前編

 とある町の入り口での話である。
「これでわかったろう? こんな現場に回された俺達の不幸が」
 一人の険しい面持ちの男が、サングラスの奥から新入りの若手を見据えていた。
「そうですね、こんな……。だいたい、よくそれでも通ろうと思いますよね。こっちだって、通行人なんていない方がいいのに」
「本当は通したくないんだろう。入って来る人間が少なければ少ないほどいい。なんだって、そういう話になってんのか。俺達ごときにゃあ、知らされもしねぇ。とにかく、クソみてーな検問かけて、こんなところは通りたくねーって、一人でも多くの野郎どもに思わせりゃ勝ちって話よ」
 大層な防壁に囲まれたこの町は、近づく者を拒まんばかりに、壁のいたるところから銃口を生やしている。元より余所者の侵入を拒む体質のある土地だが、加えてますますチェックが厳しくなった理由は、上層部の人間にしか共有されない。
 こんな現場に回される自分達には、重要な秘密を教える必要などないわけだ。
「ま、とにかくだ。ゲイでも何でもねーにも関わらず、それでも男の尻まで覗かなくちゃならねー仕事をだ。ありがたい修行か何かと思って耐えるしかねぇ」
「ええ、わかってますが。吐けるもんなら、僕は三回くらい吐いてますよ」
「そうだな。ソッチ系の奴がちったあ、いてくれたおかげで、なるべくはそいつらに任せられるが、残念ながらの人材不足。もっと人がいりゃあ、完全に役割を分担しきって、俺達は書類だなんだにかかりきることができたんだがな」
「それを聞くと、いつまでも無い物ねだりをしていたくなりますよ」
「俺もだ」
 サングラスの男がため息をつくと、それにつられて新入りもため息をつく。
 この二人は現在、この移動都市に入ろうとする者を対象に、身体検査の仕事を受け持っていた。好きで受け持っているわけではなく、これだけ愚痴をこぼしているように、上層部から嫌でも押しつけられた業務である。
 理由は単純、検査を理由に人を裸にさせ、肛門に指まで突っ込めと言われているからだ。
 同性愛者なら喜ぶだろうが、そうでない者にとっては苦痛となる。
 防壁で囲んだ都市の、唯一の出入り口となる場所に検問所を設けることで、どうも人の出入りを減らしたいらしい。理由は不明、階級の低い者には、ただ面倒な仕事だけが押しつけられ、重要な秘密は知ることすら許されない。
 二人は嫌々ながらの仕事に対して愚痴を言い合い、せめてもの気晴らしをしているわけなのだった。
 そんな時である。

「なあ、代わってくれ!」
「俺達には向いてねぇ!」

 嬉々として男の尻を覗いてくれるはずの連中が、いかにもウンザリしきった顔で休憩所に踏み込んで来た。
 サングラスの男は軽く苛立つ。
「どうした。交代はまだのはずだろ?」
「女だ」
「はあ?」
「俺達は女なんざ興味ねぇ、だがお前らは違う。そうだろ」
「そいつはそうだが、女か?」
「ああ、女だ」
 サングラスは新入りと顔を見合わせ、お互いに笑い合う。
「そうか、女か」
「こいつはいいですね」
 検問所での検査方法を説明すると、女は決まって声を荒げて文句を言ったり、黙って引き返していったりと、とにかく身体検査を受ける確率は低い。他の移動都市と隣接している今、こちらの町に入り損ねるリスクがあまりないのだ。
「ま、せっかくだ。異性愛者の仲間を全員集めよう。目の保養くらい許されるさ」
 サングラスは腰を上げ、新入りを引き連れ休憩所を後にする。
 しかし、こんな検問を通ってでも町に入りたい女か。
 何かよほどの理由があるのだろうが、それもまた自分達が知る必要はない。
 自分達はただ、黙って仕事をこなしていればいい。

     *

 分厚い防壁で囲まれた移動都市の、ただ一箇所だけにトンネルのような穴があり、そこが唯一の出入り口となっている。
 チェックが厳しい現在、ただ通行パスを持つだけでは通過できない。
 厳しい身体検査を受け、許可証を得る必要がある。
 そんな入り口には、パスを提示するための受付がある。そこでまずパスのチェックを受けた後、身体検査の旨が伝えられ、受けるか受けないかの意思確認が行われる。受けない場合はパスが本物か偽物かに関わらず通行できず、受ける場合は同意書へのサインが求められる。
 身体検査の内容は、手荷物のチェックに加え、全ての衣服を脱いでの肉体への検査までもが行われる。
 検査内容の説明を受ければ、誰もが渋い顔を浮かべたり、露骨に嫌そうな顔をするのも無理はない。
「そんなに厳しいだなんて、よっぽど治安でも悪くなってる?」
 受付に向かって、青い髪の少女が尋ねていた。
「そういったことは、我々には知らされておりません」
「治安くらいわかるでしょ?」
「この一年、良くも悪くもなっていません。治安は関係ないでしょう。が、それもおそらくの話であり、我々にはあくまで理由は知らされていないのです」
「ま、いいよ。私は検査に同意するから、サインを書かせてもらえるかな」
「了解しました。ですが、一度サインしてしまえば、身体検査には法的な強制力が発生して、指示に従わなければ違反行為と見做されます。屈辱的な行為を強いられても、文句は言えなくなるのですが、それでもサインなさいますか?」
「そう言われるとしたくなくなるけど、この町にはどうしても入りたい」
「何か訳ありですか。でしたら、こちらが同意書になります」
 少女は差し出された紙を受け取り、その内容に目を通す。
 口頭で説明された内容と、ほとんど同じ身体検査について記されている。法的な強制力が発生すること、違反者への処遇についても書かれており、ここに名前を書いたが最後、もう身体検査からは逃れられない。
 だが、少女はペンを取り、記入欄に名前を書く。

 ――モスティマ。

 トランスポーターである彼女は、この町に必ず届けなくてはならないものがある。
(身体検査。進んで受けたいものではないけど、まあなんとかなるんじゃないかな)
 自分は些末なことを気にする性格はしていない。恋だの愛だの、そういったものを別に嫌ってはいないのだが、必須のようにも思っていない。そんな自分が殊更に肌を大切にして、花も恥じらう乙女のように振る舞うことはない。
 つまるところ、自分なら羞恥心を捨てられる。
 そのように考えているわけなのだった。

     *

 検査室へ案内され、部屋に入ると、まずはテーブルに置かれたカゴが目についた。
 服を脱ぐことになっている以上、そこに入れろということだろう。
 案内人が去っていき、モスティマの背後でドアが閉ざされ、かと思いきや数秒後にはすぐに開いた。

「名前はモスティマ。要件は荷物運びってところか」

 ぞろぞろと何人もの足音が聞こえてくる。
 振り向けば、サングラスの男が何人もの部下を引き連れていた。
「……多いね」
 端的な感想を口にする。
「ああ、土壇場で暴れられては困るからな。悪いが脅しも兼ねてる」
「へえ、そうなの」
「ま、通用するとは限らないが、こっちも上から方法を指導されててな。形式的な対応として、こうしなきゃいけないことになっている」
「それは大変だ」
「なに、本当に大変なのはアンタの方だ。さて、最初は荷物と所持品からチェックする」
「どうぞ? ご自由に」
 モスティマは手持ちの杖をテーブルに置く。
 身につけていたポーチ、ぶら下げていたバック、持っていた限りの荷物を並べていくと、男という男の数々が無遠慮に中身を検め始めていく。荷物の中には替えの下着も入っていたが、目の前でショーツを広げられても、モスティマは顔色一つ変えなかった。
「モスティマ、お前さんの通行について、事前に許可申請が届いている。このうち、申請の通っている持ち物のみが持ち込み可能となり、許可の出なかったものはこの場で没収。帰りに返却ってことにはなっているが、まあ不許可の物品はないらしい」
 申請リストに載っていない物品がない限り、所持品が検査にかかることはないわけだ。
「それはいいけど、デリカシーに欠けるようだね」
 荷物の大半は、一度取り出した中身はチェックが済めば元に戻され、綺麗に片付けられている。その中で下着だけは、何故だかテーブルに並べ出されて、上下セットで陳列されていく。
 ブルーの布に白いレースをかけたもの。
 黒と紫を掛け合わせたデザイン。
 赤い布地に黒いレースを合わせたもの。
 それらブラジャーとショーツのセットを並べる男達に、モスティマは冷ややかな視線を送る。
「衣服ってのは、物を隠しやすいからな。詳しく見るように言われてるんだ」
「へえ」
「そんなことより、次は服を脱いでもらう。言っておくが、同意書にサインがある以上は、指示通りにしないと違反扱いだ」
「わかってる。脱げばいいんでしょ」
 何も問題はない。
 裸になり、検査を受け、済んだら着替え直して町に入って、仕事を済ませて終了だ。
 ただそれだけのことと思い、モスティマはグローブを外し始める。次に素手でブーツと靴下を、そして素足を床に付けながら、厚いジャケットの袖から腕を引き抜く。
 シャツも躊躇いなくたくし上げ、カゴの中へと放り込む。
「青か」
 サングラスの男が色を呟く。
「青だね。オシャレでしょ?」
 モスティマは彼を向き、特に何も感じていない素振りを見せる。さも羞恥心などなくケロっとしたように、ダークブルーのブラジャーを見せびらかした。
 濃い青の上には、水色の花がプリントされている。暗い色に重なる明るい色が柄を華やかに見せながら、乳房に沿った部分にはレースがかかっている。
 自然と男達の視線は集まり始めていた。
 誰も彼もがモスティマの体に興味を持ち、好奇心を抑えきれずにブラジャーを眺めている。
「ま、さっさといっちゃおうか」
 モスティマはショーツパンツさえもあっさりと、何ら抵抗がないかのように脱いでしまい、同じくダークブルーのショーツをあらわにした。
(……うーん)
 下着姿になってみて、この室内に集まる全員の視線を浴びていると、さすがのモスティマも落ち着かない。
(みんなにジロジロ見られていたら、そりゃね)
 モスティマ自身はそういうことだと思っていた。
 十人近い人数から視線が集まり、嫌に注目されていれば、何となく集中しにくくなったり、気が散ったり、落ち着かなくなるものだ。今こうして感じているのも、それと似たような感覚に過ぎないはずだ。
(ちょいと頬が赤いな。恥じらいゼロってわけじゃなさそうだ)
 サングラスの男からしてみれば、既にそんな見立てである。
 ならば、そのブラジャーを外した時、モスティマの顔はどういったものになるのか。乳房を出してなお、ケロっとした風に装うのか。それとも、さすがに恥じらいが現れるか。両腕が背後に回り、指でホックが外れた時、誰しもが期待感を抱いていた。
 カップが緩む。
 モスティマは肩紐を指でつまんで、一本ずつ下ろしていった。
「注目しすぎだよ。みんなして」
 呆れながらブラジャーを外してみせ、それをカゴに放り込む。
 その瞬間から、明らかに視線の圧力が変わっていた。まるで目からレーザーでも放ってくるように、皮膚を焼き切らんばかりの熱い照射が集まって、乳房の表面がじりじりと焼かれるかのようになる。
 艶やかな肌から聳える美しい膨らみは、単なる性の象徴としてだけではない。
 芸術家が仕上げた曲線に見えるほど、あまりにも美観に優れていた。茶碗ほどの膨らみを成す曲線から、薄色の乳輪を肌に馴染ませ、乳首をささやかに立てたモスティマの乳房は、たとえ下心が皆無としても、美麗さだけで視線を引き寄せかねない。
 ショーツ一枚という心許ない姿となり、ここまで来れば、モスティマも頬に燻るちょっとした熱を感じ始めていた。
(ああ、思ったより恥ずかしいかな……)
 性経験がなく、オナニーすらろくにしていないモスティマである。
 好奇心がないとまでは言わず、だから一般的な知識は揃っているが、奉仕や性交といったものは一度も実践したことがない。あるとするなら自慰行為で、自らの手で快楽を得るのは、決して嫌いではないものの、どうしても必要とまでは思っていない。
 果たして、年に何回程度の回数だろうか。
 そんなモスティマだ。異性に裸を見せるのは初めてだ。
(もっと平然としていられると思ったんだけどね)
 頬がほんのりと桃色に染まっただけでも、モスティマ自身にとっては想像以上の恥ずかしさだ。羞恥心が欠片も湧かないとまでは始めから思っていないが、もう少し薄らとした気持ちしか抱くことはないだろうと、自分では思っていたのだ。
(どっちにしても、脱がなければ違法で罰則を受ける身になったことだし、最後の一枚もいくしかないね)
 ショーツのゴムに親指を入れ、下げる準備に入った途端、頬に浮かんだ桃色がじわじわと熱を広げて、その範囲を広げる感覚がした。
 今、どの程度の赤面になっているだろう。
(ちょっと余裕ぶりすぎたかな)
 ほんの少し前までは、ブラジャーの柄まで自慢したはずなのに、下着姿の時までは保っていた余裕に、微妙な罅が入り始めている。
 モスティマはショーツを下ろし始めた。
 両手の親指に引っかけて、しだいに前屈していくかのように、腰から太ももへするすると下ろしていく。膝に絡んだショーツをふくらはぎに通していき、綺麗な前屈姿勢を作り上げると、床に到達したショーツから、足を片方ずつどかしていく。
 丸裸を隠すことなく、まだまだ平静を保った顔でショーツをカゴの中に置き、モスティマは全裸を披露した。
「どう? 脱いだけど」
「さすがに顔が少しは赤いぞ?」
「みたいだね。でも、このくらいなら我慢できそうだよ」
 実際、モスティマはごく冷静に堪え、赤らみこそすれども、表情は歪めていない。赤く染まることこそ避けられずとも、顔つきだけはまだまだ余裕を保てていた。
「次は脱いだものを調べる。いいな?」
「どうぞ? お好きに」
 もちろん、下着も検分するのだろう。
 それは嫌だな――と、さすがにそんな気持ちも湧くのだが、モスティマはそれを抑え、赤いながらに冷静な表情であり続けた。
 テーブルは随分長く、幅もある。
 少しでも多くの物品を並べ、わかりやすく検分するためなのだろう。
(あとは、あれか)
 バッグやポーチの数々は、中身のチェックが済んだものは、全て元に戻してくれている。出しっぱなしにはせず、しまってくれるのは嬉しいのだが、先ほどから並んだままの下着セットはどうせセクハラか何かだろう。
 男達がカゴの中身に手を伸ばし、ジャケットを、ショートパンツを、今まで脱いだものを次々と取り去っていく。
 その一人一人が丁寧な検分を行っていた。
 布が二重になっていないか、ポケットが二重になっていないか。あらゆる部位を手触りで確かめながら、虫眼鏡程度の大きさの、小型の金属探知機まで使い、よく調べているものである。特別、何を隠して持ち込もうというわけでもなく、必要な物品は全て許可を得ているモスティマにとって、その努力はご苦労なものとしか言いようがない。
 しかし、サングラスの男がショーツを手に取り、モスティマの目の前でピンと広げ始めた時には、少しは表情が変わって来る。
「……良い趣味」
「仕事なんでな。おい、お前はブラジャーを調べていいぞ」
「はい! ありがとうございます!」
 サングラスの指示を受け、さらに一人の男がカゴの中身を取り上げると、わざわざモスティマの前に立ち、これみよがしに調べ始める。
「脱ぎたての体温が残ってやがるな」
「へえ」
「これはおりものの痕跡か? なるほど、ある程度長く穿いている」
 クロッチを裏返し、裏地に使う白い布を手の平に乗せて観察する。
 その隣に立つ若者は、カップの裏側をやたらに調べ、ポケットの部分に指を入れている。パッドの挿入が可能なわけだが、モスティマは特にそうした物は入れていない。もちろん、無許可の物品も仕込んでいない。
 居心地は悪い。
 テーブルに並ぶ下着の隣に、二人が弄り回した下着もそのまま置かれた。
(……やだなぁ)
 モスティマは密かに顔を顰めていた。

     *

 男達の取った行為は、全てが上から指示された通りの検査方法だ。
 荷物を調べ、次に服を脱がせた後、その衣服や下着を検分する。
 サングラスの男に、その隣に立つ新入りに加え、さらに十人ほどの男がこの場にいたが、その十人全ては生真面目なものだった。
 もっとも、今の今まで女の検査は一度もしていない。
 初めて少女を裸にさせ、その脱衣や裸体を拝んだことで、正しく職務を全うしようとする理性に亀裂が走り始めている。
(なんて綺麗なおっぱいなんだ……)
 心が感想を呟いていた。
(あのお尻、凄くいい)
(下着も似合っていた)
(い、いかん。俺は何を……)
 これが男十人の心境だった。
 邪な気持ちを抱いてはならないと、心の中では思っているが、丸裸で立ち尽くすモスティマに視線を向けずにはいられない。高い吸引力に引き寄せられ、衣服の検分にも集中できない。
(リーダーはパンツを……)
(羨ましい)
 サングラスがショーツを調べていた時には、羨望の眼差しさえ向けてしまった。
 いかん、これは仕事だ。
 何度も何度も頭を振り、己の中から煩悩を振り払おうとするのだが、なかなか保つことが出来ずに見てしまう。
(だいたい、仕事なんだ)
(そ、そうだ。結局、見ないわけにはいかないんだ)
 一人、また一人、心の中に言い訳を並べ始めて、しだいに視線に遠慮がなくなる。吸引力でどうしても引き寄せられていた視線から、そもそも目を逸らす意思のない、しっかりと視姦しようとする眼差しへ変わっていく。
 そうした変化が広がる中で、サングラスの男が指示を出す。
「メジャーを出せ。規約に従い、身体データを記録する」
「はい!」
 傍らの新入りがモスティマにメジャーをかけ始める。
 それを見守るため、男十人はモスティマを囲む輪を形成していった。

     *

 新入りの男は目の前の裸に緊張していた。
 メジャーを握る手が震え、胸の内側からは心臓の音がうるさく聞こえる。体のいたるところが強張って、新入りの全身からひしひしと緊張感が伝わっていた。
「大丈夫かい?」
 顔の赤いモスティマが、それでも新入りの様子を気遣う。
「へ、平気だ!」
「それなら、早めにやってもらえると助かるね。私だって、いつまでもこうしていたいわけではないからさ」
 肩を竦めて言ってみせながら、モスティマの頬は先ほどよりも赤味を増しつつある。
 それも当然か。
 こうして全裸で立っているのもそうだが、周囲の男達が衣服の検分を終了して、一人ずつだんだんと、モスティマへの視姦を遠慮なく行うようになっているのだ。
 モスティマの周りに輪を作り、それぞれの位置から裸の観察を始めている。
 本人もそれを感じて、だんだんと恥ずかしく思い始めている。
「で、ではっ、測らせてもらう」
「どうぞ」
 モスティマは腕を軽く左右に広げる。
 新入りはその胸に目を奪われ、ごくりと息を呑みながら、モスティマへと迫っていった。メジャーを背中へ回すため、まるで抱きつこうとするように腕をやる。メジャーを背中に引っかけると、両手で手前に引っ張って、あとは乳房に巻くだけだ。
(お、おっぱい……こんなに綺麗なおっぱい…………)
 目が血走る。
 この新入りの男やサングラスの男にも、最低限の良心はあり、例えば立場を利用したレイプまでは考えていない。さすがにそれは……と思う感覚は持ち合わせていながらも、まるで何も楽しまずに終わることも、所詮は男として出来そうにない。
 良心と欲望のバランスで、新入りは迷っていた。
 巻きつけるため、だんだんと手を乳房に近づけるうち、当たり前だが指で触れるチャンスが生まれる。さりげなく、ぷにりと当てる程度なら、不可抗力として仕方のない接触のうちに入るだろう。
 頭の中ではそんな計算をしていながら、いざ実行しようと思うと勇気が出ない。
 触るのか、やめておくのか。
 セクハラをするのか、全うにやり抜くのか。
 どちらとも決めきれないまま、手だけを乳房に近づけて、後は目盛りを合わせて数字を読むだけの段階に近づいていく。
 その時だった。
「…………っ!」
 モスティマは何かに驚き、頬をピクッとさせていた。
「?」
 新入りにはそれが何かわからずに、頭に疑問符を浮かべるのだが、こうも距離の迫った状態では、相手の表情の動きがよく見える。
 驚く瞬間、下を気にしていたはずだ。
 そして、その次には瞳をきょろきょろ、上下左右に落ち着きなく泳がせている。
(どうしたんだ? 本当に)
 荷物のチェックでも、下着を調べても、特に違法なケースは認められない。持ち込み許可リストにある通りの所持品しかない中で、これ以上何があるというのか。
 しかし、ふとした拍子に新入りは気づく。
(乳首……!)
 そう、乳首だ。
 乳房に巻ききる直前で手が震え、メジャーの位置をずらしたことで、どうやら乳首を刺激してしまったらしいと初めて気づく。
 そうとわかるや否や、急速に好奇心が膨らんだ。
(か、感じるのか? メジャーで…………)
 試してみたい。いいや、駄目だ。
 良心と欲望で揺れてはいたが、その天秤は欲望の側に大きく傾き、もう一度試してみたい衝動に心が支配されていく。
 新入りはメジャーの目盛りを合わせ、その乳に緩やかに食い込ませる時、小指で下から持ち上げるように触っていた。
 モスティマの目がかすかに大きく開いている。
 驚きの素振りが見えた途端、追撃でも加えるようにメジャーをずらして乳首を弾いた。
「…………んっ」
 随分と抑えていたが、間違いなく声が出ていた。
 その反応をもう一度見たくなり、再びメジャーで擦ってやると、頬がピクっと弾けたような反応と共に、似たような声が改めて聞こえて来た。
「んっ、んっ……」
 色っぽい反応だった。
 性的な刺激によって、何かを我慢したような、少しだけ強張った表情になっている。
(でも、このくらいにしないと……)
 やりすぎれば、モスティマはどんな言葉で叱責をしてくるか。
 欲望を満たしていくことで、天秤にかかる比重が今度は良心の方に傾き、新入りはこのあたりできちんと目盛りを合わせて数字を読む。それを背後のサングラスに伝え、書類に記録してもらった。
(アンダーバストも、だよな)
 新入りはメジャーの位置を少しずらして、乳房の真下に目盛りを合わせる。
(うぅ……)
 こうも乳房が目の前だと、視姦せずにはいられない。
 新入りは目盛りを確認するため、姿勢を低めて、下乳を覗き上げるかのようにした。部屋の明かりで影を帯び、この角度では暗く見える膨らみを見上げていると、それはそれで目を奪われ、いつまでも視姦していたくなる。
(いやいや、数字を……)
 目盛りを読み、それもサングラスに伝えた。
 次にウエストへ移るため、新入りは片膝を突いて姿勢を低め、改めて抱きつくように腕を回すと、ヘソが文字通りに目と鼻の先となっていた。あと一センチでも近づけば、鼻先をヘソの穴に押し込むことになる至近距離で、はっと気づいたように離れていき、メジャーをきちんと巻きつける。
 ここまで測れば、最後はヒップだ。
(お、お尻……)
 新入りはごくりと生唾を飲む。
 両膝を突き、さらに姿勢を低めることで、アソコが目の前にやって来る。
 髪の色と同じく青い毛を生やしたモスティマのアソコは、外側になるほど毛先の細い、長さも短い三角形を薄らかに生やしている。実際に触れてみるまでもなく、いかにサラサラとして指通りの良い毛並みかは、見ているだけでよくわかった。
 ワレメも綺麗だ。
 ぴったりと閉じ合わさった初々しいワレメは、ここだけを見ていれば、世界の穢れを何も知らない清らかな乙女にさえ感じられる。
 その質感の良さを凝視しながら、新入りはお尻に向かって腕を回す。
 本当に抱きつくわけではない。
 しかし、そうしようと思えば抱きつく行為を働ける。そんな状態に置かれることで、理性に走る亀裂は広がり、頭が本当にくらくらする。
(お尻、触ってみたい…………)
 ぷにりと、少しだけ拳を押し込んだ。
 ほとんどグーに近い形でメジャーを握っているが、そんな拳を数ミリだけ、本当に少しだけ皮膚に埋め込む程度にタッチする。モスティマの軽く驚く気配が伝わるも、何か注意をしてきたり、怒ってくる様子はない。
(よし)
 新入りはメジャーを手前に引っ張り出し、アソコの近くで目盛りを合わせた。

 じぃぃぃ…………。

 と、目盛りを読むフリをしながら、少しのあいだアソコを視姦する。
 それから、やっとのことでヒップサイズを明らかにして、サングラスの男が持つ書類には、スリーサイズの全てが書き込まれることとなる。





 後編

 モスティマは軽く焦っていた。
(……わざと、だろうね)
 それは乳首をメジャーで擦られた時のこと。
 乳房に顔がぐっと迫って、こうも至近距離から見られることに、ますます羞恥心を膨らませていたところ、急に乳首をやられたのだ。
 どうにか声は抑えたが、それも完全ではない。
 多少は聞こえてしまったことだろう。
(知らなかったよ。あんなに刺激があるだなんて)
 モスティマは初めて気づいていた。
 年に数回あれば良い程度の、あまりにも少ないオナニー経験で、自分の体はろくに開発されていないはずだと思っていた。
 ごくごく小さな快感だけで満足してきたモスティマにとって、ただメジャーが擦れただけの刺激が驚くべきものだった。乳房で急に電流が弾けたように、ビリっとした快感が急速に広がる感じは、まったく未知のものであった。
 この上、アソコに顔を近づけられ、ジロジロと視姦してきたことはわかっている。
 いかにも目盛りのチェックに手こずってみせながら、あからさまに時間をかけて、実際にはアソコばかり視姦していた。
(そりゃそうだよ。裸で男に囲まれて、何もないわけないだろうね)
 モスティマはまぶたを震わせ、しだいに恥辱を感じ始める。
(参ったよ。平気だって思っていたのに、これとはね)
 スリーサイズの測定が終わったことで、新入りの男はモスティマから離れていく。
 しかし、周囲三六〇度の、全ての方向から注がれる視線はどうしようもなく、だんだんと手で胸やアソコを隠したくなってきた。
(今更? 今になって隠すのも、なにか余計にね……)
 自分は恥ずかしがっていますとアピールするかのようで、隠すに隠せない思いがする。
(隠したところで、まだ検査項目は残っているんだ。恥ずかしいなら恥ずかしいで、早めに慣れることを考えた方が、少しはマシかな)
 と、モスティマは合理的に判断する。
 だから、隠したい気持ちこそ湧きはしても、両手がそう動くことはない。

「おし、全身をくまなく触診する」

 とうとう来たかと、モスティマは覚悟を決めつつ身構える。
 身体検査の内容は、全て受付で説明されており、同意書にサインをする直前にも、書面にそれらのことは書かれていた。
 手術で皮下に物を埋め込み、後から町で取り出す方法を取りはしないか、そんなことまで調べるというのだ。
 ここまで検査が厳しい意味を、モスティマはある程度までは知っている。
 身体検査を嫌って、都市に入ることをなるべく多くの人が諦めるように仕向けつつ、届け物のあるトランスポーターだけは確実に入って来る。そんな状況を作ることに意味を見出すのは、都市で活動する組織の立ち回りの一環だ。
「やれ」
 サングラスの男が適当な二人に目配せする。
 その瞬間に男二人がモスティマの前後を挟み、前から、後ろから、皮膚に手の平を押しつけられる。顔まで至近距離に近づけられ、ますます恥じらいがこみ上がる。
 前の男はもっぱら二の腕をさすり回して、次に肋骨や腹部を撫で回す。
 後ろからは背中を触られ、うなじや肩甲骨をひとしきり撫で回された挙げ句に、背骨のラインを指でなぞられ、腰に指を押し込められる。
 さながら、指圧マッサージでもしているようなタッチである。
 指の感触で皮膚を調べ、その内側にあるものを探ろうとする目的こそ感じられ、まさに触診といった具合ではある。男相手にもやっているのかもしれないが、ここまで肌中を探られる不快感は言い知れないものがある。
(本当に落ち着かない。とてつもなく、そわそわする)
 後ろの男がしだいしだいにしゃがんでいき、太ももやふくらはぎを調べ始める。前の男も足を中心に触り始めて、こうして出来上がる形に頭が羞恥で熱くなってくる。アソコの前に、お尻の前に、それぞれ男の顔が来ているのだ。
(……まったく、いずれは頭が沸騰しそうだ)
 もうとっくに赤面は隠しきれずに、頬は明確に赤くなっていることだろう。最初に余裕の素振りを見せた手前、格好がつかない気もしてやりきれない。
「あれだけ平然としていたのに、すっかり顔が赤いじゃないか」
 そして、それを実際にサングラスの男が指摘してきた。
「予定では最後まで何も感じずにいるはずだったんだけどね」
「さすがに恥ずかしくなってきたか」
「あまりからかわないで欲しいものだよ」
「からかっちゃいないさ。それより――――」
 サングラスの言葉が途切れた時、前の男がすっと立ち上がり、おもむろにモスティマの乳房を掴んできた。
「……っ!?」
 さすがに驚く。
 同時に後ろからは尻を触られ、二つの箇所を同時にやられる感覚には、いくらなんでも屈辱に歯を食い縛らずにはいられない。
 厄介なことに、気持ち良かった。
「んぅ……んっ、んぬぅ………んっ、んぅぅぅ…………!」
 尻の表面をすりすりと、可愛がるかのように撫でられる。皮膚に甘い痺れが走ってピリピリと気持ちいい。触られれば触られるほど、下腹部が密かに引き締まり、膣の奥からきゅっと何かが絞り出される。
 だが、それ以上に胸で感じた。
「んぅぅぅ……んっ、んぅぅぅ…………」
 今にも声が出そうな感覚に、モスティマは歯を食い縛ることで堪えている。
「んぅ……んふぅ……っ、んぅぅ……んぬぁっ、んぅぅ…………」
 我慢していても、これだけ息が乱れてしまう。荒くなった息遣いには、喘ぎ声とまではいかない小さな声が混ざってしまう。意識的に抑えなければ、もしかしたら既にはっきりとした喘ぎ声が出るのかもしれなかった。
(ねえこれ、ただ揉んでるだけじゃ……)
 最初のうちは、調べようとする手つきに思えた。
 しかし、だんだんと検査の名目は薄れていき、尻も胸も、ただ好きで触っているような手つきにしか感じられなくなってくる。お尻はやがて揉みしだかれ、胸も好きなように捏ね回され、体に走る刺激は強まっていた。
「んぅっ!?」
 デコピンのように乳首を弾かれ、より決定的な声が出た。
 男は興奮に鼻息を荒げ、そのまま指で乳首をつまんで責め始める。電撃を流し込まれるような快感に目を見開き、モスティマは身悶えしていた。
「んぁっ! あぁ……! あっ、ちょっと……!」
 二本の人差し指により、二つの乳首が上下左右のあらゆる角度へ弾かれ続ける。集中的な責めが刺激を生み出し、電流でビクっと反応してしまうかのように、しきりに肩が動いている。
「乳房は入念に確かめないとな」
 サングラスの男は言う。
「い、いやぁ……そろそろ、何かおかしいんじゃ……んっ、んぅぅぅ…………」
 甘い声が漏れ出るたび、モスティマはそれを抑えようと力強く歯を食い縛っている。噛み締めた歯の隙間から、それでも乱れきった息は吐き出され、快感に翻弄されているのを、とっくに隠しようがないくなっている。
「んぅ……んっ、んぁっ、いっ、いつまで……遊ぶのっ、かな…………」
 乱れきった状態で、どうにか余裕を気取ろうとしていた。
「さあ、いつまでだろうな」
 乳首をボタンのように押し込むと、乳房の山頂に軽いクレーターが出来上がる。素早く指を引っ込めると、元の形状に戻ろうとする勢いで、乳首はプルっとかすかに揺れる。
 男はさらに下から掬い上げ、プルプルと揺らし始めた。
「んぁっ、んっ、んぅぅぅ……んぁぁ…………!」
 上向きの手の平で、持ち上げるかのようなタッチで軽い衝撃を与え続けて、モスティマの乳房は上下に振動を繰り返した。
 プルプルと、魅惑の乳揺れを披露させられているうちに、さらに甘い痺れは増えていき、もう乳房の内側には収まりきらす、漏れ出るように体中へ広がっていく。
 さらに、その時だった。

 ぺろりっ、

 男は乳首を舐め上げた。
「んひ!」
 聞く者が聞けば、モスティマらしからぬ可愛い悲鳴に、もはや仰天しかねない。
「ちょっ、ちょっと? いっ、いくらなんでも――――あっ、あぁっ、あうっ、んっ、んぅぅぅ……! あっ、と、止めて……もらえな……あっ、あぁ………………」
 モスティマはサングラスの男に目をやって、部下の暴走を止めて欲しいと懇願するも、聞き入れる様子がまるでない。
「ああっ、あっ! やめっ、んぅぅぅ…………!」
 舌先でペロペロと、上下に嬲る刺激に抗って、モスティマは両手で男を押し退けようとしていた。
 しかし、その瞬間である。
「えっ……! んぅっ、んぁぁ……!」
 それよりも先に、背後の男に両方の手首を掴まれ、抵抗は封じられてしまう。
「んっ、んぁっ、あぁぁ……!」
 モスティマはしきりに首でよがっていた。
「あぁぁ……! あっ、ちょっと、本当に…………!」
 男の顔が離れると、舌先と乳首のあいだに唾液の糸が何センチも長く伸びていく。それ以上は長く伸びないところまで達すると、ぷちりと千切れて消失して、乳首にはぬるりとした水気を残していた。
 もう片方の乳首に吸いつく。
 唇で頬張って、赤ん坊のようにちゅうちゅうと吸い上げた挙げ句、ちゅぱっと吐き出し、ペロペロと舐め回す。
「あぅぅぅ……! こんな検査っ、さすがにないでしょう!?」
 だが、それでもサングラスは部下の暴走を見守っている。
 隣に立つ新入りの男も、周囲の男達の中からも、行きすぎた行為を咎めようとする声は出て来ない。
「あっ、んぅ……そ、そういうこと……止める気がないって…………?」
 そこで男の顔が離れる。
 かといって、乳首への責めが終わるわけではなく、唾液の浸透した乳輪をぐるぐるとなぞり始めていた。
「んぅっ、んっ、んぅぅ……!」
 唾液で滑りが良くなっている。
 何周も何周も、乳輪という名のコースを際限なく走り続ける指先は、その回転でしょっちゅう乳首にぶつかっている。
「んぅぅ……! んっ、んぅぅぅ……!」
 軽く掠める瞬間、強く擦れる瞬間。
 三六〇度、全ての角度から乳首にぶつかり、その都度その都度、擦れ具合も異なっている。
「んあぁぁ……! あっ、ああっ、あぁぁぁ…………!」
 それは周囲から見ても面白い光景だった。
 二本の人差し指が突き刺さり、器用なまでに一定の回転を続けることで、モスティマはしきりに顔を左右に振っている。息を乱して、髪も乱し、電流で筋肉の弾むような反応から、肩をやたらにモゾモゾとさせている。
「ああっ、あぅっ、あふぁぁ…………んぅぅぅ…………!」
 そのうちに、モスティマは下腹部に熱を感じていた。
 アソコの奥で見えない何かが膨らんで、今にも弾けそうになる予感に顔を焦らせ、目の前の男を睨みつける――止まらない。サングラスの男を睨んでも、やはり部下を止めようとせず、ただただ弾ける予感だけが迫り続ける。
 きっと、尿意というわけではない。
 しかし、今にも何かが出そうな予感は、まるで今すぐにオシッコが出そうな感覚のようにして、激しく焦燥を煽るものだった。
「ぬぁっ、あぅぅぅ…………!」
 さすがに抵抗したくなってくる。
 いいや、本当なら、やたらと乳房で遊ばれた時点でそうしたかった。
 しかし、ここで違反行為を働くことで、仕事に支障が出てしまう問題が頭をチラつく。我慢してきた努力が無意味になるのも憚られ、目立った抵抗はできずにいた。
 そのまま乳首を責められ続け、ついには弾ける。

「――――――っ!?!?」

 驚愕に目が見開き、頭が真っ白に弾け飛ぶ。
 その次の瞬間には、じわっと溢れる愛液が内股を伝って流れ出していた。
「ははっ、イったみたいだな」
 それをサングラスの男がせせ笑う。
「い、イったって…………」
 モスティマにとって、これは未知の体験だった。
 数少ないオナニー経験では、少量の愛液を指に絡め取ったのがせいぜいである。絶頂、オーガズムといったことを知識的には知っていても、体験するのは初めてだった。
(今のがイクってこと? 私はイカされたってこと?)
 みるみるうちに恥辱感が込み上げる。
「ほら、やり過ぎだ。暴走はいかんなぁ? 暴走は」
 サングラスは今更になって部下を咎めるが、対して悪いとは思っていない、それよりも得をした気分でいっぱいの声色だった。
「最後は穴の検査と――そして、写真撮影だ」
 膣に指を入れる検査になれば、間違いなくピストンして快楽を与えてくるだろう。
 悪戯を……いや、陵辱をわかっていながらそれに身を晒すことには、いくらなんでも抵抗感しか湧いてこない。
 サングラスに一歩迫られて、モスティマは自然と後ずさっていた。

     *

 サングラスの男はわかっていた。
 きちんと注意し、統制をしなければ、部下の男達は女の裸に暴走して、やがて楽しみ始めることだろう。こうした仕事に慣れてさえいれば、ベルトコンベアに流れる物品を淡々と検査する気持ちで当たれたろうが、残念ながらサングラス自身もこういう仕事を初めて受け持つ身であった。
 それでも、モスティマの裸を見て暴走しない程度の自制心は備えていたが、自制するつもりはなかった。
 隣の新入りあたりは、きっとこう思っていただろう。
 ……女の子の裸を見られるなんて、ラッキー!
 と、たったそれだけ。
 それ以上の役得に預かる気は、最初はなかった。
 だが、サングラスがこの手で率先してショーツを調べた上で、スリーサイズの測定を命じたり、手で触れての触診検査を指示した時から、しだいにそういう空気が形成されていた。モスティマにはいくら悪戯しても構わない、むしろしなければ損だという意識が、何の言葉も介することなく、何となく共有されている。
 サングラスはこの空気の形成をわざと放置した。
 わかっていて、あえて作らせたのだ。
「アソコは俺が直々に調べてやるぜ」
 サングラスの男はしゃがみ込む。
 近くで見れば、内股に滴った愛液が皮膚に染み込み、ねっとりと張りついている様子がよくわかる。滴が膝の辺りまで伝ったせいで、そこまで筋が伸びていたようだ。
「足を肩幅まで開け、両手は頭の後ろだ」
「……次こそ余計なことが起きないといいんだけどね」
 モスティマの足が左右へ動き、見上げれば頭の後ろに両手が組まれていた。
「さぁて、やらせてもらうぜ?」
 サングラスは中指を真上に突き立てて、股の下へと潜らせる。天井を貫くようにワレメへ沈め、愛液の滑りに任せて根元まで埋め込んだ。
 あっさりと入ったものだった。
 摩擦に突っかかることがなく、ぬるりと簡単に飲み込まれた。
 指を包み込む熱気と共に、膣壁が蠢いている。静かな呼吸に合わせたかすかな収縮があるかのように、意識さえすれば指に対して力の強弱がかかっているのがわかる。温かな湯に浸したように心地良く、頬の内側でも触ったような肉の感触が指に伝わる。
 サングラスはしばらく指を回転させ、いかにも何かを探ってみせた。
「……んぅ……んっ、なにも……ないでしょう?」
 もちろん、その通りだ。
 しかし、せっかくの機会をこれで終わらせるはずがなく、サングラスは指の抜き差しを開始した。
「んっ、んぅぅ……ちょっと……んっ、んあぁぁ…………!」
 腰が左右に踊り始める。
「んっ、ぬっ、んぅぅぅ……! んぁっ、あっ、あん……あん……あん……!」
 しだいしだいに喘ぎ声は色気あるものとなっていき、指に絡みつく愛液の量も増えていく。ピストンすればするほど、指の表面を伝って流れ落ちて来るようになっていき、膣内の感触からも分泌量が指でわかった。
 膣壁と指を隔てるための、ヌルヌルとしたコーティングの層が出来上がっている。
 おかげで、ますます滑りは良くなって、ピストンの勢いを間違えれば、そのうちすっぽ抜けるような気がしてくる。出入りがスムーズになるにつれ、サングラスはピストンを活発にしていくが、腰がモゾモゾと振り動く挙動も目立っていた。
「あぁ……! あぅっ、もっ、もう……! 十分じゃ…………!」
 構わずもう片方の手を持ち上げ、ワレメの狭間からぷっくりと膨らむ小さな肉芽を擦り始めた。
「あぁっ! あん! あぁん! あん! あん! あん! あん!」
 喘ぎ声が高くなる。
 モスティマは突けば鳴る楽器のようにさえなり果てて、実に存分に感じた声を聞かせてくれる。
「あぁ! あん! あん! あん! あん! あん! あん! あん! あん!」
 ピストンで見え隠れする指には、泡立った愛液が白い塊として付着するようになっていた。その塊が新しく分泌される愛液に溶かされて、固形から溶け崩れ、しかし新たな泡立ちの塊が付着し直す。
 指の表面ではそんな新陳代謝が起こっていた。
 周囲から見た光景も面白い。
(エロすぎる……)
(尻が踊ってるじゃねーか)
 体がモゾモゾと動いてしまうため、腰がくねり回る姿を後ろから見ていれば、尻が左右に振りたくられる光景が展開されていた。嫌よ嫌よと主張するかのように左右に動き、あるいは急に奥へと引っ込んでいく。二つの尻たぶが前後に入れ替わるようにしてフリフリ動く。
 前から見ても、筋肉がビクっと反応してしまっての、勢いを帯びた挙動によって、乳房がしきりに揺れている。プルッ、プルッ、と、肩が跳ねるたび、胴が動くたび、感じた体の反応に合わせて乳揺れが起きている。

「あぁぁぁぁ――――――!」

 そして、モスティマは仰け反っていた。
「あっ、あぁ…………あぁぁ……………………」
 顔が天井を向いたまま、両手がだらりとぶら下がり、何の言葉も返って来ない。
 サングラスは指を抜き、もう辛抱たまらないであろう周囲に呼びかけた。

「おい! やりすぎるなよ? 手で触るだけだ。あくまで『仕事』をする分には、俺は何も言わない。いいな」

 その瞬間、男達は待っていたようにモスティマに群がる。
 思い思いに手を伸ばし、好きな部位にタッチして、手という手の数々に全身をまさぐられている。

「あぁぁぁぁ――――――――!」

 数分後にはまた絶頂の声が聞こえてきた。
 太ももから力が抜け、モスティマはがっくりと膝をつく。
 新入りの男はそんなモスティマを抱き寄せて、自分の身体を背もたれにするような形で、背後からの乳揉みを開始した。指が存分に踊り狂って、執拗なまでに乳房を味わう。その下では別の男が下半身に取りかかり、足を開かせ肛門に指を挿入していた。
「ああ、そういや尻の穴を調べてなかったな」
 だが、やり残した『仕事』もこの機会に消化されていく。
「んっ! あっ、あぁぁぁ………………!」
 またイっていた。
 乳房は言うまでもなく、肛門でも感じたのだろうか。
 今度は総掛かりで手足を掴み、持ち上げて、テーブルの上に乗せ始める。一人の男がアソコを弄る一方で、もう一人の男は仰向けに対する頭上から、乳首を執拗に弄っていた。
「あぁぁぁぁぁぁぁ――――――!」
「何回イクんだろうな」
 サングラスの男はそれをニヤニと眺め楽しむ。
 この部屋での出来事は全て記録している。
 ここまでやれば、録画映像のコピーは十分過ぎるほどのお宝になるだろう。

     *

 そして、モスティマは荷物の届け先である施設を訪れる。
 何度も何度も、執拗にイカされた屈辱を抱え、密かに拳を震わせながら、モスティマは再び身体検査を受けていた。
 施設に出入りする人間に対しても、検査の実施があったのだ。
 しかも、ここでの検査担当者は、通行許可カードを端末に通すことで、そこに表示されるデータとモスティマの身体を見比べる。
 サングラスのところで受けた身体検査では、完了後に専用のカードが発行され、町の中では必要に応じて提示することになっていた。荷物の届け先においても、当然のように提示が求められたのだが、担当者がそれを実際に確認するのは、ここで行う二度目の身体検査が始まってからのことだった。
 担当者が抱える電子端末の画面には、モスティマの裸が映し出されていた。
「なるほどね」
 そして、目の前に立つモスティマと、画面の中の裸に視線を行き来させ、二つの裸を見比べるというわけだ。
 そう、ここでもモスティマは全裸である。
 裸を見られる恥ずかしさに加え、データとしても自分の裸体が握られている感覚には、いくらモスティマでも耳まで染まりきっている。担当者の顔を直視できずに目を背け、この恥ずかしさから一刻も早く解放されたい気持ちを逸らせている。
「ふむ、確かに」
 検分であるように、担当者はモスティマに近づいた。
 画面に乳房を大きくアップして、これみよがしに見比べながら、指先で実物の乳房を掬い取る。プルプルと下から揺らし、乳揺れの具合を軽く確かめ、それから乳首をつまんで指でクリクリと刺激した。
「んぅっ、んぅぅぅ………!」
「イってみるかね」
「んぁっ、えっ、遠慮……したいね…………んぅぅぅ…………!」
「そう遠慮することはない。せっかく敏感なのだから」
 指先で上下に弾き続ける刺激により、乳首の角度はまるでレバーを繰り返し上げ下げするように変わり続ける。そんな責めが甘い痺れを溜め込んで、乳房の内側に収まる限界をみるみるうちに超えていく。

「んぅぅぅぅ……………………!」

 さながら人が寒さに震える瞬間のように、モスティマは肩をぶるっと震わせていた。
「イったようだね」
「……遊んでないで、早く照合を終わらせようよ」
 モスティマは顔から火の出る思いに駆られ、勢いよく目を背けた。
「では肛門を確認する。前屈し、足首を掴みたまえ」
 モスティマが受けたポーズの指示は、自分で自分の足首を掴むものである。
 そうすることで、尻の割れ目は姿勢によって左右に広がり、中心に聳える皺の窄まりが丸見えとなるのである。排泄気孔を観察され、見比べられる恥ずかしさは、言うまでもなく頭の沸騰に匹敵する。
 検査担当者は画面の表示を切り替えて、肛門のアップ写真を映し出す。
 写真の肛門と、実物の肛門を繰り返し見比べた。
 色合いはもちろん、皺の本数に至るまで、細かなチェックを進めつつ、そのついでのように尻たぶを手で撫でる。すりすりとした摩擦の音を立てながら、可愛がらんばかりに撫で回し、その最後には肛門に指を置くなり揉みしだく。
「んぅぅぅ……!」
「なるほど、アナルも敏感か」
「んっ、んぅぅ……! あっ、んぅぅう…………!」
 尻がブルっと震え、またしても絶頂したモスティマは、触れてもいないアソコから愛液を滲ませる。
「ではモスティマ、荷物の受取人が待っている。彼のところにはこのまま行くんだ」
「こ、このままって……」
 その瞬間だ。

 ぺんっ!

 口答えは許さないかのように、検査担当者は尻を叩いた。
 そんな仕打ちを受けた屈辱に、モスティマは激しく顔を歪めて唇を噛み締める。
「彼は用心深いのでね。要人暗殺のような可能性を少しでも減らしつつ、荷物は自分の手で確実に受け取りたいという」
「……そんなに狙われるような生き方をしているわけだ」
「このまま移動してもらうよ。モスティマさん」
 ここから先の恥ずかしさにも、モスティマは頭が燃えるような思いを味わった。
 人のいる施設内を裸で歩き、奇異の目で見られながら進んでいくなど、これでは罪人か奴隷の扱いである。どうして自分がこんな屈辱的な思いをしてまで、生真面目に仕事に従事しているのかがわからなくなってくる。
「こちらの部屋で、彼が待っています」
 案内が終わると、検査担当者はドアの近くで立ち止まる。
 警戒心をあらわにして、モスティマはそのドアノブを掴んだ。

(……本当に……ただ荷物を渡して終わり?)

 そんな疑問を切実に抱き、モスティマは配達相手の男の部屋へ入っていく。
 この先、どんなことが起こるのか。
 それは施設に勤める誰も知らず、公式の記録にも残らない。ただ表向きになっているのは、モスティマがトランスポーターの役割を果たし、きちんと荷物を届けたというそれだけなのだ。


 
 
 

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