第6話 無念の光

 南条光は無念に打ちのめされていた。
「せっかくのヒーロー役だったのになぁ……」
 格好良いコスチュームを着ることができた。
 それによるアクションもこなした。
だが、最後の最後で逆転して、きちんと悪を破って終わるという、お約束に行き着くことはできなかった。
 その無念を何日経っても忘れられず、光はいつまでも引きずっていた。
 ため息が止まらない中、家で過ごしていたこの日の光は、何気なくテレビを点ける。
 すると、よりにもよって、映るのは光自身の映像だった。
「うげっ」
 二十四時間テレビでの、その時は生放送だった映像が、名シーンの振り返りとして再度放映されていた。

     *

 それは最終段階の映像だった。
 それまで開発を行った部位、胸とアソコに肛門を同時に責める地獄の愛撫だ。ベッドの上で開脚を強いられて、M字に広がる股のあいだにディルドを入れられ、クリトリスにはローターを固定され、乳首にも同じくテープで押しつけられた。
 その上で肛門に指が置かれてぐにぐにと、揉みしだくようなタッチで愛撫され、実に五つの部位を同時にやられていた事になる。
『んぐぁああああ…………!』
 そんな自分自身の大きな大きな喘ぎ声を聞く事になり、光は実に微妙な顔をしていた。
 ほんの数十秒で滴がぷしゃっと舞い上がり、絶頂回数を数えるテロップで数字が増える。
「あたし……こんなんだったのか…………」
 光はさらに顔を歪めていた。
 画面の中の、愛撫を受けていたその時の光は、本当に激しく髪を振りたくり、息を荒げて喘いでいる。自分の姿を見ているのに、とても自分とは思えない。見ず知らずの他人なのだと、思い込みたくもなってくる映像だ。
『絶頂回数:18』
 カウントが進み、数十秒後。
『絶頂回数:19』
 それから、また十数秒後。
『絶頂回数:20』
『絶頂回数:21』
『絶頂回数:22』
『絶頂回数:23』
 たった二分もあれば、三つも四つもカウントは進んでいた。絶頂の際のビクビクとした痙攣のような震えといい、大口を開けた滑稽な顔といい、目を見開いた表情といい、自分がどんな姿を晒していたかを突きつけられた。
 これが視聴者を盛り上げたのだ。
 ここまで派手に快楽を感じなければ、我慢でも出来ていたなら、望みの逆転シーンをやらせてもらえただろうに、改めて無念の気持ちが蘇り、光はリモコンでテレビを消した。
「はぁ……」
 思えばオシッコを漏らす映像まで流れている。
 それで一体、次からどんな顔で学校に通ったり、ファンの前に出ればいいのかがわからない。
 しかも、話はそれだけではなかった。

    *

 着替える時、服が肌に擦れただけで、必要以上に感覚が敏感に働いた。ブラジャーを着脱する時など、乳首に何気なく擦れただけで突起していた。
 トイレの時、便座に座る直前の、ショーツを下げる動作が刺激になる。お尻に布が擦れることで気持ち良く、オシッコの前に愛液を出してしまうのではないかと予感した。
 感度開発のために、その後の日常生活の中でも、光は敏感に成り果てていた。
 おかげで風呂は大変だ。
 スポンジで体を擦る時、胸を擦れば気持ちいい。アソコを洗う時など、泡に混じって愛液が出てきてしまい、そのまま自慰行為を覚えそうになっていた。
(くっそぉ…………)
 悪役とヒーロー役に分かれていただけに、悪の野望に敗れてこうなった気持ちは強烈だ。
 どうしても悔しい。
 体を改造されてしまった気分である。
 何度かは考えた。
 自分で自分の恥部を弄れば、感度開発を受けた時のように気持ち良くなるのではないか。そんな思いで乳首やアソコに手が伸びかけ、しかしそれでは悪の思い通りではないかと、光は何度も踏み止まっている。
 そして、本当はオナニーで発散するべきなのに、それをせずに溜め込むような、悶々とした毎日を光は送り始めるのだった。