぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――!」

 アグライアは絶頂した。
 足腰が痙攣のように蠢いて、潮が高らかに噴き上がる時、肛門さえもビクビクと震えていた。肛門括約筋が激しい収縮を繰り返して、カイニスの指をいかにもリズミカルに締め付けていた。
 その刺激が収まって、ようやくピストンの停止に気づいた時、アグライアはすぐさまカイニスを睨んでいた。静かな反抗心を見せつけて、自分はまだ壊れていない事を暗に伝えると、カイニスはむしろほくそ笑む。
「まだ足りないというのか? アグライア、ならもっと掻き回してやるまでだ」
 ピストンが再開される。
 その出入りによって駆け巡る濃密な快感は、肛門の周りばかりか、尾てい骨を伝って背骨に至り、胴にすら通じてくる。ピストンのリズムに合わせてピクピクと、どうしても体のどこかが細やかに反応を示してしまう。
「ひゃっ! あっ、あぁ……んっくっ、んっ、んぁ……!」
 よがるアグライアをより深く責め立てようと、カイニスは肛門の中で指を折り曲げ、かき爪のような形でぐにぐにと、どこか探るようにして腸壁をくすぐった。
「あっくぅ……! んっ、んっ……!」
 その刺激に苛まれ、アグライアは髪を激しく振り乱す。
「時間はいくらでもあるんだ。なあ? アグライア」
 そこで指が増やされた。
 もう一本を挿入するため、既に二本を引き締めている皺へと三本目が、薬指の先端がぴたりと当てられ、ぐいぐいと力ずくで押し入った。三本分の太さに合わせて肛門の穴は広がり、皺の部分と指での密着感が強まると、改めて行われるピストンがアグライアを執拗に喘がせた。
「ああっくぅあっ……! あんっ、んっ……あぁ……!」
 三本の指が細やかに動く。
 人差し指が背中を反らすような形を取り、しかし中指は前へ折り曲げられている。薬指は横へ広がろうと側面方向に逸れている。三本が三本とも、それぞれの方角を目指して蠢いて、それが腸内の各所をなぞる。
「ひゃっああ! あっ、あああぁ……んっくっ、んっ、んぁああああぁぁ……!」
 また次の絶頂が近づいていた。
 このまま刺激が続いては、何かが危ういような感覚がみるみるうちに膨らんで、今にも弾けそうな危機感に駆られるが、もちろんカイニスはそれで指を止めてはくれない。人のそんな様子に気づいたなら、むしろ嬉々として指の速度を速めたり、弱点を突こうと意識してくる事だろう。
「あん! あん! あん! あん! あん! あん!」
 アグライアは喘いでいる事しかできなかった。
 イカされる事がわかっていて、その未来を覆す手立てがない。
 やがて――。

「くあぁ! あぁぁぁぁぁぁぁ――――――!」

 また潮が噴き上がった。
 激しく滴が舞い散って、アグライア自身の体に、カイニスの顔や服に、そして床にも汚れが広がる。
「おやおや、今度の絶頂もまた、なかなかのイキっぷりじゃないかアグライア」
 頬に付着したものを気にせず、アグライアは嬉しそうに指を引き抜く。今まで嵌めていたビニール手袋を取り外して、次に狙いを定めてくるのはアソコであった。
 三本の指が膣口に突き立てられる。
「んっ………………」
 そして、挿入を前に身構える時、肛門には今まで指でやられた余韻があった。まだピストンの感覚が残留しているような、むずむずとした感じが気になるも、膣の方に先端が潜り始めた時にはそちらの方へ意識が行く。
「ひっ……あっ、あぁ……あっくぅぅ………………!」
 すぐに快楽が満ちてきた。
 膣壁を直接やられるおかげで、肛門への刺激よりもずっと素早く愛液は分泌され、ピストンに応じて粘液をかき混ぜる音が立つ。

 くちゅっ……くちゅっ……くちゅっ…………。

 指と膣壁の狭間で捏ねられて、ねっとりとした音は鳴り続けるが、しかしアグライア自身の声がそれを掻き消す。
「あん! あん! あん! あん! あん! あん!」
 ピストンがリズミカルになった時、そのリズムに合わせたようにアグライアはよがっていた。
「あん! あん!」
 右、左――髪を振り乱す様子にさえリズムが現れ、カイニスはそんなアグライアを拝んで楽しんでいた。
「ははっ、どうだ? アグライアぁ……ああ、アグライア、あとどれほど続けたら堕ちるんだ?」
「くっあっ、そんな――知りませっ、んっ……あぁ……!」
「あと何分だ? それとも何秒だ? 次に絶頂するのはいつだろうな? アグライア」
「ひゃっ! あっ、いやぁ――あっあぁぁ――!」
「まったくいい声だ」
「あぁぁ……! あっ、いやぁ……! あっあっあぁ!」
「ああ、あっ、くあぁ――――!」
 アグライアの脳は快感に染まっていた。
 あまりにも責められ過ぎて、それに刺激も強すぎて、ただただ気持ちいい事しかわからない。嵐に振り回されて一心不乱に、本当にただひたすら髪を振り乱し、手足をビクビクと反応させ続けていた。
 そして、絶頂する。

「ひゃぁぁぁぁぁ――――――――――!」

 膣壁を激しく鳴動させ、カイニスの指を下腹部の力で締め上げながら、高く滴を飛ばしていた。
「半神……。それにしても、お前のアソコはなかなか、緩まないものだなぁ? あれだけ長くディルドを収めていれば、もっと緩やかな穴になると思っていたが、締まりの良さを保っているのも、半神であるが故なのか?」
 語りながら尋ねてくるカイニスの言葉に、アグライアはどう応える余裕もない。彼女の手が止まっておらず、絶頂していようとお構い無しのピストン続きで、やはりアグライアはひたすらによがっていた。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
 喘ぐリズムに合わせて両足が跳ね上がり、ベルトもろとも分娩台のアームを持ち上げる。その持ち上げようとする力で台座が揺れて、ガタガタと音が鳴っていた。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
 それに合わせて――。
 ガタッ、ガタッ、ガタッ、ガタッ、ガタッ――。
 指さえ動かせばリズム通りの反応を示すのが、カイニスにとってよほど面白いのか、ニヤニヤと機嫌良くピストンを継続して、アグライアをやがて次の絶頂へと導いていた。

「ひゃっあぁぁぁぁぁ――――――――!」

 胴が高らかに跳ね上がり、反った背中と背もたれの間に一時的な隙間が生まれる。
「んっひぃ……あっ、あぁぁ……!」
 そして、カイニスは指を止めない。
 イっている最中にも、その有様を見ながら嬉々として膣を抉って刺激を与える。絶頂が止まってなお、そのまま快楽が継続する事となるアグライアは、跳ね上げた背中で背もたれを叩き、元の姿勢に戻った直後に、またしきりに胴体をもぞもぞ蠢かせ、手首にかかった手錠の鎖をじゃらつかせる。
「あっ! あぁぁ――あくぅぅぅ――――!」
 アグライアは延々と喘いでいた。
 いつまでもいつまでも、終わりなく――。

「あぁぁぁぁあああぁぁ――――――!」

 何度目とも知れない絶頂を繰り返す。
 そして物は試しのように、カイニスは久々に指を止め、アソコから引き抜いていた。たっぷりと蜜を含んだそこから抜け出ていけば、当然のように長い長い糸が引き、どれくらい伸びるのか試さんばかりに、彼女はゆっくりと腕を持ち上げているのであった。
「おっと」
 それから急に思い出したようにして、カイニスは貼りつけてあるパッドを見やる。乳首を包み、下乳や横乳に貼ったそれらと、さらに下腹部の一枚へと順々に視線を走らせ、コードを掴んで引っ張った。
「あっ……!」
 そんな事が刺激となり、アグライアの口から甘い声が上がっていた。しかもちょうど絶頂のタイミングまで体が高まっていたらしく、面白い事に潮すら噴き上げたのだ。
「どうだ? 半神よ、自分が壊れそうな気はするか?」
 カイニスは尋ねてみる。
「……さあ、わかりませんね」
「折れていないな?」
 面白い、本当に面白い。
 さすがは半神というべきか。
 いつまでも遊び甲斐のある体を前に、あとどれほど長い時間をかけて楽しんでやろうかと、自分が勝者であるような、優越感に満ちた気持ちで考えを巡らせる。
 そしてまた、カイニスは指を挿入した。

「あぁぁぁぁ――――――――!」

 アグライアは大きく喘いだ。
 延々と、終わりを知らないピストンはまた始まり、アグライアはあと何度も、本当に何度も何度も絶頂して……。
 しかし、壊れず――。
 だからこそ延々と、彼女への辱めは続くのだ。
 きっとこれから何日も、あるいは何週間、何ヶ月もの時間をかけて……。