そして、女社長は見た。
「ふぅん? あの子達ね?」
レズビアンである女社長は、元より気の強い女を堕とし、辱めることを好んでいる。その対象として今回は永雪氷織を選んだが、他にも多くの女に手を付けて、一体何人を玩具にしてきたことか。
その玩具が暴走して、勝手に氷織で遊んだわけだ。
玩具が玩具で遊んだわけだ。
まったく、玩具の分際で。
「ま、それはいいとして。ずーっとこの状態だったわけ?」
椅子に拘束された氷織の表情は、まるで何日も休みなく働き続けたゾンビのように、疲弊しきったものだった。
そして、股には震えたままのローターが蠢いて、胸にもテープで貼りつけてある。
さしずめ、退社の時間を迎えた三人組は、面白おかしい思いつきのつもりで、ローターをくっつけたまま氷織のことを放置して、帰ってしまったわけなのだろう。
おかげで椅子には愛液が染み込んでいた。
どれだけ愛液を漏らしても、それを拭き取る者は誰もいない。自然な乾燥を待つしかなかった股周りの、汁が乾いて出来上がった痕跡が、円形状に広がっているのだった。
「ちょっとは休ませてあげようかしら。ちょっとはね」
そう言いつつ、女社長はまずキスから行って、唇を頬張った上でローターを取り外す。
やっと快楽から解放され、ぐったりとうなだれる氷織の前髪は、だらりと下へ垂れ下がり、その顔に深い影を作り出す。
「あらあら、本当にお疲れのようね」
「……休ませて、下さい」
細々とした声で、氷織は言う。
「休みたいの?」
「…………はい」
「そうねぇ、疲れたものねぇ?」
「お願い……します…………」
弱々しい声で訴えてくる氷織に対して、女社長はニヤニヤとするばかりで、一向に心優しい声をかけようとはしていない。
「あなた、これまで何回イったか覚えてる?」
「そんなの…………」
「何十回もよ? もしかしたら、百回かも」
女社長は少なくとも、自分でこの手でイカせた回数は覚えている。観測員にカウントさせたのも、もちろん数に入っている。あとは昨日の三人組の分を加えなくてはならないが、他にも女社長も誰も見ていない、昨日から今朝にかけてのあいだの絶頂も、後から確かめる必要があるだろう。
このガラス小屋をカメラで監視していることは、そういえば本人には伝えていなかったか。
「ねえ、氷織ちゃん」
そこで女社長は思いつく。
それはともすると、言われる本人にとっては悪魔の提案に聞こえるものかもしれない。
「チャンスをあげようかしら?」
「……チャンス、ですか?」
「だって、もういっぱいイってるでしょう? 何日分伸びてるかしら? このままだと、随分長くいなくちゃいけなくなるわよね」
「…………」
氷織はただ、弱りきった目で顔を背ける。
「そこでよ? もしそれが嫌なら、特別なチャンスをあげるわ。これから始める愛撫に耐えきれたら、今までの分をチャラにして、明日――いいえ、今日中にでも、家に帰してあげても構わないわ?」
「……本当ですか?」
「ええ、本当よ? その代わり、もしあなたが負けた場合、今までイった回数を全て日数に換算するわ? そうなると、一ヶ月? 一年? もう本当に長いあいだ、うちで過ごすことになっちゃうわよねぇ?」
女社長はゾクゾクと興奮していた。
きっと大いに迷うだろう。
さすがの氷織も、簡単には頷く様子を見せてこない。迷う素振りで顔を背けて、俯きながら考え込んでいる様子であった。
「今から、一分」
女社長はさらに条件を加えてやる。
「たった一分耐えられたら、全てがチャラよ?」
そう言えば、単なるサービスに聞こえるだろう。
テスト用紙の中に、解けて当然の問題を数問くらいは用意しておく。ゲームバランスの関係で、序盤のステージはクリアできて当然の難易度にする。そういった、達成できて当たり前のものに聞こえることだろう。
それでも、氷織は少しだけ迷っていた。
即答こそしなかったが、いかにも達成可能に思える条件に、少しのあいだは迷ったものの、いくら不安があっても引き受けることにしたのだろう。
「やります」
氷織はそう答えた。
「じゃあ、タイマーをセットしましょうね」
六〇秒のカウントダウンは、アプリを使えば簡単に行える。
スマートフォンのタップ操作で準備を行い、その画面を氷織に確認させた上、女社長は開始直前の用意に入る。床に座って、股のあいだに氷織の身体を迎える形で、後ろから抱きつき密着していた。
(いい香り)
女社長は氷織の背中に胸を当て、押し潰して、全身を駆使して肌触りを味わった。ユニフォーム越しとはいったものの、指を溶かさんばかりの触り心地は、すぐにでも女社長をうっとりとさせていた。
「開始よ」
画面を見せつけながら、指先でカウントダウンを開始する。
そして、すぐさまスマートフォンを脇に置き、女社長は直ちに愛撫を始めた。その最初の十秒は、全身をまんべんなく撫で回そうとするものだった。太ももを撫で上げて、腹部にマッサージを加えつつ、鼻先で髪を掻き分け、耳の裏側やうなじを責める。
反応こそしているが、もちろんこれでイクはずはない。
そこで、女社長は胸に焦点を定めていった。
徐々に乳房の周りだけを責めるようにして、鎖骨や肋骨を撫で回す。何せ一分間だけなので、一つのステップごとに使える時間は短いものだ。一秒たりとも無駄にはできず、二〇秒が経過した頃には、もう胸を揉み始めていた。
氷織の全身がモゾモゾ動く。
きっと、最初の頃であったなら、ものの数十秒では反応などなかっただろう。もっと時間をかけて状態を作り上げ、やっとのことでイカせられるはずだったが、今の氷織の肉体はすっかり開発されており、かつてに比べて遥かにイキやすいものとなっている。
「ひゃっ!」
乳首をつまめば、すぐに声は上がってきた。
「ひゃっ、あっ、あぁぁ…………」
もう声の我慢ができていない。
疲れのせいで忘れているのか、気力がないのかは知らないが、氷織ははっきりとした喘ぎ声を吐き散らし、髪を振り乱しまでしてしまっていた。
「だ、だめ……!」
「あらぁ?」
「許して……このままじゃ…………:」
その瞬間である。
女社長の口角はかつてないほど吊り上がり、世紀の大発見でもしたような喜びに満ち溢れていた。
これまで、我慢の顔や意地を張った態度ばかりであった氷織が、始めて許しを請うてきている。提示した条件のため、イカされることで迎える運命への、切実な不安や恐怖があってのことにせよ、普段の氷織の口からは、決して聞くことのできない台詞を耳にしたのだ。
いかに陥落が迫っているか。
「もう……私…………」
そんな声を聞かされて、相手を可哀想と思う女社長ではない。
「どうしちゃったの? 耐えられないのぉ?」
恍惚とした顔で、女社長は興奮しきった声色で氷織を煽った。
「もう……私……私…………」
「頑張って? あと十秒よ?」
そう言うと、氷織の頭が一瞬だけ、床置きのスマートフォンの方向へ動いていた。その直後にはぐっと背中に力が入り、体中の強張る気配が伝わって、氷織のどうにか頑張ろうとする思いが伝わってきた。
密着している女社長の身体に、その感覚は肌触りを通して伝わっていた。
きっと思ったことだろう。
あと十秒なら大丈夫。今まで必ず最後にはイカされたが、残りこれだけの時間なら、現実的に耐え抜けると。
もう、カウントダウンは始まっている。
一〇、九、八、七――。
普通なら焦るべき状況だが、とはいえ女社長は余裕を持って乳首をつまみ、くりくりと弾き抜いていた。
六、五、四、三――。
そもそも、決めてあるのだ。
一体、いつどのタイミングでイカせてやるかを――。
――二、一。
画面上の数字が〇となるその瞬間、アラーム音として設定しているBGMが鳴り響くが、その直前に氷織の肉体はビクっと震えていた。仰け反るような反応で、首を大きく反り返し、顔が天井を向いていた。
「あぁぁああああ…………!」
と、そんな大きな声を、カウントが『一』であったタイミングで吐き出していた。
太ももすら弾み上がって、その直後にこそアラーム音は響き渡っていた。
「あ……ああ……そんな………………」
氷織にとって、敗北の音声にしか聞こえないことだろう。
BGMそのものは、買ってみた機種にデフォルトで用意され、元からあった一覧の中から選んだものだが、たったそれだけの音声が、少なくとも女社長にとって、今だけは勝利を告げるメロディーだった。
*
イカされてしまった。
絶頂回数を日数に換算するという条件で、とはいえ耐える時間はたったの一分だけだったはずのなのに、それでも女社長の技巧に翻弄され、残り一秒にぴったりと合わせる形で絶頂をしてしまっていた。
氷織が浮かべるものは、絶望にほど近い表情だ。
「そんな……そんな…………」
泣きたいほどの思いに駆られ、涙目になっていた。
氷織のそんな表情を、日頃の彼女を知るチームメイトや他のドルフィン達が見たとしたら、さぞかし驚くはずだった。
「あらあら」
女社長の嬉々とした表情に、その絶望しきった顔を覗き込まれる。
「大変ねぇ? もうあなた、うちの奴隷じゃない」
「そんな……こと…………」
より大きな不安が、氷織の中には広がっていた。
昨日の女性社員三人組に放置され、ローターが付いたままの状態で一晩を過ごすあいだに、自分は一体何回イってるのかという不安である。いや、そんなことまで確認しようがないとは思うが、何か理屈を捏ねて回数として換算して、加えてこないかと怖くてならない。
「土下座しなさい?」
悪魔の笑顔で、女社長は氷織の耳元にそう囁く。
「何を……言って、いるんですか…………」
「しなさい?」
有無を言わさぬ圧をかけてくる。
その時にはもう、氷織は屈してしまっていた。あるいは連日にわたって心を削られ、そのトドメのように一晩かけてローターにイカされ続け、疲弊しきった氷織には逆らうだけの気力がもう残っていなかった。
そうしなければ、決して許してもらえない。
圧力に負ける形で、氷織は丁寧に膝を折り畳み、床に頭を触れさせているのであった。
「あーあー。本当にしちゃったわ?」
優越感に浸った顔が目に浮かぶ。
こんな土下座を見下ろされ、勝者と敗者の上下関係が構築されてしまった状況に、氷織の胸にはじわじわと惨めで情けのない気持ちが広がっていた。形としてはっきりと決定付けられることにより、誤魔化しの効かない敗北感で氷織は打ちのめされていた。
「これで永雪氷織は私のものね。さて、記念に罰ゲームとでもいきましょうかしら?」
女社長は隣にしゃがみ、尻に手を伸ばしてくる。
土下座という姿勢によって、後ろへと突き出された尻の丸みに手が乗ると、もうその時点で氷織は展開を予想しきっていた。
既に一度、氷織はそれを体験している。
それが今、再び行われる。
ぺちん! ぺちん! ぺちん!
もはや、叩かれることすら快感だった。
「あっ、あぁぁ…………!」
痛みというより、恥辱さえ与えられれば構わない。いくらかは加減してある平手打ちは、しかし確実に大きな音を鳴らしている。肌に感じる衝撃に加え、耳に染み入る打音によっても、惨めな気持ちは膨らむのだ。
しかも、ことはそれだけでは済まなかった。
じわっ、
と、尿が溢れた。
ずっと縛られていたせいで、そういえば一度もトイレに行っていないことを、今更になって思い出していた。
「あ、あぁ…………」
待って欲しかった。
それだけは、どうか待って欲しい思いでいっぱいだったが、肉体の生理反応は無情なもので、刺激の影響もあってのことか、いとも簡単に限界を迎えていた。
「ええ? お漏らし? あなたいくつ? 幼稚園児?」
ケラケラと笑って馬鹿にしてくる。
それに対する何の返す言葉もない。
氷織は放尿してしまっていた。ユニフォームの股布が当たっているため、だから黄色いアーチというわけでもなく、布の内側から染み出てポタポタと垂れる形で、床に尿は広がっていくのであった。
「お仕置きね」
女社長は怒るでもなく、むしろ大喜びで蔑みながら、平手打ちを活発に繰り返した。
ぺちん! ぺちん! ぺちん! ぺちん!
氷織は実感していた。
もう自分は本当にこの女社長の奴隷であり、所有物に過ぎないのだ。そんな意識を連日の調教や土下座に加え、お漏らしによっても擦り込まれ、もはや洗脳のように染みついてしまっていた。
*
翌日、氷織にはタトゥーが刻まれていた。
ユニフォームを脱がせてみて、裸になった尻の上にはでかでかと、女社長の会社のロゴマークが彫られている。ただ意識を擦り込むだけでなく、目に見える形によっても所有印を加えることで、彼女はより完全な形で永雪氷織を手に入れたのだ。
「さぁて、うちに所属を移ってもらわないとね」
そして、そんな手続きさえも始まることとなる。
氷の女王と呼ばれた永雪氷織はもういない。
これからの彼女は、より高位の女王に屈した奴隷なのだ。
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