今日の街中には城の使用人や兵士が出歩いている。
私服で一般市民に成りすましているが、一部はパトロールの名目でグループごとに各エリアに振り分けられ、甲冑を着たままを徘徊している。何か怪しい者がいた時は、即座に対応できるように体勢を整えていた。
ウェイン王子が外を出歩くためだ。
だが、少し出歩くにも相応の警戒がいる。
今やナトラ王国において時の人であるウェインだが、それを邪魔に思う人間も少なくない。相手はウェインに冷遇されている官吏、聡明な名君よりも御しやすい暗君を望む貴族、ナトラ王国の躍進やくしんを望まない諸外国など様々だ。
もちろんその何倍もウェインの存在を喜ぶ人間はいるが、いかんせん影というのは傍に潜み、隙を見せると喉のどに手をかけてくるものなのである。
安全を考えて、普段は城から出ないウェインなのだが、今回はニニムを外で全裸徘徊させたいあまりに市中警戒の命を出し、変装してまで外へ出ることに決めたのだ。
変装、つまり表向きには使用人の一人が外出するだけである。
公的にはウェインは城から出ていないことになる。
そして、プレイのためだけに出歩くことを考えたウェインであるが、安全については考慮している。だから兵を出しているし、行動ルートも城から離れすぎないところに決めてある。
(市中の見回りはあまりやらないし、見える範囲だけでも見ておくのも、ついでにいいかもな)
一部の兵士にはウェインの行動ルートを事前に伝え、警護しやすいように気を遣っている。
(けど、俺の欲望のためだけじゃないんだよなー)
今回のプレイに関して、誰もがニニムの裸を好きに視姦して構わないものとしている。
どうせ表向きには愛妾で通っていたり、そういう関係があるものと邪推する者は多い。風変わりな性癖に目覚め、特殊なプレイを思いついたとでもしておけば、皆が殊更に不思議がることもない。
「ってわけで、これ媚薬な」
ウェインがニニムに小瓶を手渡す。
「何なのよこの怪しい薬は……」
ニニムが受け取った小瓶の中には、透明のジェル状の薬が詰まっている。植物の茎から出るトロっとした液体を集めて加工したとかで、このような見た目になるらしい。
「だから媚薬だ。そいつを塗れば、たちまち体中の感度が増すという」
「塗れっていうの?」
ニニムは露骨に嫌そうな顔をしていた。
既に服は脱がせてあり、ウェインの前で裸になるのはいくらか慣れてきたようであるが、まだまだ顔は赤い様子だ。手で隠したそうにしている感じもなくなっていない。しきりに胸やアソコを手で気にしたり、視線から逃げたがっているあたり、完全に慣れてしまうにはまだまだかかりそうだった。
「それから、この水にも薬を混ぜてある。媚薬の効きを良くするようだ」
実は利尿剤を混ぜてある。
放尿プレイを計画してのことなのだが、本人にはそこまでは伝えない。急に来る尿意に戸惑うところが見たいのだ。
こうしてニニムに媚薬を塗らせ、外へ出るのはそれからのこととなる。
◆◇◆
ニニム・ラーレイは変装したウェインの隣で出歩いていた。
ただの裸ではない。
頭には猫耳をかけ、肛門には尻尾をはめ込んでいる。さらにネックレスの鎖をかけた上、乳首にもアクセサリーを付けていた。それは指輪のようにはめ込む形で、乳首のサイズに合わせたリングをかけ、羽根のような装飾品をぶら下げている。
あとは踊り子が口元を隠す際のベールだけで、顔の半分だけを隠していた。
(た、確かに……顔は隠しているけど……)
隣のウェインを見ると、灰色のカツラを被り、眼鏡をかけ、高級すぎないそこそこの衣服に着替えている。素顔を知る者なら変装を見抜くだろうが、遠目から王子に見えることはまずないだろう。
王子がこんなところを出歩いているはずがない、という先入観も手伝って、ますますバレにくいはずである。
あまりに申し訳程度にしか隠していないニニムと、きちんとした変装と言えるウェインで、こうも差があっては惨めにある。
元より、王子と補佐官の関係だ。
身分には最初から差はあるが、服を着ているウェインと裸の自分では、それにも増して圧倒的な差をつけられた感覚がしてくるのだ。王子と補佐官よりもっと広がり、王子と貧民にでもなってしまったような気持ちになる。
(気がどうにかなりそう……)
フラム人に化けたウェインの隣で、実際にフラム人である自分が歩いている。
本当にフラム人同士が歩くだけなら、一体どれほど良かったか。
(みんな見てるじゃない……)
裸で歩いている少女がいて、見ないわけがないだろう。
しかも、アクセサリーの数々で飾り立て、ただでさえ目立つだろうに、尚更に人目を引いている気がしてならない。
「な、なんだあれ…………」
絶句している声が聞こえてきた。
「え? 悪いことでもしたのかしら?」
「わかんないわよ。私に聞かれても……」
二人の女が遠巻きにニニムを見て、引きながら困惑していた。
視線が痛い。
恥ずかしさは言うまでもないが、ニニムのことを目撃したみんなが、動揺したり困惑したり、常識的な反応をしているのだ。引いていたり、奇異の目を向けてきたり、そういう反応になるに決まっている。ニニムが目撃する側の立場で、全裸で出歩く人間がいたとして、あるいは何も気づかないフリをして懸命に意識を逸らすかもしれない。
常識的な反応が向けば向くほど、自分の置かれた立場の異常さを実感できる。
ウェインに命令されて裸になったはずなのに、いつの間に自分自身も何か悪いことをしているような罪悪感が湧いてくる。
そして、ニニムに向けられる反応は、もっと他にもあるのだった。
「おおっ!? おやおや、あれはエロいですなー!」
極めてストレートな反応だった。
「おや、声をかけた瞬間に腰がちょっぴり折れましたぞ? なるほど、体を隠したい気持ちの表れでしょうなぁ?」
(い、いや……ちょっと、そんな……言われたりしたら……)
「しかし、ああやって腰をくの字にするから、かえって尻が目立つというもの」
「あの猫の尻尾は肛門に刺しているのかな?」
「でしょう。なんとも、尻尾がお尻の割れ目に沿って垂れかかった光景といい、ああして歩くにつれて微妙に揺れているところといい、なかなかにエロい。我々は今ここで新たなエロスを発見したのかもしれません」
中年の男達がこぞって言葉を投げかけて、ニニムの裸に盛り上がっていた。
「あはっ、我々から目を逸らしましたな」
盛り上がり、ニニムとウェインの徘徊に着いてきていた。
二人が町を進むのに平行して、中年グループは距離を開けながらも塊となって隣を歩き、ニニムの様子を眺めて楽しんでくる。
「可愛らしい反応であるな」
「お? オッパイにも何やらアクセサリーが」
「ほほーう。指輪や腕輪というように、ならばあれは乳首輪といったところでしょうか?」
「羽根みたいのが乳首からプラプラ揺れているのも面白いですなー。それに、腰をくの字にすることで、体が斜めになるにつれて、段々と垂れ下がっていく感じ」
「なるほど、体がどこまで傾いているか。角度を見る目安になりそうですな」
自分の様子について挙げられて、大きな声で語られれば語られるほど、ニニムはますます肩が縮まっていく。尻を後ろに突き出すポーズになるとわかっていても、どうしても腰をくの字にしてしまう。
「おっと、手で隠すのは禁止だぞ?」
ウェインが小声で言ってくる。
「わ、わかってる……わ…………」
だが、隠したくてたまらない。
禁止とはわかっていても、手は乳房やアソコの近くを彷徨って、隠したい気持ちをありありと醸し出してしまう。
「ほほう? 羞恥心はあるようですな」
「ま、顔は赤いし、緊張でもしているみたいに震えてますからな」
「あの両手の動きも可愛いですなー。隠したいなら隠せばいいものを、我々にサービスでもしてくれているんですか?」
(だ、誰が! そんなわけないでしょう!?)
ニニムは心の中で声を荒げた。
サービスなどと、そんなことを言われては、まるで自分が好きで全裸徘徊をしているようではないか。その言われようは辛すぎる。屈辱が込み上げて、ニニムの顔は初めから羞恥に歪みきっていたものの、より固く強張って頬が震えを帯び始めた。
「な、なによあれ……」
「関わらない方がいいわ……」
中年グループの存在感で忘れがちだが、ドン引きしきった視線や声も、確実に向き続けている。
「なんだあの人!」
「知ってるぜ! 露出狂ってやつだ!」
「好きで裸になるってやつだろ?」
「じゃあ、見てもいいってことじゃん!」
男の子のグループまでもが、後ろからニヤニヤとしながらついて来る。
(いやっ、ちょっと! 増えないでよ!)
「うわー! 女の人の裸って初めて見ちゃった!」
「お尻エロいなー」
「ってか、あの尻尾とか猫耳とか何?」
「コスプレって奴だよ。趣味で変わった格好するんだ」
後ろから着いて来るということは、ニニムは男の子グループに向かって尻を突き出す形になってしまっている。隠したい思いから、背筋をピンと伸ばすべきかと一瞬思うが、そんなことをしても尻は一ミリも隠れてくれない。
だが、せめて見せびらかした状態だけでもやめにしたいとは考えるが、そうすると乳房やアソコの方を目立たせることになる。
どれも、隠せるわけではない。
しかし、二つの恥部が目立つくらいなら、もうお尻を突き出していた方がマシなのだろうか。
その時である。
(…………っ!)
ニニムは急におかしな声を出しそうになり、それを反射的に噛み殺した。
風が吹いたのだ。
そよ風に全身を撫でられれば、本当なら衣服を介して感じるべき大気の流れが肌に直接当たることで、自分がいかにおかしいことをしているか、五感の触覚によっても実感できる。
しかし、ニニムが声を出しかけたのは、そういった理由ではない。
快楽が走ったのだ。
ウェインに言われて塗った媚薬は、本当に効いているらしい。
そのせいか、風で乳首を撫でられて、大気が股下を通り抜けていっただけのことで、少しであるが甘い痺れが体に走る。ピリっとした微妙な気持ち良さは、突然の刺激だったので、ニニムは驚いて軽く悲鳴を上げかけたのだ。
(あらあら、ニニムさーん! せっかくなんだから、みんなにエロい声でも聞いてもらえばよかったのに!)
(ななななななんでそんなことしなきゃいけないのよ! 勘弁してよ!)
(媚薬はどんどん効果を強めてくる。風だけで感じるってことは、触ったりした時にはもう凄いんだろうな)
それは一体どれほどの刺激になるか、想像したニニムは、青ざめそうでありながら赤面から顔の色が変わらない、けれど血の気は引かせたようではある奇妙な表情になっていた。自分がどうなってしまうのか、不安や恐怖を抱きつつ、そのあいだにも周囲から来る視線や声での羞恥心が薄れるわけでもない、感情のかき混ざった状態が出来上がっていた。
「どれ、後ろの子供に向かって尻を振ってみろ」
「い、嫌……」
「言うことを聞けば、全裸徘徊の時間をそのたびに一分だけ縮めてやろう」
(時間なんて計ってないじゃない……)
「どうした? ほら、早く早く」
ウェインにプレッシャーをかけられると、ニニムとしては拒めない。忠臣としても気持ちもあれば、盗賊の件での負い目が晴れきっていないせいもあった。
ニニムは後ろへ尻を振る。
腰を左右に動かすことで、割れ目に沿って垂れかかった尻尾も振り子のように揺れ始める。
「変態だー!」
「すげー変態チックだぜ! ねーちゃん!」
ストレートな言葉は残酷に突き刺さる。
「次はあそこに移動するぞ。集まったみんなに裸を見てもらおう」
(うぅぅぅ……なんでもいいから、早く終わって……こんなの地獄よ…………)
ウェインの指した方向へ進むことで、ニニムは樹木を背にしていた。
背筋を伸ばすように命令され、きちんと皆に裸を見せると、その周囲を囲む形で、中年グループと男の子グループに、さらに何人かの老若男女を加えた人々の視線がニニムだけに殺到している。
裸のニニムが目立つせいか、隣にいるウェインは影のように目立たない。
自分だけに注目の集まる状況に、みるみるうちに頭が過熱され、脳が内側から蒸発して消えてしまいそうな心地である。
「乳を揺らしてみせろ」
ウェインに言われ、ニニムは従う。
適当に身体を弾ませて、上下に揺らしてみたところ、視姦してくる男達に目が明らかに喜んでいた。
「プルプル揺れますなー」
「いいサービスですぞー?」
「あ、目を逸らした」
「はははっ、きっと本当はこんなことをする変態じゃないんですよ。ま、だからこそ燃えるというもので」
視姦に耐えきれず、思わず目を背けてしまった反応さえ、感想としていちいち声に出されてしまう。その屈辱感で拳が引き締まり、力んだ時、それすら実況のネタになった。
「お、両手に力が、肩が微妙に持ち上がった」
「この状況に体が強張っているみたいだねー」
「こうした我々の言葉がますます彼女の心を締め上げて、緊張を強め続けているわけですよ。ほら、想像して下さい。我々だって、大勢の注目を浴びたら、緊張するとかやりにくいとかあるでしょう? それを彼女はね、裸を見られているわけですから」
ニニムの心理を解説する真似まで始めて、そんな中年グループの言葉に周りは聞き入ってしまっている。
ニニムは目の前の光景に耐えきれず、目を逸らそうと視線だけでも真横にやり、遠くの空や建物へ必死になって意識を向けている。それでも意識は逸らしきれず、こうした実況解説や視姦に引っ張られ、顔に羞恥の熱を注がれ続けている。
しかも、先ほどより強めの風が吹いた。
(ひっ!)
体がビクっと弾んでしまう。
乳首が痺れ、アソコにも快感の刺激が走ったせいで、全身が反応してしまっていた。
「今なにか、ピクっとなりませんでした?」
それを中年グループは見逃さない。
「確かに、そういえば乳首も大きいですな。あれは突起した状態ですよ」
「ほほーう?」
身体の状態について指摘され、言い当てられた恥辱感で、ますます頭の温度は上がっていった。ただ状態を指摘されたのではない。乳首の突起と言われたからには、それはもう肉体が興奮していると言われたようなものである。
「アソコにも薄らと汁気があるような」
(う、嘘……!?)
「ああ、本当だ。ここからでもわかりますよ?」
「いやしかし、今更ですがツルツルですなぁ? 剃ってあるんでしょうなぁ?」
好奇心たっぷりの視線がアソコに集まる。
中年グループがこんなことを言うせいで、それを気にした周りの人間も、愛液の存在を確認したくてワレメに意識をやってくる。
「あ! 本当だ!」
「なんかアソコの皮膚が濡れたみたいに光ってる!」
男の子グループが興奮していた。
「少年、あれは膣分泌液――あるいは愛液ともいうが、女の人が興奮して、エッチな気分になった時に出て来るものなんだよ」
「へー? じゃあオジサン、あのお姉さんはみんなに見られて興奮する変態ってこと?」
そのストレートな評価に、ニニムの心はナイフで刻まれたように痛んでいた。
「そうかもしれんし、違うかもしれん。いや、見られて興奮しているのは事実のようだが、オジサンの予想では、生まれて初めて全裸で外を出歩いて、変態の素質が芽生え始めているといったところか」
「へえ! やっぱ変態なんだ!」
「ま、最終的にはそういうことになるかなぁ?」
「はははっ、変態だね変態」
途方もない屈辱だった。
(変態じゃない! 違うわよ! 媚薬のせいで! 媚薬の……だから、見られて興奮なんて……そうじゃなくて…………)
言い訳がしたくてたまらない。
だが、たとえ媚薬について伝えたとしても、変態の素質がなければ濡れないはずだと、彼らの中ではそういうことになってしまうのだろう。
違う、そうじゃないと、訴えかけたい気持ちだけが膨らんで、実際には何の言い訳もできない歯がゆさで心が震える。
悔しさで唇を噛み締めた。
そして、折り悪く強めの風が吹き、それに全身を撫でられると……。
「んぅぅぅ…………!」
乳首から電流が発され続けるように、乳房にビリビリと快感が流れ続けた。アソコからも電流が流れ続けて、膣がしきりにヒクヒクと反応した挙げ句、股に汁気が増えていた。濡れたアソコに感じる風は、乾いた肌に感じるよりもひんやりしていた。
「まさか風で気持ち良くなったので?」
「……のようですな」
今の反応に中年グループは気づく。
「それは凄い感度だ」
「風だけでなんて、それじゃあ挿入したらどうなっちゃうの」
「気持ち良すぎて失神するのでは?」
「失神ついでに失禁もありそうですなー」
風だけで感じたことまでバレてしまい、談笑の中に出て来た失禁という言葉にも、ニニムの恥辱感は強く煽られていた。漏らした覚えがあるせいで、失禁の予想を立てられるだけでさえ、過去のトラウマを掘り返されるように辛かった。
(飲ませてあるんだよなー。利尿剤)
ウェインだけが知っている。
ニニム本人には教えていないが、媚薬の効きを良くすると称して飲ませた水には、利尿剤を仕込んである。その効き目がもうすぐ出て来るはずだ。
「風を気にした様子が伝わってきますなー」
「いつまた体に刺激が走るか、気が気でないかな?」
「こうなったら、ふーって息を吹きかけても気持ちいいのでしょうねぇ?」
(や、やめて――せめて何も言わないで――言わないでってば――!)
ウェインはニニムの様子を楽しんでいた。
(いいじゃん! すげーいいじゃん! もっと実況しろ! もっと煽れ!)
その期待に応えるようにである。
「お、また風が」
「刺激があると、反応した時の小さな動きも、あの乳首からぶら下がった羽根でわかりやすいというわけですな」
もちろん、羽根自体も風で動く。
しかし、その時の風向き、その時の風速によっては、葉が音一つ立てないのにニニムはピクリと動くことがある。そよ風に対して大きく揺れすぎていることもある。風で揺れたか、ニニムの動きで揺れたのか、判別のつきやすい瞬間はそれなりに多かった。
「I字バランスなんてどうだ? 是非みんなに見せてやるんだ」
「そ、そんな……脚が上がるとは……」
「上がるだけでいい、やってみてくれ」
ウェインに要求を押し通され、ニニムは片足だけを持ち上げる。
しかも、それはアソコが野次馬の群れを向くようにだ。本当は正反対の方向に脚を上げたいところなのに、これでは性器を見せびらかすかのようである。
「おおぉっ、かなりの柔軟性ですな」
「ここまで脚が上がりますとは」
ニニムの脚はI字に限りない高さに達していた。
すると、その分だけアソコは見えやすく、ポーズによって強調された分だけ周囲の視線は一箇所に集まり始める。
(あぁ……いやぁ……消えたい……ここから消えたい……)
ニニムは強く目を閉じていた。
「ほうほう。アソコがこちらを向きましたよ」
「こうして見ると、濡れているのがよりわかりやすくなってきましたなー」
(や、やだ……)
二本の脚から、一本がどいたのだ。
例えるなら、前がどくことで背中の影に隠れていたものが見えやすくなった。内股がよく見えることにより、そこに滴る愛液の気配は丸わかりとなっていた。
(見ないで……)
アソコを見られる恥ずかしさは言うまでもないが、愛液を見られるのも恥ずかしい。こんな風に集団で視姦され、体が悦んでしまっているせいで、まるで変態である証拠を暴かれ言い逃れができなくなるようである。
そして、ニニムは不意に危機感を覚えた。
(やっ、やだ……この感覚…………)
尿意だった。
つい先ほどまで、何なら数秒前までなかったはずだ。トイレに行く必要はない、当分は平気だという判断になるに決まっている。その判断を裏切って、ニニム自身にも予想できない急な尿意に煽られるのは、これで一体何回目か。
(トイレに……! い、行かせてくれない……わよね、たぶん…………)
ニニムの危機感はより一層となった。
(ウェインは私が漏らすのを楽しそうに見てくるから……このままだと…………)
「ふむ、次はオナニーでもしてみせるか」
「なっ、なっ、なにを言うの…………」
「オナニーだ。聞こえなかったか? やってもらうぞ」
この状況でアソコに刺激を加えなくてはいけないなど、ニニムにはもはや絶望できた。そんなことをすれば、我慢するための力が緩み、そこから決壊することは明白だった。
「あの……それだけは…………」
「駄目だ」
「どうしても……?」
「どうしてもだ。それが済んだら終わりにしてやるから」
「約束よ!? 絶対よ!?」
「ああ、絶対だ。約束は守ろう」
(うぅぅ……でもオナニーなんて……無理、なんでこんな人前なんかで……」
ニニムは野次馬の群れと向かい合う。
ふと前を見た瞬間、ぞっとした。
目という目の数々が殺到している。ニヤニヤとた顔という顔の数々が並んでいる。この群れの中には、最初に見かけたドン引きの様子などはなく、誰も彼もが面白がって集まった人間達なのだ。
この老若男女には、中年グループや男の子のグループの存在が目立っているが、よく見ればニニムと同い年の少女が混ざっている。中年主婦や妙齢美女も混ざっている。同性に対する仕打ちに好奇心を持ったり、嘲るためにやって来たのだ。
エッチなものを見たがる男の本能だけではない。
惨めなものを見て楽しみ、満足感に浸ろうと、嘲笑しに来た人間までいるのだった。
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