桃井俊樹には先生の趣向を理解しきれない。
自分が先生の立場なら、普通に一対一で楽しみたいと思うだろう。それとも、毎年のように女子を抱き、ノーマルなプレイに飽きて、何かおかしなことでもしたくなっているわけなのだろうか。
(ま、いい。夢音は俺の彼女だ)
たとえ今は先生がセックスの相手であり、妊娠を目指していても、思い合っているのは俊樹と夢音だ。先生など夢音の恋人の位置にはいない。
「するぞ。夢音」
「ん? うん」
先生の性癖には、夢音も困惑している様子だったが、俊樹が迫れば特に拒むことはない。顔を近づければ夢音も受け入れ、顎を突き出し唇を差し出してくる。俊樹は軽く口づけをして見つめ合った。
後ろの先生さえいなければ、このまま二人きりの世界に突入したいものだった。
「ほーら、今だ。夢音、動け」
先生はここで命じる。
「はい…………んっ、んぅぅっ、んっ、んぅぅ…………」
夢音は俊樹の肩に両手を置きながら、ぐりぐりと押しつけるかのように、腰を回すかのようにして自らの内側を掻き回す。上下左右に腰を振り、くねり動かす方法で、きっと夢音の膣内では、穂先があらゆる角度に倒れることで、ぐいぐいと膣壁に食い込んでいるに違いない。
おかしな状況としか言いようがなかった。
恋人同士で見つめ合い、唇を重ねているのに、その後ろでは先生の肉棒が刺さっている。珍妙な状況でのキスなど、生涯二度とすることはないだろう。
「夢音」
俊樹は頭を両腕に抱き締めて、夢音の顔を自分の胸に埋めさせた。
そして、躊躇いながら囁いた。
「い、今は、気持ち良くてもいい。終わったらまたデートしよう」
「うんっ」
「それから、免疫獲得が済んだら、一緒に過ごそう。いっぱい、いっぱい……」
「うんっ、うんっ」
夢音は俊樹の胸に頷く。
その両腕が背中に回り、俊樹の服を握り絞めると、夢音は再び上下運動を始めていた。
「んっ、あっ、んっ、んぅっ、んあっ、あんっ、あんっ、あぁんっ、あっ、あんっ」
俊樹の胸に顔を擦りつけながら、身体は浮き沈みを繰り返してくる。浮き上がる際の力で、俊樹の体は軽く押されて、逆に沈む際には引っ張られる。ちょっとした前後の力を感じながら、足腰の強い俊樹は体幹を保っていた。
「んっ、んぅぅ――――――!?」
腕の中で夢音が震える。
絶頂、ということなのか。
「俺も出したぜぇ? たっぷりとな」
いい気になった先生の声に、俊樹は軽く歯軋りして睨み返した。
何も気にするなと伝えるため、夢音の頭をたっぷりと撫で回し、懸命に可愛がり、抱き締める腕に力を込める。ぎゅっと苦しめんばかりにすると、夢音の方からも力が籠もり、より深く顔を埋め込もうとしてきていた。
*
自分が抱かれる姿を見せるのは辛い。
夢音の姿を見た俊樹が、そのまま心を抉られたように苦しんで、痛そうに顔を歪めるのだ。それに感応して、夢音自身も胸をきつく締め上げられる苦しみを味わうが、いくら心に苦しみがあっても肉体は興奮して、口からは喘ぎ声が出てしまう。
「次はフェラというこうか。なあ、夢音」
先生の言葉に面持ちは暗くなった。
挿入は言うまでもないが、奉仕する姿も見せたくない。俊樹にとって、自分以外の男に尽くす姿を見るのはどれほど辛いか。
しかし、先生はこう言うのだ。
「喜べよ。彼氏のチンポを咥えてもいいんだぜ?」
「えっ、なんで……」
理解できない思いつきだ。
そもそも、女の子を独占して自分一人で楽しみたいのが、男の抱く普通の感覚ではないのだろうか。夢音としても、俊樹が他の女子に視線をやったり、まして浮気するようなことがあっては嫌だ。
それなのに、俊樹への奉仕をわざわざ命じる。
夢音には先生がわからなかった。
「嫌なのか?」
「嫌では、ないですけど……」
二人はキスまでしかしていない間柄だ。
恋人との過程を無視して、他人の指示で性行為を始めるなど、普通は考えられないことである。夢音が抱く抵抗感は、二人のペースではなく、先生の意思でステップを進めさせられることに対してだった。
「嫌じゃないんだろう? だったらいいじゃないか。なあ、桃井。お前だって、まさか大好きな夢音ちゃんの奉仕を拒むわけがないだろう?」
「拒みませんけど、なんでここで? って思いますよね。普通」
俊樹が先生に返した言葉は、そっくりそのまま夢音の気持ちと同じであった。
「何度も言わせるな。特殊なことをやろうってのが今回の意義だろうが。命を守るための行為を躊躇うなんて、そっちの方がおかしいくらいだ」
「……夢音、平気か? こんな形で」
自分に向けられる俊樹の目で、その意思は伝わってくる。
ここで嫌だと言えば、俊樹は夢音の気持ちを何よりも優先してくれる。
(うん、やっぱり……こんな形でっていうのは……すっごくあって……)
しかし、ずっとずっと思っていた。
愛情のない相手にあそこまで奉仕しているのに、俊樹にはまだ一度も何もしていない。こんな状況にもならなければ、裸すら見せていないはずなのだ。
それは少し気に入らない。
俊樹に捧げるべきものが他に取られている不快感と、それに自分が先生に抱かれる姿を見て、傷ついているであろう心を癒やしたい気持ちも湧く。
「平気。私、俊樹の喜ぶことがしたい」
「わかった。ありがとう」
話が決まった瞬間に、先生は嬉々として指示を出す。俊樹に脱衣とシャワーを命じた後、まっている最中は、先生とまぐわうことになる。
俊樹がシャワーを済ませると、その鍛え込まれた肉体に見惚れつつ、気恥ずかしさから直視できずに目を背けた。
(格好良い…………)
格闘技をやっているだけあって、手足に整う筋肉の凹凸は滑らかで、胸板の厚みや腹筋の割れ目までもが目を奪う。逸物も立派なもので、雄々しくそそり立っている。
見慣れた先生の裸より、愛しい俊樹の裸の方が、遥かに照れ臭くて直視しにくいものだった。
(どうしよう……先生より、凄そう…………)
三十歳を超えた先生と、十代半ばの俊樹なら、どちらの体力が上かは言うまでもない。免疫獲得さえ済んだなら、俊樹とセックスができるのかと思うと、たった今のうちからアソコがうずうずと興奮してくる。
(でも、経験はきっと……うん、その時は……比べないようにしないと……)
毎年たっぷりと女子を抱く先生に対し、まだセックス未経験の俊樹である。
テクニックの差は歴然としているのが当然であり、俊樹の肉棒を受け入れる時が来た際は、決して比較はしないことを心に誓う。
「始めるぞ」
先生が指示するスタイルは、仰向けの俊樹に対して、夢音が四つん這いになるというものだった。
立派な剛直が天に向かってビキビキと、破裂でもしそうなほどに血管を浮かせ、勇ましく存在感を主張している。武術のせいか、不思議と覇気さえ感じられる。漫画の世界にあるようなオーラが滲み出て、強者を前に戦慄する気分にさえなっていた。
(先生と大きさも違う……。そっか、たぶん俊樹はまだ背が伸びるから……)
太さも長さも、それ自体は先生が上だった。
気恥ずかしくてたまらない気持ちを抑え、夢音は四つん這いの顔を近づけると、先生の用意したコンドームの包装を破く。生まれて初めて使う避妊道具を亀頭に被せ、俊樹の肉棒をゴムに包んだ。
妊娠が決まるまで、ワクチン体質以外の精液は摂取すべきでない。
だから避妊具を使うわけだが、先生には生でしているわけで、理不尽な差を感じてしまう。俊樹を上に置きたいのに、これでは先生の扱いの方が上である。
先生は背後に控え、夢音の尻を触ってくる。
(こんな変な気分、もう一生なさそう)
それが率直な感想だった。
目の前にある俊樹の裸と逸物にドキドキして、胸が興奮するようでいて、後ろには先生が膝立ちしている。先生に触られている複雑さと、ときめく気持ちが絡み合い、まるで奇妙な組み合わせで物をかき混ぜたかのようである。
(玉の方なら、生で舐めてあげられる……)
夢音はそう気づき、手始めに手コキをして、ゴムの味を感じながら竿の周りをペロペロと舐めていく。やがて下へ下へと顔をやり、睾丸を手の平で可愛がり、たっぷりと愛情を込めるつもりでキスをした。
「うぉ…………!」
俊樹の感激が声で伝わる。
「ははっ、どうだ? 気持ちいいだろう?」
しかし、夢音のフェラチオを先生こそが自慢していた。
(せ、先生っ、今は何も言わないでよ……)
「俺がたっぷり仕込んだからな。玉舐めだって教えてある。ま、俺はゴムなんて一度も使ってないが、せっかくなんだ。よーく味わっておけよ?」
(先生……私は先生のじゃない…………)
まるで自分の宝物を自慢して、仕方ないから分けてやっているかのような言い方に、腸が煮えくりかえる。せっかく俊樹に奉仕しているのに、怒りを抑えきれなくなりそうだ。
「夢音、凄く気持ちいい。先生が何言ってようと、嬉しいもんは嬉しい」
「ありがとう……ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…………」
お礼の気持ちを伝えんばかりに、夢音はキスの雨を降らせていた。
亀頭に、竿の半ばに、玉袋に、あらゆる部位や角度に口づけを行って、心の中で「ありがとう、ありがとう」と繰り返す。満足ゆくまでお礼の心を尽くした上で、改めて玉を頬張り口内で転がすと、よほど気持ち良くてか、俊樹の太ももがもぞりと動く。
(感じてくれてる……俊樹、もっと感じて……)
夢音が賢明に愛を注いでいた時だ。
「ここで後ろからも棒をくれてやろうじゃないか」
先生が夢音の腰を掴み、バック挿入をしてきたのだ。
(んぅぅぅ……! やだっ、俊樹にしてる時に……)
夢音が竿を頬張ると、すぐに先生は動き出す。
「んっ、んぅ……んじゅっ、ずぅ……んぁっ、んふぅっ、んじゅずぅ…………!」
腰振りによって尻を打たれて、身体を前後に揺らされながらのフェラチオは、太いものを咥えた隙間から声が漏れ出す。夢音はそれでも奉仕に集中して、なんとか俊樹に尽くそうとするのだが、剛直に抉られる快感で意識が大幅に持っていかれる。
「んあっ、あっ、あむっ、じゅずずっ、ずっ、ずぁ……んっ、んっ……」
喘ぐあまりに吐き出してしまったのを、負けてはならないかのように深く咥え、夢音は懸命に首を上下に振りたくる。視界が迫って遠ざかることの繰り返しは、腕立て伏せをする際の光景そのままだ。
「夢音、すげぇ気持ちいいよ。滅茶苦茶嬉しい」
俊樹が手を伸ばし、頭を撫でて来る。
その手の平に脳を溶かされ、飛び付いてでも甘えたくなるのだが、それを阻むかのように先生の両手ががっしりと腰のくびれに食い込んでいる。どこにも逃がさないかのような力を込め、腕力で引き寄せるようにもしながら、先生はピストンで尻を打ち鳴らす。
「あっ、あぁっ、あっ、とっ、途中……あっ、あっ、あぁっ、せっ、せんせ……あっ、あぁんっ、あんっ、あんっ、あっ」
絶頂に連れて行かれるまで、まるで時間はかからなかった。
しかし。
ぴたり、
と、狙ったようにピストンは停止する。
(まさか……!)
夢音は戦慄した。
俊樹が参加している状況で、俊樹の目の前で、先生は夢音のことを快感で屈服させようというのだろうか。
(やだ……)
「ほら、どうした? 今のうちにしゃぶってやったらどうだ」
「う……あむっ、じゅっ、ずりゅぅ…………」
「夢音っ、もう……!」
その瞬間だ。
口内でコンドームが膨らんで、ぬるま湯のような温度だけが舌に伝わる。先生の精液はいつも飲むのに、俊樹のものはコンドームに阻まれる。悔しいような、悲しいような、先生に対する以上のことが出来なくて、本当に申し訳ない気持ちがいっぱいに膨らんだ。
コンドームの扱いは性教育の授業やインターネットで知っている。
「いっぱい出たね。俊樹、いつか……飲んであげるから……」
今はそうしてやれない無念を堪え、夢音はゴムを引き抜き、片結びで中身を閉じ込める。まだ元気な様子を見て、次のゴムへ手を伸ばすが、ゴムの消費を許さないかのようにピストンは再開される。
「あぁぁ……! あっ、あん! あん! あっ、あっ、あん! あぁん!」
声は大きく出てしまう。
抑えの効かない快楽に、理性がみるみるうちに薄れていく。このままでは、また淫らなスイッチが入ってしまう。
「あっ、だめっ、だめっ、あっ、あん! あん! あん! あぁ………………」
そして、寸止めである。
脳が弾け飛ぶ直前に停止して、破裂寸前だった風船がゆっくりと萎むかのように、爆ぜかけた興奮は縮んでいく。
「お願いします……。先生、俊樹の前で寸止めするのは……」
「なら、普通にイキまくるか?」
そう言われると、一体どちらがいいのかわからなくなり答えに詰まる。
だいたい、このプレイ自体がおかしいのだ。
先生によって感じたり、声を出す姿は、どう足掻いても見せてしまう。俊樹の胸を締め上げることはしてしまう。だから我慢だけはしてみたり、俊樹にもしてやれる奉仕をしておきたいのに、フェラチオには集中できず、連続絶頂か寸止め地獄か、そんな二択まで迫られる。
「夢音、俺は平気だ。平気だから」
辛そうな顔は見なくてもわかった。
「ううん? 辛かったら、辛いって言っていいから。苦しいって、言っていいから……」
「でも、それを言ったって……」
「……うん。先生で妊娠はしなきゃいけないけど、言葉だけでも受け止めるよ? 私にできるような慰め方なら、なんでもするよ?」
せめてそうしたい思いを込めて、夢音は俊樹のペニスを握る。
せめて、手だけでも使ってやりたい。
火傷しそうなほどの熱気を握ると、金属をゴムかシリコンに包んだものでも触っているのかと、そう錯覚しそうになる。
(凄く逞しい……先生より、ちょっとだけ細いけど、オーラが……)
夢音は今度こそ二つ目の包装ビニールを破き、亀頭の上からゴムを被せた。
「先生、寸止めでもどちらでもいいです。俊樹が傷つくような姿を見せることになったら、後でいくらでも謝ります。今、そう決めました」
「なかなかの心がけじゃないか。咥えるなら早くした方がいいぞ? そろそろ再開させてもらうからな」
「――あ、あむぅ」
夢音が慌てて咥えると、先生の大胆なストロークが再開される。
「んぐっ、んっ、んずぅっ、ずずずっ、ずぁ……! あぁっ、あん! あむっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ!」
打ちつける力が強く、尻に腰が当たることでの打音は大きく鳴り響く。厚みのある尻たぶがプルプルと揺らされて、その衝撃に四つん這いの身体はどうしても前後する。貫く勢いを受けるたび、顔が前のめりになって、喉が塞がりそうなところまでペニスを飲んでしまう。
息の苦しさに顔を引っ込め、どうにかやりやすい動きを保とうとするが、先生の力強さを相手に自分のペースを維持できない。
どうしてもフェラチオを続けられずに、夢音は一心不乱に喘ぎ散らした。
「あぁあ! あん! あん! と、としっ、きぃ! あん! あん! あっ、あっ、あぁ……………………」
甲高い喘ぎが急激にトーンを下げて途切れるのは、やはり寸止めによるものである。
そして、ピストンが停止したところで、先生の逸物は刺さったまま、抜いてもらえるわけではない。太々とした存在を常に感じていなくてはならなかった。
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