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 羽川唯は大人しく控え目な少女であった。
 声が小さく、休み時間は読書で過ごすことが多いタイプの、良く言えば物静かで、悪く言い出す人間に言わせれば暗い性格だ。
 当初、転校生だった唯は、この学校における下着を脱いだりする校則には、まず抵抗感を抱いていた。肌を見せるのが恥ずかしい、嫌だと思う気持ちは当たり前でも、唯の場合は多くの女子よりやや強めの抵抗感を示していた。
 この学校がどんな学校か、わかってはいた。
 事前に覚悟こそしてはいたが、とはいえ段階を踏むことで、少しずつ慣らしていくことを想像していた。
 初日のうちから下半身裸を要求され、大いに戸惑ったというのが、転校初日における思い出だ。
 良い思い出として数えるには微妙な出来事だが、遠く過ぎ去ってみれば嫌な出来事でも少しは懐かしくなってくる。

「羽川唯、ショーツを脱がせて下さい」

 担任を前にして、唯はそう告げた。
(後ろ、川島くん……)
 すぐ後ろが男子であり、視線が至近距離であることが気になった。
 こういった時でなくとも、唯はたまに思い出したように男子の視線を感じ取り、周囲に対する警戒のような、抵抗のようなものを示している。れっきとした警戒心ほどではないが、胸が大きいための注目は確実だった。
 唯の豊満な乳房は、セーラー服を内側から押し上げいる。手前に突き出る膨らみ具合で、スカーフは斜面に乗せたように斜めに、腹と布の狭間にはひらひらとした隙間ができる。ブラジャーで少しは締め付け、隙間を狭めてはいるものの、寒い季節に服を一枚しか着なければ、腹部に入り込んでくる風がいつも気になる。
 クラスでも一・二を争うサイズ感に、男子はそれなりの憧れを抱くものらしく、いつもの日常の中でチラチラと、見られている感覚がたまに気になる。
 男子に対する苦手意識、というほど大袈裟ではない。
 恋に対する憧れ、気になる男子への想いなどはそれなりで、意中の相手と恋仲にさえなったのなら、特定の相手になら見せてあげたいとは思っている。
 ただ、そうでないクラス全体の視線となると、どうしても警戒心に似た気持ちが湧いてくる。
 今もそうだ。
 椅子に座った担任を前にして、真っ直ぐに背筋を伸ばして立つ。
 このポジションに立つだけで、真後ろからの視線が気になる。
 唯にとって、拓也は恋愛対象ではないにせよ、憎からずな相手である。由香里に気のある素振りがあり、よく由香里と喋るチャンスを窺ったりしているので、由香里と友達である唯にもたまに声がかかる時がある。
 友達としての仲が出来上がり、喋りやすい相手であると感じるまでになったのだが、拓也の気持ちは当初から薄々と感じていた。この人は由香里のことが気になるのだろうか、というのを知り合った頃から思っていたので、そのせいか唯自身の気持ちが彼に向くことはなく、ただただ友達としての好意に留まった。
 もっとも、もしもの予感はあったりする。
 もし、由香里と拓也に両思いの気配がなく、自分にもチャンスがあったら、彼に対する気持ちは芽生えていたのだろうか。恋として芽生えることはなく、ただの種のまま終わった気持ちがあることに、いつしか気づいて以来、そんなもしもについて一度や二度は考えていた。
 顔が赤らむ。
 たとえ恋愛感情にまでは発展していなくとも、それなりに良いと思っている男子の視線は、どこか不思議な緊張感を伴うものだ。
 今、拓也の視点からしてみれば、目の前に大きな尻が現れ、それを見放題な状況になっているのだろう。
 尻に感じる視線を思うと、ショーツ越しの皮膚がむず痒い。
 担任が立ち上がり、目の前で膝を突く。
(あぁ……前と、後ろ…………)
 ちょうど担任の頭の高さがショーツに合わさり、おかげで前後からの挟み撃ちで、前も後ろも両方とも、同時に視姦されている状況が出来上がる。
 すぐに両手が伸びてきた。
 ショーツのゴムに親指が入り込み、それと同時に脱がされることへの緊張感を帯びた時、そのまま下降が始まった。
 皮膚に擦り合わさるゴムの感触は、腰から尻へかけて移動していく。尻山を登っていき、頂点に着くなり下降へ移る。アソコの毛やワレメが露出して、ますます顔を染めながら、ついに足首にまでショーツは到達した。
 唯は足を片方ずつどかしていき、下半身裸となる。
 そして、椅子に腰掛けた担任へと、その太ももに腹を乗せ、叩いてもらうためのポジションを作り上げると、それは早速始まった。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 スパンキングが始まった。
 こうして叩かれていることで、改めて身に染みる。
 ここでは校則が絶対であり、生徒に逆らう権利はない。それを身に染みて感じさせられ、決して逆らうまいとする気持ちが深く根を張っていく。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 尻が打たれる。
 膝に腹を乗せた凛の体は、座り姿勢における二つ並びの、太ももの向こう側に乳房を垂らす。ブラジャーの締め付けもあり、決して乳房自体が揺れることはないとはいえ、しかし自然と男子の視線を集めていた。

 ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、

 叩かれ続ける軽い痺れと小さな衝撃で、無意識のうちに身体を反応させ、唯は微妙に前後してしまっている。それはかすかな動きなのだが、そのせいか乳房がゆさゆさと、よく見れば実は揺れているような――そんな気がして見えるわけだった。
 あるいはそれは、身体の動きによってセーラー服がずれ動き、それがどうにか上手いこと乳揺れに見えているだけかもしれない。
 胸とはそうそう揺れるものではない。
 だが、そんな錯覚を引き起こし、ミリ単位で前後しているかのような気配は確かにあった。

     *

 そして、次に立つのは沢城麗香だった。
 黒髪ロングからシャンプーの香りを漂わせ、整った顔立ちからどこかのお嬢様であるような雰囲気を醸し出す。そんな麗香の乳房もまた大きく、メロンサイズを胸から生やし、やはりセーラー服を内側から押し上げていた。
 中にボールでもしまったような存在感は、男子の視線を集めやすい。
 しかし、クラスメイトを背にしての、拓也を真後ろにした直立姿勢で、今ばかりは尻にこそ視線は集中していた。
 麗香は尻も大きい。
 由香里や唯よりもヒップサイズが数センチ上回り、肉厚のボリュームはゴムから肉をはみ出している。二つのカーブの狭間に布はずれ込み、Tバックには程遠いも、いずれそうなりそうな程度に後ろ側がまとまっている。
 魅惑のヒップに集まる視線は、何も拓也ばかりでなく、さらに数人以上の視線をひしひしと感じていた。前列に座っているのは拓也だけでなく、その周囲にもいくらかの男子はいて、視線の殺到を意識せずにはいられない。

「沢城麗香、ショーツを脱がせて下さい」

 宣言した時、担任はお決まりの作法のように片膝を突き、麗香のショーツに顔の高さを合わせてくる。真っ直ぐにショーツを見て、その色や柄を確かめながら、両手を伸ばしてゴムの内側に指を差し込む。
 ゴムと皮膚のあいだに入った二つの親指が、腰の両側に当たっていた。
 それが下へと動き始めて、指と皮膚とで擦れ合う。ゴムもまた尻に擦れて、豊満な膨らみをやや凹ませていきながらショーツは下がった。
 毛が見える。ワレメが見える。
 性器が露出しきっての、そのすぐ前にある視線に麗香は赤らみ、恥じらいながら尻にも視線を感じ取る。
(みんな……見ているのね……きっと……)
 ショーツが足首に到達していた。
 その輪から片足ずつをどかしていき、下半身には上履きや靴下を残すのみとなった時、麗香は担任の膝に腹這いとなった。
 姿勢のために乳房が垂れる。
 垂れるといっても、もちろんブラジャーのカップが形を抑え、姿勢による形状の変化は最小限だが、傍から見れば乳房はどこか目立ちやすい。剥き出しの尻に目がいきがちだが、太ももに腹を置き、その向こうで四つん這いのように垂らした胸は、ボールをぶら下げてあるかのよう存在感を示している。

 ぺたり、

 尻に手の平が乗せられて、その温度を皮膚に感じた時、麗香は静かに目を閉ざす。叩かれることへの覚悟を決め、ひっそりと拳を硬くしていると、まずはまんべんなく撫でられた。

 すり、すり、すり、すり、

 肌の表面を手の平で擦り回した摩擦音が、静かな教室では聞こえてくる。喧噪に満ちた環境なら、まず聞こえることのなかっただろう音に鼓膜をくすぐられ、自分が今何をされ、どういう状況になっているのか、皮膚感覚だけでなく、聴覚によっても実感していた。
 それはものの十秒かその程度、そう長い時間をかけてのものではなかった。
 しかし、きっと校則というよりも、ただ楽しむための目的で撫でたのだろう担任の、性的な意志を感じさせる手つきには、恥辱感が膨れ上がった。
(これに何も言えないというのね)
 三年間過ごしてきて、これと同じ気持ちを過去にも何度となく抱いてきた。
 校則は絶対だ。
 下半身裸にさせられ、繰り返しの『儀式』を受けていれば、心の奥底にまで服従の感覚は根を伸ばす。逆らう気力が出ないというより、従って当然という感覚を無理にでも植えつけられ、それが否応無しに心に育ってしまう感覚というべきが。

 ぐにっ、

 尻に指が食い込んでも、だから麗香は何も言わなかった。
 こういった行為に耐えるのも、あえて人前に恥を晒して、それをみんなに見てもらう苦行によっての、精神鍛錬の一つなのだ。

 ぺちん! ぺちん!

 そして、スパンキングは始まった。
 平手打ちが尻の中心を狙い撃ち、軽く肉を揺らしてくる衝撃は肛門にも達していた。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 尻の割れ目に直接手の平を当てられて、だからその奥にも衝撃が伝わることで、麗香は尻の穴にまで痺れを感じる。軽く小さな痺れがピリっと、一発ごとに駆け抜けて、それがひどく気持ちいい。
(どうしちゃったのかしら、私……)
 麗香はわずかに苦悶を浮かべる。

 ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、

 辱めを受けているうち、息が乱れてきそうな感覚がした。
(興奮しているとでもいうの? そんな……)
 自分が変態になりかけている感覚に見舞われて、麗香は表情を歪めていた。
(それはさすがに、ちょっとどうなのよ)
 校則で興奮するなど、みっともないにもほどがある。

 ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、ぺちっ、

 この衝撃がいけなかった。
 強く叩いているわけでなく、尻に浮かぶ赤らみも軽いものだが、振動が肛門にまで及んでくる感覚は、不思議と快感さえ生み出しそうな気配がある。
(やだ……)
 下腹部まで疼いていた。
 このまま叩かれ続けていたら、いつか明確に感じてしまい、アソコを濡らしでもするのではないかと、麗香は危惧さえ抱いていた。
 だが、危機感が募り始めたところで手は止まる。
 お尻叩きが終了して、麗香はひとまず安心する。
(よかったわ……)
 儀式の締め括りとして、やはり頭を下げてお礼を言う。
 次の順番の女子がやって来て、同じく「ショーツを脱がせて下さい」と口にして、担任がお決まりの作法を披露する。最後の女子が終わるまで、麗香は黒板を背に立ち尽くし、並びながら男子の視線を感じていた。
 こうして並んで立っているのは、まるで見本の陳列だった。
 どうぞ、お好きにご覧下さい。
 と、そういう鑑賞物として設置され、席に座ったみんなが自由に視線を滑らせる。展示物にでもされた気持ちを味わって、この儀式の時間は終了した。



 
 
 

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