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 というわけで、まずは身体測定が始まります。
 いや、しかし。
 とてもとても恥ずかしがっている大河ですから、身長計まで進んでいくにも、腕をやたらにがっしりと固めています。腕のクロスが実に固いガードになっています。何人たりとも、この堅牢な守りを力ずくで解くことはできそうにありません。
 そんな守りの固い状態で、身長計の台に足を乗せ、柱に背中を当てました。
(ぐへっ)
 なんと下品な。
 今まさに測定にあたり、大河の身長を測らんとしているのは、一人の鼻の下を伸ばした医師であります。大河のことをいやらしい目で見ているエロ医者は何人かいますが、この人のことは仮に中年エロ医師と呼ぶことに致しましょう。
 中年エロ医師、大河の肩に手を置きました。
「ひぐっ!」
 急に触られて驚くのも、頬が物凄く引き攣るのも、無理はありません。
 だって、その触り方といったら、皮膚の表面をさーっと撫でる感じが、もう性的なアレを意識しています。はっきり言うと愛撫ですね。エッチな触り方をして、感じさせたい目論見がひしひしと感じ取れるタッチなわけですよ。
 これは嫌でしょう。
 嫌に決まっています。
 おまけに彼、大河の耳に顔なんて近づけて、すっごくねとねとした声で言うんです。
「腕、下ろそうか」
 声がネバネバしてるんです。
 なんかこう、糸を引く何かを耳に詰め込まれる気分っていいますか。大河が味わっている感覚は、もうそういう感じです。簡単に言えば気持ち悪がっています。
「無理」
 わかりますか。
 この無理っていうの、生理的に無理って意味なんですよ。
「無理じゃないよ? きちんと下ろそうね」
「無理」
「だーめ、ここまで来て嫌だ嫌だは通用しない」
 果たして、この中年エロ医師はわかっているんでしょうか。
 指示に従うのを嫌がってるだけ、大人を困らせようとしているだけ、とでも思っているのかもわかりませんが、どちらにせよ口角が物凄く吊り上がっていますからね。こんなにあからさまにいやらしい顔をするなんて、少しは取り繕った方がいいのではないでしょうか。
「指示に従えないなら、帰ってもらうよ。君、自分の代わりに他の誰かこうなるっていうのが嫌だから、引き受けようと思ったんでしょう?」
 ああ、人質交渉です。
 老人医師はですね、ここまではっきりと人質交渉みたいなことはしませんでした。
 しかし、この中年エロ医師、肩から二の腕にかけて、指先でいやらしくさわさわしながら、気持ち悪い声で囁いています。大河、それをもう本当に気持ち悪がっています。素手で掴んだゴキブリを近づけたり、生ゴミの汁でも塗りつけようとしない限り、普通はここまでの顔はしないんじゃないでしょうか。
 ああでも、大河……腕、下ろそうとしています。
 まずはがっしりと固めた力から緩めていって、だらっと、下ろしました。
 オープンです。
 おやおや、チビっこい体格にお似合いの薄っぺらい乳房ですね。本当に膨らんでますか? ああ、一応膨らんでますね。本当に一応、ですけどね。膨らんでないこともないですが、はっきり言って平らっぽく見えますよ。
 さあ、周りの反応はどうでしょう。
 スーツの男達の反応を見ていきましょう。

 あんなペチャパイで恥ずかしがってたのか。
 まったく、大して大きくもないくせに。
 ま、あれはあれでいいけどな。

 顔では、ですね。
 さも学術的な難問にぶち当たったみたいな難しい顔をして、いかにも頭を悩ませていますみたいな雰囲気とか出してますけど、実際に考えているのはこういうことです。声にこそ出していませんが、ペチャパイの分際で羞恥心だけは一丁前だな、という感想がスーツの男達の中では主流みたいですね。
 で、パンツとかもチェックしています。
 刺繍とレースがあって、赤いフロントリボンもありますね。そんな大河のパンツ、スーツの男達も、他の医者も、そしてこの中年エロ医師も、みんなきちんと目をやっています。
 ともあれ大河、綺麗な気をつけの姿勢になりました。
 腕がしっかり、両方とも下ろされています。
 であれば、測らなくてはなりませんね。
 さて、中年エロ医師はこのままバーを頭に下ろし、その数字を見ればいいわけですが、ここでセクハラをかまします。大河のお腹に手の平を置きました。
「は……?」
 大河、困惑。
 そして、不快感をあらわにします。
「えーっと、いくつかな?」
 中年エロ医師、何食わぬ顔でバーを下ろしています。右手ではちゃっかり、ぐるぐるとさするみたいにして肌触りを味わって、でも顔だけは真面目そうにしています。表情だけは立派なものです。
 バーを大河の頭に置きました。
 でも、ですね。
 このセクハラ男、数字を見るために必要以上に顔を近づけます。鼻や唇が髪とか耳に触れかねないくらいの距離ですね。
 ふー……って、息なんて吹きかけられたら、もうたまりません。
 大河、大きく目を見開きました。
「うう……! くっ、くぅ……!」
 耐えています。かなりの我慢です。
 カッと大きく見開いた目は、そのまま眼輪筋をピクピクとさせています。頬だって強張るあまりにピクピクしています。学校での手乗りタイガーを知っている人達なら、大河がこのまま暴れ出すんじゃないかと警戒するところですが、ここには大河の凶暴さを知っている人はいませんからね。
「えーっと、一四三・六センチ?」
 チビすぎるせいですか?
 その数字に中年エロ医師は首まで傾げていましたが、改めて大河の背丈を眺め、まあそんなもんか、みたいな顔をして納得して頷きます。
 さて、身長が終わりましたら、次は体重計ですね。
 大河はすぐに胸を隠し直しました。
 もう二度と見せたくないかのように、本当にぎっしり、がっしり、たぶん先ほどよりも力が籠もっているんんじゃないですかね。そんなにしたら、ペチャパイがますます潰れちゃうと思いますよ?
 ま、とにかく体重計に乗るわけです。
 身長が低いので、その分軽いみたいですね。他の女子が羨む数字を出しつつも、お次はスリーサイズの計測になっていきます。
 そこで中年エロ医師、メジャーを用意しました。
「はい、オープン」
 メジャーを手に、実にいやらしい顔で大河に迫りました。
 オッパイを見たくて見たくてたまらない、下品でかつ邪悪な表情でそんなことを言われては、逆にロックが固くなるというものです。大河の腕にはかえって力が籠もります。
「変態、スケベ」
 大河、中年エロ医師を睨みました。
「おや」
「キモイ、最低」
「そう言われてもね。なら、中断するかい?」
 あらあら、遠回しな人質交渉ですよ。
 で、その瞬間です。
 もう呪い殺そうとしてくる勢いで、物凄い顔で睨みました。普通ビビりますよ。背筋が凍りついて、縮み上がっちゃうほどの眼力です。
「では、オープン」
 なんでこの中年エロ医師、こんなに肝が据わっているんですか。
「……チッ」
 大河、思いっきり舌打ち。
 恐るべき態度の悪さ。
 でも、顔がお赤いですよ? ほっぺたがもう赤くて赤くて、機嫌の悪い顔なんかしてみたところで、恥ずかしがっているのがよーくわかります。
 乳房も丸見え、乳首が可愛い。
 そんな大河にメジャーをかけるため、なんと中年エロ医師はですね。抱きつくかのように両腕を背中の後ろに回しました。髪の量が多くて、背中が隠れていますからね。普通に上からかけようとすると、髪ごとメジャーで巻きつけることになっちゃいます。髪の下に通すためにも、背中に手をやりたかったんですね。
 まあ、その意図はわかるんですが、とはいってもエロ医師です。
 指を皮膚に当てたり、髪の感触を味わってみたり、状況をいいことに乳房を至近距離から視姦なんてしちゃってます。血走った目で、レーザーでも放って焼き切ろうとしているんですか? って思うくらい、物凄い視姦しています。
 ペチャパイで視界が埋まるくらい、顔を近づけてありますからね。
 興奮したハァハァという息遣いは肌に当たっていることでしょうし、大河はその不快感でもう凄い顔になっちゃってます。とんでもなく引き攣って、頬がピクピクと震えてます。筋肉が強張って固くなるあまりに、逆に痙攣みたく動いているわけですね。
 で、髪の下にメジャーを通して、中年エロ医師はメジャーを手前に引っ張り出します。
 そして、巻きつけました。
 ぴと、って。
 指をさりげなく乳房に当てています。わざと乳首の近くに目盛りを合わせ、薄らとしたあってないような膨らみに当てています。物を持ったり、つまんだりする時の手って、関節が折れ曲がっていますね? その曲がった関節で触っているわけなんです。
 痴漢ですね。セクハラですね。
「……指」
 鋭い声を発しながら、大河は中年エロ医師を睨みます。
「当たってんだけど」
 かなり低い声です。ドスが効いています。
 ビビらない方がどうかしているくらいなんですが、しかしこの中年エロ医師、どうかしているみたいですね。
「ああ、すまんすまん。気をつけるよ」
 なんて言いつつ、指を引っ込める気がありません。
 それどころか、大声で数字を読み上げました。

「七三センチ!」

 もう何の遠慮もありません。
「はぁ!?」
 大河も驚いています。
「どうしたのかな」
「そ、そんな大声で! どうかしてるの!?」
「そうだね。すまんすまん」
 あ、やっぱり反省してません。
 もう完全に平謝りです。
 いやぁ、しかしですね? 七一センチですか。薄っぺらさに似合いの数字ですが、こんなに小さいのに一丁前にブラジャーなんか着けてるわけですか。チビっこいのに、体は大人のつもりってわけですか。
 で、数字を判明させて、やっと乳房から指を離します。
 次はウエストに巻きつけて、こちらの方は妙に手早く終わらせました。スムーズに巻きつけ、即座に読み上げ、一瞬で終わらせました。確かにバストを測る時、髪の下に通す作業がありましたが、それを差し引いてもなお、かかった時間が違い過ぎます。
 オッパイに時間をかけ、腰はさっさと終わらせたのは明らかですね。
 ペチャパイだろうと胸は胸、視姦していて楽しかったんでしょう。
 そして、残るところはヒップの計測。
 腰に引っかけたメジャーを緩め、下へとずらすわけなんですが、ちょっと巻き直しました。またしても腕を後ろに回してやり、指をわざとお尻に掠めさせ、巻きつけたわけなんですが、その触れた瞬間にも、大河はピクっとしていました。
「えーっとぉ? いくつかなぁ?」
 もちろん、顔をぐっと近づけます。
 物凄い近いです。鼻が当たりそうです。
「さっきから…………」
「はい、八〇センチ!」
 やっぱり発表しました。
「ああまた! デリカシー! デリカシーがない!」
 大河は喚き散らしました。
 酷い形相です。
 鬼のように怒っているのか、それとも凄く恥ずかしがっているのか。一体どちらかわからない、とてもとても赤い顔ですが、まあ両方ですね。



 
 
 

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