第1話 大浴場への訪問
噴水がお湯を噴き出す大浴場に、天井の吹き抜きから陽射しが差し込む。黄金の輝きを水面から反射して、眩いものを拡散しながら、湯気が景色を薄らと白くする。
そこには一人の女性がいた。
金色の髪がしっとりと水気を帯びて、黄金の陽射しがそれを照らせば、彼女の御姿は絶景のように光り輝く。散りばめた星々ほどに細やかな光を髪が纏って、後ろ髪に連なるうなじに水滴が滴ると、表皮を流れた一滴が背中を伝う。
「この大浴場には幾百年もの歴史がありますが、不貞の輩が忍び入る事など、かつて一度として起こり得ませんでした――この日、この時までは」
彼女の言葉は独り言などではない。
その後ろ姿へと、何者かが忍び寄っていた。複数人の影が光を受けて、長い長い影を彼女に向けて伸ばしていた。
彼女を見つめる面々の、一人が忌々しいものに対する目つきとなり、声を低めて名を呟く。
「アグライア……ああ、アグライア……」
中年過ぎといった風情の女性であった。憎しみを込めた声音には、彼女の金髪の女性の事が気に食わない感情が滲み出ていた。
「入浴中に立ち入るばかりか、幾人もの男性を引き連れてくるなどという粗相。想像もしませんでしたよ? カイニス殿」
「今のお前は目だけでなく、耳も聞こえていない。風呂場に入り込む我々に、こうして相見えるまで気づきもしない」
カイニスと呼ばれた少し年増の女性は、さらに目つきを鋭くして、アグライアの後ろ姿を睨んでいた。
だが、彼女がアグライアに向けた感情は、どうも忌ま忌ましさばかりではない。憎いものを見つめていたかと思いきや、双眸が不意に緩み、口角も少しばかり吊り上がり、何かを楽しみにした表情へと移り変わった。
「このように品性を欠いてまで、一体どのような事を企んでいるのでしょうね」
「もう一度言うが、今のお前は目だけでなく耳も聞こえていない。我々が仕掛けた窃盗が見えず、大地獣工房で交わされていた密談も聞こえず……目の前で企てられていたはずの陰謀に対し、お前はまるで無関心だった。アグライアよ、お前の誇りにしている金糸で私の思考を呼んでみるといい。もしそれができるなら、私たちが念入りに用意してきた贈り物で、冷たい半身の心を揺るがせてみせようじゃないか」
カイニスの言葉を背に、アグライアは静かに目を瞑り、驚きを帯びて瞼を開いた。
「まさか自分の心が冷え切っていないことを悔やむ日がくるとは……あなたの邪悪な心は、本当に救いようがないですね」
アグライアが読んだのは、とある一人の少女を傷つけようとする邪悪な考えだった。ずっと頭の中にそれを抱え、自分が優位に立てる確信を持っていたから、カイニスは手下を引き連れ大浴場へと踏み込んで来た。
「ようやく思考が読めたのか? ハッ……本当に鈍くなったな。お前にハッキリ見えるよう、先程からずっとあの光景を思い浮かべていたのだぞ」
振り向くまでもなく、余裕を得て調子に乗った表情が目に浮かぶ。
「そして他にも、数十通りもの手段を用意している」
「アグライアよ。まずは立ってもらおうではないか」
不承不承、立ち上がる。
一度も後ろを見ていないアグライアだが、カイニスが幾人も引き連れているのはずっと気配で感じている。彼女の後ろに立つ五人ほどが、皆男ではないか。
ならば、立ち上がるなり尻に視線が集まった。
「これは美しい。女である私としても、アグライア……その輝かしい肌には魅入ってしまうな? 羨ましいやら、妬ましいやら」
カイニスが美しさを評すると共に、ここで初めて男達が口を開いた。
「いやぁ、本当に美しいお尻だ」
「黄金の陽射しを浴びて輝く肌。お湯の滴が全身に滴って、まさに瑞々しい巨尻。これに魅入られずにいる男がおりますか」
「くびれた腰の、そのカーブの具合。そして広がるお尻の幅の広さに、ぷりっとした最高の厚み」
「まあ一言、プリケツと言うのが早いか」
「アグライア様はプリケツだぁ!」
口々に、お尻に向かって言葉を投げかけ、その不快感にアグライアは薄らと顔を歪める。
「今度はこちらを向いてもらおうか?」
これだけ尻の品評をしてくる彼らへと、前を向ければどうなるか、想像するまでもない。
しかし、逆らえばどんな手を使うか。
汚い計画の数々を、アグライアは自身の力によって読み取っている。
「向きましたよ」
アグライアは膝まで浸かった足で水面を掻き、ゆっくりと後ろを向く。まじまじとした視姦を嫌い、美しい乳房を腕によって押し潰し、アソコを手の平で覆い隠していた。
「はっ、なんだそれは。神を騙り人を惑わし、1000年もの時を生きてきた忌まわしき女に、まさか純真な乙女のような羞恥心でもあるというのか?」
カイニスは人を嘲る目を向ける。
「これでご満足ですか?」
アグライアは腕を下ろして、桃色の乳首は閉じ合わさった肉貝を仕方なく晒していた。
「まったく忌々しいほど美しい。さすがは半神といったところだな? お前たち、感想を聞かせてやれ」
カイニスが後ろへ命じる。
途端にまた、男達は嬉々として、それぞれの感想をペラペラと喋り始める。
「いやぁ、非常に素晴らしい乳房ですねぇ? その大きさと美しさに心奪われ、今の私は狂ったケダモノのように乳首へむしゃぶりつきたいと思っています」
「なんと芸術的な――オマンコ、でしょうか? まるで彫刻家が巧みに彫り込み、盛りの形にかけて作り込んだ一本筋だ。こんなにも綺麗なオマンコをベロベロと舐め回したり、私のこの逸物によって暴く事が出来たなら、どれほどの高揚感が胸に溢れるのでしょうね?」
「私は先程のお尻をじっと拝見していました。いやぁ、ぷりぷりしていますなぁ? あんなに大きくて、素晴らしい膨らみ具合をしていたら、何十分もかけてじっくりと、たっぷりと、撫で回してやりたい妄想に心が囚われてしまいそうです」
言葉による辱めが不愉快でたまらない。
彼らがいかに卑猥な目を向けてきているかなど、わざわざ思考を読むまでもない。鼻の下が随分伸びた表情から、これでもかというほどだだ漏れている。
「お褒めに与り光栄、とでも思えばよいでしょうか」
「頬が染まっているではないか。はっ! まさか、お前が本当に羞恥心を持っていようとは、こうして裸を晒すだけでもそれなりの辱めではないか」
人の様子を見て、カイニスは喜んでいた。アグライアが屈辱を感じたり、恥じらっている事が、彼女にはよほど嬉しいようだった。
「よほど私を穢してみたいようですね」
表情を崩さず平静を保つ風でいて、頬の染まりようは誰の目にも明らかだ。誤魔化せはしない赤らみを自覚して、アグライアは密かに歯を食い縛り、顎をさりげなく固くしていた。
「美しいものが汚れに浸されれば、誰でも背徳感をくすぐられるというものだ」
カイニスが顎で命じる。
一人の男が前に出てこう告げた。
「上がって来い」
わざとらしい命令口調だ。アグライアに立場を教えてやりたいように、本来そんな口を利ける立場ではない人間が、優越感に浸った顔を浮かべていた。
お湯の中から足を上げ、濡れた素足でタイルを踏む。足元からお湯は広がり、タイルの隙間にそって流れていった。
「上がりましたよ?」
距離が縮んだせいか、乳房への露骨な視線が突き刺さる。視姦自体は先程から続いているが、品定めをして楽しんでいるのがより伝わり、アグライアの胸中で恥辱が色濃くなっていく。
「大人しくしていろよ? なにか武器を隠し持っていないか、今のうちに調べる必要があるからな」
「そうですか。ではお好きにどうぞ」
頬が染まっていようとも、アグライアはケロっとした表情でいようとしていた。男達はもちろん、カイニスの事も楽しませてやりたいとは思わない。感じた屈辱について、少なくとも積極的なアピールはしないつもりだ。
男は真っ先に乳房を揉む。
随分な行為が遠慮無く行われ、アグライアは厳しい面持ちとなって彼を睨んだ。しかし、その眼差しが男の手を止める事はなく、五指が好きなだけ蠢いていた。
「おおっ、なんという揉み心地か! これほどのものに触れていたら理性が弾け飛び、人前である事など忘れ、今にもがむしゃらに犯し始めてしまいそうだ」
指が蠢いてくることで、アグライアは自分の状況についてより一層のこと痛感する。本来、先程のような口の利き方もできなければ、裸を拝む事もないはずの男が、しかし今こうして揉みしだき、感触を指の一本一本で味わっている。
「それを拝んでみるのも一興だが、大事なところを調べ忘れるなよ?」
「ええ、もちろんです。カイニス様」
男は乳房から手を放し、膝を突くなり視線を真っ直ぐアソコへ突き刺す。縦筋に対する至近距離からの眼差しに、アグライアはさらにもう少しだけ恥ずかしさを感じていた。
わざとらしく、ゆっくりと指が近づく。
触ってやるぞと言わんばかりの、露骨にニヤけた表情で見上げてきながら、上向きにした指の腹が迫って来る。今に接触される緊張感を胸に秘め、しかし平静を装った表情で物静かに受け止めると、すぐに指の前後運動は始まった。
縦筋をなぞるため、指先が股の隙間に出入りする。
その擦られる感覚に、始めのうちは不快感だけを感じるが、少しばかり経つと湿り気が現れる。徐々に濡れゆく膣壁から、だんだんと外側に染み出るようになっていき、ついには男の指に付着していた。
その感触に気づくや否や、彼が調子付くのはわかっていた。
「おっと? この濡れた感触は……ははっ、アグライアが女らしい反応をしているではないか! いやぁ、この俺がこんな事をする日が来るとは、人生とはわからないものだなぁ?」
「本当に嬉しそうですね」
「ああ、嬉しいとも」
有頂天の顔で愛撫を続け、指の前後で愛液が塗り広がる。滑りの良いタッチでより強い刺激が走り、ますます濡れて男の指に汁が絡んで、すると次には天に向けて突き立てられる。
上へ上へと挿入していく指先が根元まで埋まり込み、男は興奮で口角を釣り上げていた。
「おい、どんな感じだ?」
「『武器』を隠し持ったりはしているか?」
仲間の男達が彼に尋ねる。
「そうだなぁ? いいザラつきをしている。この感触に逸物を埋め込んだら、このザラっとした感じがいい刺激を与えてくれそうだ。この女が隠し持っていたのは『名器』ってわけだ」
嬉々とした品評が行われ、アグライアはより大きな屈辱を胸に秘めていた。
「そいつはいい。是非とも犯してみたいもんだ」
「妄想が捗るぜ」
「なあ、女ぁ。もしかしたら、本当に俺たちとヤるかもしれないんだぜ?」
嫌な妄想が向けられる。
お前の体で生々しい事を考えてやっている、そう告げんばかりの性的な眼差しには寒気が走る。涼しい顔であろうとするアグライアだが、さすがに頬の強張りが増し、無表情を装いきれなくなっていた。
「ふん、少しいい顔になってきたな」
「生まれつきですよ?」
「アグライア、お前はこれからもっといい顔になるんだ。この薬を使え」
カイニスは小さな箱を取り出した。本当なら指輪を収めていそうな箱を開いて、彼女の指が摘まんだ中身は一粒の錠剤だった。男は一旦、アソコから指を抜き、手の平に受け取るなり、改めててアグライアへ迫るのだった。
「ケツを出してもらう」
「こうですか」
後ろを向き、腰を突き出す。
「いい姿勢だ。肛門までばっちり拝める」
左手で尻たぶが掴まれていた。親指でぐいっと、内から外へ引っ張って、左側の皮膚が伸びての肛門があらわになる。乳房と性器に続き、残る一つの恥部にまで視線を注がれる恥ずかしさで、アグライアの頬に浮かぶ赤色は濃さを増し、堪える彼女は唇を内側へと丸め込む。
男は錠剤を突き立て挿入する。
先端が皺の窄まりの中心に突き刺さり、指先によって押し込まれてくる感覚に、今にも苦悶が浮かびそうになっていた。
異物感が沈んできて、そのまま指が蓋となる。肛門への指圧が強まると、さらに指先が数センチほど埋まってきて、錠剤がより奥へと押し込まれた。
「さあ入っていくぞ? アグライア――それは一体、どんな効果の薬だろうな。思考を読んで確かめるか? それとも、効果が出るまでお楽しみというのも一興だなぁ?」
そう、それもある。
肛門を見つめられ、こんな風に触れられて、それだけでも十分過ぎる屈辱だが、薬を入れられている以上、どんな成分が入っているか、わかったものではない。
指が抜けると皺が締まって、錠剤が内部に閉じ込められる。
今に腸内で溶け出して、成分が体に巡り始めているのだろう。どんな効果が出たものか身構えていたアグライアは、とある瞬間から急に意識を薄れさせ、膝を突くなり倒れていた。
裸で眠る女性へと、男達の足が寄っていく。
皆でアグライアを取り囲み、ニヤけた顔という顔の数々が艶めかしい肌を見下ろし――。