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 そのさらに翌日である。
「んっ、あぁ……あっ、あぁぁ…………」
 氷織は立ち姿勢でまさぐられ、よがらんばかりの表情をガラスに迫らせていた。壁に両手を当てた形で、直立に近い姿勢で、腰は少しだけくの字に突き出し、その後ろから女社長は抱きついている。
 後ろから回って来る両手によって、胸やアソコを弄られていた。
「んぅぅ…………」
 そして、氷織はその快感に対する声を懸命に抑えていた。
「おやまあ、我慢強いねぇ?」
「でも、どうせイっちゃうんでしょう?」
「今日も一日延びちゃうね」
 ガラスの板を介したすぐ向こうには、男という男の数々がそれぞれの目をギラつかせている。ゾンビ映画のワンシーンで、おびただしい数の群がガラスにへばりつき、血塗れの手指でひたすらに引っ掻き続けている場面を思い出す。
 その手のゾンビは人間の肉を喰らうが、エサに群がる集団という意味では、目の前の男達の織り成す光景は、ゾンビの集団からそう大きくは外れていない。氷織の辱めを受ける姿を少しでも目に焼き付け、鑑賞会を楽しもうと必死な男の、血走った目の数々がそこにはあるのだ。
 鼻息の荒い男達が、それでもガラス小屋の中には入ってこないのが、かえって不思議なくらいであった。
「ほーら、みんながあなたに興奮してるわ?」
 両手が乳房を揉みしだく。
 その手練手管によって感度を増し、すっかり敏感となっている胸からは、とっくの昔に乳首が突起しきっている。ユニフォーム越しの固さを見つけ出されて、乳首を集中的にこねくり回す愛撫に翻弄され、氷織は今にも髪を振り乱しそうになっていた。
 ぐっと、より強く歯を食い縛る。
 ここまで、氷織はほどんと喘いでいない。
 欠片たりとも声を出さなかったかといえば、申し訳程度には喘いでいるが、ほとんど全ての声については、強張った顎の内側に封じられていた。
 胸を揉まれている分には、まだしも氷織は耐えていた。
 食い縛った歯の隙間から、決して声を出すことなく、ガラスに当てた両手も拳に変えて、女社長の巧妙な愛撫を堪え抜く。その苦悶しきった表情は、まるでどんな拷問にも屈しないかのようだった。
 しかし、次の瞬間である。

「ひゃ――――」

 急にアソコを触られて、氷織は声を出しかけていた。
 慌てて口を閉じ直し、どうにか喘ぐことなく済ませてみせるも、その一瞬の声でさえ、ガラスの向こうは盛り上がる。
「聞いたか? 今の」
「ひゃ! だってよ」
「もっと聞かせてくれよ」
「ほらほら、もっともっと」
「いつまで我慢してんだ?」
「どうせイクんだから」
「観念しちまえって」
 男達が投げかけてくるどんな声も氷織は拒んで、頑としてイクまいと尻や股を力ませる。ぐっと力を入れることにより、女社長の愛撫を凌ぎきろうと試みるが、再びワレメをなぞられた時、背中を駆け上がる激しくも甘い快感に、全身をぶるっと震わされていた。
「あっ、あぁ………」
 また、声が出かかっていた。
 やはり直後には噛み殺し、それ以上は喘がずに済ませるものの、甘い痺れが神経を伝い広がることで、顎すら浸蝕されているのがわかる。細胞が少しずつ染め変えられていくように、快楽が少しずつ広がって、いつか脳さえ侵されそうな予感があった。
 このままでは耐えきれない。
 結局、いつものようにイカされてしまう。
(どうすれば……どうすれば……)
 氷織はわけもわからず体中に力を込め、腕にも腹にも背中にも、強張った震えを宿していく。それだけ全身の筋肉を駆使してまで、我慢に我慢を重ねようとする氷織だというのに、アソコを上下してくる指遣いに翻弄され、尻がくねくねと動いてしまっていた。
「あっ……あ………………あ………………あ……………………」
 強張った喉から、どうにか搾り出される声だった。
「ああ…………あぁ………………」
 もう、氷織は本来なら喘いでいる。
 たっぷりと息を乱して、色っぽい顔で喘ぎつつ、荒れきった呼吸を繰り返しているというのが、既に本来の状態なのだ。
 それを無理にでも抑えた結果、表情だけは平静を装おうとしているが、あくまでも装っているだけである。頬が力んで、苦悶めいたものが顔全体に滲み出て、だから装いきれてなどいないのだった。
「あぁ……くぅ、くぅぅ…………くっ………………」
 何度も何度も、氷織は自分の声を噛み殺す。
 平静など崩れていると、自分でもわかっていながら、噛み殺すことはやめられなかった。
「これならどうかしら?」
 女社長はそう言ってニヤニヤと、楽しく追い詰めていくように、指先で布をずらした。それまでユニフォーム越しだった愛撫は、皮膚に直接のものとなり、ワレメの表面を指が滑りよく往復した。
 より強い刺激が走る。
「あぁぁ…………」
 愛液はとっくに出ていた。
 こうしてガラスにへばりつき、見えやすい距離で布をずらしたものだから、男達は一斉にしゃがみ込む。血走った目という目の数々がアソコに集まり、衆人環視に性器を直接視姦される恥ずかしさで、瞬く間に脳が熱に染まり上がった。

 じぃぃぃぃ…………。

 と、焼き切らんばかりの視線照射が一点に集中してくる。
 頭が沸騰しそうであった。
 くつくつと煮えたぎり、顔から蒸気が出そうな勢いの羞恥に囚われ、氷織の浮かべる苦悶はますますのものとなる。装っている平静は、もはやあってないようなものであり、誰がどう見たところで、その表情は快楽や羞恥に対する悶絶でしかないのであった。
「はぁ……あっ、くぅぅ……んっ、んぅぅぅ………………」
 声は少しずつ色気を増す。
 食い縛っているはずの歯の隙間から、それでも漏れ出る声にはだんだんと色艶が増している。顎の筋力が不意に弱まり、大きな喘ぎが出そうになる頻度も増え、氷織が一体どれほどの快楽を堪えているかは、時間が経てば経つほどにわかりやすくなっていた。

「あぁ――――――」

 ついに、一回はイってしまう。
 ビクっと震え、頭の中で何かが弾け、思考が真っ白になる瞬間、それを見た男達のニヤつきようといったらない。世紀の大発見でも見たような、素晴らしいものを見つけた顔で、いい気になって絶頂についての指摘を始める。
「イったねぇ?」
「気持ち良かった?」
「また一日延びたよ?」
「明日も明後日もイっちゃうね?」
「もう我慢する意味なんかないんだよ?」
「あと何回イクのかなぁ?」
 まるで円の中心に立たされて、周りからボールをぶつけられ続けているような、酷いイジメにあっている気分にすらなってくる。

「くあっ、あぁぁ………………!」

 そんな時、クリトリスを触られた。
 イったばかりのアソコに対して、すぐさま愛撫を再開しての、包皮から飛び出た固い肉芽へのタッチによって、氷織はまたしてもイカされていた。
 この日、二度目の絶頂だった。
 しかも、ずっと噛み殺してきた声が今までに比べて一番大きく出てしまい、その屈辱が体中に満ち溢れる。このままでは声すら我慢できなくなる危機感に、氷織は騒然とした顔をして、髪を振り乱してしまっていた。
「あっ、あぁ……あぁ…………あぁぁ………………」
 もう我慢の力は弱まっている。
 筋力を使い続けての、純粋な疲弊と合わさって、快楽に染まった顎が緩んでいる。それでも喉に力を加え、抑え込もうとしているおかげで、本来よりも小さな声しか出ていない。
 だが、喘ぎは喘ぎであった。
「やっといい声が出てきたねぇ?」
「ほらほら、もっと声出そう?」
「どうせ出せるんでしょ?」
 抑えに抑えた声であっても、男達は存分に盛り上がり、それぞれに喜んでいる。
「ほーら、みんなも聞きたがっているわよ?」
 女社長は耳の裏側の口を付け、ぺろりと舌で舐め上げる。もうそんな刺激でさえも、異常なほどの快感がせり上がり、神経信号を介して体中に拡散する。

「くぅぅぅぅ――――――」

 とうとう、腰から力が抜け、氷織はその場にへたり込む。
 壁に両手で縋り付いているかのように、反り返した腰を突き出して、氷織はぐったりと沈んでいた。

 ぺちん!

 と、そんな氷織の尻を女社長は打ち鳴らす。
 そして、両手で腰を掴んで引っ張ると、無理にでも差し込もうとするように、手で性器を狙ってまだまだ愛撫を繰り返す。
「あっ、あぁ……あぁぁ…………!」
 膣口への挿入だった。
「あぁ……!」
 ついには大きく声が出て、たっぷりと喘いだ挙げ句に氷織はビクっと尻を跳ね上げる。より一層のことぐったりと、床に沈み込んでいく氷織の姿は、さながら脱力しきったカエルであった。
 カエルの姿勢そのままに、力尽きたように動かなくなっていた。
「おーおー」
「イったねぇ?」
「みっともないねぇ?」
 男達の言葉が責め苦となって、氷織の胸を締め上げる。
 しかし、何度もイカされてしまった体では、もう起き上がって睨み返すような気力もなく、ただただ床に頬を押しつけているばかりであった。

     *

 そして、その翌日もまた責め苦は続く。
 一体、今日はどんな目に遭わされるのかと思っていると、今の今まで決して起きなかった事態が発生して、さしもの氷織も焦燥と恐怖を胸に抱え、それを懸命に押し隠していた。
「どういうことでしょうか」
 険のある顔で、氷織は周囲の面々を見渡した。

 氷織は椅子に縛られていた。

 それまで、ガラス小屋には入ってくることのなかった社員達が、今日になっていきなりずかずかと上がり込み、ロープや手錠で拘束してきたのだ。
 どちらの足首にも手錠が使われ、もちろん手首にも手錠はかかり、後ろ手の拘束によって両腕は背もたれの後ろ側へといっている。駄目押しにロープを何周か巻きつけて、ユニフォーム姿である氷織の身体は、一切の抵抗力を奪われていた。
「いいじゃなーい」
「ま、どうせイっちゃうんだし」
「社長の手でイクか、私達の手でイクかの違いってことで」
 薄々と気づいてはいた。
 ガラス小屋に集まるのは、男達ばかりではあったのだが、同性愛者の社長が自分の性癖に理解ある者ばかりで周りを固めている。ならば男しかいないはずはなく、中には女も混ざっているのは、視界に何度かチラチラと、入り込みはしていたのだ。
 それにしても、我慢できずにこっそりとルールを破ってくるように、小屋に入り込んでくる社員達が、まさか全員女性だとは思わなかった。
「いいんですか? こんなこと」
 男ではなかったのは、不幸中の幸いだろうか。
 少なくとも、ペニスを使った辱めだけは受けずに済むが、かといって女性社員の三人組は、一体どんな手つきで氷織を味わうつもりでいるのか。
「いいのいいの。社長ならきっと許してくれるし」
 そう言って、三人組のうち一人は、おもむろにキスをしてきた。
「んぐっ」
 唐突に唇を塞がれた。
 大胆に頬張るような口づけは、もはやキスと呼ぶよりも、獣が食らいついてきた勢いである。それが愛する相手であれば、さぞや甘美なものとなったのだろうが、ここにいる三人組の、氷織は一人の名前すら知らないのだ。
「ルールは同じよ」
 唇を離しつつ、眼前で微笑む女が言う。
「イったら、一日延長」
「我慢できたら、縮めるように言ってあげるわ」
 さらに二人の女も続けて述べ上げ、それからは思い思いの愛撫を行った。

 ちゅぅ、ちゅくぅ……ちゅっ、チュゥ――チュゥゥ――――

 と、三人がかりのキスにより、まずは両耳が舐られた。左右真横に立つ二人の、唇が触れてきて、フェザータッチのように表皮の表面をくすぐりつつ、時折ペロっと舐める刺激によって、氷織の耳には少しずつ唾液が付着していく。
 さらにもう一人――一番最初にキスをしてきたその女は、真正面から胸を揉んだり、ポケットからローターを取り出すなどして、乳房を重点的に責めてくる。手で撫で回すようにしながらも、振動するローターを這わせもしての刺激によって、氷織の肉体は大いに反応を示していた。
「んっ、くぅ……んっ、んぅぅ…………」
 氷織はたちまち、我慢しきった表情で険しくなる。
「早速、息が乱れているわね?」
「ふふっ、我慢ができなくなってるんでしょう?」
「感度が上がって、耐えにくくなってるのよね?」
 さも見透かしたように言ってくる彼女達の言葉には、反論したくてたまらない気持ちが反射的に沸き立つものの、かといって否定できないものがある。
 本当に気持ちいいのだ。
 耳を責めてくる唇も、ローターを使って乳首を狙い、刺激してくる愛撫も快感で、今にも声が出そうになっている。まだ始まったばかりだというのに、触れられもしていないアソコがもう反応を開始して、じわっと密かな湿気を帯びているのだ。
「いい反応ねぇ?」
「可愛いわぁ?」
「私、前からファンだったのよ」
 ファンと言いつつ、氷織のことをみんなで玩具として楽しんでいる。
 耳だけでなく、頬をぺろっと舐めてみたり、髪をかきわけうなじをくすぐり、そちらの皮膚にも舌を這わせたり、ローターをアソコに当ててみるといった行為の数々に、氷織は翻弄される一方だった。
「やっ、やめて……んぅ…………」
 そして、そんなこの日も、小屋の外には見学が集まっている。
「あれ? 今日は社長じゃないのか?」
「あーあー。ありゃ、後でお仕置きされるやつか」
「ま、それが目当てなんだろう」
 いつものように男も集まり、その視線に晒されながら弄ばれる。
「これ、咥えてくれる?」
 そう言って、一人の女が眼前に近づけてくるものは、ペニスの形状に酷似したディルドであった。まるで人間の一部を切り取ってあるように、実にリアルな作りをして、皮膚や玉袋の質感が再現されていた。
 亀頭の色まで作り込み、人体の一部を分離させたものだと言われれば、思わず信じそうになるほどの出来映えから、氷織はまず真っ先に顔を背けた。
「できません」
 咥えるはずもなく、氷織は要求を突っぱねる。
「ええ? 嫌なのぉ?」
「そんなことを言っていると、アソコに咥えさせちゃうかもよぉ?」
「いいの? セックスしたい?」
 口々に言ってくる三人組に、睨まんばかりの視線を走らせる。
「……最低ですね」
 断りようがなかった。
 身動きが取れない今、アソコに挿入されてしまえば、氷織は抗いようもなく処女を失う。せいぜい自身の指を入れたくらいの経験しかない穴で、こんな形で破瓜の傷みを味わうなど真っ平だった。
「…………はむぅ」
 他に選択肢もなく、氷織はそれを咥え込む。
 擬似的なフェラチオに、男達の歓声が耳に伝わり、いかにも不本意でならない顔で、氷織は首を動かしている。不慣れな動きで口内に出入りさせ、見え隠れする竿は唾液によって輝いている。そんな光景を見ることで、女達は揃って鼻息を荒くしていた。
 擬似的とはいえ、男に奉仕しているような光景を作り出し、それを見て楽しんでいるようだった。
「じゃあ、私はこっち」
 アソコにローターが触れてくる。
「んぅぅぅ………………!」
 咥えたままの状態で、それでも出しうる声で氷織は喘いだ。
「私はこっちかしらぁ?」
 さらに残る一人は背後に回り、椅子から飛び出た膨らみを撫で回す。
 氷織の座っている椅子は、背もたれの向こう側に尻を突き出すことが可能であった。まるで四角形の穴に押し込んで、向こう側へ抜け出ようとしているような、ユニフォーム越しの尻が大胆に膨らんでいた。
 そんな尻を存分に撫で回し、手の平で味わい尽くそうとしてくる背後の女は、さらに指を押し込むタッチによって、肛門まで責め始める。
「んぅぅ……んっ、んぅぅ…………!」
 肛門からさえ、性的な激しい刺激が走り、全身がカッと熱くなっていた。
 体の芯が発熱して、急に汗が出て来るような感覚に襲われていた。
「ほらほら、しっかり咥えるのよ?」
 髪を振り乱した氷織に対して、ディルドを握る女は人の頭を掴んでまで、擬似フェラを続行させようとしてきている。
「汁がいっぱい出ているわぁ?」
 嬉しそうな声を上げ、ローター持ちの女はアソコの布をずらした上で、ワレメやクリトリスを撫でてくる。ローターの振動をそっと触れさせ、擦りつけてくる愛撫によって、足腰がビクビクと反応していた。
「お尻も感じるのねぇ?」
 さらに肛門をくすぐられ、咥えたままに刺激を感じ続ける氷織は、定時退社の時間を迎えるまで、延々と嬲り尽くされるのだった。



 
 
 

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