そして、次はロワ・フェルビスの番だった。
(な、な、な、な、な、な…………)
ロワ――その本名がロウェルミナ・アースワルドであり、皇帝の血を引く第二皇女であることは秘密にしている。学校への入学にも偽名を使い、ただの貴族として振る舞っているロワなのだが、まさか自分にこんな運命が巡ってくるとは夢にも思っていなかった。
「どうしたのかな? ロワさーん」
ウェインが煽る。
「ほら、ニニムは胸まで出しているよ?」
ストラングも急かしてくる。
「ロワ、お前もせめて同じくらい脱いだらどうだ?」
と、グレンもニヤけた顔で圧力をかけてくる。
「あ、あはは……これは……緊張しますわね…………」
ロワは表面的にはニコニコして、愛想良くしてみせているものの、心の中まで穏やかであるかといったら、まさかそんなはずはない。
(どうしてこうなったのよぉぉぉ!)
穏やかな笑顔の裏で、心の中では大絶叫だった。
(ストリップ!? 私が? 皇帝の血族が!?)
貴族にすら似つかわしくない運命を第二皇女の自分が辿るなど、こんなことが城の人間に知れようものなら、一体何人が卒倒するか。立場が立場だけに、まず周辺で起こりうる騒動に想像が及ぶのだが、わざわざ報告しなければ知られずに済むだろう。
騒ぎを起こさずに済ませるのは、まあ何とかなるはずだ。
それはいいのだが、そもそもの恥ずかしさという大問題があるわけで、ロワが先ほどから浮かべる笑顔は、引き攣り気味で本当にぎこちないものと化していた。
「ほーら、ほーら」
ウェインがさらに煽ってくる。
「…………」
ニニムは無言だが、目が言っている。「私だって、こうして胸を出してるのよ?」と、まさしく目が語っている。後ろ手に縛られたまま、丸出しの胸を隠すこともできない状態のせいなのか、恨めしさがより一層のものに見えてくる。
(ああああ! もう! 脱ぐわ! 脱ぎますわよ!)
ロワは自棄気味にボタンに触れ、かなり乱雑に指を絡めて外し始める。脱げばいいんだろう、脱げばと言わんばかりの、気丈さのような、売り言葉に買い言葉のような、そんな感情が指には大いに宿っている。
ロワが身に着けているのは制服だ。
ウェインやニニムが私服に着替えている一方、ロワは赤いブレザーのままここに着て、ニニムの罰ゲームを受ける姿を見届けていた。次は自分の番であることについて思いつつ、ニニムの胸が曝け出される瞬間を目にするのは、自分の未来を見るかのようで仕方がなかった。
そして、今こうして脱衣開始の瞬間を迎え、裸という未来は間近にまで迫って来た。
「ははっ、まずはブレザーですよね? ブレザー!」
無理のある笑顔を向けながら、ボタンを全て外しきる。
袖の中から腕を引き抜き、ワイシャツの白い姿を晒した次は、グリーンのネクタイを手に掴む。三人もの男に裸を晒し、視姦されなくてはならない運命への、躊躇いと抵抗感がいくらでもあるせいで、その手つきはやはり乱雑だった。
そんな怪力でもあれば、ネクタイを引き千切ったかもしれない程度には、雑なあまりに力がこもっているのであっった。
そして、いよいよワイシャツである。
それを脱げば下着が見える。ついに肌を露出することになってしまう。その瞬間を迎えての心境といったらない。ボタンを下から順に外そうと、指を腹部に運ぶのだが、ただボタンを外すだけの手つきが必要以上に震えていた。
「あ、はは……震えちゃいますね……さすがに……」
恐怖や怯えのようなものすら、胸中には湧いて広がっている。
「うむ。じっくり、たっぷり、時間をかけて構わないぞ?」
などと言いつつ、ウェインはニニムを椅子に座らせる。座ったニニムの真後ろで、背もたれを挟んで密着しながら、肩でも揉んでやるかのように両手を乗せ、そのまま胸にまで指先を届かせている。
人のストリップを見ながら、ニニムのささやかな胸を手で楽しもうというわけだった。
「あらそう。お気遣いどうもと言いたいのですが、なかなか良いご身分で」
ロワはウェインの仕草を指摘する。
「ん? ああ、そうかもな」
あっけからんと答えるウェインの隣で、グレンやストラングは微妙に羨ましそうな目を向けていたのだが、あえて余計なことは言わずにいる。
というのも、ニニムがフラム人だからだろう。
五人の中では新参者のロワですら、フラム人を中傷した際のウェインの反応は知っている。ニニムへの手出しはウェインの中の何かを暴発させかねないので、楽しむにしてもほどほどに距離感を保っているのが、今のグレンとストラングなのだろう。
なんてことを思っているうちに、もう少しだけボタンは外れる。
広げさえすれば、もうヘソまでは出せるのだが、最終的には裸になることを思ったら、不思議とそれすら出したくない。全裸への階段を一歩ずつ上がっていく気持ちで、本当に体中がそわそわして落ち着かない。
シャツを左右に広げるどころか、むしろ引き締めて隠したいくらいである。
だが、そうはせず、ロワはどこか観念でもしているように、さらに一つ、また一つと、だんだんとボタンを外している。その手が上に行けば行くほど、下着の見える瞬間は近づいていき、今にブラジャーの領域にまで差し掛かった。
胸に近いボタンを外す時ほど、ロワの手はゆっくりと、躊躇いがちに動いていた。
「期待が膨らむな? ロワ」
ウェインが言う。
その隣で、二人も同意の頷きを繰り返す。
「よ、余計なことは言わなくていいんですよ?」
声が裏返っていた。
ロワ自身が驚くほど、震えと上擦りのある声だった。
「しっかし、時間がかかればかかるほど、気の毒な人がいるんじゃないか?」
「まるで脅しですね」
「べっつにー? どんだけゆっくり脱いだって構わないよ? 俺は。うん、俺はね」
「ええ、そうですか。ではゆっくりさせて頂きます」
ロワはさらに一つのボタンを外し、そしてニニムに視線をやる。
ニニムのロワに対する眼差しは、何かを言いたいようでいて、それ以上に気まずそうにしている風である。目を合わせられずに視線を背け、しかし訴えたい何かが本当はありそうに、たまにチラリと向いてくる。
そんなニニムの背後にウェインはいて、肩や胸を触っているのだ。
人質を取って見えるといえば見える。「ぐっへっへ、お前が脱がずにいるおかげで、こいつだけ裸で可哀想だよなぁ? こいつも早く仲間が欲しいのになぁ?」なんて意図が、一見すると穏やかな笑みから伝わってくる。
(この調子で裸って……裸って……)
ロワは残るボタンも全て外した。
その途中、隙間から下着が見えないように、ワイシャツの開き具合に気を遣い、そうして外しきっていた。あとは脱いでしまうだけなのだが、それにまた抵抗を感じて、ロワは自らのシャツをぎゅっと掴んで、開くどころかむしろ引き締めていた。
「おや? どうしたんだい? ロワ」
反射的な行動に、ストラングはわざとらしく尋ねてくる。
「まだ焦らすとはな。ロワもなかなか、風情ってやつがわかってるじゃないか」
グレンはそんな風に評してくる。
「へえ、グレンにしてはいいことを言うね」
「俺にしては!?」
「ま、それは置いておいて、下着は何色なんだろうね? ニニムと同じで白だったりして」
ストラングが急に人の下着の色を予想してきた瞬間だ。
「いや、黒じゃね?」
と、ウェインは言う。
「はい?」
それにロワはついつい反応を示していた。
「ああ、別に? なんとなーく、そう思っただけだったんだけど、へー? マジで黒だったんだー。ロワさん、わっかりやすー」
「や、やだ……いやですわね……まったく、なんてことを……ぬ、脱ぎにくくなるじゃないですか……」
追い詰められた心境だった。
これから行うことに変わりはないが、事前に言い当てられたせいなのか、ブラジャーを見せることの恥ずかしさが割り増しになったように感じられ、まだ見せもしないうちから、頬の赤らみはみるみる強まる。
拳が硬い。
ワイシャツに爪を食い込ませ、深く掴んでしまった両手が開かない。
じぃぃぃ…………。
と、しかし躊躇っている時間が長ければ長いほど、余計に恥ずかしい気もしてくる。溜めに溜め、やっとのことで露出すること自体、かえってみんなを喜ばせる演出になりそうで、ロワはいよいよ意を決した。
「では……」
ワイシャツを左右に広げて解放する。
「おおっ」
「これはこれは」
「綺麗なもんだ」
三人が三人とも、感心の声を上げていた。
ロワの曝け出したブラジャーは、やはり腕のある職人が仕立てた高級品だ。肩紐に沿えたレースから、カップに縫い込まれた刺繍に至るまで、素材にまでこだわった一品は、貴族でなくては到底入手できない価格になる。
この時代、現代的な機械化作業もなかったことを加味すれば、余計に高級品である。
黒い布地――正確には黒に近いグレーの上に、より黒い糸を刺繍に使っていることで、黒と黒の組み合わせでありながら、柄が無理なく浮き出ている。刺繍が織り成す花びらの線画は美しいカーブを成し、そんなカップから見える谷間の色気は、ブラジャーという飾りが生み出す演出効果で、より素晴らしいものに見えている。
三人が三人とも、じーっと夢中で見つめてしまうのは無理のない話で、ニニムですら美しいものに対する視線を向けそうになっている。
じわじわと頬が熱され、羞恥心で頭すら熱くなる。
(こ、この調子で? スカートを脱いだり? 下着まで脱いだり?)
ロワはますます引き攣った笑顔となっていた。
(ああもう! さっさと脱げば楽になる!)
いっそ投げやりになって、ロワは手早くスカートを脱いで見せると、ばっさりと落ちたそれは足元でリング状の山を成す。その穴から足をどかして、拾い上げたものをテーブルへと、そして下着姿となって、ロワは皆の視線を浴びて恥じ入った。
もうかなり、裸に近づいている。
ここからさらに近づくため、ロワは両腕を背中にやる。指でホックを見つけ出し、それをパチリと外した瞬間に、ただでさえ心許ない気持ちがより一層のものとなり、頬が燃えるように熱くなる。
そして、この時だった。
あとは肩紐を下ろし、乳房の前からカップをどかすだけとなった瞬間だった。
「いやぁ、しっかし期待できるなぁ? そうは思わないか? なあ、グレン」
「確かに違うな。サイズが」
グレンの眼差しがニニムへ行き、あからさまに大きさを比較する。確かにロワの真正面にあるサイズは、薄らとしたかすかな膨らみで、それに比べてロワの乳房はもっとはっきりとした山なりである。
「どれくらいのサイズなんだろうね?」
ストラングも興味を示してくる。
そのせいか、心なしか視線の圧が強まっているような気がした。
ブラジャーがどいた瞬間、一体どんな果実が洗われるのかと期待してくる眼差しは、ロワにある種のプレッシャーを与えてくる。
(脱ぎにくい……)
ただ単にブラジャーがどくことを楽しみにしているわけではない、ニニムと比べてどれくらい大きくて、どんな形をしているか。漠然と箱を開けること自体を楽しみにするというより、中身のプレゼントは一体何だろうかと、ワクワクしている感じが三人からは出ているのだ。
そんな三人と、何やら複雑そうにしているニニムの前で、ロワは肩紐を一本ずつ下ろしていく。乳房の露出へと、段階的に近づいている感覚で、羞恥心がそれに応じて膨らんでいく。
そして、ブラジャーをどかした。
カァァァァ……!
と、真っ赤に染まり上がった顔で、豊満な乳房を曝け出した。
「おおっ」
「これは」
「デカいな……」
三人が三人とも感心して、ニニムはますます複雑そうにしていた。胸を見られるのは恥ずかしいけど、ロワだけに注目が集まるのもそれはそれで、といった複雑さがひしひしと感じ取れるのであった。
(見せて……しまいました……)
頬が熱っぽく燃え盛り、表情は否応なしに歪んでいく。
ぷるっとした瑞々しい半球を露出している。張りの良い、形も綺麗な乳房はツンと手前に飛び出つつ、ブラジャーの支えが消えた分、ほんの少しだけ垂れ下がっていた。
「じゃあ、次はいよいよ」
「最後の一枚だ」
「楽しみだなぁ?」
グレンが、ストラングが、ウェインが、順々に言いながら、それぞれに邪悪な笑みを浮かべている。
(この人達はもう……!)
ロワは両手を腰にやり、それぞれの親指をショーツに差し込む。腰の両側に右手と左手の親指がそれぞれ潜り、それは徐々に下へと動き、太ももの上をゆっくりと滑り動いた。
「おお」
「ついに……!」
「全裸になるなぁ?」
またも三人揃って、やたらに嬉しそうな声を上げてくる。
「や、やめて下さいよ……!」
もう本当に脱ぎにくい。
期待感に満ちた眼差しは、お前の一番大事なところも覗いてやると、「ぐっへっへ」と、邪悪に微笑んでもいるのだ。
ショーツが足首に到達する。
腰をくの字気味に、上半身を前に倒して、姿勢も低めている今なら、ショーツが下がってしまったこの状態でも、肝心なものはまだ見えない。しかし、ショーツを足からどかしてしまい、元の直立姿勢に戻った瞬間、ロワのアソコは見られてしまう。
抵抗感が一気に膨らむ。
(無理無理無理無理無理――――)
心が悲鳴を上げている。
体の動きは明らかに固くなり、いっそ固まったままロワは同じポーズのまま時間を流すが、それすら彼らを喜ばせる。
「あんれぇ? なぁにを止まってるんですか? 脱げないんですかぁ?」
特にウェインは大喜びだ。
「ま、ま、待って――ちょっと待って下さい……?」
「いいよ? いつまでーも待ってやるから、好きなだけ俺達を焦らしてくれよ」
「あぁぁ……! 見せますよ! 今すぐ見せますから!」
売り言葉に買い言葉だった。
だが、こうしていつまでも固まっていても、その分だけ三人を楽しませ、自分の恥ずかしい時間は続くばかりだと、ロワは思い切ってショーツを手放す。テーブルの上に最後の一枚を放り投げ、直立不動の姿勢を披露していた。
恥ずかしい……恥ずかしい……恥ずかしい……!
顔中が燃え上がり、頬は歪んで、唇も内側へと丸め込まれる。
恥ずかしさのあまり、天井を見上げていた。ぎゅっとまぶたを閉ざし、その力のあまり皺の深まった顔で、視界を暗闇に閉じ込めたまま、顔を真っ直ぐに天井へ向けていた。
「へえ?」
ストラングが大いに感心していた。
「綺麗じゃないか」
嬉しくてたまらない顔で、グレンはアソコを眺めていた。
「なるほどなぁ?」
そして、お前の弱点を見てやったぞ、などと思っていそうなウェインの、本当にいい気になった表情がそこにはある。
そんな三人の反応で、ロワはますます羞恥に苛まれるのだった。
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