身体測定が終わったところで、内科検診が始まりました。
大河には椅子に座るよう指示が出て、診察に当たる中年医師は、先ほどまでのエロ医師とは別人になります。ここは中年内科医と呼ぶことにしておきましょう。
で、その中年内科医と椅子に座って向かい合い、最初は軽く問診しました。
そのあいだ、大河はずーっと胸を隠しています。
「ちっこい胸なのに」
おっと、誰かが妙なことを言いました。
中年エロ医師です。
他の面々は診察の様子を遠巻きにして、大河のことをじっと眺めまくっています。何故、どうしてこの人数がいるのかわかりません。とにかく視姦しています。そんな視姦の群れの中から、ボソっと声がしたわけですね。
「あ?」
大河は群れを睨みました。
今にも椅子から立ち上がり、ガンを飛ばしながら迫りそうな勢いです。
「はーい。まだ途中ですよ? こっち向いて?」
お医者さん、手乗りタイガーを恐れない人達ばかりですね。
「胸も診ていくので、腕は下に下ろしちゃってね」
「……ちっ」
舌打ちしました。
一応、指示には従っていますが、舌打ちしました。
「へー? なるほどね」
中年内科医は視診をしています。
舌打ちなんて気にも留めずに、淡々と乳房を観察しています。薄っぺらくありながら、よーく見れば微妙に膨らみのカーブがある。そんなペチャパイを観察するのは、皮膚の血色を確かめるべくしての、一応きちんとした視診です。
大河は恥ずかしそうにしています。
スリーサイズの時もそうでしたが、肝心な部分をジロジロと見られたら、やっぱり落ち着かないんですね。気まずそうに顔を逸らして、壁なんかを見たりしています。前を向いたら、自分を観察してくる真っ直ぐな視線が目に入っちゃいますから、それがどうしても気になるってわけでしょう。
なんだか気まずくしているみたいな顔で、ひたすら顔から熱を放っています。羞恥の熱です。赤面のあまり頬が温まって、発熱しちゃっているわけです。
「聴診器を使います。ひんやりしますからねー?」
ぺたりと、胸の真ん中に当てました。
そのまま音に集中しています。
おやおや、エロ医師の方とは違って、割と真面目にやってますね。乳房の視診はもう済んでいるので、そうしたらもう目もくれていません。この人、大河の体にはあんまり興味がないんでしょうね。
まあ、周りにはニヤニヤしたのがいくらでもいますが。
「はい。終わりましたのでね。次はパンツを脱いで下さい」
しれっと言いましたね。
疑問だの何だの、そういうものが一切ありません。普通の指示を出しているだけ、何もおかしなことは言っていない。もうそんな感じです。あまりにもサラっと言いました。あんまり当然のように言うものだから、大河もついつい立ち上がり、脱ぎそうになっていました。
「って! なんで!? ありえない! さすがにこれだけはありえない!」
直前で気づいて大声で怒鳴ります。
「普通の検査じゃないんですよ?」
普通の内容ではないのだから、普通でない項目があるのは普通である。
なるほど、その通りです。
「でも、でもだからって――アリエナイアリエナイアリエナイ――」
「下半身も調べると、最初に言ってあるはずですが」
「でも……でも……」
「さあ、脱いで下さい」
中年内科医、容赦しません。
大河、一体どうするのでしょう。
なんだかパニックみたくなっていましたが、しかし大河、パンツの中に指を入れ、脱ごうとする素振りを見せています。自分が逃げれば、代わりに祐作がこの検査を受けるのだと、やっぱり思い出したのでしょう。
しかし、ただゴムに指が入っただけで、大河は一向に脱ぎません。
脱がないのでなく、脱げないのです。
そりゃ、お尻は見えるし、アソコも見えるし、乳房を出すより遥かに恥ずかしいことですからね。最高の抵抗があることでしょう。
でも脱ぎます。
大河的にいって、やっぱり人質を取られている感覚が強いんでしょうね。鬼の形相で睨みを利かせちゃったりしてはいますが、大河はパンツを脱いでいきます。下がるにつれて、だんだんお尻が見えてきますね。
「うーん。なるほど」
「小ぶりで可愛いお尻ですな」
「いえいえ、体格からすれば、あれで十分大きいのでは?」
何やら、男同士で感想を言い合っています。
それ、思いっきり大河にも聞こえています。
「あぁ?」
大河、顔がピキってなっていますね。
検査のため、我慢して脱いでいるわけです。お尻が見えれば見えるほど、その分だけ恥ずかしさの度数が上がっていくのも、もう本当に我慢しています。それをですね、後ろでヒソヒソと語り合い、楽しむ雰囲気を出されたら、それは腹も立つというもの。
「いえいえ、お尻が可愛いと褒めているだけですよ?」
中年エロ医師、言い切りました。
デリカシーなんてありません。
褒めてやってるんだ。喜べと、そう言わんばかりです。
「あああああ! もう無理よ! もう我慢できない!」
限界が来たみたいですね。
我慢の糸がぷっつり切れたようです。
大河は数いる男達の中でも中年エロ医師を標的に定めます。きっと木刀が手元にあったら振り回しています。今にも暴力沙汰を起こしかねません。ずかずかと中年医師に向かっていこうとして――
転びました。
よく考えてみて下さい。
パンツを脱いでいる最中にヒソヒソされ、その手を止めてずかずかと迫ろうとしたんです。パンツをどこまで脱いでいて、脚のどの位置に絡んでいたか。本人も夢中で忘れちゃっていたわけですね。
これは赤っ恥!
私としても、今すぐこの現場に降臨して、大きな声で煽ってあげたいですね。大河さーん、なに転んじゃってるんですかー? お尻が丸見えですよー?
床に顔をぶつけて、たぶん鼻を強打しています。
まあ、鼻血が出ていないといいんですが、とりあえず痛いでしょうね。うつ伏せで固まったまま、太ももの半分くらいの位置にパンツを絡め、お尻は丸見えになっています。
いやぁ、ペチャパイだったのは不幸中の幸い。
巨乳がこんな転び方したら、顔とか膝とかだけじゃなくて、胸まで痛そうじゃないですか。ペチャパイで本当に良かった良かった。
おっと、空気も固まっていますね。
暴力沙汰も辞さない勢いで迫ろうとしておいて、その瞬間に転んでしまった無様なドジっ娘に対して、誰一人として言葉を出せずに呆然と固まっています。
ですが、一人だけ堪えきれずにですね。
「……ぷっ」
ええ、笑いを堪えていたようです。
スーツの男の一人みたいですね。笑っては悪いと思い、必死に堪えていたんですが、限界がきて「ぷっ」って言っちゃったみたいです。
見れば他にも笑いを我慢している人達がいっぱいです。
今にも笑い声が出そうになっているのを抑えていますが、唇がぐにゃって歪んで、頬もなんか歪んでいて、笑いを我慢するあまりに変顔になりまくってます。そういう変顔がずらっと並んだ光景は、それはそれは……。
「あらあらあら、大丈夫ですかぁ? 大河ちゃーん」
中年エロ医師、煽り始めました。
「ほら、立って立って! 鼻は大丈夫ですか? おっぱいは潰れてませんか? ああ、そっちは最初から潰れてましたね。膝はどうですか?」
心配している風な言葉の中に、物凄く余計な台詞が混ざっていましたね。
いやぁ、惨め惨め。
立てますか? 大河さん。
怪我とかそういう意味じゃなくて、なんというか、精神的な意味でですね。
立てますか? 大河さん。
*
大河は死にたそうな顔をしています。
もう恥ずかしくて恥ずかしくて、生きていけないような顔をしながら立ち上がり、パンツは容赦なく脱がされています。お尻は丸出し、アソコは両手で必死に隠している状態で、力んだ肩が持ち上がっています。
さて、パンツは中年エロ医師の手に渡っていました。
「うーん。これはこれは可愛いおパンツだことで」
「……ぐっ」
「これのせいで転んだんですね? ドジですね?」
「……うぐぅ」
追い打ちをかけています。
まったく、惨めなもんですね。転んだ上に、お尻を丸出しにした上に、さらにパンツを脱がされこの状況です。
中年エロ医師は大河の目の前でパンツをピンと広げていて、我が手に渡ってきたことが誇らしいかのように、たっぷりと見せつけています。お前から戦利品を奪ってやったぞ、とでも言いたげな、ものすごーく勝ち誇った笑みですね。
そりゃ愉快でしょうよ。
「さすがに脱ぎたてですと、まあ体温が残ってらっしゃる」
持ち主の目の前で裏返し、クロッチの部分を確かめた上、おりものの染みを観察したり、指で撫でて確かめたりしています。
これはもう、たまらない。
「……返しなさいよ」
「すっ転んでお尻丸出し」
「ううっ」
「学校に言い触らして差し上げましょうか?」
「うぅぅ…………」
だから大人しいわけなんですね。
だって、好きな男の子にバラされたら嫌ですもの。
「こちらのブラジャーも、なかなか可愛らしいものですね」
おっと、別の人物がブラジャーを持っています。
テーブルに置いてある着替えの中から、スーツの男がわざわざ拾い上げ、何やら難しい顔で品評なんか始めています。
「あっ、なっ、なにを……」
大河は驚いた顔でそれを見ていました。
パンツどころか、ブラジャーまで触られるなんて、思ってもみなかったんでしょう。
「下着のチェックですよ」
「なんで!?」
「我々の行う調査項目には、まあ色々とあるんですよ」
中年エロ医師は改めて左右にピンと引っ張って、バック側やフロント側の布を観察しています。
さて、テーブルの方でも、スーツの男達はブラジャーを観察しています。
ブラジャー観察の様子を見てみましょう。
まず一人の男ばブラジャーを指でぶら下げ、それを周りの男達が確かめています。それぞれが顎に指なんかを当て、さも真面目な研究の一環みたいな顔をして、みんなでブラジャーを見ているわけです。
「なるほどねぇ」
「意外と少女趣味ってわけだ」
おっと、そんな評価が上がってきました。
今更ですが、大河の下着はとってもとっても可愛らしい。フリルやレースなんて付いちゃっているタイプでして、ショーツには赤いフロントリボンがありますけど、ブラジャーの方のもカップとカップのあいだの中央の部分に似たようなリボンがあります。
肩紐の方だって、てっぺんの部分がリボンみたいな形になっています。
よく見れば刺繍は花柄で、なかなかオシャレなんですよね。
「周囲にレースあり」
「刺繍模様は薔薇」
「中央にリボン有り」
一体、何を事務的なチェックみたいに言っているんでしょう。
おっと、スーツの男達のうち一人は、何やらバインダー留めの紙を持っていますね。なんとそれはチェックシートです。本当にチェックなんかしちゃっているわけです。
で、中年エロ医師の方に戻りましょう。
ブラジャーの品評が本人の耳にも届いている一方で、中年エロ医師もまた大河に向かって品評めいたことを口にします」
「えーっとぉ? 薔薇ねぇ? うんうん、刺繍は確かに薔薇模様だ。ゴムの部分をフリフリのレースが一周していて、フロント側の布にもフリルのラインが通っていて、その下に薔薇の刺繍がありますねぇ?」
わざわざ口頭で解説するなんて、一体何なのでしょう。
「~~~~~~っ!?」
それを聞かされている大河、顔が物凄いです。
赤面しきっているのは言うまでもありませんが、唇がぐにゃって、波打つみたいな形になっていますよ。
「薔薇の刺繍は、花びらですね。花びらが一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚っと」
おっと、刺繍の数までカウントしました。
「うぅぅ~~~~~~~ッッッ」
効いています。
物凄く効いています。
これ、全部素っ裸の状態でやられていますからね。
手でアソコを隠しながら、それでいて下着の品評みたいな真似をされるって、大河ってばどんな気持ちでいることだか。
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