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 その夜、キバとシノの二人が宿に現れた。
 合流を果たしたことで、四人集まり今後について話し合うが、二人が言うには結局のところ逃亡者は発見できず、明日も捜索を続けるという。明日も見つからなければ、そこで任務は打ち切りだそうだ。
 と、ロビーに寄り集まって、そういう話をしている最中、ヒナタは始終迷っていた。
(どうしよう……言った方がいいのかな……)
 ナルトに風呂を覗かれた。セクハラされた。様子もおかしい。
 しかし、おかしいといっても、誰かに操られているだの、心を狂わされているといった確証はなく、伝えれば伝えたで、結果的にはナルトを悪者に仕立て上げただけで終わりかねない。
 いや、悪いは悪いというべきか。
 とはいえ、それでもナルトへの好意が消えないヒナタなので、自分が被害に遭ったにも関わらず、人に伝えることには抵抗があった。私は痴漢に遭いました、風呂を覗かれました、という話をすること自体にも、そもそも抵抗があるのだった。
 結局は何も伝えることなく朝を迎え、キバとシノは再び捜索に出る。
「オレも行くってばよ」
 と、ナルトは言うが、いざ印を結んで多数の分身を出そうとした時、使おうとしたチャクラの量が大きいせいか、急に腹を痛めたように蹲る。敵にやられた箇所を両手で押さえ、痛みを訴えるナルトに対して、シノはこんな仮説を唱えた。
「おそらく、ナルトは未だ何らかの術にかかった状態だ。少量のチャクラは使えても、多量となると経絡系に狂いが生じ、打たれた箇所に痛みが生じる」
「だったら、分身の数を減らすってばよ」
「いいや、術の正体が完全には掴めていない。ナルトの人海戦術に頼れないのは残念だが、まだ休んでいた方がいい」
「ちぇ」
 と、そんなやり取りを経て、ナルトはまだ休み続けることとなり、その様子を見守っていて欲しいと、ヒナタも宿に残されることとなる。
 ヒナタは複雑な思いでいた。
 ナルトと二人きりでいられるなど、本当なら嬉しくてたまらないことなのに、下着泥棒までされたとなると、一体どんな顔をして、どう接していいのかがわからない。
 それでも好意が消えているわけでないのは、今のナルトはどこかおかしい、もしや術の影響では、という思いに願望を沿えたものが、ヒナタの胸にはあるからだ。
(食事、持っていってあげようかな……)
 ヒナタは宿の人に食事を頼み、受け取った盆をナルトの部屋に運んで行く。
(ナルトくんと……二人きり……で、でも――――)
 やはり、複雑でならない。
 一緒にいられるチャンスだが、またおかしな行動に走られれば、まさに昨日のようなことをしてくるようなら、むしろ二人きりは避けるべきという話になる。ナルトのことは信じたいが、それでも警戒すべきかという複雑さを胸に、ノックのために持ち上げた拳を下げかける。
 しかし、だらっと下がりかけた腕を持ち上げ、ヒナタは結局のところノックをした。
 返事を待って部屋へと入り、ナルトに食事を与えるのだった。
 そして、しばらくはいつものナルトであった。美味しそうな食事を見て、美味しそうに食らいつく。食欲旺盛な男の子の姿を見て、それを微笑ましく見守っていたのだが、しかし急にナルトは豹変した。
「そういえばヒナタ」
 ニヤっとしていた。
 明らかに下品な目で、ナルトはヒナタのことを見てきていた。
「な、なに?」
「昨日はさ。白だったじゃん?」
 ナルトがおもむろに立ち上がり、一歩ずつ迫った時、ヒナタも自然と立ち上がっていた。ちょうど昨日と同じ様子の、いつ何をしてきてもおかしくない、ナルトとは思えないナルトを前に、いつでも逃げ出す体勢を取るために、ヒナタは立ち上がっているのであった。
「今日はさ。何色だってばよ」
 迫るナルトを前にして、ヒナタは後ずさりで何歩も下がる。
 しかし、その足は途中で止まった。
「影分身!」
 印を結んだナルトの分身は、ヒナタのちょうど真後ろに立っていた。後ずさりの背中が分身にぶつかって、ヒナタはそのまま後ろから抱き締められた。
「ひゃ!」
「昨日の続きだってばよ」
「や、やめて! こんなのナルトくんじゃない!」
 抵抗に身を捩り、巻きついた両腕を振りほどこうとしてみるが、ヒナタの力ではナルトの腕力から逃れられない。身じろぎをする分だけ、お尻をフリフリと動かして、むしろ分身の勃起に自ら擦りつけてしまっていた。
「何言ってんだってばよ」
 動けないヒナタへと、本体はずかずかと距離を詰め、パーカー越しの胸を揉み始める。
「やめて! な、ナルトくん! 目を覚まして!」
「目ならとっくに醒めてるってばよ!」
「ち、ちがう! 絶対! なにかおかしい!」
「へへっ、ヒナタの胸って、けっこう大きいんだなぁ」
 ナルトは鼻の下を伸ばしきり、嬉しそうに指を動かす。蠢くような、踊り狂った指遣いに、ヒナタの乳房はパン生地が捏ねられているような変形を繰り返す。
「いや! いやったら……!」
「いいじゃねーか。減るもんじゃねーし」
 パーカーのチャックが下ろされる。
 分身の腕も動きが変わり、ヒナタの両手首を掴んでいた。後ろ手に捻り上げ、無抵抗にさせられながら、だからヒナタは自分の脱がされていく状況を、ただただ受け入れていることしかできなかった。
「やめて……」
 悲痛な訴えが届かない。
 ここまで嫌がったり、声を上げたりしているのに、決して手を止めてくれないナルトは、果たして本当にナルトなのかと、いよいよ疑惑も膨らんでいく。
「っと、パンツパンツっと」
 ナルトは不意に下着へ興味を移し、急にしゃがんでズボンの留め具を触り始める。
「やだ……」
 昨日と同じ流れであった。
 留め具が外され、チャックを下ろされ、その後はガバっと一気に容赦なく、呆気なくずり下ろされる。下着を丸出しにされてしまい、燃え上がるような赤を頬に広げて、ヒナタはますます表情を歪めていた。
「いや……本当に……やめて……お願い、ナルトくん……」
「へへっ、今日も白だってばよ」
 聞きもせず、ナルトは真正面から顔を近づけ、繊維の素材や刺繍を細やかに観察してくる。そのニヤニヤとした視姦によって、ヒナタの純白の下着はナルトの網膜に焼き付けられる。
 昨日の下着は、白い生地に薄水色の刺繍を入れたものだったが、今日は刺繍も含めて白である。糸と布で、素材の種類が違うことで、微妙に色合いが違って見える。刺繍線画の花びらは、糸の縫い込みで生まれる凹凸の、小さな小さな影で浮き出て、至近距離では当然のように枚数まで観察できた。
「花びらが一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚だってばよ」
「いやぁぁ……!」
「あれ? 両側になんか、リボン結びみたいのがあるってばよ? 紐パンツなのか?」
「ち、ちがう……!」
「ヒナタのことだから、アソコも可愛いんだろうなぁ」
「ナルトくん……どうしたら目を覚ますの……?」
「だから、目なら醒めてるってばよ」
「だって、いつものナルトくんなら、下着だって絶対盗らない…………」
「下着? 盗る? なんの話だってばよ」
 と、ナルトは首を傾げる。
「なんの話って、だって昨日……」
「まあいいや。とにかく、いっぱい触らせてもらうってばよ」
「いやぁぁ――!」
 ヒナタはまた、胸を揉まれた。
 下着は十分に視姦してと思ってか、再び立ち上がった本体の両手に揉み込まれ、後ろからはひたすら股間を押しつけられる。乳房は変形を繰り返し、尻には肉棒の感触が押し込まれ、二人がかりの痴漢にヒナタは顔を歪め尽くした。
「へへっ、一人増やすってばよ」
 また、ナルトは印を結ぶ。
 分身が二人となってから、体勢が変化していた。
 ヒナタは力ずくによって本体に抱きつかされる。ナルトの胴に腕を巻きつけ、その向こう側で分身に手首を掴まれている。その状況を例えるなら、丸太に抱きついた状態で手錠をかけられ、離れることが出来なくなったようなものだった。
 そして、もう一人の分身は、後ろから尻を撫で回す。
「やだ……やだ……」
 前からは胸を揉まれて、後ろからは下着越しに触られている。特に尻に関しては、胸と違って布一枚しか介していない。鎖帷子とシャツにブラジャー、まだ三重の守りを残した胸よりも、ずっと如実に、手の平の感触は伝わってきた。
 撫で回す際の摩擦の音は、すりすりと聞こえてくる。
 本体の体温と、息遣いも伝わってくる。
(なんで!? どうしてこんな!)
 ヒナタはいっぱいいっぱいだった。
 恥ずかしさや恥辱感ばかりに胸は満たされ、何かを冷静に観察している余裕がない。数式の列でも眺めるような分析など、ヒナタには出来なかった。
 しかし、その音を聞いた瞬間、そればかりは話が違った。
 胸を揉みしだく両手のうち、片手が離れた瞬間には、まだ何も気づかなかったが、その物音に気づいてからは、さしものヒナタも今までとは別の戦慄を覚えていた。
 腰のホルダーをぱちりと開けて、忍具を取り出す音だった。
 それはクナイか手裏剣か。
(……違う)
 だからヒナタも、いよいよ持って確信した。
(本当に違う……)
 この状況ですら、本来のナルトには思えない。それに加えて、仲間に向かって凶器を取り出すなどという事実が入ってくれば、もはや確実だった。

 ナルトはナルトじゃない。

 偽物と入れ替わるか、操られているか、心を狂わされているか。
 何らかの理由で、やはり本来のナルトではない。

 白眼!

 強い確信を抱いた瞬間、ヒナタの目つきは変貌していた。
 力んだ眼差しの両側には、ひどく血管が浮き出ていた。



 
 
 

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