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 流行の兆し有りとされる病気は、不思議と女性ばかりに感染するのが特徴だが、その発見方法は表皮の観察だけではない。
 尿検査によって、香りと色が判断材料になるらしい。
 そして、ここに集まっている面々は、そうした基本知識を全て備えているわけであり、尿検査の実施を言い出しても不思議がることはない。

「次は尿検査だな」

 ニニムは一瞬、壮絶な顔をしていた。
(そんな…………)
 絶望を浮かべただけではない。
 ニニムは昨日の放尿を思い出し、ウェインに体を抱えられ、あんな形で放出を行った上、兵士に目撃までされてしまった衝撃が蘇る。あの時のショックと恥ずかしさといったらない。思い出すだけでも頭が燃え上がる。
 それを今度はもっと多くの人達の前でするというのだ。
「尿を採取し、それを医師の目で検める。放尿後十分以内の状態が望ましいと聞くので、尿検査についてはどうしてもその場で出したものを直接採取、すぐさま確認という形になってしまうので、ニニムにもこの場での放尿をしてもらう」
 仕事の一環に過ぎない風を装い、ウェインは内心では盛り上がる。
(さあさあ、ニニムさーん? 身は持つかなぁ? 恥ずかしさで気が触れちゃうかなぁ? どんな風になっちゃうのか、よーく見せてもらうぜ?)
(最悪……最悪……最悪……最悪……最悪…………)
 ニニムはポーズを変えていない。
 先ほどのM字開脚のまま、剃毛や計測で恥じらった余韻がまだ身にも心にも残っていることだろう。
「頼むぞ」
「はっ、お任せ下さい」
 一人の使用人がガラスの容器を抱えていた。
 尿瓶である。
 口の部分をアソコに宛がい、容器の部分に尿が溜まる。じょうろに似たような形のガラス容器は、採取した尿を他の器に取り分けたり、色を確認するのに便利だそうだ。
 尿瓶の口がニニムのアソコに接近する。
(急には出ないわよ…………)
 ニニムは目で訴える。
(いやいや、水とかいっぱい飲んだじゃん。いけるって!)
 ウェインは目でそう返す。
(いけないわよ……)
(いけるいける! 絶対いけるって! やってできないことはないって!)
(何なのよその情熱は……)
 仕方なく、ニニムはアソコに意識を集中する。
「ほら、よく見えるようにしっかりと手で開くんだ」
(うぅぅ……いやぁぁぁ…………)
 ニニムは片手だけをアソコにやり、指をV字に開いて中身を晒す。
 改めて肉ヒダを露出した途端、ありとあらゆる目が気になった。ウェインの凝視は言うまでもなく、周囲の臣下達、ニニムの扱いに何も言わない女性陣、すぐ目の前にある使用人の視線、数多くの目に囲まれている。
 この状況で放尿など、もはや拷問である。
(私……生きていられるかしら……恥ずかしさで死なないかしら…………)
 生死の心配さえ始めていた。
(あぁ、もうすぐ……)
 アソコに意識をやっているうちに、だんだんと尿意が強まっていた。解放の意思に従って、尿が体から出ていこうとしているのだ。
 それがしだいに強まるうちに、ついに飛び出る。

 チョロッ、

 と、まずは少量が噴き出ると、それは尿瓶の口から内側を伝って流れ落ちる。筒の部分から器へと、流れる際は川のように長さを伸ばし、底に向かって突き進む。それが器に入った時、一箇所に固まって、手の平に掬い取った水ほどの量が水溜まりとなっていた。
 そして、筒の内側には、尿の通った痕跡の筋が残される。

 チョロッ、チョロッ、

 少しずつ発射するように、そんな少量での放出が二回続いて、筋に残ったかすかな水分を取り込みながら、筒の内側を流れ落ちる。黄色い水溜まりが嵩を増し、しかしまだまだコップの半分ほどの量にも満たない。
 だが、やがてきちんとした放尿が始まった。

 チョロロロロロロロロロロロロロロ……………………。

 か弱いアーチが筒の内側に着弾して、着弾地点から底へかけての川の流れが形成される。その行き着く先にある水溜まりは、しだいに高く大きくなっていく。
 それをみんなが見ていた。
 忠臣達はまじまじと、使用人は正面からじっくりと、そしてウェインもニニムの様子を眺めて楽しんでいる。
(おー! ニニムの赤面っぷり! なんていいんだ!)
 ウェインは歓喜した。
 耳まで染まりきったニニムの顔は、羞恥心のあまりに発熱しきっている。周囲の様子を見ていられず、強く閉ざされたまぶたには、随分な力が籠もっている。本当は両手で顔を隠してしまいたいところだろうが、臣下達の前ではあまり好きな挙動を取りにくくてか、手の甲を口元に運ぶだけに留まっていた。
 肉ヒダを開いているおかげで、尿道口が尿を噴き出す様子が使用人には直接見える。
(な、なんとも……こんな光景を見ることになるとは……)
 使用人は目を奪われていた。
(いやはや、斯様な機会は二度とあるまい)
(うむ、しっかりと目に焼き付けねば)
 忠臣達も耳に神経を集中して、音をよくよく聞きながら、ニニムの様子を凝視している。放尿の様子が見える位置にいる者はもちろん、そうでない臣下も恥じらう顔だけは目に収め、表には出さないが一連の状況を楽しんでいた。
(ほらほら、わかるかなー? ニニムさーん? みんなが見てるよー?)
 ウェインは煽るような顔を向ける。

 チョロロロ……チョロロロロ………………。

 勢いが弱まって、筒の内側を流れる川も、だんだんと細くなる。
 やがて、尿は途切れた。
 尿道口から、最後にあと一滴分が滴の玉となってぷっくりと膨らんで、それが弾けて垂れ落ちる。これを最後に一滴も出なくなり、ニニムの放尿は終了した。
 しかし、安心するのはまだ早い。
「あとは画家達の仕事だな」
 ウェインが目配せすると、使用人の一人が部屋を飛び出し、廊下に控えていた画家達を呼び出しに行く。扉が開き、キャンバスを抱えた男達がぞろぞろと集まるにつれ、ニニムはもう笑うしかない壊れた笑みを浮かべていた。
(なんの冗談……かしら……はは……夢ね、これは悪い夢ね…………)
(お? 現実逃避が始まってるな? わかるよ? ニニムさーん?)
 そこから始まるのはさらなる恥辱だ。
 画家により体中の隅々までを絵に描いて、乳房やアソコを記録していく。しかも、彼らの腕に任せれば、まるで現実の風景をそのまま切り取り、紙の上に写し取ったかのように、極めて正確な絵を仕上げてくれる。
 この時間、ニニムの絵が実に十枚以上は描かれることになる。
 さらに、その完成品を見ながら、別のキャンバスにそのコピーを作ることで、模造品まで増えることになっていくのだ。



 
 
 

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