前の話 目次




 全裸で二人並んで直立している。
 隠すことは許されず、しっかりと腕は横に垂らした上で、背筋もピンと伸ばしている。恥辱に歪んだ複雑な表情は、決して明るいものではないく、どことない影を帯びた面持ちが真っ直ぐに客席を向いている。

 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!

 撮影自由との宣言を中年が出していた。
 いくらでも、何枚でも、好きに撮ってもいいと、本人達ではなく中年こそが許可を出し、男達はそう聞くや否やカメラを取り出していた。中には動画撮影モードを使う者もいて、それも許可の範疇だった。
「あーあーあーあー」
「どんな気分ですかー?」
 男達からの野次が飛ぶ。
「小便の香りがここまで来てるんですけどー?」
「おお、くせぇくせぇ」
 失禁のことも、楽しそうに煽ってくる。
 実際、濡らしたシーツをまだ取り替えておらず、だから二人の後ろには、尿をたっぷりと吸い込んだものから周囲に香りが漂っている。そのほんのりとした臭気は客席にまで届いてしまい、だから男達の何人かは、わざとらしく鼻をヒクヒクさせ、さも臭がるようなアピールで二人を辱めようとしていた。
「せっかくですから、今までの感想でも聞いていきましょう」
 などと、中年は提案する。
「まずモスティマ様。どうでしたか?」
 最悪のインタビューだった。
 徹底的に快感を教え込まれて、奴隷同然の惨めさを味わう流れとなるまでの、一連の流れに関する感想を述べさせられるなど、まさに追い打ちもいいところだ。
「答えてください?」
 ぺちん! と、中年は尻を叩く。
「うっ、それは……」
「それは?」
「驚くほどに気持ち良くて……。あまりの快感を忘れられなくて、だから何度も通ってしまって……。通えば通うほど、自分が何を求めているのかを思い知らされたね」
 それがモスティマの思いであった。
 元々、どうにか快感を忘れ、二度と店に関わるまいと思っていたのに、結局は体の疼きに負けてしまった。オナニーが大した慰めにならない、どうにもならない疼きを抱えて毎日を過ごすのが辛くなり、ここに通わなければどうにもならないと思うようにまでなっていた。
「エクシア様はどうですか?」
「あたし? あたしは……あたしも、想像以上の快感で……。モスティマの様子を見ていた時から、無理だって思いはあったけど、実際にマッサージを受けて、イクのを我慢するなんて本当に無理だって、思い知ったというか……」
「そうですね。無様に、呆気なくイキましたね?」
 中年の言葉にエクシアは俯く。
 きっと、本当はもっと早くイカせることができたのだ。
 それをわざわざ、性的な愛撫はせずに、単なるマッサージに徹することで、焦らしに焦らし上げてきていたのだ。すっかり敏感な状態が出来上がり、それでもアソコや乳首といった場所は避け続け、かと思えば不意打ちのようにアソコをやられ、いとも簡単にイカされた。
「ではお二人とも、謝罪をお願いします」
 中年は言う。
「お二人は少々反抗的でしたね? そこで、今までの態度について謝罪頂き、つきましては当店の所有物となり、絶対服従を宣言する言葉を口にして頂きたいと思います」
 どうしてそんなことを思いつくのかがわからなかった。
 だが、二人はとっくに服従している。
 心の中に烙印を押され、自分達は奴隷に過ぎないかのように思い知らされている。

「どうも……申し訳ありませんでした……」
「あ、あたし達は……これからはお店に逆らうことなく、服従を……誓います」
「私も、服従を誓います……」

 これらの宣言も含めて、撮影した動画の中に収まっていた。
 そして、二人の下腹部にはタトゥーシールが貼られることになる。そのタトゥーはまるで両手を生やしたハートマークだ。その触腕付きのハートは、見る者が見れば子宮を象徴したマークと気づくだろう。
 そんな子宮マークに重ねる形で、穴を貫く棒のイメージが刻まれている。セックスを象徴しているのは言うまでもない。
 マークの真下には店の名前が英字で刻まれ、二人はまさに店の所有物となったのだった。
「ではこれから、このお二人とセックスをする権利を販売します」
 中年が宣言すると、客席は一気に沸き立つ。
 早速、所有物として扱われていた。
 店の商品としてオークションにかけられて、もっとも高い金額を出した男がモスティマやエクシアを抱くこととなるのだった。

     *

 数日後。
 二人は店の売り子をやらされていた。
 全裸で周囲の視線を気にしながら、自分自身のマッサージを受ける様子を商品として売りさばく。ディスクが一枚も売れなければ、お仕置きと称してみんなの前で尻を叩かれ、売れたら売れたでご褒美と称した快感を与えられる。
 二人はそんな日々を送っていった。
 日夜、全裸で町に出て、自分自身の映像を売りさばく。
 寄ってくる男達には、買い物よりもセクハラやナンパ目的が多かった。もっとも、尻や胸を触られる程度では抵抗してはならないと、店からしっかり言いつけられており、二人は何をされても黙っている。
 動画の内容について、サンプルを見せろと言ってくる客もいる。
 その時は店に貰った映像を端末に流し、その場で見せてやっている。自分自身が快感に堕とされて、尻まで叩かれる瞬間の、ほんの数十秒にまとめた内容に、大抵の客は鼻の下を伸ばして金を出す。
 あのモスティマが、あのエクシアが、こんな目に遭っているという価値は高かった。
 二人は売れる商品だった。
 マッサージの客席は日々満員に、オークションでは高額で売りさばかれ、数ヶ月も経った頃には、もう何十人の相手とセックスをしたかもわからなくなっていた。



 
 
 

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