第2話 身体測定と感度検査
時間は数日ほど遡り――。
「身体測定?」
「そう、身体測定」
「身長もスリーサイズも知ってるだろ?」
「そうなんだけど、改めて測りたいって」
そんな打診があったのは、スーツ発注に伴い、光のスタイルを正確に知りたいからだそうだが、他にももう一つ理由がある。
脱がせるついでに、やりたい事があるらしい。
エロバラエティとしての企画内容は、感度開発がコンセプトになっている。性知識の薄い、感度も低い女の子は、果たして一日でどこまで性感帯を開発できるのか。囚われのヒーローを待つ運命は、そんな感度開発の実験だそうだ。
筆責め、ローター、ローションの使用、様々な道具が予定に入っているわけだが、そもそも肝心の元々の感度はどのくらいのものなのか。
もし最初から感度が良いなら、企画内容を今のうちに差し替える必要がある。
そのため事前のチェックが必要となり、ちょうどいいから身体測定を口実に脱がせてみよう。という話が上がったため、プロデューサーは光に今日の予定を伝え、身体測定の実施現場へと連れて来たわけだった。
現場には撮影スタッフが入っていた。
カメラマンが機材を担ぎ、他のスタッフも集音マイクを構えている。さながらテレビ撮影の現場の空気が流れる中に、身長計や体重計は置かれている。
この場に立ち会うプロデューサーが男なら、測定を担当する男も、撮影の監督も、カメラやマイクのスタッフも、全ての人員が男のみによって構成されている。
女の子はただ一人、南条光のみではないか。
そんな中で脱衣を要求されては、さすがに抵抗感が強いらしい。脱衣カゴを足元に、カメラや多数の視線が向く中で、光はストリップを躊躇っていた。
「……なあ」
光の目がプロデューサーを向く。
「言いたいことはわかる。ここにカメラを回す必要があるのか、ってことだろう?」
「そうだよ。こんなの、聞いてなくてさ……」
「メイキング映像として、どこかに収録するかも、ってことで、一応撮っておくらしい」
「一応って……」
「まあ、使うかもわからない映像のために脱ぐなんて、って気持ちもわかるけど、これも仕事なわけだし、ここは堪えてもらえないかな?」
プロデューサーは説き伏せる。
「……まあ、そう言うなら」
本当は何か言いたいことのありそうな、不満を残した表情で文句を噛み殺し、そして静かに服を脱ぎ始める。シャツをたくし上げ、ヘソを露出し、平べったい胸に一応かかったブラジャーがあらわとなる。
一枚目が脱衣カゴの中に入った直後、今度はスラックスが下がっていき、光は下着姿となっていた。
そのまま背中に両手を回し、ホックを外してブラジャーを手放した。ショーツ一枚のみという、指示通りの格好になった時、少しだけ頬を赤らめた顔をして、光は身長計へ向かっていくのであった。
身体測定は黙々と行われた。
光の羞恥心は、一応ちょっとしたものらしい。恥ずかしくは感じていても、エロバラエティの撮影がごく当たり前に行われる今のご時世、その影響なのか何なのか、大袈裟までの恥じらいはなさそうだ。
冷静に、淡々と堪える程度の、とても薄らとした恥じらい方で、光は身長計で背筋を伸ばし、綺麗な気をつけの姿勢を保っている。しっかりと顎を引き、静かに佇む光の隣で、測定の担当者はバーに手を触れていた。
そこにカメラは向いている。
プロデューサーの視線も、周りのスタッフ達も、光の乳房や下着の色を眺めている。
下ろされたバーが頭に当たり、身長の数値が明らかとなった。
測定の担当者はそれをバインダー留めの書類に書き込み、次に光を体重計へと導いていた。
その間、光は胸を一切隠していない。
頬が染まってはいても、エッチな番組の撮影なら、胸を出すのは当たり前、ただの仕事の一貫という認識になっている。カメラが向くのも、周りからの視線が集まるのも、仕方のないことのように捉えているだろう。
光の胸はほとんど平らだ。
だが、よく見ればきちんと膨らみを帯びている。完全な平らではなく、薄らとしたボリュームで、高さでいうならほんの数センチの乳山といったところか。
そこにメジャーが巻かれていく。
体重計に数値が出て、その書き取りが済んだなら、次に待つのはスリーサイズの計測だった。
光は頭の後ろに手を組んでいた。
後頭部に指を重ねて、無抵抗に胸を晒した状態へと、測定の担当者は伸ばしたメジャーを巻いている。ネックレスをかけようとするように、頭から被せて背中に引っかけ、手前へと引っ張り出すなり、乳房の上で目盛りが重なるように折り畳む。
バストサイズを確認する時、きっと指が当たっていた。
それに顔まで近づけられ、至近距離から乳房を見られる恥ずかしさもあっただろう。
表情に、我慢の感じが強まっていた。
頬が硬くなり、目つきにも堪える気持ちが表れていた。
しかし、やはり過剰な反応は見せず、黙々と堪えている。
アンダーバストの計測で位置をずらし、次にウエスト、次にヒップと移っていくに、光は最後の最後まで慌てず騒がず、測定を受けきっているのであった。
身長と体重が判明した。
スリーサイズも明らかになった。
プロフィールへの記載は元からしているが、その数値が今でも正しいのか、多少は変化しているかの確認が済まされたのだ。
これでコスチュームはサイズのぴったりなものが作られることだろう。
だが、まだ終わりではない。
ただ測定をするためだけに光を呼び出したわけではない。
他にもまだ、感度の確認が残っているのだ。
*
測定の担当者が乳首へと指を絡める。
光と彼で正面から向かい合い、目の前から伸ばした腕により、胸への愛撫を行っている。好き合っているわけでなく、撮影という理由で触れられることを堪え、静かに目を瞑った光へと、カメラマンは横からカメラを向けている。
光の感度はどれほどか。
予定されている企画は、一日でどこまで感度開発ができるのか、というものなので、元から感じやすいのでは成り立たない。その場合、別の企画に差し替える必要があるため、事前に調べる必要があるわけだ。
せっかくなので、制作段階の映像として、事前の感度調査にもカメラを回す。
光は撮られながらに乳首をやっられ、気持ち良くなっているわけだった。
感じている様子はない。
指で乳首を上下にされて、それを気にしたように体をもぞもぞと、微妙に小さく動かしてはいる。だが快楽による反応ではないようだ。
「なんか……くすぐったい……」
測定の担当者が行う愛撫は、かなり繊細なタッチによるものだが、くすぐったい以上の反応がないのなら、元々の感度は低いのだろう。
企画を差し替えずとも、予定通りの内容で良さそうだ。
しかし、乳首への刺激だけで判断するわけにはいかない。他の部分も確かめるため、光にはショーツを脱いでもらう事となる。
その脱衣指示を与えた時、光はもう少しだけ恥ずかしそうに、躊躇いながらショーツを脱いだ。腰の両側に指を絡めて、布を下げていく瞬間の、お尻がするっと現れる場面には、じっくりとカメラが向けられていた。
そして、光は丸裸となる。
靴下やスリッパだけを残した姿になった時、プロデューサーはすぐに陰毛へ目をやった。生え具合を見てみるに、恥丘に薄らと産毛がある程度で、将来濃くなるかもしれずとも、今は無毛に近いくらいか。
顔を接近でもさせて、よく観察してみれば、一応産毛よりは濃いのだろう。逆に言うなら、近づきもせず遠目にパっと見る分には、本当にささやかで薄らと、今にも見逃しそうな灰色でしかない。
そんな毛の薄いアソコへと、測定の担当者の指は絡んだ。縦筋を指でなぞって、上下に刺激を始めると、光は何かを我慢した顔になるのだが、果たして快楽は感じているのか。
「どんな感じがする?」
プロデューサーは尋ねてみる。
「どんなって……あんまり、人に触らせたい場所じゃないから、ヘンな感じというか、なんていうか…………」
「自分は今、我慢をしていると思う?」
「まあ、うん。我慢、してる」
「気持ち良さはある?」
「気持ち良さって、なんでだよ……」
本気で疑問に思った顔をしていた。
これだけ性に疎いとなると、もしや企画意図もあまりわかっていないかもしれない。
「なるほど? じゃあ、あんまり触らせたくない場所を触られて、それで我慢をしている。っていう、それ以上でもそれ以下でもない感じかな? 他の感覚は何もないかな?」
「他って、ちょっとくすぐったいくらいで、別に何も……」
やはりアソコの感度も低い。
というより、何も感じていないくらいか。
乳首でもアソコでも快楽が皆無となると、それはそれで性感帯の開発という企画は成り立つのか、きちんと感度は磨かれるのかが心配になってくる。
「っていうか、これは何を調べてるんだよ」
光はプロデューサーに尋ねてくる。
「感度だよ? 企画書にもあったでしょう? 性感帯の開発をやるって」
「その性感帯ってなんなんだ?」
「うーん? えーっと、正直に答えて欲しいんだけど、自分のアソコを触ったりはしないのかな?」
「なんだよそれ、トイレで拭く時とか? 風呂で洗う時とか、そういう時しか触んないと思うけど」
「なるほどねぇ」
今どき珍しいことに、あまりその手の知識がないらしい。よほど無頓着に今まで育ち、興味を持たずに生きてきたのか。
(まあ、そういう感じも悪くはなかったりしてね)
あまり意図をわかっていない、困惑混じりの反応を示してもらうのも、それはそれで視聴者へのウケがいいかもしれない。
実を言うなら放送局の面々も、そんな無知な部分を感じ取り、そういう光だから良いようなことを匂わせていた。
「次はお尻の穴を調べるから、体を前に寝かせてくれるかな?」
と、測定の担当者が指示を出す。
「さすがに……本当に恥ずかしいな……」
光は腰を折り曲げて、尻を後ろへ突き出した。
「お尻を自分で握ってごらん? 左右に広げる感じてさ」
「こ、こうか……」
さらに指示が積み重なると、光の肛門があらわとなった。少しだけ黒ずんで、しかし汚れ一つない清潔な状態の、可愛らしい皺の窄まりと、その数センチ下で閉じ合わさった初々しいワレメのセットは、とても綺麗なものだった。
自然と注目が集まっている。
測定の担当者がまじまじと、カメラマンもカメラを向け、プロデューサーもこの機にアイドルの下半身をチェックしている。
測定は始まった。
筆を握って手を近づけ、柔らかな毛先によって肛門をくすぐり始める。
「んっ……」
小さな声が聞こえて来た。
「んぅ…………」
表情を確かめるため、プロデューサーは顔の見える位置へ移動する。いかにも我慢した風な、頬の強張った様子が見受けられるが、やはり快楽を感じているわけではないだろう。
「くすぐったい?」
「マジでくすぐったい……ヘンな感じだ…………」
何の誤魔化しもなく、光は本気でそう言っている。
この測定の結果は、よって書類には感度ゼロとして記入がされる事となる。乳首を責めても、アソコでも肛門でも、くすぐったいのであって気持ちいいわけではない、そんな光の感度開発は、果たして成功するのだろうか。